【完結】好きな人にされたら嬉しい50のコト
Chapter.5
あの日のことが忘れられなくて雨天を待ちながら毎朝起きるけど、今年は空梅雨のようで曇りだったり晴れだったりして、教室で昼食をとる機会がなかなかない。
別に晴れてたって、自分の席なんだからそこにいればいいんだけど、由上さんを待っているのが見え見えで気が引けた。
実際待っちゃうし、もし来なかったらガッカリ感半端ない。
話しかけてくれるの待ってますオーラも出ちゃうだろうし、こないだみたいに気を遣ってもらうのも申し訳ないし。
あと、緊張してご飯がのどを通らないから、緊張が解けたときに感じる空腹感もちょっとつらい。
なんて、出来ない理由を探してしまう性格もなんとかしたいよなーと思いながら屋上の片隅でパンをかじり、一人息を吐く。
昼休みに屋上が解放されていることを知らない人が多いのか、知っているけど魅力に感じないのか、いつ来ても人気がなくて居心地が良い。
コロモとキャベツにソースが滲みてじゅわ美味しいシキシマベーカリーのカツサンドを食べ終えて、ジャスミン茶を飲み一息ついていると、
「わ、ホントにいた」
「ね?」
聞き覚えのある声が二人分聞こえた。見るとそこには……
(由上さん!……と、立川くん……?)
「こんにちは」
「こ、こんにちは……?」
由上さんの挨拶に、疑問符をつけて返事すると、
「ごめんねー、蒼和がどうしてもってさー」立川くんが心なしかニヤニヤしながら言った。
「や、言わないでよ、そういうの」
由上さんは傍らにいる立川くんを手でぺしりと叩きながら軽くにらむ。
「な、なにか、ありました…か?」
「なにかっていうか……トナリ、いい?」
「えっ、は、はい! どうぞ」
横のスペース、鉄柵の土台のコンクリートを手で払って綺麗にする。由上さんは少しビックリして
「ありがとう、大丈夫だよ。ごめんね」
笑顔になって、私の隣に座った。
その光景を見ていた立川くんは、唐突に右手を挙げて言う。「それじゃ」
「うん、サンキュー」
「えっ……!」
立ち去ろうとする立川くんに驚いて声をあげると
「ごめん。俺、カノジョ待たせてるからさ」
出入り口のほうを指さして困ったように笑った。
「あ、そ、そうなんだ……」
立川くんがいてくれないと、会話が成り立たないんじゃないだろうか、なんて心配を察したらしく、立川くんはにこりと笑って
「大丈夫。そいつ見た目より怖くないから」
じゃあねーと手を振って屋上からいなくなった。
えっ、いや、そうじゃなくて、二人だと間が持たないというか、緊張しすぎる……!
少しの沈黙。
なにを話せばいいのか悶々と考えていると、
「一人の時間邪魔してるならどくけど……」
由上さんが、少し不安そうに口を開いた。
「そ、そうじゃないです!」
思っていたより大きな声が出てしまって苦笑した私に由上さんが笑いかけた。
「だったら良かった」
くしゃりと笑ったその顔は、普段見ている由上さんより幼く見えて。
(えっ、カワイイ! まぶしい……!)
あまりの神々しさに、影の存在である私は消されてしまいそうだ。
「こないだせっかく話せたのに、途中で割り込まれちゃったからさ。もう一回しゃべってみたいなーって思ってたんだよね」
由上さんは先ほどまでと変わらぬ笑顔で言った。
えぇー! そんな、私なんかにはもったいないお言葉…! なんて素敵なかた!
