縁の下の勇者
54.宝箱の中身
王女様にお会いするとかなんとか話がずれてしまったが、今回ダンジョンへ潜った目的はフロスティの試練達成に必要な魔剣探しである。
気を取り直して隠し部屋へと向かう3人。
隠し部屋探しはしばらくしないと誓ったばかりだった気もするが仕方がない。
そう、仕方がないんだ。
それに大義名分さえあればケントだって隠し部屋を探したい。
男子高校生として惹かれるものが確かにあるからだ。
隠し部屋の中には8階層の時と同じ黒い金属質な光沢のある宝箱が1つ、中央に置かれていた。
「俺が空けるけど大丈夫?」
「問題ない」
フロスティの許可を取り、罠の可能性を考慮して念のため氷壁越しに氷で宝箱を開けた。
器用に氷魔法を操るケントに感嘆の声を上げるフロスティ。
ミランダ以外の前でも堂々と氷魔法を使えるというのは、少し気分がいい。
やはり罠の類はなかったようで、宝箱はすんなり開いた。
1ヶ月の探索期間を設定してある依頼の2日目で目的の物を見つけてしまうというのも少し味気ないという気がしないでもない。
……そんなことを考えてしまったせいであろうか。
3人で覗いた宝箱の中に入っていたものは魔剣ではなかった。
「これは……、杖?」
いやいや、早合点はいけない。
それは黒い木の根のようなものが3本よじり合うようになっていて、一方は細く、もう一方は内側に巻き込むように丸まっていた。
どう見ても木製の杖にしか見えないが、まだ仕込み刀という可能性もある。
ということで鑑定。
~鑑定~
【名称】魔杖 インカーネーションディザスター
厄災の化身。魔法におけるMPの消費量を2倍、効果を4倍にする。
うん、杖だね、わかっていたけど。
「魔剣じゃなくて魔杖みたいだね。
フロスティ、この場合って依頼はどうなるの?」
「確かに魔杖も貴重な品ではあるが、試練のお題はあくまでも魔剣であるからな。
依頼は続行で頼む」
マジか~。
探し続けること自体は良いんだけど、問題は隠し部屋の場所についてギルドへ報告しなければいけないことなんだよな。
隠し部屋発見2回目ってだけでも目立つのに、魔剣に当たるまでいくつも隠し部屋を見つけたりするのはさすがに怪しまれる。
10階層までのマッピングは既に終わっているので、仮に黙っていたとしても地図上に無い隠し部屋があればすぐにわかってしまう。
まあそれだけなら誰が隠し部屋を見つけたかわからないので、しらばっくれることもできるのだが。
今回の場合、魔剣捜索という依頼内容であるため、依頼が完了したイコール隠し部屋を見つけたということが明らかになってしまう。
要するにギルドのマッピングが終わっていないところなら隠し部屋を見つけても黙っていればばれないわけだが。
「ミランダ、この前ボス部屋に挑戦してみないかって話したよね?」
「そうね。
それがどうかしたの?」
「今から行こうか、ボス討伐」
「ええっ!?」
ケントは2人にこれ以上上層で隠し部屋探しをしたくない理由を話した。
フロスティには隠し部屋について心当たりがあると言って連れてきたので、ケントに隠し部屋を探す手段があるということを話した時は苦笑されたが、氷魔法を使えることを知られている以上、隠す必要もあるまい。
ケントも普通の男子高校生であったから、目立つのは嫌だが自分の持つ能力については正直自慢したいのだ。
自慢してちやほやされたいが、目立ちたくない。
この反する気持ちのせいでなかなか自慢する機会に恵まれないのだが。
「ギルドのマッピングは10階層まで終わっていて、11階層はまだなんだよね?」
「ええ。
11階層へ行くにはどうしても10階層のボス部屋を通らなくてはいけないから、なかなかマッピングが進まないみたいね」
ダンジョンのマッピング作業はギルドからの依頼という形で冒険者が行っている。
ただこのマッピング作業にも得手不得手がある。
そもそも10階層まではギルドで発売しているマップがあるので、それを頼りに探索している冒険者にマッピング技能はほとんどない。
10階層より下層に潜る冒険者ならばマッピング技能もあるが、自分たちの帰り道さえ分かればいいので道の長さなどは適当であり、他の冒険者が見ても使えるというクオリティでマッピングができる人材はそう多くない。
そして冒険者にしてみても自分たちの絶好の狩場ポイントを他の冒険者に教えるということに抵抗があるという者もいる。
当然ながら、下層へ行くほど魔物も強くなるため冒険者としての実力も必要になる。
10階層までをマッピングしていた冒険者でも、10階層のボス部屋を突破できず、11階層以降のマッピングができないという事情もある。
そんなこともありマッピングの依頼を受ける冒険者はそう多くないため、遅々としてマッピング作業が終わらないという現状に繋がる。
「11階層以降ならマッピングも終わっていないし、どれだけ隠し部屋を見つけても黙っていればばれないと思うんだ。
もし魔剣を見つけたら9階層で見つけたことにすればいいしね。
それに今はフロスティがいるからボス部屋を突破してもそれほど怪しくないと思うし」
ミランダによるとフロスティの魔法使いとしての実力は攻撃力、発動速度、発射速度のどれをとっても最低でもCランクの冒険者に匹敵すると言っていたので、総合すればBランクくらいあるだろう。
今見つけた魔杖をフロスティに渡せばさらに火力も上がるだろうし。
そんなフロスティと一緒ならボスを倒しても不自然ではない。
2人に確認したところ、とくに異議はないということなので早速10階層へ向かうことにした。
いざボス戦だ!
