縁の下の勇者
48.依頼
透き通る銀髪を一つに束ね、こちらを見る瞳はきりりとしていて端正な顔立ちをしている。
周りの女の子たちに「お姉さま」とかいって慕われていそうな感じのカッコいい女性だ。
格好は魔法使いの冒険者がしているような軽装備にローブを羽織っているが、パッと見ただけでも質のいい装備だとわかる。
ちなみに胸部装甲もなかなかのものをお持ちのようだ。
「丁度件の冒険者が居合わせておりましたので、お連れしました。
Eランクパーティーのミランダさんとケントさんです」
ケントたちのことを紹介するオリヴィア。
雰囲気から言ってこの女性はお偉いさんなんだろうけど、そもそも件の冒険者ってなんぞ?
Eランクパーティーを紹介する理由は何だ?
そんなことを考えているとオリヴィアが銀髪の女性を紹介してくれた。
「こちらはランドン伯爵家のご息女であるフロスティ・ランドン様です」
「初めまして。
紹介に預かったフロスティ・ランドンだ」
ランドン…って領主様の娘さん?!
「お2人に依頼があるというお話しをしていたところに丁度お戻りになったので、直接お話を聞いてはと思いお呼びしました。
それでは私はこれで失礼させていただきますので、何かありましたらお声かけ下さい」
それだけ言うとオリヴィアは応接室を出ていった。
(えっ、ちょ、オリヴィア出て行っちゃうの?!
初対面の人だけ残してギルド職員が退室っていいの、それで?!
相手貴族様だよ!
礼儀とか知らないんだけど!!)
「まあ、とりあえず座ってくれ」
少し放心していると、フロスティに声をかけられた。
(いかんいかん、粗相をしないようにしないと)
「し、失礼します」
緊張で声が上ずってしまったが、席に着くことができた。
ふぅ~、やり切った。
もう帰ってもいいだろうか。
「はははっ、そんなに緊張しなくてもいい。
公式の場ではないし、私自身堅苦しいのはあまり好まない。
敬語も無理に使わなくてもいいし、名前も呼び捨てでいいぞ」
「さすがに呼び捨ては少し…。
ですがお心遣いありがとうございます」
「敬語でなくてもいいと言っているのに」
そう言って苦笑するフロスティ。
初めて貴族という身分の人に会ったので比較はできないが、なかなか感じのいい人で良かった。
この人なら本当に言葉を崩しても、「無礼者め!」とはならないだろう。
そもそも、ちゃんとした敬語で話すことができる自信がないので非常に助かる。
「ではお言葉に甘えて。
俺たちに依頼があるっていう話だけど、詳しく聞いても?」
隣に座るミランダから「お前マジかよ!」みたいな視線を向けられる。
えっ、やっぱり敬語を使わなくてもいいっていうのはただの言葉の綾で、敬語を使わなきゃいけなかったパターンなのか。
やっちまった!と途端に冷や汗が出る。
だが、その心配は杞憂に終わった。
「そんな感じでいいぞ。
では本題と行こうか。
と、その前に確認なんだが、上層で魔剣を見つけたというのはお前たちでいいんだな?」
質問を聞いて顔を見合わせるケントとミランダ。
なるほど、そこから話が来たのか。
「そうだね。
見つけたのは本当に偶然なんだけど」
「そうか、それなら良かった。
依頼の話なんだが、私と一緒に魔剣を探すのを手伝って欲しい」
「それはどういう…?」
「そうだな、まずは私の家について話そうか。
ここランドンは知っての通り国境に近く、また森やダンジョンといった魔物の生息域にも近い場所にある。
そのため我がランドン伯爵家は昔から武を重んじる家風でな。
兵や街の強化はもちろん、自身たちも鍛錬を旨としているのだ。
そんな我が家には代々課される試練がある。
まあ、内容は様々で魔物の討伐であったり、希少な植物の採取であったり。
そして私にも少し前に試練の内容が知らされてだな、それが自力でダンジョンから魔剣を入手してこいというものだったのだ。
今まで魔剣はダンジョンの下層からしか発見されていなかったから、私も下層へ潜れるステータスになるまでは試練はお預けだと思っていたのだが。
しかし、つい先日上層から魔剣が発見されたという話を耳にする機会があったのだ。
占めた、これを逃す手はないと思い依頼に来たというわけだ」
なかなか、剛毅な家だな~。
土地柄仕方のない面もあるのかもしれないけど、娘にダンジョンへ潜ることを強制させるとか容赦がない。
「なるほど、話は分かったけどどうして俺たちに?
