縁の下の勇者
6.城郭都市ランドン
城郭都市ランドン。
貴族が直接統治する都市の中でレリエスト王国の最西端に位置する。
レリエスト王国の西に隣接するリリアス帝国とは長年戦争状態にあったが、先王の時代に停戦条約を結び現在では友好関係にある。
ランドンはリリアスに対する防衛の要であったため都市全体を10mはあろうかという堅牢な城壁で囲まれている。
しかし今ではレリエストとリリアスを繋ぐ貿易都市として賑わいを見せている。
(うぉ~、でっかい城壁。近くで見ると迫力が違うな)
現在ケントはランドンへ入るための待機列に並んでいる。
もちろん隠密状態は解除してある。
隠密状態で街へ入るとか、怪しすぎるしね。
見つかったら取り押さえられてしまうかもしれない。
とはいえ街へ入るのにそれほど厳重な審査があるわけではないらしい。
商人たちは積み荷の検査があるようだが、それ以外はランドンへ来た目的を流れ作業で聞かれるだけのようだ。
しばらくするとケントの順番が回ってきた。
「ランドンへはどのような目的で?」
(言語理解先生はちゃんと機能しているみたいだな)
「冒険者になるために来ました」
ランドンの北部にはレリエスト王国に3つ存在するダンジョンの内の1つがある。
そのため、ランドンは冒険者たちの集まる冒険者の街でもあるのだ。
「そうですか。ようこそランドンへ」
あっさりと通してもらえた。
通行料を取られるようなこともなかった。
ランドンの街へ入ると大通りが伸びていた。
地面は石畳で舗装されており、人の往来も盛んだ。
通りの両側には2~3階建ての木造の建物が並んでいた。
交通手段が馬車か徒歩のようなので文明レベルは低いかと思ったが、少なくとも建築技術に関しては現代日本にも引けを取らないようにみえる。
魔法やスキルなんてものがあるから、技術形態も異なる進化を遂げているのだろう。
(まずはお昼でも食べようかな)
昼食には少し遅い時間だが、転移してから何も食べていないため体が空腹を訴えていた。
大通りを歩いているとそれらしきお店を見つけたので入ってみた。
昼時ではないせいか客入りはまばらであった。
「いらっしゃい。飯かい、それとも宿のほうかい?」
恰幅のいいおばちゃんが話しかけてきた。
前世では周りにこんな肝っ玉母ちゃんみたいな人いなかったから新鮮だ。
「えっと、ご飯です」
「なら空いている席に座っとくれ」
とりあえず一番奥の席に座ることにした。
「いらっしゃ~い。これがメニューね」
10歳くらいの女の子がメニューを持ってきてくれた。
ライトブルーのふわふわとした髪を肩口でそろえ、笑顔で話す姿は元気をくれる。
メニューを受け取りさっと目を通す。
(どうやら読みのほうも問題ないようだ)
「じゃあこの日替わりっての1つ」
「はーい!おとーさん、日替わり1つ!」
少女の元気な声が店内に響いた。
(どうやら家族で営んでいるみたいだな。さっきのおばちゃんがお母さんで料理を作っているのがお父さんなのかな)
少しすると女の子が料理を運んできた。
「お待たせ~」
「ありがとね」
「いえいえ、ごゆっくりどうぞ」
運ばれてきた料理を見ると丸パンにサラダ、何かの肉を焼いたもののようだ。
(この世界の衛生管理がどの程度か知らないけど、回復魔法あるし大丈夫だろう)
まずサラダから食べてみる。
見たことない野菜だったが、レタスのような触感でかかっていたほのかに酸味のあるドレッシングとの相性も抜群であった。
次に丸パンを食べてみた。
前世の記憶にあるものより少し硬めだったが、味はおいしいし問題はない。
最後にメインの肉だ。
いったい何の肉なんだろう。
鑑定すれば正体がわかるだろうが、もしゲテモノだったら食べるのに躊躇してしまうかもしれない。
思い切って一口食べてみる。
「うまっ!」
思わず声を出してしまった。
シンプルな味付けのその肉は、適度にのった脂が口の中に広がり、程よい噛み応えとともに口の中を楽しませた。
「おいしいでしょ!お父さんの料理は最高だからね~」
「ホントにおいしいよ。びっくりして声出ちゃったし」
