縁の下の勇者
43.間一髪
ケントは空間魔法で脳内マップを展開しながら森へ向かった。
さっきの男の話では、オークの群れは森の浅いところにいるらしいので、すぐに見つかるだろう。
おっ、早速引っ掛かった。
ガレンたち5人に対してオークの数は…12体か。
単純に考えても一人頭2体以上のオークと戦わなくてはならない。
一対多の戦闘において厄介なのが、相手の手数が増え、こちらの死角を狙われることだ。
正面の1体にのみ意識を集中させると、背後をとられてしまうし、複数体を同時に相手にしようにも圧倒的な個の力でもない限り、相手の攻撃を捌ききれない。
その点ガレンたちはうまく立ち回っているようだ。
森の木々を利用したり、仲間の位置取りを把握したりすることで、一対一で闘えるような状況を上手に作り出している。
性格は苦手だが、流石はCランク冒険者といったところだろう。
ガレンたちは1体ずつ着実にオークを倒しているようで、脳内マップから1つ、また1つとオークの反応が消えていく。
「ガレンたち強いね。
この感じだと俺たちがつく頃には倒し終わっているかも」
「そうなの?」
「うん、立ち回りが上手い。
オークの群れはBランクだけど、オーク単体ではCランクだからね。
一対一で闘えるような状況さえ作ることができれば、彼らなら決して倒せない相手じゃない。」
とはいえたとえ素人がガレンたちと同等の力を持っていたとしても、そう上手くはいかないだろう。
Cランクになるまでに培ってきた技術や経験があるからこそ、このような戦い方ができるのだと思う。
脳内マップで見守りながら森へ入り少し走ると、戦闘音が聞こえてきた。
「ちょっとごめんね」
「えっ」
そう断りを入れてからケントはミランダの手を取り木陰に隠れ隠密を発動した。
救援に来たわけだから隠れなくてもいいかもしれないが、現在ガレンたちが優勢のようだ。
わざわざ横から手柄を奪いに行くこともないだろう。
隠密は念のため発動した。
ガレンたちに索敵系のスキルがあった場合、敵の応援だと誤解されて混乱させる可能性があるからだ。
ミランダの手を掴んだのは、彼女も隠密の状態にするためだ。
これでミランダが本当に隠密の状態になっているか検証していないため実際のところはわからないが、所持しているスキルについてのことだからか、何となく大丈夫だという気がするので大丈夫なのだろう。
木の陰からガレンたちの様子を窺う。
(オークは残り2体か…、おっ、後1体)
最後の1体もガレンの一撃で無事倒された。
「応援の必要はなかったみたいね」
「そうだね。
CランクでBランクの標的を倒したんだからもしかしたらBランクに昇格したりして。
よし、それじゃあ気が付かれる前に薬草採取に行こうか」
「っ!ケント、あれ!」
立ち去ろうとするケントの手をミランダが引っ張る。
ミランダからただならぬ雰囲気を感じ取り、指差す方を見る。
するとそこには通常のオークよりも二回りは大きいオークの姿があった。
「ミランダ、あれは?」
「オークキングよ!
オークの群れだけでも異常なのに、どうしてこんなところにオークキングが…。
ケント、ガレンたちが危ない!」
オークキングはその巨体に見合わず俊敏な動きでガレンたちをなぎ倒していく。
「ミランダはここで待っていて!」
そう言ってケントは木陰から飛び出しオークキングの方へ走りだした。
(くそっ、油断した!
空間魔法を使える俺ならもっと早く察知できたのに…!)
空間魔法による脳内マップは、その名の通り脳内に表示される地図である。
脳内マップに集中しすぎると、視覚からの情報を処理しきれなくなるし、逆もまたしかり。
慣れることができれば、脳内マップの常時展開も問題ないと思われるが、今のケントには十全に活用することはできなかった。
そのためガレンたちの居場所を把握してからは、無意識的に慣れた視覚からの情報のみで行動していたため脳内マップに意識が向かず、そのことによってオークキングの発見が遅れてしまった。
オークキングが止めを刺す為にガレンに近づいて行き、棍棒を振り上げた。
(この野郎、間に合え!)
