完全無欠少女と振り回される世界~誰かこいつを止めてくれ!!~
30.完全無欠少女、相談!2
「話を遮った。
続けていいぞ」
「それでね、友達がそのおじさんたちから私を守ってくれたの。
ぼろぼろになっても何度も立ち上がって」
ほのかに頬を赤く染めながら、そのときのことを思い出すように話すミエリィ。
「お前は手助けしなかったのか?
友達がぼろぼろになっていたのだろう?
楽しいことが好きなお前にとって、いくらなんでも友達の怪我は楽しいものではないだろう」
「はじめはすぐに眠らせようとしたわ。
でもふと思ったの。
そういえば誰かに守られたことってないなって。
このまま守られてみたいって思っちゃって……」
忙しなく指をいじっているミエリィ。
心なしか頬の赤みも増している気がする。
「それで、守ってもらえた感想は?」
「……すごく嬉しかったわ。
心が温かくなったの。
今だって思い出すだけで幸せな気持ちになるわ」
「ひとつ聞くが、その友達は男か?」
「ええそうよ、よくわかったわね」
……何が世界の崩壊だ。
これではただの恋愛相談ではないか。
なぜ我は執務を放り出して恋愛相談をされているんだ。
そもそもなぜこいつはわざわざ魔王を恋愛相談の相手に選ぶんだ。
「なぜお前はその相談を我にしようと思ったのだ?」
「魔王って強いんでしょう?
学院の講義で習ったわ。
そんな魔王なら私の気持ちを理解できると思って」
確かに今となっては魔族最強の座に君臨しているが、それは何も産まれた瞬間からではない。
幼い頃は怪我もしたし、泣かされもした。
だがそれと同じだけ心配してもらえたし、庇ってももらえた。
ミエリィのいうように一度も守ってもらったことがないというわけではない。
そうか、これも強者故の悩みなのか。
……どう取り繕っても恋愛相談には変わりないが。
「お前の気持ちを完全に理解することはできないが、お前の心が落ち着かない理由は分かった」
「本当に!?
いったい何故なのかしら?」
ミエリィはバンッとテーブルに手をつき、前のめりになって聞いてきた。
こういうことは自分で気がつくのが一番良いと思うが、この天真爛漫な娘が自分で答えにたどり着けるとは思えない。
このまま放っておいたらその友達だという男に突撃しかねないだろう。
それもまた正しい選択なのかもしれないが、それではミエリィが要らぬ恥をかくことになってしまう。
まあ、ミエリィがそんなもの気にするとも思えないが。
「ミエリィ、お前はその男のことが好きなのではないか?」
「ええ、もちろん好きよ!」
「違う、そうではない。
お前の言う好きは友情としての好きであろう。
我が言っているのは異性として好意を抱いているのかということだ」
「異性として……。
う~ん、よくわからないわ」
そうだろうな。
その歳になって自分の気持ちに検討すらつかないのだからそんなものだろう。
見た目ばかり成長して、中身は子供みたいに純粋なミエリィ。
それがこいつの美点でもあるが。
「今すぐわからなくてもいい。
その男と同じ時を重ねていくうちにいずれ分かるようになる」
「そういうものなのね。
なら早速ソリスをお茶に誘ってみるわ!
ありがとう、魔王!」
そう言うや否や転移していなくなるミエリィ。
相変わらず嵐のようなやつだ。
ソリス、か。
その男の身柄を押さえればミエリィをコントロールできるかもしれない。
ミエリィを魔族側に引き込めれば、もはや人族など敵ではないだろう。
そこまで考えてフッと自嘲する。
ミエリィはその程度で御せるような奴ではないな。
それにあいつは我のことを友と呼ぶ。
人族が友だなどとふざけた話だが、不思議と嫌な気はしない。
たとえそれが有効な手段なのだとしても、友の悲しむ顔は見たくないと思っている自分がいる。
ミエリィは不思議なやつだ。
ある日ふらっと現れたと思ったら、いつの間にか城内の者とも打ち解けており、気がついたら茶飲み仲間になっていた。
我は今まで人族は敵だと思っていた。
人族と理解し合うことなどできないと思っていたし、理解しようとも思わなかった。
だがミエリィと出会って、こうして同じテーブルを囲んで話し合うことができることを知った。
もちろん、ミエリィが人族の中では異端な存在であることはわかっている。
普通の人族なら魔族を前にして笑顔をつくることなどないだろう。
しかし、ミエリィを除くと我が知っている人族は戦場で相対した者だけだ。
もしかしたら戦場でなければ、他の人族とも同じテーブルを囲んで話し合うことができるかもしれない。
人族最強といっても過言ではないミエリィですら、恋に悩んでいるのだ。
人族だって魔族とそう変わりないのかもしれない。
わかり合えるのかもしれない。
我も魔族であり、戦うことは好きだが、だからといって戦場で仲間が命を散らすことを良しとするわけではない。
死なずに済む方法があるのならば、その方が良いに決まっている。
ミエリィと出会う前は考えたこともなかったが、勝利以外にも長きに渡る人族との争いに終止符を打つことができる方法があるのかもしれない。
魔王はすっかり冷めてしまった紅茶の最後の一口を飲み干した。
続けていいぞ」
「それでね、友達がそのおじさんたちから私を守ってくれたの。
ぼろぼろになっても何度も立ち上がって」
ほのかに頬を赤く染めながら、そのときのことを思い出すように話すミエリィ。
「お前は手助けしなかったのか?
