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ダブル・デザイア 〜最強の力は神をも超える〜

真心の里

油断(シン編・レイド編)



レイドとクルスが殺意をむき出しにして対峙している。
ダメージが大きいのは明らかにレイドだが、クルスにはどこか余裕がないように見えた。




「どうした? こんなにもダメージの差があるのに攻めてこないのか?」


「……最初に言っただろ? 今回の目的はお前の足止めだって、倒す事が目的じゃない」


「ふん……少し状況が変わった程度で怖じ気づくか……」




レイドがクルスを馬鹿にするかのように言葉を放つ。
その言葉で眉間に少ししわを寄せるも、微動だにしない。






レイドの言う通り、俺が想定していた状況とは少し違う。
だが奴のダメージは相当なはずだ、俺の優位に変わりは無い。
しかし、俺が警戒しているのは奴の余裕だ。
奴の方がいまだに不利だと言うことは奴も分かっているはずだ、なのにもかかわらず奴には明らかな余裕がある。
まだ奥の手を隠していると考えるのが妥当だ……想定していた状況が変わった以上、むやみに攻め込むのはリスクが高い。
ここでレイドを倒すのは諦めた方がよさそうだな。もう一度、体勢を立て直し、仲間を連れて戦うのが得策か……






「……でもよ」




クルスが下を見ながら小さく呟く。
全身からは緑のオーラがあふれ出し、風が吹きだした。




「ここで保身考えてるような奴に、国の王は務まらねぇ!」




クルスが風刀を片手で持ち、空いている手に魔力を集めた。
戦闘態勢に入ったクルスを見て、レイドは笑みをこぼした。




「反逆の力、今こそ力を解放しろ、【勇者解放】」




レイドの体から禍々しいオーラがあふれ出し、周りの動物だけでなく植物までもが暴れているようだった。
その威圧感にも恐れることなくクルスはレイドに近寄る。




「風精霊剣技【二枚風】」


「上級剣技【燕返し】」




風に刃を乗せながら一瞬とも言える短い時間で二回攻撃を仕掛けた。
一発目の攻撃を受け流した勢いのまま、反撃するような形で二発目の攻撃を軽く防いだ。
しかし、防がれたと言うのにもかかわらずクルスはどこか笑っているようにも見えた。




「同じ攻撃を二度もくらうと思ったか?」




そう言いながら、レイドはクルスと距離を取った。




「精神体への攻撃、魔力の痕跡もない上に不可視の攻撃……回避不可能な攻撃に近いが、不可能なわけではない。剣を振ったと同時に攻撃が放たれるなら避けることはできる」


「……結構スキルについて知っているんだな」


「いや、知らなかったさ……つい、さっきまでな」




レイドが右手に持っている剣に全身を覆っているオーラが移る。
その様子を見たクルスが少し警戒心を高めた。




「そっちも隠している者がいくつかあると言ったところか……」


「お前と違ってこれからいろんな奴と戦うからな、手数が多い方が良いだろう?」


「安心しろ、お前の相手は俺が最後だ、出し惜しみしてたらせっかく覚えた芸が意味無くなってしまうぞ」


「その傲慢な態度、人間の王は全員身の程が分かっていないらしいな」




レイドが不敵な笑みを浮かべた瞬間、クルスに悪寒が走った。
異様なまでの嫌な雰囲気がレイドの周りを包み込んだ。




「愚かなるものが、制裁を加えるときが来た、目の前の敵を……『ピリリリリリリリ』」




詠唱を唱えていくうちに嫌な雰囲気はより濃い物となる。
しかし、途中で詠唱をさえぎるようにレイドのポケットから何か音が鳴る。




「チッ……時間切れか」




レイドは舌打ちをしながら、垂れ流していた嫌な雰囲気を体の中にしまった。
そして、剣を鞘におさめ、クルスに背中を向けた。




「いきなりどうした? 怖じ気づいたのか?」


「……今すぐ自分の拠点に帰るんだな、そうしたら状況が分かる」


「何だと……?」


「お前達が連合を作るのは別に予想外ではない」


「でたらめをいうな、俺が連合を作ったと言ったときに驚きを隠せていなかった」


「あぁ……確かに驚いたさ、星の瞳の精度の高さにな」




顔が見えずともレイドが笑みを浮かべているのは声色で分かった。




「ヒントを与えてやろう……星の瞳を持っているのはお前ら側だけではない」






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想像以上の成長だな……ここ数年で俺もかなり成長したつもりだったが、逆に実力の差を埋められているとは。
チャーラさんの能力で神玉を得たのは知っていたし、能力値も高くなっていたのはわかっていたが……






