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ダブル・デザイア 〜最強の力は神をも超える〜

真心の里

暗殺者(レイド編)

 
 レイドと仮面の子供が睨みあう。
 何も知らない一般人が見たのならば青年が子供をいじめているように見えるだろう。
 しかし、レイドと子供から溢れる殺気で近くの者は足が小刻みに震えていた。
 子供が現れるまで逃げようとしていた者も死がすくみ、逃げる事さえできなくなっていた。




「どうした? 来ないのか?」


「慌てるな、もうすぐ失う命だ、少しは余生を楽しみたいだろう?」




 レイドが見下すような視線を向けながら言い放つと、微笑しながら馬鹿にするように返事をした。
 挑発とも言えるその発言にレイドはため息をついて呆れたような表情をあらわにした。




「全く、この国には力の差も感じ取れないバカが随分と多いらしいな」


「それはこちらの台詞だよ、そんな少人数で国を相手とか馬鹿のする事だ……よ!」




 仮面の子供が懐から小さなナイフを取り出してレイドに攻撃を仕掛けた。
 そのナイフの先端は黒く変色しており、普通のナイフではないことが明らかだった。






 ……ナイフの形といい、黒く闇に紛れやすい格好といい、暗殺に特化している装備だ。
 そこまで暗殺に力を入れときながら対象の目の前に出てきた……ただのバカか、それとも何か意図があるのか……
 それが分からない以上、余計に踏み込むのは危険だな、トップが馬鹿とはいえ、国の奥の手なのだからな。




「僕の初撃をかわすか、期待通りの実力だね」


「その程度の攻撃が当たると少しでも思われていたのか、傷つくぜ」




 仮面の攻撃が普通の人なら視認することすら不可能な程の速さでレイドを攻撃する。
 しかし、その攻撃はレイドに全て簡単にかわされ、服にすら当たる事は無かった。




「なら……もう少し速度を上げよう、上級剣技【舞踊斬】」




 仮面の子供が懐からもう一つ先ほどと同じナイフを取り出す。
 それと同時に、踊るようなステップでレイドに攻撃を仕掛ける。






 上級剣技か……神玉を使えるようになってからというもの、感覚がおかしくなっていたが、上級剣技は才能の証だ。
 中級までは絶え間ない努力で手に入れることはできるが、上級は才能が無ければ身につけることは難しい。
 奥の手でもなく、簡単に上級を使うことからこいつは一つ上の攻撃、戦術級を持っているのは確かだろう。




 攻撃の速度が上がったのにもかかわらず、レイドは回避以外の事を考える事が出来る程、余裕があった。
 仮面の子供の攻撃は服に触れることもできず、明らかな力の差があった。
 それなにもかかわらず、仮面の子供はなぜか焦ってもいなければ、恐怖も感じていない様子だった。




「流石だね、上級剣技がいとも簡単にかわされるなんて、やっぱりレイドも僕と同じ天才の一人なんだ」


「……俺は天才ではないさ、もし俺が天才だったならば、お前とも戦っていなければ、戦争なんてものも起きなかったはずだ」


「レイドがいくら否定しようとも、天才は天才だ、僕と同じレベルの天才なんて久しぶりだから楽しませてもらうよ」


「……自分の力を過信すると痛い目を見るぞ」




 仮面の子供の踊りのリズムが速くなり、攻撃の速度が上がっていく。
 いままで軽く避けていたレイドが少しだけ真剣な表情に変化した。






 リズムが速くなっただけじゃなく、転調するのか……普通の上級剣技をアレンジする。
 確かにこいつは剣の天才かもしれない……神の力の戦いの領域に踏み込まなければの話だがな。






 レイドが仮面の子供がとっているリズムに完全に合わせ、踊るように攻撃を回避していく。
 仮面の子供の攻撃はレイドが解析したように転調し、本来ならば避ける事は愚か合わせることなど不可能な技のはずだった。
 しかし、あまたの戦闘の経験と、天才的なセンスで完璧にリズムを合わしていた。




「僕の転調に合わせてくるとは……期待通りの実力のようだ!」


「それは良かった、俺の方は少し期待外れだったがな」




 レイドの表情に余裕が生まれ始め、転調し続ける攻撃を軽く避け始めた。
 そして回避だけをしていたレイドが欠伸をすると同時に、仮面の子供を蹴り飛ばした。




「所詮は何も持たない人間、俺達の敵ではない」


「……っ!」




 吹き飛ばされた仮面の子供はかろうじて受け身を取り、着地の衝撃を受け流した。
 しかし、着地の威力は殺せても、レイドからの攻撃は受け流す事ができず、蹴られた部分を押さえて苦しそうな表情を浮かべた。




「他の奴とは違い一発は耐えたか、流石は奥の手と言ったところか」


「俺の油断をついて当たった一撃で調子に乗るなよ……!」


「……本気で言っているのだとしたら本当に期待外れだ、力の差も分からないとはな」


「たかが一撃で……調子に乗るな、戦術級剣技【千舞斬】」




 仮面の少年が怒りのオーラを出しながらレイドに攻撃を仕掛ける。
 先ほどの攻撃よりも遥かに速く、そして緩急の付いたリズミカルな攻撃がレイドに襲いかかった。




「せ、戦術級だ! お前たち逃げろ!」


「「「う、うぁぁぁぁ!」」」




 有象無象の兵士の中でも一段と偉そうな男の叫びによって、レイド達に背を向けて走り始めた。
 それも仕方のない事だった、戦術級とは戦争において戦術二組組み込まれる可能性がある程の威力を持った技の事を指す。
 一般人では到達のできない領域、普通の兵士たちが命の危険を感じるのも仕方が無かった。