「き、恐縮です」
身を縮こまらせた私を見て、由上さんがハハッと笑う。
「天椙さんって丁寧だよね。同級生なんだからタメぐちでいいのに」
「あっ、いえっ……これは、クセなので……」さらに恐縮して気付く。「名前……」
由上さんの名前で呼ばれる自分の名字はなんだか新鮮で、いつも一回で読んでもらえない、覚えられにくくて困っていた名字が少し愛しく思える。
自己紹介できなかった記憶しかないけど、どこで知ってくださったのかな。
「あ、ごめん。三咲…立川から聞いちゃった。勝手にごめん」
「ぜ、全然! ご存じだったことに驚いただけなので」ニコニコ笑う由上さんを見て、ハッと気付く。「す、すみません、敬語……」
さっき“タメぐちでいい”って言われたばかりなのに……私はいつもこうだ。
「ううん? しゃべりやすいならそれでいいんだけど……こわい? オレ」
コトンと首をかしげた仕草はむしろカワイイです! とも言えず……。
「そうではなくて……緊張すると、こうなってしまうんです……」
「緊張……してるの?」
「……はい」
そりゃそうですよ、という言葉を飲み込んで小さくうなずく。
入学してひと月も経たないうちに全校生徒が由上さんの存在を知って、少なからず意識している。それは私も例外じゃない。
“憧れの存在”である由上さんが、こんなに近くでお話してくれてるのが夢のようで、こんなにすんなり話せる自分が信じられなくて……こっそり手の甲をつねってみたら、ちゃんと痛かった。
「由上さん、有名人ですし……」
「それ」
「え?」
「“さん”付けもヨソヨソしい」
私を見つめて、由上さんが少しふくれた。
「じゃ、じゃあ、由上、くん」
「うん。で、慣れたら“蒼和”でいいよ」
「な、慣れたら……」
「うん」
慣れるほどお話しできるかな……疑問に思うけれど、「わ、わかり、ました」ここは素直にうなずいてみる。
由上くんは嬉しそうに「うん」うなずいた。
「今日も“コマゴメベーカリー”?」
由上くんが逆サイドに置いてある紙袋をのぞき込んだ。
「はい」
「オレもこないだ行ってみたんだ」
「えっ」
「天椙さんおすすめのオニオングラタンスープパン? 食べてみたくて」
「! はい!」
「めっちゃ旨いね! あれ」
由上くんの褒め言葉を聞いて、自分が褒められたかのように嬉しくなった。
「そうなんです! 硬いパンと一緒にフィリングを噛みしめると、口の中で本当にオニオングラタンスープみたいになって……」数日前にも食べたそのパンの味を思い出して、さっきまで食べていたカツサンドの味が、記憶から呼び起こされた味に塗り替えられる。「コマゴメさんはどのパンも美味しくて、毎月新作も出してくださって、なのに朝はそこまで混んでない穴場で……」思わず熱弁してハッと気付く。「す、すみません! 私ばっかり……」
隣に座る由上くんは、そんなことは構わずに私の話をニコニコと聞いてくれていた。
「全然? めっちゃお気に入りなんだね」
「はい」
「いいお店教えてもらえたなーってオレも嬉しくてさ。いざ行ってみたら品揃え良くて目移りしちゃった」
ヘヘッと子供みたいに由上くんが笑う。
「またおすすめあったら教えて? オレも見つけたら教える」
「はい、ぜひ!」
二人でえへーって笑ったら、タイミングを見計らったかのように予鈴が鳴った。
「「あ」」
二人の声が重なる。
「教室戻らないと」
「そうですね……」
傍らに置いていた紙袋を持って立ち上がる。由上くんも一緒になって教室に戻ろうとしてくれるけど……。
「私、あとから戻るので、由上くんお先にどうぞ」
「え? トナリのクラスなんだし、一緒に戻ろうよ」
ありがたい申し出だけど、私は小さく首を振った。
「誰かに見られて噂されたら、申し訳ないので……」
しかも相手がこんなモブみたいなやつだし、きっとみんな納得しない。
浮かべた苦笑いを見られたくなくて、少しうつむく。
「……そう、だね。迷惑かけても悪いし……じゃあ、先戻ってる。また機会があったら声かけていい?」
顔をのぞき込むように首をかしげた由上くんに、私はぶんぶん首を縦に振った。
「はい、ぜひ」
「うん。じゃあまた……確実なのは美術の時間かな?」
「っ、はい!」
覚えてもらえてたことが意外で、私は目を丸くする。
その反応に由上くんはまた少し笑った。
私もつられて微笑んで、隣に立つ由上くんを少し見上げる。