確かに俺たちは魔剣を見つけたけれど、ただの偶然だし、護衛も兼ねるならもっと高ランクの冒険者に依頼したほうがいいんじゃない?」
「確かに見つけたのは偶然かもしれないが、まだ他に誰も見つけていない。
見つけたことがあるのはお前たちだけだ。
見つけたことのあるお前たちなら、ダンジョンの壁なんかに何か違和感を抱いたりするかもしれないだろう?
それに護衛については心配しないでいい。
潜るのは上層の予定だし、私も少しは鍛えているからな、上層の魔物程度なら十分に戦えると思うぞ」
だからといって依頼を受けるのは気が進まない。
一緒にダンジョンへ潜るとなると、ケントの能力を知られてしまう可能性が増える。
隠し部屋を見つけるだけならば、脳内マップがあれば事足りるのでそんな心配はないが、問題は隠し部屋へ続く壁だ。
あれを壊すとなると魔剣ルーインブリンガーだけで破壊できるか自信がない。
魔法を使わざるをえないだろう。
「試練て達成できないとどうなるの?」
「別に試練が達成できないからといって殺されたりすることは無い。
ただ一生半人前として、伯爵家の駒として生きていかなければならないだけだ。
私の場合は女だからな、精々交渉材料としてどこかの貴族の爺にでも側室として送り込まれるくらいだろう。
好々爺ならまだましだが、ゆがんだ性癖の奴の元へ送り込まれでもしたらきっと私は逆らうこともできず、体を蹂躙され、あんなことやこんなことまでされてしまうのだろう」
よよよ…と、泣く真似をするフロスティ。
(この野郎、情に訴えてきやがって。
興奮するじゃねぇか!)
周りの女の子たちに「お姉さま」とかいって慕われていそうな感じのカッコいい女性だ。
格好は魔法使いの冒険者がしているような軽装備にローブを羽織っているが、パッと見ただけでも質のいい装備だとわかる。
ちなみに胸部装甲もなかなかのものをお持ちのようだ。
「丁度件の冒険者が居合わせておりましたので、お連れしました。
Eランクパーティーのミランダさんとケントさんです」
ケントたちのことを紹介するオリヴィア。
雰囲気から言ってこの女性はお偉いさんなんだろうけど、そもそも件の冒険者ってなんぞ?
Eランクパーティーを紹介する理由は何だ?
そんなことを考えているとオリヴィアが銀髪の女性を紹介してくれた。
「こちらはランドン伯爵家のご息女であるフロスティ・ランドン様です」
「初めまして。
紹介に預かったフロスティ・ランドンだ」
ランドン…って領主様の娘さん?!
「お2人に依頼があるというお話しをしていたところに丁度お戻りになったので、直接お話を聞いてはと思いお呼びしました。
それでは私はこれで失礼させていただきますので、何かありましたらお声かけ下さい」
それだけ言うとオリヴィアは応接室を出ていった。
(えっ、ちょ、オリヴィア出て行っちゃうの?!
初対面の人だけ残してギルド職員が退室っていいの、それで?!
相手貴族様だよ!
礼儀とか知らないんだけど!!)