呼吸を乱しながらアニムスから隠れるようにシンは木の後ろにいた。
少し顔を出して回りを確認するように視線を動かす。




「上級闇魔法【暗刃】」




正面からどことなく突発的に出現した、黒い刃が木を切り倒しながらシンに向かっていく。
その攻撃に気がついたシンはすぐにその場から離れ、攻撃を回避した。




「闇の神玉がここまで厄介だとはな……」




何処にも姿が無いアニムスを警戒しながらシンが呟く。




「戦術級闇魔法【闇渦】」




またもや、いきなり闇の渦が切り倒され尖った木の目の前に出現し、シンを凄まじい勢いで引きつける。
鋭利な木に向かっていく自分の体に抵抗するように、足に力を入れる。




「チッ……上級雷魔法【雷撃】」




抵抗しても動き続ける自分の体を見て、抵抗するのを諦め、人差し指を木に向けて魔法を放つ。
放たれた雷によって木は粉々になり、渦に引き寄せられるだけで何事もなく終わった。






戦略級闇魔法【影人】……魔力や気配を完全に遮断する魔法。予想以上に厄介だな。
正面から魔法の力量勝負なら負けないが、この魔法を破らない限り勝つのは困難なようだな。
他の仲間が参戦してくる可能性を考えて力は残しておきたかったが……そんな事を言って勝てるような相手じゃないか。






「魔法の力、今こそ力を解放しろ、【勇者解放】」




シンの魔力が一気に増大し、シンの魔力が周りを包み込んだ。
そして、何故かアニムスの場所が分かっているかのようにアニムスのいる方向に二本指を向けて魔法を放つ。




「戦術級雷魔法【雷流サンダーフロー】」




今までとは比べ物にならない程の大きさの雷の塊がアニムスに襲いかかる。
その攻撃をかろうじて避けたアニムスは、どこか悔しそうな顔をしながら姿を現した。




「なんで場所が分かるの」


「魔力を薄く広げてアニムスを包めば、どこか認識できない場所が存在するだろ」


「【影人】の能力を逆手に取った戦法を考え付く頭脳とそれを実行できる力……やっぱりここでシンは倒さないといけない敵」




シンの対応力を目の当たりにしてアニムスはより一層魔力を高めた。
ようやく本気になったシンに手を向けて魔法を放つ。




「戦術級闇魔法【黒撃】」


「上級爆裂魔法【爆発エクスプロージョン】」




シンは自分に向かってくる黒い塊を迎撃するように掌を向けて魔法を放つ。
爆発によって砂埃が激しく起こり、両者とも敵の姿が見えなくなる。






アニムスの魔力が高まっていく……この魔力の質はもう一度あの技か
素で耐えられる自信がないな、もう一度魔力で防御するか?






シンは自分の傷ついた服部を見ながら苦虫を噛んだような顔をする。
重症とまでは行かないものの、浅いとも言えない傷がそこにはあった。






魔力でガードするには威力が高い……魔法で確実にガードする必要性があるが、魔力以上の防御力を持たせるとなると戦術級以上……そのレベルの魔法を使ってしまえば行動が制限されてしまう。
アニムスレベルの魔法使い相手に隙を作るのは命取りになりかねない。






「災害級闇魔法【暗黒渦】」




選択を迷っているシンに容赦なくアニムスが近づき魔法を放とうとする。






迷っている時間は無いか……迷った挙句に何もしないのが一番の悪手だな。
魔法で防御しなかった場合傷を負うのが分かっているんだ、ならばダメージを負わない可能性がある方に掛けるか。






「戦略級水魔法【水鳥の巣】」




シンが地面に手を置きながら魔法を発動させると、水でできた鳥が出現し、シンを包み込んだ。
それと同時に凄まじい大きさの闇の竜巻が出現し、シンに襲いかかった。






【水鳥の巣】は水の鳥の分だけ攻撃を全て相殺してくれる魔法……発動している最中に地面に手を置いて魔力を流し続ければ鳥は出現し続け、ダメージを負うことは無いが、魔力を流している間はどうしても無防備になってしまう。
【暗黒渦】は威力もそうだが、その攻撃時間の長さが強力だ。この長い攻撃時間の間、アニムスは自由に動く事が出来る。
一応、アニムスが攻撃してきた時の対策は魔法発動と同時に行ったが、それが通じるのかも怪しい……あっちの俺ではない以上、ここまできたら祈るしかできないか。






