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ダブル・デザイア 〜最強の力は神をも超える〜

真心の里

戦争の予感(レイド編・シン編)

 ヴリドラの背中に乗ったレイド達を出迎えるように隠れ家からルージュとジャックが出てきた。
 ジャックには傷が多少なりともあり、多少疲弊している様子が見られた。




「お帰りレイド、随分とノーム国に手間取ったみたいだね」




 ジャックと同じく傷が少しあるが疲弊していない様子でルーゅが笑いながらレイドに言葉を投げかけた。




「そう言うお前も重役を襲撃するだけで随分とやられたようだが……」


「はははは、いやー流石に神玉があれだけいると逃げるに専念したとはいえダメージ負うのは仕方ないって感じ」




 レイドの返答に笑いながら説明を加えるルージュ。
 その言葉を聞いたレイドは少し雰囲気が変わり、質問を投げかける。




「……何人だ?」




 レイドの殺気が混じった声に近くにいた鳥たちが一斉に羽ばたき、隠れ家から逃げ始めた。
 その鳥の中には逃げることもできずに気絶している者までいた。




「重傷のアニムスの前でその殺気はやめた方が良いと思うよ、レイド」




 ルージュとレイドの会話の間にも仲間の中で最も危ない状態のアニムスが人間化したヴリドラの手によって運ばれていた。




「いかに僕達が頑丈とはいえあそこまでのダメージを負って君の殺気を受けたら万が一があるからね」


「……」




 レイドはルージュの言葉に納得しさっきを押さえながら心を落ち着かせていった。




「すまなかった、少し乱した」


「謝るのは僕にじゃないよ、アニムスが起きたらまずあの子に言ってあげな、生きてくれてありがとうって」


「あぁ……そうするよ」




 自分の行いに反省したレイドは少し暗い顔をしていた。




「それは置いといて、神玉使いの人数だっけ? 予想通りの人数がいた、シンとクルスを除いて4人だよ」


「4人とも重役の場所に控えていたのか?」


「そうだね、探知したときは常に重役の後ろに控えていたって感じ、あれだけ守りに徹されちゃ僕たちもなすすべなしって感じ」


「……てことはジャックはあれ、使ってないよな?」


「今回の仕事は重役の殺害とはいえイレギュラーが起こったらすぐに撤退っていう指示があったからね、少し迷ってはいたけど使ってないよ」


「それはよかった」


「それにあれ使ってたらあれぐらいの傷じゃすまないはず、いまごろベットの上で寝ているよ」


「それもそうだな」




 緊張感のある会話から一変したゆるい空気。
 レイドとルージュが笑いながらそう言いあった。




「アニムスと君がそこまでやられるなんてね、想像以上の力を相手2人も持っているみたいだね」


「……クルスは大かた予想以上ではあったが想定の範囲内だった、だが一番の誤算はシンの力だ」


「僕があった時じゃ今のアニムスが負けるような相手ではないと思ったんだけど」


「俺も最初にあった時のままの成長ならばアニムスが苦戦はするものの勝つだろうと予想していた、それはアニムス自身もそうだと言っていた。だが、シンの成長の仕方は異質だ……クルスがアニムスやジャックのように才能のある神玉使いと同じ成長の方向性だったのは想像通りだったが、シンはどちらかと言えば俺側の成長の仕方だ」