「まあ、とりあえず座ってくれ」
少し放心していると、フロスティに声をかけられた。
(いかんいかん、粗相をしないようにしないと)
「し、失礼します」
緊張で声が上ずってしまったが、席に着くことができた。
ふぅ~、やり切った。
もう帰ってもいいだろうか。
「はははっ、そんなに緊張しなくてもいい。
公式の場ではないし、私自身堅苦しいのはあまり好まない。
敬語も無理に使わなくてもいいし、名前も呼び捨てでいいぞ」
「さすがに呼び捨ては少し…。
ですがお心遣いありがとうございます」
「敬語でなくてもいいと言っているのに」
そう言って苦笑するフロスティ。
初めて貴族という身分の人に会ったので比較はできないが、なかなか感じのいい人で良かった。
この人なら本当に言葉を崩しても、「無礼者め!」とはならないだろう。
そもそも、ちゃんとした敬語で話すことができる自信がないので非常に助かる。
「ではお言葉に甘えて。
俺たちに依頼があるっていう話だけど、詳しく聞いても?」
隣に座るミランダから「お前マジかよ!」みたいな視線を向けられる。
えっ、やっぱり敬語を使わなくてもいいっていうのはただの言葉の綾で、敬語を使わなきゃいけなかったパターンなのか。
やっちまった!と途端に冷や汗が出る。
だが、その心配は杞憂に終わった。
「そんな感じでいいぞ。
では本題と行こうか。
と、その前に確認なんだが、上層で魔剣を見つけたというのはお前たちでいいんだな?」
質問を聞いて顔を見合わせるケントとミランダ。
なるほど、そこから話が来たのか。
「そうだね。
見つけたのは本当に偶然なんだけど」
「そうか、それなら良かった。
依頼の話なんだが、私と一緒に魔剣を探すのを手伝って欲しい」
「それはどういう…?」
「そうだな、まずは私の家について話そうか。
ここランドンは知っての通り国境に近く、また森やダンジョンといった魔物の生息域にも近い場所にある。
そのため我がランドン伯爵家は昔から武を重んじる家風でな。
兵や街の強化はもちろん、自身たちも鍛錬を旨としているのだ。
そんな我が家には代々課される試練がある。
まあ、内容は様々で魔物の討伐であったり、希少な植物の採取であったり。
そして私にも少し前に試練の内容が知らされてだな、それが自力でダンジョンから魔剣を入手してこいというものだったのだ。
今まで魔剣はダンジョンの下層からしか発見されていなかったから、私も下層へ潜れるステータスになるまでは試練はお預けだと思っていたのだが。
しかし、つい先日上層から魔剣が発見されたという話を耳にする機会があったのだ。
占めた、これを逃す手はないと思い依頼に来たというわけだ」
なかなか、剛毅な家だな~。
土地柄仕方のない面もあるのかもしれないけど、娘にダンジョンへ潜ることを強制させるとか容赦がない。
「なるほど、話は分かったけどどうして俺たちに?
確かに俺たちは魔剣を見つけたけれど、ただの偶然だし、護衛も兼ねるならもっと高ランクの冒険者に依頼したほうがいいんじゃない?」
「確かに見つけたのは偶然かもしれないが、まだ他に誰も見つけていない。
見つけたことがあるのはお前たちだけだ。
見つけたことのあるお前たちなら、ダンジョンの壁なんかに何か違和感を抱いたりするかもしれないだろう?
それに護衛については心配しないでいい。
潜るのは上層の予定だし、私も少しは鍛えているからな、上層の魔物程度なら十分に戦えると思うぞ」
だからといって依頼を受けるのは気が進まない。
一緒にダンジョンへ潜るとなると、ケントの能力を知られてしまう可能性が増える。
隠し部屋を見つけるだけならば、脳内マップがあれば事足りるのでそんな心配はないが、問題は隠し部屋へ続く壁だ。
あれを壊すとなると魔剣ルーインブリンガーだけで破壊できるか自信がない。
魔法を使わざるをえないだろう。
「試練て達成できないとどうなるの?」
「別に試練が達成できないからといって殺されたりすることは無い。
ただ一生半人前として、伯爵家の駒として生きていかなければならないだけだ。
私の場合は女だからな、精々交渉材料としてどこかの貴族の爺にでも側室として送り込まれるくらいだろう。
好々爺ならまだましだが、ゆがんだ性癖の奴の元へ送り込まれでもしたらきっと私は逆らうこともできず、体を蹂躙され、あんなことやこんなことまでされてしまうのだろう」
よよよ…と、泣く真似をするフロスティ。
(この野郎、情に訴えてきやがって。
興奮するじゃねぇか!)
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