気を取り直して隠し部屋へと向かう3人。
隠し部屋探しはしばらくしないと誓ったばかりだった気もするが仕方がない。
そう、仕方がないんだ。
それに大義名分さえあればケントだって隠し部屋を探したい。
男子高校生として惹かれるものが確かにあるからだ。
隠し部屋の中には8階層の時と同じ黒い金属質な光沢のある宝箱が1つ、中央に置かれていた。
「俺が空けるけど大丈夫?」
「問題ない」
フロスティの許可を取り、罠の可能性を考慮して念のため氷壁越しに氷で宝箱を開けた。
器用に氷魔法を操るケントに感嘆の声を上げるフロスティ。
ミランダ以外の前でも堂々と氷魔法を使えるというのは、少し気分がいい。
やはり罠の類はなかったようで、宝箱はすんなり開いた。
1ヶ月の探索期間を設定してある依頼の2日目で目的の物を見つけてしまうというのも少し味気ないという気がしないでもない。
……そんなことを考えてしまったせいであろうか。
3人で覗いた宝箱の中に入っていたものは魔剣ではなかった。
「これは……、杖?」
いやいや、早合点はいけない。
それは黒い木の根のようなものが3本よじり合うようになっていて、一方は細く、もう一方は内側に巻き込むように丸まっていた。
どう見ても木製の杖にしか見えないが、まだ仕込み刀という可能性もある。
ということで鑑定。
~鑑定~
【名称】魔杖 インカーネーションディザスター
厄災の化身。魔法におけるMPの消費量を2倍、効果を4倍にする。
うん、杖だね、わかっていたけど。
「魔剣じゃなくて魔杖みたいだね。
フロスティ、この場合って依頼はどうなるの?」
「確かに魔杖も貴重な品ではあるが、試練のお題はあくまでも魔剣であるからな。
依頼は続行で頼む」
マジか~。
探し続けること自体は良いんだけど、問題は隠し部屋の場所についてギルドへ報告しなければいけないことなんだよな。
隠し部屋発見2回目ってだけでも目立つのに、魔剣に当たるまでいくつも隠し部屋を見つけたりするのはさすがに怪しまれる。
10階層までのマッピングは既に終わっているので、仮に黙っていたとしても地図上に無い隠し部屋があればすぐにわかってしまう。
まあそれだけなら誰が隠し部屋を見つけたかわからないので、しらばっくれることもできるのだが。
今回の場合、魔剣捜索という依頼内容であるため、依頼が完了したイコール隠し部屋を見つけたということが明らかになってしまう。
要するにギルドのマッピングが終わっていないところなら隠し部屋を見つけても黙っていればばれないわけだが。
「ミランダ、この前ボス部屋に挑戦してみないかって話したよね?」
「そうね。
それがどうかしたの?」
「今から行こうか、ボス討伐」
「ええっ!?」
ケントは2人にこれ以上上層で隠し部屋探しをしたくない理由を話した。
フロスティには隠し部屋について心当たりがあると言って連れてきたので、ケントに隠し部屋を探す手段があるということを話した時は苦笑されたが、氷魔法を使えることを知られている以上、隠す必要もあるまい。
ケントも普通の男子高校生であったから、目立つのは嫌だが自分の持つ能力については正直自慢したいのだ。
自慢してちやほやされたいが、目立ちたくない。
この反する気持ちのせいでなかなか自慢する機会に恵まれないのだが。
「ギルドのマッピングは10階層まで終わっていて、11階層はまだなんだよね?」
「ええ。
11階層へ行くにはどうしても10階層のボス部屋を通らなくてはいけないから、なかなかマッピングが進まないみたいね」
ダンジョンのマッピング作業はギルドからの依頼という形で冒険者が行っている。
ただこのマッピング作業にも得手不得手がある。
そもそも10階層まではギルドで発売しているマップがあるので、それを頼りに探索している冒険者にマッピング技能はほとんどない。
10階層より下層に潜る冒険者ならばマッピング技能もあるが、自分たちの帰り道さえ分かればいいので道の長さなどは適当であり、他の冒険者が見ても使えるというクオリティでマッピングができる人材はそう多くない。
そして冒険者にしてみても自分たちの絶好の狩場ポイントを他の冒険者に教えるということに抵抗があるという者もいる。
当然ながら、下層へ行くほど魔物も強くなるため冒険者としての実力も必要になる。
10階層までをマッピングしていた冒険者でも、10階層のボス部屋を突破できず、11階層以降のマッピングができないという事情もある。
そんなこともありマッピングの依頼を受ける冒険者はそう多くないため、遅々としてマッピング作業が終わらないという現状に繋がる。
「11階層以降ならマッピングも終わっていないし、どれだけ隠し部屋を見つけても黙っていればばれないと思うんだ。
もし魔剣を見つけたら9階層で見つけたことにすればいいしね。
それに今はフロスティがいるからボス部屋を突破してもそれほど怪しくないと思うし」
ミランダによるとフロスティの魔法使いとしての実力は攻撃力、発動速度、発射速度のどれをとっても最低でもCランクの冒険者に匹敵すると言っていたので、総合すればBランクくらいあるだろう。
今見つけた魔杖をフロスティに渡せばさらに火力も上がるだろうし。
そんなフロスティと一緒ならボスを倒しても不自然ではない。
2人に確認したところ、とくに異議はないということなので早速10階層へ向かうことにした。
いざボス戦だ!
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