「戦力的には一番警戒すべきはクルスにしていたけどそんな事は無くなったって感じかな」


「そうだな、シンの強さは今の時点でも人間側で最も脅威と言っても過言ではない、しかも俺の眼が間違っていなければシンはまだ力を使いこなしきれていないように感じた」


「アニムスが倒されるほどの力を持ちながらまだ神玉を完全に扱いきれていない……随分と評価するんだね」


「敵は予想以上に強大で一筋縄でいかなくなったってことだけだ、俺達の勝ちは揺るがない。仲間が信じてくれる俺がいる限り」


「……それは頼もしいね、そんな大切な大切な君もそろそろ限界じゃない?」




 ルージュの言葉と同時に視界がフラフラと揺れ始めたレイドは笑みを浮かべながら言葉を投げる。




「ごまかしは通用しないか……」


「他の仲間も気が付いていると思うよ、君が無茶したことも含めて」


「はっ……やっぱりお前らだけは騙せねぇな……」




 そう言いながらレイドは重力に逆らうのをやめ静かに体を倒していった。
 地面に体がぶつかる前にルージュがレイドの体を支え、そのまま隠れ家へとはいって行った。






 ◆






「今回の会議襲撃で分かったはずだ、相手は神玉使い、普通の一般騎士程度が相手できるような存在じゃない。奴らに対抗できるのは同じ神玉使いだけだと言う事が」




 元神玉反対派の重役や国の軍事関係の重役が勢ぞろいした会議室で来るがそう言い放つ。
 そのクルスの言葉に反応して、魔道具国家アイロンの軍の重役の後ろから銀と黒のメッシュの男が現れた。




「奴らの狙いは俺達神玉使いが持つ神玉なのだろう? 俺達が出てしまっては奴らの思うつぼではないのか?」


「確かにレイド達の狙いは俺達の持つ神玉使いの神玉だ、だがもし俺達が出ないとしても状況が悪化するだけだ。奴らは神玉使いの俺達が出ざるおえない状況を作り出すだろう。それこそ金属の神玉使いガーベ・メタル、お前なんかは一番最初に国の為に出るしかないだろう?」


「……なるほど、どちらにせよこうなった以上は俺達がでなかればいけないと言うことか」




 ガーベがクルスの言葉に納得すると元いた重役の後ろへと下がって行った。




「最初に言った通り俺達が出る以外に人間側の勝ちは無い、俺達が奴らを倒さなければあっという間に人類は滅ぼされる」


「ねぇねぇ、僕も質問していいかな?」




 獣人共和国の重役の横に座る金髪の幼い少年が元気に手を上げながらそう言った。




「元々、レイドって人たちの作戦は僕らを倒せることが前提で成り立っているわけでしょ? それだけの自信があるってことは僕達が今回出ても倒されるだけじゃないの?」


「レイド達の作戦は俺達を単独で見た場合だ、奴の力量なら単独で動いている神玉使いを倒すのは可能だろう。だが俺達をほぼ確実に倒す事が出来るのはただ一人だけだ。他の奴らはそいつほどの力はもちあわせていない」


「魔法使い同士で戦った場合にも相性があるように神玉使いにも相性がある。例えば雷の神玉使いの君、カシュー・トールならジャックとぶつけるのが相性が良い。他にもここに集まっているもので相手との相性を上手く考えれば十分に勝機はある」




 クルスの言葉につけたすように隣に座っているシンが言葉を吐いた。
 その言葉に納得したのかカシューはにこにこしながらポッケから出したおもちゃで遊び始めた。




「シン、クルス、俺も質問があるんだがいいか?」




 聖都エクスの重役でありながら神玉使いでもあるアーサーが手を上げて二人に聞く。
 二人は当然と言った様子に頷き質問を待つ。




「事前に話していた魔道兵はどうするつもりだ? チャーラの話だと数は大体3000体で強さは訓練された騎士、つまり国が出す最大の軍事戦力を持つ者と同レベルが5人で一体に勝つかどうかなんだろう? 人間連合に参加してくれた国は風の国、俺達エクス、魔道具国家アイロン、獣人共和国、亜人連盟だけだ。他の国の奴らは他の国で問題を抱えているからな参加できないのは仕方あるまい。だがこの六カ国で騎士レベルの者を集めた所で3000人が限度だ……神玉以前の問題で負けじゃないか?」


「その事に関してだがチャーラさんが見た魔道兵の強さは多分理想形の姿の話だ、確かに魔道兵の理想形ならばそれほどの力を持ち合せてはいるが理想形に達せる程の技術はまだあちらには持ち合せていないはずだ。さらにその魔道兵の素材となる特級魔石には俺が細工しておいた」


「……その言葉信じていいんだな?」


「あぁ、信じてくれと言うしかない」


「私からもお願いする」




 エクスの言葉に反応してシンが頭を下げると、その隣にいたチャーラも同じく頭を下げた。
 その二人を見たエクスは少し口角を上げて発言をする。




「すまない、頭を上げてくれ。お前達の事は当然信じているさ、ただ確実に死ぬような場所に俺の国の奴らを出すわけにはいかなかったからな。確認させてもらっただけだ。それにシンには俺の秘密を分かっていても黙っていてくれる恩があるからね、従うよ」




