縁の下の勇者
46.次の目標
オーク騒動からしばらく、ケントとミランダはダンジョン探索の日々を繰り返していた。
森についてだが、しばらく街からの依頼という形で高ランクの冒険者が見回りをすることになった。
初心者はあまり森に近づかないよう呼びかけられたが、薬草採取のみで生活している低ランク冒険者はどうすればいいのだろうか。
…普通冒険者になるような人は攻撃スキルを持っているか、パーティーを組んでいるからダンジョン探索をするんですか、そうですか。
そんな背景もありオリヴィアからあまり森に近づかないよう注意されてしまったので、しばらく訓練はお預けになった。
と思ったが、よく考えたら森にこだわらなくてもダンジョン内ですればいいことに気が付き、現在はダンジョン内でゴーレムと訓練を行っている。
脳内マップのおかげで誰かに見られる心配はない。
探索階層を一つ伸ばし9階層を中心に泊りがけでダンジョンに潜る。
アイテムボックスのおかげで食料には困らないし、水魔法で体を丸ごと洗えるので常に清潔だ。
ちなみにミランダのことも水魔法で洗っている。
とくに感触がわかるわけではないし、すぐに脱水してしまうのでこれといって何かがあるわけではないが、洗い終わった後の水を処理しきるまでミランダが目を離してくれない。
ミランダを洗った水をどうにかするとでも思っているのだろうか、失礼な。
…まあ、ミランダが見ていなかったら一口くらい摂取する可能性は否定しないが。
そんな感じで比較的快適にダンジョン探索をしているが、それでも精々3泊4日くらいだ。
あまり長期間潜っていると強面スキンヘッドのライオス辺りに、食料はどうしてるんだなんだと突っ込まれかねない。
あの人ミランダに対して過保護だからな。
どうしても長期間潜りたいときは、ダンジョン入り口の小屋はスルーすることにしよう。
◇
脳内マップで効率よく魔物を倒して魔石を回収しながら、空いた時間にゴーレムで特訓。
ゴーレムはケントの劣化版ステータスなので隠密スキルを使用してくるのだが、ここで脳内マップが大活躍した。
隠密状態のゴーレムがどこにいるのかわかるのだ。
脳内マップは空間魔法Ⅹによるものなので、おそらく隠密Ⅹのスキルで隠密されると見つけることはできないだろうが、それほどの使い手はそうはいないだろう。
肉眼では見えず、脳内マップでは把握できるという不思議な状態での戦闘に慣れるのに少し手間取ったが、今では不可視の相手に対して攻撃も、回避も可視の相手に対するものと同程度に行うことができるようになった。
ミランダも一緒にゴーレムと訓練するようになった。
本人は、索敵スキルは持っていないと言っていたが、冒険者として培ってきた経験からかスキルレベルⅠのアクアゴーレムは瞬殺だった。
オリヴィアも隠密Ⅰくらいならわかるって言っていたから、この世界ではスキル外の能力もある程度は強化することができるということだろう。
ケント自身、森で訓練していた時から索敵スキルが無くても何となくだが隠密状態のゴーレムの位置を把握することができた。
ミランダは現在スキルレベルⅢのアイスゴーレムを相手に訓練している。
隠密はもちろん空間魔法による防御がなかなか手ごわいらしくいい特訓になるそうだ。
そんな感じで魔物を狩って、ゴーレムを相手に訓練して、少し休憩しているときミランダがある提案をしてきた。
「ねえケント、そろそろボスに挑戦してみない?」
ボスモンスター。
それは10階層おきに存在する大部屋、通称ボス部屋に君臨する魔物である。
他の階層に出現する一般的な魔物と違い、ボスモンスターは個としてのステータスが高い。
10階層のボスといえば中級冒険者の関門として認識されている。
「ボスか~」
「ケントはボスに挑むのに反対なの?」
「反対というか気が進まないというか。
10階層のボスってCランクの冒険者がパーティーを組んで挑むレベルらしいし。
戦えば多分勝てるだろうけど、俺達まだEランクパーティーだよ。
その上戦闘要員はミランダだけ。
俺も魔剣は持っているけど、剣術スキルもないし精々護身術程度の実力しかないと思われているだろうし。
そうなるとみんなはミランダ1人で10層のボスを倒したって思うでしょ。
そんな実力ある若手のミランダを他のパーティーはこぞって勧誘するだろうからそれが嫌なんだよ。…あと目立つし」
「…最後に本音が聞こえた気がするんだけど、まあいいわ。
勧誘されても他のパーティーへ行くつもりはないけど、確かにEランクパーティーが2人でボスを倒したなんて話は聞いたことないわね。
ケントと一緒にいるとその辺の感覚がマヒしてくるわ。
よく考えれば9階層にいるのだって十分異例だろうし。
…それじゃあ、仲間を増やす?」
「当てはあるの?」
「…ない」
だろうな。
ミランダだってケントと組む前はソロで活動していたのだ。
当てがあるはずあるまい。
「まあでもそろそろ、次に進むにはパーティーメンバー増やしたいよね。
戻ったらオリヴィアにでも相談してみようか」
「そうね」
オリヴィアの名前を出した瞬間、ミランダがムッとした気がしたが気のせいだろう。
嫉妬などと妄想しては冷たい目で見られるに違いない。
