縁の下の勇者
34.マップ
翌日、予定通りミランダと2人で8階層を探索することにした。
ちなみに、昨夜同じテントで寝たからといって特に何もなかった。
戦闘こそ少なかったものの一日中ダンジョンを歩いていたのだ、疲れていたのであろう。
2人ともぐっすりだった、残念。
8階層はミランダも未踏の地であり、普段狩場にしていた5階層の様に地形を把握しているわけではない。
ギルドで購入した地図を頼りに探索するしかない。
ギルドで販売している地図は、10階層までは完全にマッピングされているため現在地さえわかれば迷うことはないだろう。
11階層以降の地図は次の階層へのルートとその他一部分が記されているだけで、未踏の部分もあるらしい。
ダンジョンは各階層が非常に広大であるため、マッピング作業が遅々として進まないのだそうだ。
ようやく数年前に10階層までのマッピングが完了し、11階層のマッピングが完了するのはまだまだ先の予定らしい。
閑話休題。
ゲームなんかだと初期装備として全体マップが付いているものも多く、ダンジョンで迷うなんてこともない。
しかし、実際にダンジョンに潜ってみると進めど進めど景色はかわり映えのしない洞窟の中。
ダンジョンに潜りなれているミランダは地図さえあれば迷わないかもしれないが、素人のケントではあっという間に現在地がわからなくなり迷ってしまいそうだ。
ミランダとはぐれただけで、ダンジョンで遭難とか笑い話にもならない。
(どうにかしたほうがいいよな。
そういえば空間魔法って空間ってつくくらいだし、周囲の空間を把握したりできないのかな)
物は試しに空間魔法を自分を中心に波状に放ってみる。
周囲の空間をスキャンしていくイメージだ。
すると頭の中に把握した空間が浮かび上がってきた。
「ミランダ、ちょっと地図を見せて」
そう言ってミランダから地図を受け取り脳内マップと照らし合わせてみる。
(おぉ~、ちゃんと把握できているみたいだ。
さすがに階層全体はまだ無理だけど、使っていくうちに把握できる空間の範囲も広くなるだろう。
それに、紙の地図と違って、範囲内にいる冒険者や魔物の場所もリアルタイムでわかるぞ。
これなら敵の不意打ちも事前に察知できそうだ)
満足そうにうなずくケントはいぶかし気にみつめるミランダの視線に気が付いていない。
(あれ?
脳内マップと地図とで違う場所がある。
脳内マップでは把握しているのに地図に記されてない…。
未発見の隠し部屋でもあるのかな)
「ミランダ、少し行ってみたい場所ができたんだけどいいかな」
「それは構わないけど、どうかしたの?」
「ギルドで買った地図に載っていない場所があるみたいなんだ。
もしかしたら隠し部屋みたいなのがあるのかもしれない」
「…どうしてそんなことがわかるのか問い詰めたいところだけど。
ケントだしそんなことができても不思議じゃない、か」
ケントは新しくできるようになった技術について話したくて仕方なかったが、“ケントだし”の一言で納得されてしまいその機会を失ってしまった。
まあいいんだけどね。
「それじゃあ行こうか」
脳内マップに従って目的の場所へと進む。
直線距離だと500mもないが、通路がそこへまっすぐに伸びているわけではないので、たどり着くのに2時間ほどかかった。
途中8階層の魔物であるジャイアントバット(その名の通り巨大なコウモリ)との戦闘があったが、ミランダ1人で倒してしまった。
ミランダはDランクだが、エミリアを攫って除名処分になったCランクの金髪たちより強いんじゃないだろうか。
彼らが戦っているところを見たことはないが、立ち居振る舞いというか雰囲気がミランダの方が洗練されている気がする。
ミランダ自身、パーティーメンバーさえ見つけていれば今頃Cランクになっていてもおかしくはないだろう。
目的の場所に着くとそこは行き止まりだった。
「行き止まりね。
地図でも行き止まりになっているけど」
確かに地図では行き止まりになっているし、実際に前方は壁で塞がっている。
そう、塞がっているのだ。
脳内マップではこの壁の向こうに空間があることを確かに把握している。
とりあえず壁を触ったりして調べてみたが、周囲の壁となんら変わりがないように見える。
よし、壊すか。
ゲームなんかだとダンジョンは破壊不能オブジェクトだったりするけど、ここではどうだろうか。
「ミランダ、ちょっと下がっていて」
ミランダを後退させた後念のため自分たちを守るように氷の壁を前方に作り出す。
そして氷の壁の隙間から氷の塊を発射した。
この世界に来てから初めての全力での一撃だ。
魔法で創られた氷であり全力で強度を高めてある。
普通の氷どころか並みの金属なんかより硬くなっている手ごたえを感じた。
その塊を放った本人ですら認識できないようなスピードで撃ち出したのだ。
ドッゴオォーーーン
けたたましい音とともに破壊されたダンジョンの破片が飛んでくるが、氷の壁が全て防いでくれている。
飛んでくる破片が止んだのを確認して氷の壁から顔を出す。
するとそこには先ほどまであった壁はなく、脳内マップに示されていた空間が広がっていた。