父親の料理が褒められてうれしいのか少女は満面の笑みを浮かべていた。
(けどホントにおいしい。確か宿もやっているようなこと言ってたな。ここに泊まってご飯を食べるのもいいかもしれない)
「ちょっといいかな。ここ宿屋もやっているんだよね。今からでも泊まれるかな」
「大丈夫だよ。おか~さん!お客さん泊まってくれるって」
「そうかい!朝晩飯付きで一泊3000ギルだけどいいかい?」
(2食付いて一泊3000か。かなり安いな。日本と同じくらいの物価のはずだけど、価値観の違いなのかな)
「ではとりあえず3泊でお願いします」
「はいよ。昼食と合わせて9600ギルね」
「わかりました」
そういって小金貨を1枚差し出した。
この世界の貨幣は1ギル=銭貨1枚であり、そこから桁が1つ増えるにつれて銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨1枚の価値となる。
金貨の上に白金貨というものがあり、金貨100枚、つまり1000万ギルの価値があるのだが普段庶民の目に触れることはない。
今回の会計は9600ギルなので、銀貨9枚と小銀貨6枚なのだが、女神様からは小金貨5枚の状態でもらったため丁度に払うことはできなかった。
「これお釣りね」
そういって小銀貨4枚を受け取る。
「すぐに部屋を使うかい?」
「いえ、この後まだ用事があるので戻ってきたら声を掛けます。1つ尋ねたいのですが、冒険者ギルドへはどう行ったらいいのでしょう」
常識さんのおかげでランドンに冒険者ギルドがあることはわかっていたが、場所まではわからなかったのだ。
「冒険者ギルドかい。それならこの通りをまっすぐ街の中央に向けて歩いて行けばでっかい建物があるから、すぐわかるはずだよ。看板も出てるしね」
「そうですか。ありがとうございます」
(残りを食べたらさっそく冒険者ギルドへ行ってみるか)
そう思いながら絶品の肉を口へ運ぶのだった。
貴族が直接統治する都市の中でレリエスト王国の最西端に位置する。
レリエスト王国の西に隣接するリリアス帝国とは長年戦争状態にあったが、先王の時代に停戦条約を結び現在では友好関係にある。
ランドンはリリアスに対する防衛の要であったため都市全体を10mはあろうかという堅牢な城壁で囲まれている。
しかし今ではレリエストとリリアスを繋ぐ貿易都市として賑わいを見せている。
(うぉ~、でっかい城壁。近くで見ると迫力が違うな)
現在ケントはランドンへ入るための待機列に並んでいる。
もちろん隠密状態は解除してある。
隠密状態で街へ入るとか、怪しすぎるしね。
見つかったら取り押さえられてしまうかもしれない。
とはいえ街へ入るのにそれほど厳重な審査があるわけではないらしい。
商人たちは積み荷の検査があるようだが、それ以外はランドンへ来た目的を流れ作業で聞かれるだけのようだ。
しばらくするとケントの順番が回ってきた。
「ランドンへはどのような目的で?」
(言語理解先生はちゃんと機能しているみたいだな)
「冒険者になるために来ました」
ランドンの北部にはレリエスト王国に3つ存在するダンジョンの内の1つがある。
そのため、ランドンは冒険者たちの集まる冒険者の街でもあるのだ。
「そうですか。ようこそランドンへ」
あっさりと通してもらえた。
通行料を取られるようなこともなかった。
ランドンの街へ入ると大通りが伸びていた。
地面は石畳で舗装されており、人の往来も盛んだ。
通りの両側には2~3階建ての木造の建物が並んでいた。
交通手段が馬車か徒歩のようなので文明レベルは低いかと思ったが、少なくとも建築技術に関しては現代日本にも引けを取らないようにみえる。
魔法やスキルなんてものがあるから、技術形態も異なる進化を遂げているのだろう。
(まずはお昼でも食べようかな)
昼食には少し遅い時間だが、転移してから何も食べていないため体が空腹を訴えていた。
大通りを歩いているとそれらしきお店を見つけたので入ってみた。
昼時ではないせいか客入りはまばらであった。