森についてだが、しばらく街からの依頼という形で高ランクの冒険者が見回りをすることになった。
初心者はあまり森に近づかないよう呼びかけられたが、薬草採取のみで生活している低ランク冒険者はどうすればいいのだろうか。
…普通冒険者になるような人は攻撃スキルを持っているか、パーティーを組んでいるからダンジョン探索をするんですか、そうですか。
そんな背景もありオリヴィアからあまり森に近づかないよう注意されてしまったので、しばらく訓練はお預けになった。
と思ったが、よく考えたら森にこだわらなくてもダンジョン内ですればいいことに気が付き、現在はダンジョン内でゴーレムと訓練を行っている。
脳内マップのおかげで誰かに見られる心配はない。
探索階層を一つ伸ばし9階層を中心に泊りがけでダンジョンに潜る。
アイテムボックスのおかげで食料には困らないし、水魔法で体を丸ごと洗えるので常に清潔だ。
ちなみにミランダのことも水魔法で洗っている。
とくに感触がわかるわけではないし、すぐに脱水してしまうのでこれといって何かがあるわけではないが、洗い終わった後の水を処理しきるまでミランダが目を離してくれない。
ミランダを洗った水をどうにかするとでも思っているのだろうか、失礼な。
…まあ、ミランダが見ていなかったら一口くらい摂取する可能性は否定しないが。
そんな感じで比較的快適にダンジョン探索をしているが、それでも精々3泊4日くらいだ。
あまり長期間潜っていると強面スキンヘッドのライオス辺りに、食料はどうしてるんだなんだと突っ込まれかねない。
あの人ミランダに対して過保護だからな。
どうしても長期間潜りたいときは、ダンジョン入り口の小屋はスルーすることにしよう。
◇
脳内マップで効率よく魔物を倒して魔石を回収しながら、空いた時間にゴーレムで特訓。
ゴーレムはケントの劣化版ステータスなので隠密スキルを使用してくるのだが、ここで脳内マップが大活躍した。
隠密状態のゴーレムがどこにいるのかわかるのだ。
脳内マップは空間魔法Ⅹによるものなので、おそらく隠密Ⅹのスキルで隠密されると見つけることはできないだろうが、それほどの使い手はそうはいないだろう。
肉眼では見えず、脳内マップでは把握できるという不思議な状態での戦闘に慣れるのに少し手間取ったが、今では不可視の相手に対して攻撃も、回避も可視の相手に対するものと同程度に行うことができるようになった。
ミランダも一緒にゴーレムと訓練するようになった。
本人は、索敵スキルは持っていないと言っていたが、冒険者として培ってきた経験からかスキルレベルⅠのアクアゴーレムは瞬殺だった。
オリヴィアも隠密Ⅰくらいならわかるって言っていたから、この世界ではスキル外の能力もある程度は強化することができるということだろう。
ケント自身、森で訓練していた時から索敵スキルが無くても何となくだが隠密状態のゴーレムの位置を把握することができた。
ミランダは現在スキルレベルⅢのアイスゴーレムを相手に訓練している。
隠密はもちろん空間魔法による防御がなかなか手ごわいらしくいい特訓になるそうだ。
そんな感じで魔物を狩って、ゴーレムを相手に訓練して、少し休憩しているときミランダがある提案をしてきた。
「ねえケント、そろそろボスに挑戦してみない?」
ボスモンスター。
それは10階層おきに存在する大部屋、通称ボス部屋に君臨する魔物である。
他の階層に出現する一般的な魔物と違い、ボスモンスターは個としてのステータスが高い。
10階層のボスといえば中級冒険者の関門として認識されている。
「ボスか~」
「ケントはボスに挑むのに反対なの?」
「反対というか気が進まないというか。
10階層のボスってCランクの冒険者がパーティーを組んで挑むレベルらしいし。
戦えば多分勝てるだろうけど、俺達まだEランクパーティーだよ。
その上戦闘要員はミランダだけ。
俺も魔剣は持っているけど、剣術スキルもないし精々護身術程度の実力しかないと思われているだろうし。
そうなるとみんなはミランダ1人で10層のボスを倒したって思うでしょ。
そんな実力ある若手のミランダを他のパーティーはこぞって勧誘するだろうからそれが嫌なんだよ。…あと目立つし」
「…最後に本音が聞こえた気がするんだけど、まあいいわ。
勧誘されても他のパーティーへ行くつもりはないけど、確かにEランクパーティーが2人でボスを倒したなんて話は聞いたことないわね。
ケントと一緒にいるとその辺の感覚がマヒしてくるわ。
よく考えれば9階層にいるのだって十分異例だろうし。
…それじゃあ、仲間を増やす?」
「当てはあるの?」
「…ない」
だろうな。
ミランダだってケントと組む前はソロで活動していたのだ。
当てがあるはずあるまい。
「まあでもそろそろ、次に進むにはパーティーメンバー増やしたいよね。
戻ったらオリヴィアにでも相談してみようか」
「そうね」
オリヴィアの名前を出した瞬間、ミランダがムッとした気がしたが気のせいだろう。
嫉妬などと妄想しては冷たい目で見られるに違いない。
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