ちなみに、昨夜同じテントで寝たからといって特に何もなかった。
戦闘こそ少なかったものの一日中ダンジョンを歩いていたのだ、疲れていたのであろう。
2人ともぐっすりだった、残念。
8階層はミランダも未踏の地であり、普段狩場にしていた5階層の様に地形を把握しているわけではない。
ギルドで購入した地図を頼りに探索するしかない。
ギルドで販売している地図は、10階層までは完全にマッピングされているため現在地さえわかれば迷うことはないだろう。
11階層以降の地図は次の階層へのルートとその他一部分が記されているだけで、未踏の部分もあるらしい。
ダンジョンは各階層が非常に広大であるため、マッピング作業が遅々として進まないのだそうだ。
ようやく数年前に10階層までのマッピングが完了し、11階層のマッピングが完了するのはまだまだ先の予定らしい。
閑話休題。
ゲームなんかだと初期装備として全体マップが付いているものも多く、ダンジョンで迷うなんてこともない。
しかし、実際にダンジョンに潜ってみると進めど進めど景色はかわり映えのしない洞窟の中。
ダンジョンに潜りなれているミランダは地図さえあれば迷わないかもしれないが、素人のケントではあっという間に現在地がわからなくなり迷ってしまいそうだ。
ミランダとはぐれただけで、ダンジョンで遭難とか笑い話にもならない。
(どうにかしたほうがいいよな。
そういえば空間魔法って空間ってつくくらいだし、周囲の空間を把握したりできないのかな)
物は試しに空間魔法を自分を中心に波状に放ってみる。
周囲の空間をスキャンしていくイメージだ。
すると頭の中に把握した空間が浮かび上がってきた。
「ミランダ、ちょっと地図を見せて」
そう言ってミランダから地図を受け取り脳内マップと照らし合わせてみる。
(おぉ~、ちゃんと把握できているみたいだ。
さすがに階層全体はまだ無理だけど、使っていくうちに把握できる空間の範囲も広くなるだろう。
それに、紙の地図と違って、範囲内にいる冒険者や魔物の場所もリアルタイムでわかるぞ。
これなら敵の不意打ちも事前に察知できそうだ)
満足そうにうなずくケントはいぶかし気にみつめるミランダの視線に気が付いていない。
(あれ?
脳内マップと地図とで違う場所がある。
脳内マップでは把握しているのに地図に記されてない…。
未発見の隠し部屋でもあるのかな)
「ミランダ、少し行ってみたい場所ができたんだけどいいかな」
「それは構わないけど、どうかしたの?」
「ギルドで買った地図に載っていない場所があるみたいなんだ。
もしかしたら隠し部屋みたいなのがあるのかもしれない」
「…どうしてそんなことがわかるのか問い詰めたいところだけど。
ケントだしそんなことができても不思議じゃない、か」
ケントは新しくできるようになった技術について話したくて仕方なかったが、“ケントだし”の一言で納得されてしまいその機会を失ってしまった。
まあいいんだけどね。
「それじゃあ行こうか」
脳内マップに従って目的の場所へと進む。
直線距離だと500mもないが、通路がそこへまっすぐに伸びているわけではないので、たどり着くのに2時間ほどかかった。
途中8階層の魔物であるジャイアントバット(その名の通り巨大なコウモリ)との戦闘があったが、ミランダ1人で倒してしまった。
ミランダはDランクだが、エミリアを攫って除名処分になったCランクの金髪たちより強いんじゃないだろうか。
彼らが戦っているところを見たことはないが、立ち居振る舞いというか雰囲気がミランダの方が洗練されている気がする。
ミランダ自身、パーティーメンバーさえ見つけていれば今頃Cランクになっていてもおかしくはないだろう。
目的の場所に着くとそこは行き止まりだった。
「行き止まりね。
地図でも行き止まりになっているけど」
確かに地図では行き止まりになっているし、実際に前方は壁で塞がっている。
そう、塞がっているのだ。
脳内マップではこの壁の向こうに空間があることを確かに把握している。
とりあえず壁を触ったりして調べてみたが、周囲の壁となんら変わりがないように見える。
よし、壊すか。
ゲームなんかだとダンジョンは破壊不能オブジェクトだったりするけど、ここではどうだろうか。
「ミランダ、ちょっと下がっていて」
ミランダを後退させた後念のため自分たちを守るように氷の壁を前方に作り出す。
そして氷の壁の隙間から氷の塊を発射した。
この世界に来てから初めての全力での一撃だ。
魔法で創られた氷であり全力で強度を高めてある。
普通の氷どころか並みの金属なんかより硬くなっている手ごたえを感じた。
その塊を放った本人ですら認識できないようなスピードで撃ち出したのだ。
ドッゴオォーーーン
けたたましい音とともに破壊されたダンジョンの破片が飛んでくるが、氷の壁が全て防いでくれている。
飛んでくる破片が止んだのを確認して氷の壁から顔を出す。
するとそこには先ほどまであった壁はなく、脳内マップに示されていた空間が広がっていた。
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