縁の下の勇者
17.氷の脅迫
(さて、こいつらをどうするか)
足元からの突然の攻撃を受けた男たちは痛さにのたうち回っていた。
足の裏から甲まで氷の針が貫通しているのだ、仕方のないことであろう。
(このまま帰ってもいいんだけど、それだとあとでまたミランダたちが襲われるかもしれないしな~。
せっかく助けたのに俺の知らないところでミランダの裸体をこいつらが拝むのは許せない、俺も見たことがないのに。
まあ、見せてもらえるような仲どころか知り合ってすらいないわけだが。
ああああ~、せめて脱いでから助けるべきだったかな~!
でもこいつらが見るのは納得いかないしな~。
見たい!女体が生で見たい!)
ケントが己の欲望と闘っていると兄貴と呼ばれていた男がよろよろと立ち上がった。
足元には空の小瓶が転がっている。
おそらくポーションで足の傷を治療したのだろう。
「おいおまえら、ポーションは自由に使っていいから早く構えろ!
これはおそらく魔法による攻撃だ。
氷の魔法なんて聞いたこたぁねぇがこれだけの魔法だ、そう何回も撃てやしねぇ。
とっととあぶりだしてきっちりお礼してやらないとなぁ」
痛みに悶えていた男たちは兄貴の声に思い出したようにポーションを飲み始めた。
そして傷がふさがるとそれぞれ自分の獲物を手に持ち周囲を警戒し始めた。
(あの怪我がポーション飲んだだけで治っちゃうんだ。
異世界ってやばいな)
ケントがポーションの効果に感動している間に男たちは天幕の中を調べ終わったようだ。
「くそっ、もう逃げたか。
こんなところをたまたま魔法使いが通るなんてこたぁありえねぇ。
おそらくさっきの2人のどっちかの護衛とかそんなところだろう。
おい、あいつら貴族とかじゃないだろうな」
「それはないです、兄貴。
ミランダはソロで冒険者やってますし、ガキのほうは宿屋の娘です」
「ならすぐ追いかけてもう一回あいつらかっさらってこい。
そうすりゃあ魔法使いの野郎も姿を出さざるをえねぇはずだ」
「でも兄貴、また魔法で攻撃されたら…」
「バカ言ってんじゃねぇ。
さっきは不意打ちを食らっただけだ。
野郎が魔法を使うタイミングさえわかりゃあ回避なり先制攻撃なりできるだろ。
なんなら追加でポーション持ってってもいい。
なめられたまま終わるなんて俺が許せるわきゃねーだろ!」
リーダーの怒声を受けて、攻撃されて怖気づいていた男たちはいっせいに天幕の入口へ向かって走り出した。
(まあ追わせないけどね)
ケントは男たちの前方、天幕の入口を塞ぐように分厚い氷の壁を作り出した。
突然目の前に現れた壁に男たちは立ち止まることができずたたらを踏んでしまう。
(適当に脅して諦めてくれればいいんだけど)
次にケントは人の背丈ほどもある氷塊を10m程の高さから男たちに当たらぬよう注意しながら囲い込むようにいくつも落とした。
突然現れた氷壁と落下してくる氷塊によって男たちは四方を囲まれてしまった。
そしてケントは周囲の地面を濡らして作った泥水を水魔法で操り氷壁に文字を書いた。
『次彼女たちに手を出したら殺す』
字を書く端から泥水を凍らせているので字が垂れて情けなくなるような事態にはなっていない。
(さあどうだ)
暖かな陽気にも関わらず悪寒が走る。
男たちは恐怖に駆られ、腰を抜かしてへたり込んでしまっている者までいる。
しかし、ここまでやってもリーダーの表情に怒りの感情を読み取ることができた。
ここで解放しては復讐に動くことは間違いないだろう。
そこで止めとばかりにリーダーの周囲の氷塊からリーダーの首筋に向かっていくつもの氷の刃を伸ばした。
「ひぃっ!」
リーダーの口から小さな悲鳴が洩れる。
もちろん殺すつもりはないが薄皮を裂き血が流れてしまっている刃もある。
(これでも諦めないなら次を考えなきゃだけど)
ケントはリーダーの様子を窺った。
他の男たちも不安や恐怖で顔を歪ませながらリーダーのことを見ていた。
「わ、わかった!
あの2人には二度と手を出さない。
だっ、だから、いっ命だけは勘弁してくれ」
リーダーの表情には既に怒りの感情はなく恐怖によって覆われていた。
(ふぅ~、これであの2人がちょっかい出されなくなればいいけど)
一応口約束とはいえ2人に手を出さないと言ったので、ケントは男たちの周囲の氷をすべて溶かした。
首に突き付けられていた氷の刃がなくなったことで、緊張が解けたのかリーダーは力なく地面に膝をついた。
(ちょっと寄り道しちゃったけど今日も稼ぎに行きますか)
ケントは誰にも気が付かれないまま天幕を後にし、冒険者ギルドへ向かうのだった。
足元からの突然の攻撃を受けた男たちは痛さにのたうち回っていた。
足の裏から甲まで氷の針が貫通しているのだ、仕方のないことであろう。
(このまま帰ってもいいんだけど、それだとあとでまたミランダたちが襲われるかもしれないしな~。
せっかく助けたのに俺の知らないところでミランダの裸体をこいつらが拝むのは許せない、俺も見たことがないのに。
まあ、見せてもらえるような仲どころか知り合ってすらいないわけだが。
ああああ~、せめて脱いでから助けるべきだったかな~!