 そのエクスの笑顔によって重苦しかった会議場の空気が少しだけ明るくなった。
 そんな空気の中で亜人連盟の重役の横に待機していた眼鏡をかけた深緑髪の青年が発言した。




「君達、少し見逃している事はないかい?」


「質問があるなら応えるぞ、緑の神玉使いジール・クロノス」


「魔道兵の事は納得したが、神玉使いの件だ。相性があるとは言ったがどうやってこっちにとって相性のいい相手と戦う事が本当にできるのか? 今までならこちら側にだけ未来の見る事が出来る星の瞳があったが敵側にも同じ物があるのだろう? それではいたちごっこにならないか?」


「確かに相手のアニムスにも私と同じ力が出現しているのは想定外だったけど、分かっているなら対処はできる。星の瞳の扱いに関してはアニムスより私の方がはるかに慣れてる。だから妨害に専念すれば相手はこっちの未来は見えないよ」


「しかしそれは専念した場合だろう? こっちも未来が見えないのならば運になってしまうではないか」


「それに関してはシンがいるから大丈夫だ」




 ジールの疑問に答えるようにクルスが横に入って答える。




「シンも星の瞳を持っているということか?」


「いや、俺は星の瞳を持っていない。だが今の俺なら星の瞳ほどではないにしろある程度の未来は見る事が出来る」


「何の証拠もないお前の力を私達に信じろ、ということか?」


「人間側はどちらかと言えば追い込まれている側だ、その証拠もない力を信じるしか方法がないんじゃないのか?」




 少し圧をかけながらシンがそう言うと、ジールは額に少し汗を流して顔をそらした。




「……そ、それもそうだな」




 やはりアニムスとの戦いをしてからシンの雰囲気が少し変わっている。
 あのときよりはまだ前に近いがさっきの圧も前のシンにはないくらい雰囲気を纏っていた。
 これが吉と出るか凶と出るか……どちらにせよシンがいなきゃ俺達は負けだ、賭けるしかないな




「ジール、質問はそれだけか? 神玉使いとしての訓練もしなくてはならないからな、チャーラは戦線に出れない以上、一対一で勝てるような力をつけてもらう必要がある」


「その相性の話は別に運で何とかなる以上そこまで問題視していなかった……私が本当に大丈夫かと思っているのはレイドの件だ」


「……」




 ジールが額の汗を拭いて振り向きながら話を始めた。
 レイドの名前が出た瞬間、クルスの顔が険しくなった。




「相手はジャック、グレイヴ、アニムス、ルージュ、ヴリドラ、レイドの六人、こっちも六人だ。つまり全員一対一で戦うことになる。もともとクルスとシンが戦う予定だったが今回の妨害戦でレイドに負けたのだろう? シンも勝てる可能性の方が少ないと報告していた。レイドが抑えられなければ他の奴らを押さえたとしても全てひっくり返されるぞ」


「その通りだ、レイドの相手は一人じゃ無理だ。一人だと勝つ可能性はよくて5%、それ以下かもしれない」


「その5%に人類の命運をかけろ、それしか方法がないと言うつもりか……?」


「いや、そんなほぼ負け戦みたいな状態でやり合うつもりはない、こっちにも作戦はある」


「その作戦というのは……?」


「レイドの相手は一対一じゃシンでも俺でも無理だ、だからシンと俺が同時にレイドを相手する。それならば勝てる見込みは十分にある」


「シンかクルスが相手する予定だったヴリドラはどうするつもりだ? レイドほどではないにしろ奴は竜族ではなく龍族なんだろ? 誰が相手するんだ?」


「シン経由で新しく参加している国がある。中央都市ジュエリニアだ。そしてここにはいないが新しく生まれた神玉使いがジュエリニアにはいる。そいつの戦闘能力は俺とシンのお墨付きだ。そいつがヴリドラの相手をする」


「……」




 部屋の中に少しの沈黙が流れる。
 その沈黙を破ったのは沈黙を作り出したジールだった。




「ここまで策を出してくれたんだ、私達はお前たちに従おう」




 ジールは固い雰囲気から物腰柔らかい雰囲気に変わりそう言った。

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