ダブル・デザイア 〜最強の力は神をも超える〜
異常な強さ(レイド編)
「レイド殿、心配はしておりませんが何が起きるかはわかりません、どうか気をつけてください」
グレイヴからの挨拶を受け取ったレイドは目の前のドアを開く。
そのドアの先には大きな雲と吹き荒れている風があった。
「分かっているさ、今回はアニムスが隣にいないからな、呑まれないように気をつけないとな」
「レイド……本当にこれだけの数の魂を吸収しても大丈夫?」
俺の中にある大罪持ちの悪魔の魂……知性や大きな力を持った生物の魂を吸収する事によって封印された能力を解放することができる。
封印に影響を与える程上質な魂もしくは数は数えられるほど少ない、本来の嫉妬の悪魔の能力の2割ほどしか解放できていないだろうな。
「数が多いとはいえ質は底辺に近い、そこまで影響は無いはずだ」
「でも心配……やっぱりついて行く」
心配そうに顔をしかめたアニムスがレイドに近寄る。
そんなアニムスの顔と同じ高さまで膝を曲げて、正面から顔を見る。
「アニムス、お前に任せた仕事はお前にしかできない、それにルージュの占いでは俺と一緒に来ない方が良いらしい……お前の目では違うのか?」
「……」
目を正面から見つめられながらそう言われたアニムスは俯いて静かになった。
そしてレイドがアニムスの頭の上に手を置いて、優しくなでた。
「俺は自分を信じてはいないが、お前の目を……お前を信じている。 お前は俺を信じていないのか?」
「……ううん、信じてる、誰よりも」
「なら俺も自分を信じれる、頼んだぞアニムス……」
そう言うと同時にレイドが頭から手を離し、ドアから飛び出た。
目を瞑りながらレイドは凄まじい速度で地面へと向かっていく。
俺はヴァラーグを失った日から自分を直接信じれていない……
俺が自分を信じられるのはアニムスのおかげだ、そんな俺の大切な仲間に手を出したんだ。
血で染めてやる……覚悟しておけよ!
◆
「ズーラ、ボル、敵はまだ来ないのか?」
モヒカン頭の巨漢が首を鳴らしながら近くの男と女に話しかけた。
「副隊長……まだ始まって一分もたっていませんよ、副隊長や隊長じゃないんですから攻撃が始まるわけないじゃないですか」
「そうですよ、それに……俺達を呼んだうえにこの人数、俺達の出る幕あるんですかね?」
ズーラと呼ばれる女性がため息交じりに副隊長に説明をした。
その横のボルという大きな斧を持った小さな男性が軍隊を見ながらそう言った。
「でも開戦の合図を見る限り、ここに集まって言うような有象無象ではないようだけどな」
テントを支えている鉄の棒に寄りかかっている男が少し楽しそうに言った。
その言葉を聞いたボルが男に離していなかった情報を話す。
「あの方向はミルテンが向かった、俺達の中では弱いが既に殺してしまっている可能性が高いだろう」
「チッ……あいつは新人なのに美味いとこだけ取ってきやがる、一回殺しておくか?」
寄りかかっている男が不敵な笑みを浮かべながら呟くと同時に殺気が漏れだす。
その殺気を感知した近くの騎士たちは体が少し震えだした。
「アマフ、殺気が漏れている、抑えろ」
「……はいはい、分かりましたよ、副隊長殿」
副隊長の巨漢の男が寄りかかっている男……アマフを睨みながら注意をした。
その視線を感じたアマフはわざと出していた殺気を抑えて、軽く返事をした。
「……あれ何だ?」
自分達の目の前に並んでいる一万五千もの大群の中心に向かって上空から落ちてくる何かを見つけたアマフが呟く。
その呟きによって緊張感のなかった者たちが一気に戦闘態勢に入る。
「何か来たぞ! 上空だ!」
やっと気が付いた大軍の指揮官が大声で叫ぶと、一万五千もの大軍がほぼ同時に真上を見る。
それと同時に凄まじい速度で地面に落ちてきたモノが地面にぶつかり砂埃が舞った。