「天才ですら届く者はわずかと言われる領域の技を堪能しろ」


「……」




 風切り音と共にレイドに凄まじい速度の攻撃が放たれる。
 一撃で何人もの兵士の命を奪い取る事が出来る技、戦争において戦術に組み込まれるに値する技。
 そんな威力の技をレイドは横に出現した【空間倉庫】から取り出した短刀で簡単に受け止めた。




「なにっ……!?」




 今まで焦りを見せてこなかった仮面の子供から初めて焦りが感じられた。
 それもそのはず、自信満々に放った本気の一撃を小さな短刀で、簡単に受け止められてしまったのだから。






 やはり神玉すら持たない人間ではこの程度だったか……
 本当は少し期待していたのだがな、これでは魂を吸収したところでたかが知れているか……
 しかし、悪魔は他の種族に比べて人間の魂を欲していた、吸収することに関しては人間の魂は向いているのかもしれないな。
 まぁ、それも吸収してみればわかる事だ、人間の中でも優秀なこいつを吸収してから考えるか。






 持っているナイフを小刻みに震わせている仮面の子供の腕を掴む。
 仮面の子供が視線をレイドの目へと向けると、無機質な視線を向けたレイドの顔が目に映った。






 ◆






 僕は子供の時にいじめられていた。
 生後間もない頃に何者かが起こした放火事件に巻き込まれた僕は両親を同時に失った。
 両親の代わりに得られた者は醜い顔の火傷のあとだった。




 孤児院に引き取られた僕は火傷のせいもあっていじめの的になった。
 子供たちは狡猾で大人が見ている前では何もしなかった。
 むしろ、みんなの評価は良い子、優しい事いった逆のものだった。




 職員の人に説明しても、今まで大人たちに虐待されてきた子供がいじめを行わないと思ったのだろうか?
 いじめられる辛さを知っている者は人をいじめないと思ったのだろうか?
 全く勘違い甚だしい、虐待された者が覚えているのは恐怖と恐怖を与えた者が楽しそうにしている表情だけだ。
 今まで虐待されてきた者たちはうっぷんを晴らすかのように弱者をいじめる。




 その地獄から抜け出すために孤児院から脱走し、剣の道場でお世話になった。
 奇跡的に才能があった僕はすぐに先輩達の実力を抜いてしまった。
 そのせいか、楽しかったはずの道場でもいじめられ始めた。




 でも、前と違って僕には力があった。
 先輩達を全て殺し、また安息を手に入れたかと思った。
 しかし、僕の迎えに来たのは支障ではなく剣を持った警備兵だった。




 何の抵抗もせずに捕まり罪が軽くなったが死刑に変わりは無かった。
 いや、誤認も殺しておいて絞首刑なのは随分と軽くなったかもしれない。
 僕の人生も終わりかと、最悪な人生だったと思った僕の前にある人物が現れて声をかけてきた。




「俺が作る組織の隊長にならないか? お前の実力に、才能に惚れちまったんだ」




 そこが僕の人生の転機だった。
 今までの生活と違い、毎日誰かを殺す事を考えていなければならなかった。
 でも、幸せだった。帰るべき場所がたとえ血で染まっていようともあると言う事が。




 団員も増え、仕事もたくさんもらえるようになってきた。
 仕事が終わったら僕の人生を変えてくれた人の元に行こう。






 ◆






「……ぼ、僕は帰るんだ……帰るんだ!」




 懐から新しく出した毒の塗られてナイフをレイドに突き刺した。
 そのナイフの攻撃で与えられた傷はかすかなものだった。
 しかし、そんなかすり傷を見た仮面の子供はナイフを落としてガッツポーズした。




「油断したな! そのナイフに塗られている毒は超少量でドラゴンを軟体も殺せるほどの毒だ! かすり傷でも貴様は死ぬ!」


「……」


「自分の体が蝕まれる恐怖を味わいながら死ね!」




 大声で喜ぶ仮面の子供に対してレイドは一切表情を変えずに無言を貫いていた。
 そして腕を掴んでいた手を首の方に移動させ、力を入れて首を絞めた。




「ぐっ……! な、何故だ……毒は即効性だ……す、既に体を……動かすのすら……」


「一つ教えといてやる、お前達が使っている毒なんてのはな神の毒に比べたら水と差は無いんだよ」


「か、神の……!?」


「期待外れだったな……戦争の準備運動にすらならないとは……」




 何の躊躇もなくレイドの手に力が入った。
 それと同時に首を絞める力が強くなり、首の骨が折れ、仮面の子供は簡単に死亡した。




「【魂食ソウルイート】」




 仮面の子供の死体の首を掴んだままレイドがスキルを発動した。
 死体から魂が抜け出し、レイドの心臓部へと向かった。






 ……なるほど、人間を吸収した事は無かったが人間の魂は吸収効率が良いらしいな。
 あの程度の実力でも嫉妬のスキルをえられるとは……これは期待してもよさそうだな。






 一人でニヤニヤしながら背を向けている兵士の方へと顔を向けた。
 そして仮面の少年の死体から手を離し、地面に手を置いた。




「逃げるなよ、俺の以上に大事な物があるとか嫉妬するじゃないか、【嫉妬愛ジェラシーラブ】」

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