「上級闇魔法【暗転】」




闇の竜巻から人の腕が伸び、シンの体に触れる。
それと同時に魔法が発動し、手からあふれ出た黒いオーラがシンの体を包み込み縦に半回転させた。




「油断……強力な魔法を警戒しすぎ、【暗黒渦】が発動している以上、貴方の手を地面から離れさせれば自動的にあなたは負ける」




闇の竜巻の中から聞こえるアニムスの声の言う通り、反回転した神は地面から手が離れ【水鳥の巣】で出現していた水の鳥がいなくなった。
今までシンを闇の渦から守っていた水の鳥がいなくなり、シンに闇の斬撃が襲いかかる。




「読みが当たったな……魔法陣魔法【魔法奪取】」




シンの足元に魔法陣が出現し光出した。
それと同時にシンに襲いかかっていた闇の斬撃が停止した。




「申し訳ないが、神玉同士……さらには同じ魔法タイプの神玉ともなれば俺が負ける可能性は無いに等しい」


「……私が前負けた時は正面から戦ったら人間なんかに負けると思っていなかった、その傲慢な心が私を敗北に導いた……今のあなたと同じようにね」


「傲慢などではない、事実だ……」


「今のシンには負ける気がしない……力は強くなっても、前のシンの方がよっぽど強かった、固有魔法【魔法操作】」




停止した闇の斬撃がアニムスの魔力に包み込まれ小刻みに振動を始めた。
シンが異変に察知し、魔法を発動させようとした瞬間に闇の斬撃がシンを攻撃した。




「……ッ!」




とっさにシンは体をそらして攻撃をよけようとしたが一撃だけくらってしまう。




「【暗黒渦】程強力な魔法を動かすのには時間がかかるけど……先を見ている私にはその制限に縛られない」




そう言いながら闇の竜巻が消滅し、アニムスの姿が露わになった。
新しくできた傷口を押さえながら地面に膝をついているシンにゆっくりと近づいていく。




「星の瞳……まさかチャーラさんと同じ【未来予知】までの領域まで達しているとは……」


「ようやく余裕が無くなってくれた……あなたほどの才能を失うのはこの世界にとって損、敵じゃなかったら良かったのに」


「……」




シンは自分の血が垂れ溜まっている地面を見ながら無言でいた。
その様子のシンを見てアニムスは残念そうにシンに手を向けた。




「これだけ血を失ってしまえば戦士でもない人間のあなたが意識を保つのも難しい……いつ殺されたのかもわからぬままに安らかに眠って」


「……」




アニムスの手に魔力が集まり人を簡単に殺す事の出来る魔力が掌に集まった。
それと同時にアニムスの頭に映像が流れる。






『その手をどけろ、クソガキ』


『少しは楽しませろ』


『この程度の敵に苦戦しやがって、俺があの野郎の魔法を解くのが間に合わなかったら死んでたぜ』


『お前があっちの俺がずっと意識していたレイドって奴か』


『やるよ、こんなデカイ肉の塊なんていらないからな』






「……はっ!」




アニムスは我に返ったかのように目を見開き息を切らす。
そして【未来予知】でみた映像が信じられないと言った様子だった。






さっきの未来は……攻撃する瞬間に手が掴まれて、戦闘になり魔法で圧倒され、殺され、激怒したレイドとシンが戦う?
でも……見た未来のシンは雰囲気が違った。冷たい目、何を壊すのにも躊躇いのない目。






星の瞳で見た未来のシンの姿に体を少し震わせながらシンに手を向けた。




「この状態から私の攻撃を防ぐの……?」


「……」


「意識すらない状態で……? 防げるって言うなら……!」




アニムスの掌に黒い槍が出現しシンに向けられる。
その瞬間に意識が無かったはずのシンが突如手を伸ばしアニムスの手首を掴んだ。




「……ッ!」


「……ぁあ!? 誰の事見下してんだぁ!?」




低い声でそう言いながらシンがゆっくりと顔を上げた。
アニムスに向けた目はアニムスが星の瞳で見た冷たい目だった。




「その手をどけろ、クソガキ」


「………!?」




アニムスに向けた威嚇の言葉を放った瞬間、膨大な魔力が放たれる。
その魔力に圧倒されアニムスは無意識で距離を取ってしまう。




「まったく……こんだけの魔力残しておいて追い込まれやがって……これで死んだらもともこもないぜ」






なんて魔力……同じタイプの神玉なのにここまで差があるの?
今の神は何か嫌な雰囲気がある……できれば戦いたくない……まだなの?合図は

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