「ぐぁぁぁ!」
「な、何がぁぁぁぁ!」
それと同時に騎士たちの断末魔が全ての者の耳に入る。
何かの影響で起こった風によって砂埃が全て吹き飛んだ。
「……あれが今回の目標か」
「そのようですね、久しぶりに楽しい狩りになりそうだ」
騎士たちの大群をものともしない様に一人づつ倒していくレイドの姿を認識した緊張感のなかった集団……ノーム国が誇る暗殺集団の緊張感が一気に上がる。
そして暗殺集団は自分の武器を手に持って騎士たちを押しのけて、レイドに近づいていく。
◆
「ぐぁぁぁ!」
地面に落ちると同時に最も近くにいた騎士の甲冑に包まれた頭を掴みヒザ蹴りを放った。
その威力で騎士は意識を失い、後ろにゆっくりと倒れた。
「貴様ぁ!」
目の前で仲間が倒された騎士のひとりが剣を振り上げて襲いかかる。
その騎士に振り向きざまにパンチを放ち、数メートル吹き飛ばし、後ろの騎士ごと地面に倒した。
「雑魚ども、かかって来い」
「たかが一人だ! お前ら行くぞ!」
「「「うぉぉぉぉぉ!」」」
レイドの挑発に乗った騎士のひとりが先陣を切りながら叫ぶと、その後について大量の騎士がレイドに襲いかかる。
その大軍に自ら向かって行き、前から順番通りに一瞬で倒していく。
「な、なんだこいつ! とんでもない強さだ!」
「上級剣技【百連斬】」
騎士がレイドの実力に気が付き、少し怯えると同時にレイドが落ちている剣を拾い、技を使い、一瞬で数百人を殺した。
その大量の血飛沫を浴びた近くの騎士たちは体を震わせながらパニックになった。
「あ、あぁぁぁ!」
半狂乱になった騎士がレイドに何の工夫もなく襲いかかった。
その騎士の首を剣で無慈悲に切り落とした。
「どうした? 来いよ」
「あぁ……」
ほんの数分で訓練された騎士たちを既に1000人以上を殺したレイドの実力と遠慮のない殺意に怖じ気づき騎士たちの数名が剣を落とした。
そんな騎士たちをどかして、四人の黒いローブを着た人間がレイドに襲いかかった。
「中級剣技【無心切り】」
「炎の精霊よ、目の前の敵を焼き尽くせ、今こそ我にその力を貸したまへ、中級炎魔法【炎焼】」
「中級剣技【頭蓋割り】」
「上級拳技【重拳】」
「「「暗殺集団【暗闇の剣】だ!」」」
副隊長、ボル、アマフ、ズーラが四方八方からレイドに攻撃を放つ。
その攻撃の質と威力に近くにいた騎士たちは驚きの声を上げてしまう。
全てが中級以上の攻撃、一般人ならば耐えきることができるはずが無い攻撃だった。
「初級剣技【流し】」
その常人ではひとたまりもない攻撃の方向を真逆にして、防御とカウンターを同時に行った。
予測していなかったカウンターに驚きながらも四人全てがギリギリで反応して直撃を避けた。
「多少はまともな奴が来たかと思ったが、この程度か」
「少し上手くいったからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
レイドの馬鹿にするような言葉を聞いたアマフが血管を浮かびだしながら一人でレイドに襲いかかった。
頭に血の上った単調な攻撃をレイドは軽く避けていく。
「何故当たらないっ!」
「どうした、少しも当たる気がしないな」
欠伸をしながら避けるレイドを見て攻撃の速度を上げるがそれと同時にさらに攻撃が単調になってしまう。
避けることに飽きてきたレイドが足を大きく上げて顔に蹴りを放った。
「その程度の速度、反応できないと思ったっ……!」
レイドの手のぬいた速度の蹴りに反応したアマフが両手で防御をした。
しかし、その防御など意に介さないかのごとく、レイドは足を振りきると、アマフは凄まじい速度で吹き飛ばされた。
「「「ぐぁぁぁ!」」」
吹き飛ばされたアマフが騎士たちにぶつかり、騎士たちにもダメージを与えた。
