元最強のおっさんすべて失ったけどもう一回世界荒らします
嘘つけ
仮面での変身が解除される、解除した瞬間どっときた肉体の疲労と心の消耗で、つい座り込んでしまう。人を殺したのは久しぶりだ、ドーパミンが切れた今、殺したときの触感と罪悪感が思い浮かぶ。返り血で血に染まった手を見て最後の赤井の一言を思い出す、それが俺の決心したはずの俺の意思を揺さぶる。クソ、最悪の気分だ。最後まで俺を憎むいやなやつでいてくれれば俺の心はどんなに楽だっただろうか。
「やれたみたいですね、それにしてもすごかったですよ、まるで鬼神って感じでした」
消えた炎の壁の裏から綾瀬が出てきた。確かにあの仮面はすさまじい力を取り戻させてくれた、しかしその分疲れも激しいようだ。
「死体はこちらで処理しておきます、お疲れでしょうし家に帰って休んでください」
「悪い、結局罠だった....なんでもするって誓ったっていったのにな...」
「別に大丈夫ですよ、むしろあのまま仲間にするのもリスクが付いて回ったでしょうし、状況としては今は悪くないです」
「ああ、そうかい、俺も今回の件でここに俺の味方なんて残っていないってわかったよ」
自分で言ってて悲しくなる、唐突に今の自分の人生を振り返った、そして悲壮感に襲われる、
「俺って本当、シック以外なにもなかったんだな」
ついネガティブな発言を口にしてしまう、それほどに今回の件は俺の心に堪えるものだった。もうだれも信用したくない。手で顔を覆う、泣きそうだ。
ギュッ
そんな俺をいきなり、抱きしめてきた。心と体に大きなダメージを受けた俺には効きすぎる抱擁だった。
「大丈夫ですよ、私だけは味方です」
耳元で囁くようにつぶやく、彼女のやさしさについ涙ぐみそうになり唇をかみしめる。でもきっとこれも嘘なんだろう、俺を最後まで働かせるためについた嘘。綾瀬が使いそうな手段だ。
「嘘つけ、俺は騙されないぞ、そうやっていろんな男をだましてきたんだろ」
「嘘じゃないですよ、これだけは絶対本当です、佐山さん以外のすべてが敵になったとしても私だけはあなたの味方をします、あなたが依頼を受けた時点であなたがどんなことをしてでも取り戻すと誓ったように私もあなたと死ぬ覚悟をしてここにきていますしね」
「・・ありがとう」
真田もきっとこんな気持ちだったんだろう。弱っているときにそばにいられるだけでこんなに心揺れ動くものなのか。彼女は俺の横で俺の心をつかみほくそ笑んでいるのかもしれない、無様に手中に収められた俺を笑っているのかもしれない、ついこの前会っただけの女がこんなことを言うはずがない、絶対に嘘だ、でもそれでもいい、今だけはこのぬくもりを感じたいとそう思った。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
俺は空元気で叫びつつ立ち上がった。
「ええ!?落ち込んでいたんじゃなかったんですか?!」
「佐山伊吹様復活!なわけないだろ!この俺が!この程度で!」
危ない、あのまま彼女の胸の中にいたら本当に落ちているところだった。
「はあ、でも元気ならよかったです、ここで立ち止まっていられるわけにもいかないですし」
彼女はいつもの笑顔にもどった。
「当たり前だ!俺は帰るぞ、帰って、シコって、寝る!」
「なんでしょうね、最近どんどん傲慢というか強欲というかデリカシーがないというか」
「素直って言ってほしいなぁ!」
今回ばかりは彼女に感謝しなければ、綾瀬がいなかったら俺の心は当分折れたままだっただろう。
綾瀬は話に区切りをつけるためこほんと咳ばらいをした。
「あ、そういえば頼まれていた明後日に戦う神童さんの情報です、かなり強いらしいので気を付けてください」
「・・・・あーーー何も考えてないわ、めんどくせえなー」
綾瀬から渡された資料の一枚目には金髪のかわいい女の子の立ち姿映っていた。髪の長さはロングボブくらいだろうか背中にはギターケースを背負っており、イヤホンをしている。どうやら髪を染めているようで少し黒色も混じっている、にじみ出るヤンキー感、てか結構胸ありますね、DいやEはあるな、これはたしかに神童ですね~
「ずっと写真だけ見てないで次のページの名前見てくださいよ、面白いことがわかりました」
「名前はぁ、立花唯って立花?!」
驚きのあまり、つい大きな声を出してしまった。
「はい、孫らしいですよってすごい悪い顔してますよ」
「ククク、天運我にあり!完璧な作戦をみせてやる」
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