両耳に光るピアス。左右で違うデザインのゴールドピアスは、由上くんの白い肌に良く似合う。
なんだか不思議な感覚。いつもは遠巻きに眺めているだけの“憧れの人”が、すぐそばで私を見てくれている。
少しだけ佇んで、バイバイ、と手を振って、由上くんは屋上をあとにした。なんだか胸がいっぱいで、屋上に一人、しばらく立ち尽くす。
午後の授業があるからあまりゆっくりはしていられなくて、由上くんがいなくなった数分後には私も教室に向かった。多分同じルートを通っているはずだけど、由上くんの姿はもう見えない。
いつか並んで歩ける日が来るかな……。
淡い期待を抱きながら由上くんのクラスの前を通りかかる。
窓の外から見た教室内。由上くんはクラスメイトに囲まれて、残り少ない昼休みを過ごしていた。
さっきまで独り占めしていたのが嘘みたいだ。
嬉しくて、なんだか鼻歌を歌いたい気分になった。
いつもは眠たいお昼ご飯あとの数学も、今日はなんだか前向きに取り組めた。
* * *
いま思い出しても顔がニヤけてしまう。
この日初めて、由上さんと二人きりでおしゃべりした。
慣れない“くん”付けは結局“さん”付けに戻ってしまって、それはいまでも続いている。
何回か指摘されているけどどうしても直すことができなくて、由上さんももう慣れてしまったみたいだ。
その“慣れ”すら嬉しく思える。初恋……なんだろうか。
誰かを好きになったことがないから良くわからない。それでも、家族以外で初めて、大切にしたいと思える人ができた。それが嬉しかった。
ページをめくって四角を塗りつぶす。
■顔をのぞきこんでくる
■かまってくれる
■手を振ってバイバイしてくれる
すごい、一気にみっつも。
ぽんやりと過ごしていたようで、案外交流持ててたんだな、と実感する。日記書いてて、チェックリスト作って良かった。
可視化するって大事なんだな、勉強のときの参考にもなりそうだなと思いつつ日記のページをめくった。
* * *
別に晴れてたって、自分の席なんだからそこにいればいいんだけど、由上さんを待っているのが見え見えで気が引けた。
実際待っちゃうし、もし来なかったらガッカリ感半端ない。
話しかけてくれるの待ってますオーラも出ちゃうだろうし、こないだみたいに気を遣ってもらうのも申し訳ないし。
あと、緊張してご飯がのどを通らないから、緊張が解けたときに感じる空腹感もちょっとつらい。
なんて、出来ない理由を探してしまう性格もなんとかしたいよなーと思いながら屋上の片隅でパンをかじり、一人息を吐く。
昼休みに屋上が解放されていることを知らない人が多いのか、知っているけど魅力に感じないのか、いつ来ても人気がなくて居心地が良い。
コロモとキャベツにソースが滲みてじゅわ美味しいシキシマベーカリーのカツサンドを食べ終えて、ジャスミン茶を飲み一息ついていると、
「わ、ホントにいた」
「ね?」
聞き覚えのある声が二人分聞こえた。見るとそこには……
(由上さん!……と、立川くん……?)
「こんにちは」
「こ、こんにちは……?」
由上さんの挨拶に、疑問符をつけて返事すると、
「ごめんねー、蒼和がどうしてもってさー」立川くんが心なしかニヤニヤしながら言った。
「や、言わないでよ、そういうの」
由上さんは傍らにいる立川くんを手でぺしりと叩きながら軽くにらむ。
「な、なにか、ありました…か?」
「なにかっていうか……トナリ、いい?」
「えっ、は、はい! どうぞ」
横のスペース、鉄柵の土台のコンクリートを手で払って綺麗にする。由上さんは少しビックリして
「ありがとう、大丈夫だよ。ごめんね」
笑顔になって、私の隣に座った。
その光景を見ていた立川くんは、唐突に右手を挙げて言う。「それじゃ」
「うん、サンキュー」
「えっ……!」
立ち去ろうとする立川くんに驚いて声をあげると
「ごめん。俺、カノジョ待たせてるからさ」
出入り口のほうを指さして困ったように笑った。
「あ、そ、そうなんだ……」
立川くんがいてくれないと、会話が成り立たないんじゃないだろうか、なんて心配を察したらしく、立川くんはにこりと笑って
「大丈夫。そいつ見た目より怖くないから」
じゃあねーと手を振って屋上からいなくなった。
えっ、いや、そうじゃなくて、二人だと間が持たないというか、緊張しすぎる……!