ケントはオークキングの動きを止めるために自重無しで魔法を放った。
オークキングは今まで出会った魔物の中で明らかに別格だ。
加減して動きを止められず、その棍棒が振り下ろされてしまえば、ガレンの命はないだろう。
棍棒を振りかぶった状態で魔法の直撃を受けたオークキングは瞬時に氷結していく。
周りから見ると、普段の氷魔法と差異が無いように見えるが、スキルレベルⅩの一撃だ。
表面だけでなく、内臓や骨の髄に至るまで瞬く間に凍り付いた。
おそらくオークキングは自分の身に何が起こったのかわからないまま、その意識を手放しただろう。
(セーフ、何とか間に合った。
後は…)
ケントは倒れ伏すガレンたちに向かって回復魔法を放った。
個々の状態を確認している暇はないので、こちらも全力で回復魔法を放つ。
死者蘇生はさすがにできないだろうが、即死でない限りこれで回復するはずだ。
幸いにも即死した者はいなかったようで、明らかに瀕死だった肉体がみるみる回復していく。
(ふぅ~、何とかなったかな)
オークキングによってガレンたちが倒されたときはヒヤッとしたが、全員助けることができたので、ケントは胸を撫で下ろした。
さっきの男の話では、オークの群れは森の浅いところにいるらしいので、すぐに見つかるだろう。
おっ、早速引っ掛かった。
ガレンたち5人に対してオークの数は…12体か。
単純に考えても一人頭2体以上のオークと戦わなくてはならない。
一対多の戦闘において厄介なのが、相手の手数が増え、こちらの死角を狙われることだ。
正面の1体にのみ意識を集中させると、背後をとられてしまうし、複数体を同時に相手にしようにも圧倒的な個の力でもない限り、相手の攻撃を捌ききれない。
その点ガレンたちはうまく立ち回っているようだ。
森の木々を利用したり、仲間の位置取りを把握したりすることで、一対一で闘えるような状況を上手に作り出している。
性格は苦手だが、流石はCランク冒険者といったところだろう。
ガレンたちは1体ずつ着実にオークを倒しているようで、脳内マップから1つ、また1つとオークの反応が消えていく。
「ガレンたち強いね。
この感じだと俺たちがつく頃には倒し終わっているかも」
「そうなの?」
「うん、立ち回りが上手い。
オークの群れはBランクだけど、オーク単体ではCランクだからね。
一対一で闘えるような状況さえ作ることができれば、彼らなら決して倒せない相手じゃない。」
とはいえたとえ素人がガレンたちと同等の力を持っていたとしても、そう上手くはいかないだろう。
Cランクになるまでに培ってきた技術や経験があるからこそ、このような戦い方ができるのだと思う。
脳内マップで見守りながら森へ入り少し走ると、戦闘音が聞こえてきた。
「ちょっとごめんね」
「えっ」
そう断りを入れてからケントはミランダの手を取り木陰に隠れ隠密を発動した。
救援に来たわけだから隠れなくてもいいかもしれないが、現在ガレンたちが優勢のようだ。
わざわざ横から手柄を奪いに行くこともないだろう。
隠密は念のため発動した。
ガレンたちに索敵系のスキルがあった場合、敵の応援だと誤解されて混乱させる可能性があるからだ。
ミランダの手を掴んだのは、彼女も隠密の状態にするためだ。
これでミランダが本当に隠密の状態になっているか検証していないため実際のところはわからないが、所持しているスキルについてのことだからか、何となく大丈夫だという気がするので大丈夫なのだろう。
木の陰からガレンたちの様子を窺う。
(オークは残り2体か…、おっ、後1体)
最後の1体もガレンの一撃で無事倒された。
「応援の必要はなかったみたいね」
「そうだね。
CランクでBランクの標的を倒したんだからもしかしたらBランクに昇格したりして。
よし、それじゃあ気が付かれる前に薬草採取に行こうか」
「っ!ケント、あれ!」
立ち去ろうとするケントの手をミランダが引っ張る。
ミランダからただならぬ雰囲気を感じ取り、指差す方を見る。
するとそこには通常のオークよりも二回りは大きいオークの姿があった。
「ミランダ、あれは?」
「オークキングよ!
オークの群れだけでも異常なのに、どうしてこんなところにオークキングが…。
ケント、ガレンたちが危ない!」
オークキングはその巨体に見合わず俊敏な動きでガレンたちをなぎ倒していく。
「ミランダはここで待っていて!」
そう言ってケントは木陰から飛び出しオークキングの方へ走りだした。
(くそっ、油断した!
空間魔法を使える俺ならもっと早く察知できたのに…!)
空間魔法による脳内マップは、その名の通り脳内に表示される地図である。
脳内マップに集中しすぎると、視覚からの情報を処理しきれなくなるし、逆もまたしかり。
慣れることができれば、脳内マップの常時展開も問題ないと思われるが、今のケントには十全に活用することはできなかった。
そのためガレンたちの居場所を把握してからは、無意識的に慣れた視覚からの情報のみで行動していたため脳内マップに意識が向かず、そのことによってオークキングの発見が遅れてしまった。
オークキングが止めを刺す為にガレンに近づいて行き、棍棒を振り上げた。
(この野郎、間に合え!)
ケントはオークキングの動きを止めるために自重無しで魔法を放った。
オークキングは今まで出会った魔物の中で明らかに別格だ。
加減して動きを止められず、その棍棒が振り下ろされてしまえば、ガレンの命はないだろう。
棍棒を振りかぶった状態で魔法の直撃を受けたオークキングは瞬時に氷結していく。
周りから見ると、普段の氷魔法と差異が無いように見えるが、スキルレベルⅩの一撃だ。
表面だけでなく、内臓や骨の髄に至るまで瞬く間に凍り付いた。
おそらくオークキングは自分の身に何が起こったのかわからないまま、その意識を手放しただろう。
(セーフ、何とか間に合った。
後は…)
ケントは倒れ伏すガレンたちに向かって回復魔法を放った。
個々の状態を確認している暇はないので、こちらも全力で回復魔法を放つ。
死者蘇生はさすがにできないだろうが、即死でない限りこれで回復するはずだ。
幸いにも即死した者はいなかったようで、明らかに瀕死だった肉体がみるみる回復していく。
(ふぅ~、何とかなったかな)
オークキングによってガレンたちが倒されたときはヒヤッとしたが、全員助けることができたので、ケントは胸を撫で下ろした。
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