数人の騎士を倒した後に止まったアマフは鼻や口から血を出し、白目をむいて気絶していた。
「おいおい、大口叩いといて雑魚だな」
「水の精霊よ、槍の形に変わり、敵を貫きたもう、今こそ我にその力を貸したまへ、中級水魔法【水槍】」
気絶したアマフの事を見ているレイドに、手を向けてズーラが魔法を放った。
死角からレイドに向かって水の槍が襲いかかる。
見えているはずが無い角度から向かって来ていた水の槍をレイドは軽く避けた。
「詠唱が長すぎる、詠唱省略もできないのが最高戦力か、普通の人間じゃレベルが低いな」
「土の精霊よ、我を守るかっ……!」
レイドの攻撃に反応してズーラが魔法で防ごうとする。
しかし、詠唱が間に合うはずもなく、レイドの裏拳が顔面に直撃した。
地面を何回転もしながら転がって、騎士たちの元に届いた。
「次はどっちだ?」
「な、舐めるなよ!」
ボルが大きな斧でレイドに攻撃を放った。
その強力な一撃を、レイドは右腕一本で簡単に防いだ。
「何故だ、腕で受け止めて傷一つできないのは何故だ!」
「剣技の一つもなしで、お前ごときのステータスで傷が付いたらそれこそ何故ってなるぜ」
剣を地面に刺して、空いた左手でボルを正面から殴り、吹き飛ばした。
丸い体も相まってか、三人の中で一番綺麗に転がった。
「唯一、上級を使ってきた奴が仲間がやられるのを静観ね……図体だけでかいようだな」
「仲間が俺に巻き込まれないようにするためだ、馬鹿にするな」
「口だけじゃないとありがたいな、このままじゃ魂を全部集めても意味がなさそうだからな」
レイドが不敵な笑みを浮かべながら挑発をした。
その挑発を挑発だとわかりながら乗った副隊長がレイドに襲いかかった。
「中級剣技【鋭拳】」
凄まじい速度の鋭い一撃がレイドを襲った。
その攻撃にレイドが反応することなく、直撃した。
「その程度か?」
「……っ!?」
攻撃が直撃したのにもかかわらず少しも動かないレイドが笑いながら副隊長に言った。
異常なまでの防御力に副隊長は思わず一歩だけ後ろに下がってしまった。
「お前の攻撃はもう終わりなのか?」
「まっ……まだだ! 上級拳技【連打拳】」
凄まじい速度のラッシュが風切り音と共にレイドに襲いかかった。
その攻撃もレイドは一歩も動くことなく、全てノーガードで受け止めた。
「なっ……!?」
一般人なら防御万全の状態でも重症では済まないラッシュをノーガードで受けたのにもかかわらず、傷一つないレイドに驚愕すると同時に恐怖を覚えた。
「もう一度聞く、その程度なのか?」
「う、うぁぁぁぁ!」
恐怖に包まれた副隊長がなんの工夫もなくレイドに拳を放った。
その拳がレイドの体に届くより先に、レイドの攻撃により巨大な体が放物線を描いて数メートル吹き飛んだ。
「【暗闇の剣】ですら歯が立たない……」
「お、終わりだ……化け物だ!」
「に、逃げろ! 俺は死にたくないんだ!」
自分達が恐れながらも頼りにしていた集団が簡単に倒されてしまった光景を見てパニック状態になる。
その場に崩れる者もいれば背を向けて逃げる者もいた。しかし、レイドに立ち向かおうという者は一人もいなかった。
騎士の中には……
「予想以上の実力だな、レイド」
「……誰だ?」
逃げる騎士とは逆にレイドに向かってくる怪しい仮面の子供が話しかける。
その子供から感じられる力に少しだけ警戒しながら質問をした。
「暗殺集団【暗闇の剣】の隊長だ、この職業柄だ、名前を名乗れないが、これから死ぬ者には必要ないだろう」
「……なんでこの国には自意識過剰が多いんだろうな、やっぱりトップが口だけだからか?」
「お前の強さは知っている。相当な強さだ、この騎士の大軍よりも強い……そして僕よりも弱い」
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