友達がぼろぼろになっていたのだろう?
楽しいことが好きなお前にとって、いくらなんでも友達の怪我は楽しいものではないだろう」
「はじめはすぐに眠らせようとしたわ。
でもふと思ったの。
そういえば誰かに守られたことってないなって。
このまま守られてみたいって思っちゃって……」
忙しなく指をいじっているミエリィ。
心なしか頬の赤みも増している気がする。
「それで、守ってもらえた感想は?」
「……すごく嬉しかったわ。
心が温かくなったの。
今だって思い出すだけで幸せな気持ちになるわ」
「ひとつ聞くが、その友達は男か?」
「ええそうよ、よくわかったわね」
……何が世界の崩壊だ。
これではただの恋愛相談ではないか。
なぜ我は執務を放り出して恋愛相談をされているんだ。
そもそもなぜこいつはわざわざ魔王を恋愛相談の相手に選ぶんだ。
「なぜお前はその相談を我にしようと思ったのだ?」
「魔王って強いんでしょう?
学院の講義で習ったわ。
そんな魔王なら私の気持ちを理解できると思って」
確かに今となっては魔族最強の座に君臨しているが、それは何も産まれた瞬間からではない。
幼い頃は怪我もしたし、泣かされもした。
だがそれと同じだけ心配してもらえたし、庇ってももらえた。
ミエリィのいうように一度も守ってもらったことがないというわけではない。
そうか、これも強者故の悩みなのか。
……どう取り繕っても恋愛相談には変わりないが。
「お前の気持ちを完全に理解することはできないが、お前の心が落ち着かない理由は分かった」
「本当に!?
いったい何故なのかしら?」
ミエリィはバンッとテーブルに手をつき、前のめりになって聞いてきた。
こういうことは自分で気がつくのが一番良いと思うが、この天真爛漫な娘が自分で答えにたどり着けるとは思えない。
このまま放っておいたらその友達だという男に突撃しかねないだろう。
それもまた正しい選択なのかもしれないが、それではミエリィが要らぬ恥をかくことになってしまう。
まあ、ミエリィがそんなもの気にするとも思えないが。
「ミエリィ、お前はその男のことが好きなのではないか?」
「ええ、もちろん好きよ!」
「違う、そうではない。
お前の言う好きは友情としての好きであろう。
我が言っているのは異性として好意を抱いているのかということだ」
「異性として……。
う~ん、よくわからないわ」
そうだろうな。
その歳になって自分の気持ちに検討すらつかないのだからそんなものだろう。
見た目ばかり成長して、中身は子供みたいに純粋なミエリィ。
それがこいつの美点でもあるが。
「今すぐわからなくてもいい。
その男と同じ時を重ねていくうちにいずれ分かるようになる」
「そういうものなのね。
なら早速ソリスをお茶に誘ってみるわ!
ありがとう、魔王!」
そう言うや否や転移していなくなるミエリィ。
相変わらず嵐のようなやつだ。
ソリス、か。
その男の身柄を押さえればミエリィをコントロールできるかもしれない。
ミエリィを魔族側に引き込めれば、もはや人族など敵ではないだろう。
そこまで考えてフッと自嘲する。
ミエリィはその程度で御せるような奴ではないな。
それにあいつは我のことを友と呼ぶ。
人族が友だなどとふざけた話だが、不思議と嫌な気はしない。
たとえそれが有効な手段なのだとしても、友の悲しむ顔は見たくないと思っている自分がいる。
ミエリィは不思議なやつだ。
ある日ふらっと現れたと思ったら、いつの間にか城内の者とも打ち解けており、気がついたら茶飲み仲間になっていた。
我は今まで人族は敵だと思っていた。
人族と理解し合うことなどできないと思っていたし、理解しようとも思わなかった。
だがミエリィと出会って、こうして同じテーブルを囲んで話し合うことができることを知った。
もちろん、ミエリィが人族の中では異端な存在であることはわかっている。
普通の人族なら魔族を前にして笑顔をつくることなどないだろう。
しかし、ミエリィを除くと我が知っている人族は戦場で相対した者だけだ。
もしかしたら戦場でなければ、他の人族とも同じテーブルを囲んで話し合うことができるかもしれない。
人族最強といっても過言ではないミエリィですら、恋に悩んでいるのだ。
人族だって魔族とそう変わりないのかもしれない。
わかり合えるのかもしれない。
我も魔族であり、戦うことは好きだが、だからといって戦場で仲間が命を散らすことを良しとするわけではない。
死なずに済む方法があるのならば、その方が良いに決まっている。
ミエリィと出会う前は考えたこともなかったが、勝利以外にも長きに渡る人族との争いに終止符を打つことができる方法があるのかもしれない。
魔王はすっかり冷めてしまった紅茶の最後の一口を飲み干した。
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