縁の下の勇者
45.オークの群れ騒動 後日談
―オリヴィア視点―
「やったな、ガレン!
とうとうお前らもBランクか。
今日は俺の奢りだ、ガンガン飲んでくれ!」
ギルドに併設された酒場では、ガレンたちのパーティーがBランクに昇格したことを祝う宴会が開かれていた。
既に日は暮れており、この時間にギルドへ依頼をしに来る人はあまりいないので、今日くらいは多少羽目を外しても大目に見ようと思う。
オリヴィアは酒を片手に騒ぐ冒険者たちを受付に座りながら見ていた。
「それにしてもCランクでBランク相当のオークの群れを倒しちまうとはな」
「くぅ~、俺達も負けてられねぇなぁ、おい!」
ガレンたちのパーティーはBランク相当であるオークの群れを討伐した功績を称えられ、Bランクパーティーへと昇格することとなった。
もっとも、元々こつこつ評価をされていたので今回の件が無くても近いうちにBランクへと昇格できたであろう。
今回昇格させたのは対外的なアピールの面が大きい。
目立つような功績を挙げたものには、ギルドは相応の報酬を与えるという事実を他の冒険者に知らせ、ギルドへの求心力と冒険者の向上心の増加を目的としている。
「それにしてもオークの群れだけじゃなくオークキングもか。
初心者エリアのはずが随分と物騒だな」
「ああ。
それに氷の魔法使いだろ。
そいつって本当に人間なのか?
まさか魔物じゃないだろうな。
オークキングを仕留めちまう魔物がうろついている森になんてちかづけねぇや」
「おいガレン、氷の魔法使ったやつは見なかったのか」
「ああ、情けねぇがすぐに気を失っちまったからな。
俺が見たのは氷漬けになったオークキングだけだ」
そう、オークキングだ。
Cランク冒険者がBランクの獲物を討伐しただけならばちょっとした美談で終わりだが、今回はそうもいかない。
オークキングはAランク相当の魔物とされており、小さな町ならば単体で壊滅させてしまうほどの力を持つとされている。
そんな災害のような魔物が森の浅いところ、つまりランドン近郊で目撃されたのだ。
さすがに、城塞都市であり冒険者の街であるランドンが落とされることは無いと思うが、それでも脅威であることには変わりない。
ギルド職員で話し合った結果、これからは定期的に上位ランクの冒険者に森の見回りをしてもらうことになった。
そして、さらに事態を混乱させているのが氷の魔法使いの存在だ。
ガレンに聞き取りをしたところ、気を失う直前に氷漬けにされたオークキングの姿を見たらしい。
応援に向かった冒険者が言うには、倒れているガレンたちのそばに多数の魔石と二回りは大きな魔石が置いてあったということなので、オークキングが氷の魔法使いに倒されたのは間違いないだろう。
冒険者の中には氷の魔法使いは魔物なのではないかと疑っている者もいるようだが、オリヴィアは十中八九ヒト、あるいはそれに類する亜人が正体であると思っている。
氷の魔法使いの名を聞いたのは今回で3回目だ。
王女殿下のお乗りになっていた馬車を襲った盗賊の撃退の援助、ランドンのならず者たちからミランダと宿屋の娘の救助、そしてガレンたちを襲っていたオークキングの討伐。
いずれも誰かを助けるために魔法を使っている。
ヒトを助けるならばやはり同種のヒトだろう。
それに2件目に至ってはランドンの街中だ。
さすがに魔物が入り込んでいることは無いと思いたい。
それからもう1つ。
冒険者たちはあまり気にしていないようだが、ガレンたちを治療した回復魔法だ。
彼らの話ではオークキングによって瀕死の重傷を負ったという。
しかし、応援に駆け付けたときにはガレンたちは既に完治していた。
瀕死の者を5人も、それも応援が駆け付けるまでの短時間で回復させてしまう回復魔法とはいったいどれほどのレベルなのか。
ポーションを使用した可能性もあるが、それほどの効果を持つポーションは王族クラスでもないと入手できないだろう。
それにポーションは飲まなくても振りかけるだけで効果が出るが、それだとどうしても濡れてしまう。
濡れていることに誰も気が付かなかった、もしくは応援が来る前に乾いてしまった可能性はあるが、回復魔法を使用したと考えるほうが自然であろう。
回復魔法を使用したのが氷の魔法使い本人かその仲間かはわからないが、国に要人として囲われていてもおかしくないレベルだ。
ふと氷の魔法使いの話を聞いた日に冒険者になった、回復魔法のスキルを持つ少年の顔が脳裏に浮かんだ。
(まさか、ね)
ケントは不思議な少年だが、回復魔法のスキルレベルはⅠだった。
それにオークの群れの話を聞いて森に行く途中で引き返したという。
あっという間にミランダと仲良くなったケントに対してもやもやしたものを感じつつ、オリヴィアのため息は酒場の喧騒の中に消えていった。
「やったな、ガレン!