「いらっしゃい。飯かい、それとも宿のほうかい?」
恰幅のいいおばちゃんが話しかけてきた。
前世では周りにこんな肝っ玉母ちゃんみたいな人いなかったから新鮮だ。
「えっと、ご飯です」
「なら空いている席に座っとくれ」
とりあえず一番奥の席に座ることにした。
「いらっしゃ~い。これがメニューね」
10歳くらいの女の子がメニューを持ってきてくれた。
ライトブルーのふわふわとした髪を肩口でそろえ、笑顔で話す姿は元気をくれる。
メニューを受け取りさっと目を通す。
(どうやら読みのほうも問題ないようだ)
「じゃあこの日替わりっての1つ」
「はーい!おとーさん、日替わり1つ!」
少女の元気な声が店内に響いた。
(どうやら家族で営んでいるみたいだな。さっきのおばちゃんがお母さんで料理を作っているのがお父さんなのかな)
少しすると女の子が料理を運んできた。
「お待たせ~」
「ありがとね」
「いえいえ、ごゆっくりどうぞ」
運ばれてきた料理を見ると丸パンにサラダ、何かの肉を焼いたもののようだ。
(この世界の衛生管理がどの程度か知らないけど、回復魔法あるし大丈夫だろう)
まずサラダから食べてみる。
見たことない野菜だったが、レタスのような触感でかかっていたほのかに酸味のあるドレッシングとの相性も抜群であった。
次に丸パンを食べてみた。
前世の記憶にあるものより少し硬めだったが、味はおいしいし問題はない。
最後にメインの肉だ。
いったい何の肉なんだろう。
鑑定すれば正体がわかるだろうが、もしゲテモノだったら食べるのに躊躇してしまうかもしれない。
思い切って一口食べてみる。
「うまっ!」
思わず声を出してしまった。
シンプルな味付けのその肉は、適度にのった脂が口の中に広がり、程よい噛み応えとともに口の中を楽しませた。
「おいしいでしょ!お父さんの料理は最高だからね~」
「ホントにおいしいよ。びっくりして声出ちゃったし」
父親の料理が褒められてうれしいのか少女は満面の笑みを浮かべていた。
(けどホントにおいしい。確か宿もやっているようなこと言ってたな。ここに泊まってご飯を食べるのもいいかもしれない)
「ちょっといいかな。ここ宿屋もやっているんだよね。今からでも泊まれるかな」
「大丈夫だよ。おか~さん!お客さん泊まってくれるって」
「そうかい!朝晩飯付きで一泊3000ギルだけどいいかい?」
(2食付いて一泊3000か。かなり安いな。日本と同じくらいの物価のはずだけど、価値観の違いなのかな)
「ではとりあえず3泊でお願いします」
「はいよ。昼食と合わせて9600ギルね」
「わかりました」
そういって小金貨を1枚差し出した。
この世界の貨幣は1ギル=銭貨1枚であり、そこから桁が1つ増えるにつれて銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨1枚の価値となる。
金貨の上に白金貨というものがあり、金貨100枚、つまり1000万ギルの価値があるのだが普段庶民の目に触れることはない。
今回の会計は9600ギルなので、銀貨9枚と小銀貨6枚なのだが、女神様からは小金貨5枚の状態でもらったため丁度に払うことはできなかった。
「これお釣りね」
そういって小銀貨4枚を受け取る。
「すぐに部屋を使うかい?」
「いえ、この後まだ用事があるので戻ってきたら声を掛けます。1つ尋ねたいのですが、冒険者ギルドへはどう行ったらいいのでしょう」
常識さんのおかげでランドンに冒険者ギルドがあることはわかっていたが、場所まではわからなかったのだ。
「冒険者ギルドかい。それならこの通りをまっすぐ街の中央に向けて歩いて行けばでっかい建物があるから、すぐわかるはずだよ。看板も出てるしね」
「そうですか。ありがとうございます」
(残りを食べたらさっそく冒険者ギルドへ行ってみるか)
そう思いながら絶品の肉を口へ運ぶのだった。
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