少しの沈黙。
なにを話せばいいのか悶々と考えていると、
「一人の時間邪魔してるならどくけど……」
由上さんが、少し不安そうに口を開いた。
「そ、そうじゃないです!」
思っていたより大きな声が出てしまって苦笑した私に由上さんが笑いかけた。
「だったら良かった」
くしゃりと笑ったその顔は、普段見ている由上さんより幼く見えて。
(えっ、カワイイ! まぶしい……!)
あまりの神々しさに、影の存在である私は消されてしまいそうだ。
「こないだせっかく話せたのに、途中で割り込まれちゃったからさ。もう一回しゃべってみたいなーって思ってたんだよね」
由上さんは先ほどまでと変わらぬ笑顔で言った。
えぇー! そんな、私なんかにはもったいないお言葉…! なんて素敵なかた!
「き、恐縮です」
身を縮こまらせた私を見て、由上さんがハハッと笑う。
「天椙さんって丁寧だよね。同級生なんだからタメぐちでいいのに」
「あっ、いえっ……これは、クセなので……」さらに恐縮して気付く。「名前……」
由上さんの名前で呼ばれる自分の名字はなんだか新鮮で、いつも一回で読んでもらえない、覚えられにくくて困っていた名字が少し愛しく思える。
自己紹介できなかった記憶しかないけど、どこで知ってくださったのかな。
「あ、ごめん。三咲…立川から聞いちゃった。勝手にごめん」
「ぜ、全然! ご存じだったことに驚いただけなので」ニコニコ笑う由上さんを見て、ハッと気付く。「す、すみません、敬語……」
さっき“タメぐちでいい”って言われたばかりなのに……私はいつもこうだ。
「ううん? しゃべりやすいならそれでいいんだけど……こわい? オレ」
コトンと首をかしげた仕草はむしろカワイイです! とも言えず……。
「そうではなくて……緊張すると、こうなってしまうんです……」
「緊張……してるの?」
「……はい」
そりゃそうですよ、という言葉を飲み込んで小さくうなずく。
入学してひと月も経たないうちに全校生徒が由上さんの存在を知って、少なからず意識している。それは私も例外じゃない。
“憧れの存在”である由上さんが、こんなに近くでお話してくれてるのが夢のようで、こんなにすんなり話せる自分が信じられなくて……こっそり手の甲をつねってみたら、ちゃんと痛かった。
「由上さん、有名人ですし……」
「それ」
「え?」
「“さん”付けもヨソヨソしい」
私を見つめて、由上さんが少しふくれた。
「じゃ、じゃあ、由上、くん」
「うん。で、慣れたら“蒼和”でいいよ」
「な、慣れたら……」
「うん」
慣れるほどお話しできるかな……疑問に思うけれど、「わ、わかり、ました」ここは素直にうなずいてみる。
由上くんは嬉しそうに「うん」うなずいた。
「今日も“コマゴメベーカリー”?」
由上くんが逆サイドに置いてある紙袋をのぞき込んだ。
「はい」
「オレもこないだ行ってみたんだ」
「えっ」
「天椙さんおすすめのオニオングラタンスープパン? 食べてみたくて」
「! はい!」
「めっちゃ旨いね! あれ」
由上くんの褒め言葉を聞いて、自分が褒められたかのように嬉しくなった。
「そうなんです! 硬いパンと一緒にフィリングを噛みしめると、口の中で本当にオニオングラタンスープみたいになって……」数日前にも食べたそのパンの味を思い出して、さっきまで食べていたカツサンドの味が、記憶から呼び起こされた味に塗り替えられる。「コマゴメさんはどのパンも美味しくて、毎月新作も出してくださって、なのに朝はそこまで混んでない穴場で……」思わず熱弁してハッと気付く。「す、すみません! 私ばっかり……」
隣に座る由上くんは、そんなことは構わずに私の話をニコニコと聞いてくれていた。