とうとうお前らもBランクか。
今日は俺の奢りだ、ガンガン飲んでくれ!」
ギルドに併設された酒場では、ガレンたちのパーティーがBランクに昇格したことを祝う宴会が開かれていた。
既に日は暮れており、この時間にギルドへ依頼をしに来る人はあまりいないので、今日くらいは多少羽目を外しても大目に見ようと思う。
オリヴィアは酒を片手に騒ぐ冒険者たちを受付に座りながら見ていた。
「それにしてもCランクでBランク相当のオークの群れを倒しちまうとはな」
「くぅ~、俺達も負けてられねぇなぁ、おい!」
ガレンたちのパーティーはBランク相当であるオークの群れを討伐した功績を称えられ、Bランクパーティーへと昇格することとなった。
もっとも、元々こつこつ評価をされていたので今回の件が無くても近いうちにBランクへと昇格できたであろう。
今回昇格させたのは対外的なアピールの面が大きい。
目立つような功績を挙げたものには、ギルドは相応の報酬を与えるという事実を他の冒険者に知らせ、ギルドへの求心力と冒険者の向上心の増加を目的としている。
「それにしてもオークの群れだけじゃなくオークキングもか。
初心者エリアのはずが随分と物騒だな」
「ああ。
それに氷の魔法使いだろ。
そいつって本当に人間なのか?
まさか魔物じゃないだろうな。
オークキングを仕留めちまう魔物がうろついている森になんてちかづけねぇや」
「おいガレン、氷の魔法使ったやつは見なかったのか」
「ああ、情けねぇがすぐに気を失っちまったからな。
俺が見たのは氷漬けになったオークキングだけだ」
そう、オークキングだ。
Cランク冒険者がBランクの獲物を討伐しただけならばちょっとした美談で終わりだが、今回はそうもいかない。
オークキングはAランク相当の魔物とされており、小さな町ならば単体で壊滅させてしまうほどの力を持つとされている。
そんな災害のような魔物が森の浅いところ、つまりランドン近郊で目撃されたのだ。
さすがに、城塞都市であり冒険者の街であるランドンが落とされることは無いと思うが、それでも脅威であることには変わりない。
ギルド職員で話し合った結果、これからは定期的に上位ランクの冒険者に森の見回りをしてもらうことになった。
そして、さらに事態を混乱させているのが氷の魔法使いの存在だ。
ガレンに聞き取りをしたところ、気を失う直前に氷漬けにされたオークキングの姿を見たらしい。
応援に向かった冒険者が言うには、倒れているガレンたちのそばに多数の魔石と二回りは大きな魔石が置いてあったということなので、オークキングが氷の魔法使いに倒されたのは間違いないだろう。
冒険者の中には氷の魔法使いは魔物なのではないかと疑っている者もいるようだが、オリヴィアは十中八九ヒト、あるいはそれに類する亜人が正体であると思っている。
氷の魔法使いの名を聞いたのは今回で3回目だ。
王女殿下のお乗りになっていた馬車を襲った盗賊の撃退の援助、ランドンのならず者たちからミランダと宿屋の娘の救助、そしてガレンたちを襲っていたオークキングの討伐。
いずれも誰かを助けるために魔法を使っている。
ヒトを助けるならばやはり同種のヒトだろう。
それに2件目に至ってはランドンの街中だ。
さすがに魔物が入り込んでいることは無いと思いたい。
それからもう1つ。
冒険者たちはあまり気にしていないようだが、ガレンたちを治療した回復魔法だ。
彼らの話ではオークキングによって瀕死の重傷を負ったという。
しかし、応援に駆け付けたときにはガレンたちは既に完治していた。
瀕死の者を5人も、それも応援が駆け付けるまでの短時間で回復させてしまう回復魔法とはいったいどれほどのレベルなのか。
ポーションを使用した可能性もあるが、それほどの効果を持つポーションは王族クラスでもないと入手できないだろう。
それにポーションは飲まなくても振りかけるだけで効果が出るが、それだとどうしても濡れてしまう。
濡れていることに誰も気が付かなかった、もしくは応援が来る前に乾いてしまった可能性はあるが、回復魔法を使用したと考えるほうが自然であろう。
回復魔法を使用したのが氷の魔法使い本人かその仲間かはわからないが、国に要人として囲われていてもおかしくないレベルだ。
ふと氷の魔法使いの話を聞いた日に冒険者になった、回復魔法のスキルを持つ少年の顔が脳裏に浮かんだ。
(まさか、ね)
ケントは不思議な少年だが、回復魔法のスキルレベルはⅠだった。
それにオークの群れの話を聞いて森に行く途中で引き返したという。
あっという間にミランダと仲良くなったケントに対してもやもやしたものを感じつつ、オリヴィアのため息は酒場の喧騒の中に消えていった。
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