でもこいつらが見るのは納得いかないしな~。
見たい!女体が生で見たい!)
ケントが己の欲望と闘っていると兄貴と呼ばれていた男がよろよろと立ち上がった。
足元には空の小瓶が転がっている。
おそらくポーションで足の傷を治療したのだろう。
「おいおまえら、ポーションは自由に使っていいから早く構えろ!
これはおそらく魔法による攻撃だ。
氷の魔法なんて聞いたこたぁねぇがこれだけの魔法だ、そう何回も撃てやしねぇ。
とっととあぶりだしてきっちりお礼してやらないとなぁ」
痛みに悶えていた男たちは兄貴の声に思い出したようにポーションを飲み始めた。
そして傷がふさがるとそれぞれ自分の獲物を手に持ち周囲を警戒し始めた。
(あの怪我がポーション飲んだだけで治っちゃうんだ。
異世界ってやばいな)
ケントがポーションの効果に感動している間に男たちは天幕の中を調べ終わったようだ。
「くそっ、もう逃げたか。
こんなところをたまたま魔法使いが通るなんてこたぁありえねぇ。
おそらくさっきの2人のどっちかの護衛とかそんなところだろう。
おい、あいつら貴族とかじゃないだろうな」
「それはないです、兄貴。
ミランダはソロで冒険者やってますし、ガキのほうは宿屋の娘です」
「ならすぐ追いかけてもう一回あいつらかっさらってこい。
そうすりゃあ魔法使いの野郎も姿を出さざるをえねぇはずだ」
「でも兄貴、また魔法で攻撃されたら…」
「バカ言ってんじゃねぇ。
さっきは不意打ちを食らっただけだ。
野郎が魔法を使うタイミングさえわかりゃあ回避なり先制攻撃なりできるだろ。
なんなら追加でポーション持ってってもいい。
なめられたまま終わるなんて俺が許せるわきゃねーだろ!」
リーダーの怒声を受けて、攻撃されて怖気づいていた男たちはいっせいに天幕の入口へ向かって走り出した。
(まあ追わせないけどね)
ケントは男たちの前方、天幕の入口を塞ぐように分厚い氷の壁を作り出した。
突然目の前に現れた壁に男たちは立ち止まることができずたたらを踏んでしまう。
(適当に脅して諦めてくれればいいんだけど)
次にケントは人の背丈ほどもある氷塊を10m程の高さから男たちに当たらぬよう注意しながら囲い込むようにいくつも落とした。
突然現れた氷壁と落下してくる氷塊によって男たちは四方を囲まれてしまった。
そしてケントは周囲の地面を濡らして作った泥水を水魔法で操り氷壁に文字を書いた。
『次彼女たちに手を出したら殺す』
字を書く端から泥水を凍らせているので字が垂れて情けなくなるような事態にはなっていない。
(さあどうだ)
暖かな陽気にも関わらず悪寒が走る。
男たちは恐怖に駆られ、腰を抜かしてへたり込んでしまっている者までいる。
しかし、ここまでやってもリーダーの表情に怒りの感情を読み取ることができた。
ここで解放しては復讐に動くことは間違いないだろう。
そこで止めとばかりにリーダーの周囲の氷塊からリーダーの首筋に向かっていくつもの氷の刃を伸ばした。
「ひぃっ!」
リーダーの口から小さな悲鳴が洩れる。
もちろん殺すつもりはないが薄皮を裂き血が流れてしまっている刃もある。
(これでも諦めないなら次を考えなきゃだけど)
ケントはリーダーの様子を窺った。
他の男たちも不安や恐怖で顔を歪ませながらリーダーのことを見ていた。
「わ、わかった!
あの2人には二度と手を出さない。
だっ、だから、いっ命だけは勘弁してくれ」
リーダーの表情には既に怒りの感情はなく恐怖によって覆われていた。
(ふぅ~、これであの2人がちょっかい出されなくなればいいけど)
一応口約束とはいえ2人に手を出さないと言ったので、ケントは男たちの周囲の氷をすべて溶かした。
首に突き付けられていた氷の刃がなくなったことで、緊張が解けたのかリーダーは力なく地面に膝をついた。
(ちょっと寄り道しちゃったけど今日も稼ぎに行きますか)
ケントは誰にも気が付かれないまま天幕を後にし、冒険者ギルドへ向かうのだった。
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