「全然? めっちゃお気に入りなんだね」
「はい」
「いいお店教えてもらえたなーってオレも嬉しくてさ。いざ行ってみたら品揃え良くて目移りしちゃった」
ヘヘッと子供みたいに由上くんが笑う。
「またおすすめあったら教えて? オレも見つけたら教える」
「はい、ぜひ!」
二人でえへーって笑ったら、タイミングを見計らったかのように予鈴が鳴った。
「「あ」」
二人の声が重なる。
「教室戻らないと」
「そうですね……」
傍らに置いていた紙袋を持って立ち上がる。由上くんも一緒になって教室に戻ろうとしてくれるけど……。
「私、あとから戻るので、由上くんお先にどうぞ」
「え? トナリのクラスなんだし、一緒に戻ろうよ」
ありがたい申し出だけど、私は小さく首を振った。
「誰かに見られて噂されたら、申し訳ないので……」
しかも相手がこんなモブみたいなやつだし、きっとみんな納得しない。
浮かべた苦笑いを見られたくなくて、少しうつむく。
「……そう、だね。迷惑かけても悪いし……じゃあ、先戻ってる。また機会があったら声かけていい?」
顔をのぞき込むように首をかしげた由上くんに、私はぶんぶん首を縦に振った。
「はい、ぜひ」
「うん。じゃあまた……確実なのは美術の時間かな?」
「っ、はい!」
覚えてもらえてたことが意外で、私は目を丸くする。
その反応に由上くんはまた少し笑った。
私もつられて微笑んで、隣に立つ由上くんを少し見上げる。
両耳に光るピアス。左右で違うデザインのゴールドピアスは、由上くんの白い肌に良く似合う。
なんだか不思議な感覚。いつもは遠巻きに眺めているだけの“憧れの人”が、すぐそばで私を見てくれている。
少しだけ佇んで、バイバイ、と手を振って、由上くんは屋上をあとにした。なんだか胸がいっぱいで、屋上に一人、しばらく立ち尽くす。
午後の授業があるからあまりゆっくりはしていられなくて、由上くんがいなくなった数分後には私も教室に向かった。多分同じルートを通っているはずだけど、由上くんの姿はもう見えない。
いつか並んで歩ける日が来るかな……。
淡い期待を抱きながら由上くんのクラスの前を通りかかる。
窓の外から見た教室内。由上くんはクラスメイトに囲まれて、残り少ない昼休みを過ごしていた。
さっきまで独り占めしていたのが嘘みたいだ。
嬉しくて、なんだか鼻歌を歌いたい気分になった。
いつもは眠たいお昼ご飯あとの数学も、今日はなんだか前向きに取り組めた。
* * *
いま思い出しても顔がニヤけてしまう。
この日初めて、由上さんと二人きりでおしゃべりした。
慣れない“くん”付けは結局“さん”付けに戻ってしまって、それはいまでも続いている。
何回か指摘されているけどどうしても直すことができなくて、由上さんももう慣れてしまったみたいだ。
その“慣れ”すら嬉しく思える。初恋……なんだろうか。
誰かを好きになったことがないから良くわからない。それでも、家族以外で初めて、大切にしたいと思える人ができた。それが嬉しかった。
ページをめくって四角を塗りつぶす。
■顔をのぞきこんでくる
■かまってくれる
■手を振ってバイバイしてくれる
すごい、一気にみっつも。
ぽんやりと過ごしていたようで、案外交流持ててたんだな、と実感する。日記書いてて、チェックリスト作って良かった。
可視化するって大事なんだな、勉強のときの参考にもなりそうだなと思いつつ日記のページをめくった。
* * *
「恋愛」の人気作品
書籍化作品
-
-
111
-
-
147
-
-
2
-
-
26950
-
-
4405
-
-
55
-
-
841
-
-
93
-
-
4112
コメント