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ダブル・デザイア 〜最強の力は神をも超える〜

真心の里

おかえり(レイド編)

「ロキに作られた生物なんだ」




 ルージュが不敵な笑みを浮かべてレイドにそう言った。
 レイドは目を大きく開き驚きながら質問をした。




「はぁ?お前は一体なに言ってるんだ?」


「そうか、最初から教える必要があるみたいだね」




 ルージュがそう言いながらロキの方向を見て何か合図を送った。
 そしてロキはその合図と同時に指を鳴らして、白い空間に戻る。




「この話を関係のない奴に聞かれると厄介だからね、特に……シンとか」


「…………お前、あいつの仲間か?」




 シンの名前を聞いた瞬間、レイドの殺気でルージュは覆われる。




「おぉ、凄い殺気……これが神の力……」


「聞いているんだ、お前はシンの仲間か?」




 レイドは一歩、ルージュに近寄り睨みつける。




「まぁ、落ち着きなよ。ロキと仲良くしてる時点でシンと仲間なわけないでしょ」


「…………」


「殺気が少しは治まって良かったよ、レイドの殺気は息苦しくて」




 息を吐きながらルージュはそう言った。
 そんなレイドとルージュの間にロキが入ってくる。




『早く本題に入ろーよ!』


「そうだね、さっそく入ろうか」




 ルージュが手を叩いて本題に入った。




「今起きてる魔族と人族の戦争が神の代理戦争だってのは知ってるんでしょ?」


「あぁ」


「ということは、それぞれの勢力の神が生物を作っていることはわかるよね」


「知っている、だがそれは一部の神のはずだ、人族を作っているのは愛の神アナト、魔族を作ってるのは冥府の神オシリスだったはずだ」


「そう、作れるのは二柱の神だけ、大量にはね」


「なに……?」




 ルージュとレイドの会話をロキはニヤニヤしながら見る。




「神玉の適合者ってのは偶然に生まれる、でも確実に生まれさせる方法がある」


「…………」


「それは神自身の魂を使って生物を生まれさせる方法だ」


「魂を……?」


「そう、その方法は大きな力を使うため頻繁には行えないけど、二柱以外の神でも生物を作り出せる」


「神の魂を使うから生まれた生物は神の特性を深く持って生まれるわけか」


「正解、神の魂によって生まれた生物は、その神の能力に関係した強力な能力を持って生まれ、神玉との相性も良く、解放率は偶然生まれる者に比べ遥かに高い」


「なるほど、お前とロキの仲は何となく理解した」




 レイドは納得して首を縦に振った。
 そして「よかった」とルージュは呟いて、話の続きをした。




「それでレイドがいた空間を作ったのは、まさにロキの能力に似た僕の能力【マジックタロット】」


「マジックタロット?」




 レイドは効いたことのないスキルに眉をしかめながら再度聞いた。




「そう、僕の能力はこのカードによって効果が変わるんだ」




 ルージュはそう言いながら40枚のカードを取り出してレイドに見せる。
 そのカードは地球で使われていたタロットカードに酷似していた。




「カードはNo.0~No.21まである。No.10とNo.13とNo.16にNo.21が一枚、他は二枚づつ、合計で40枚ある」


「その種類によって能力が変わるわけか、確かに強力だな、21個も能力があるわけだからな」


『この能力自体は本頼強力じゃないんだ。なんせカードは選べないんだから』




 レイドとルージュの会話にいきなりロキが入ってきた。




「……運ってことか?いや、なら出したいカードが出るまで引き続ければいい」


「【タロットカード】は一回の戦闘に引ける枚数は3枚だけなんだ」


「だいぶ制約があるんだな、最大でも3個しか能力が使えにわけだし」


『3個しか使えなくても一つ一つが強力だから問題はないんだ』


「だが運勝負になってしまうだろ」


「そう、運勝負なんだ、僕じゃ無かったらね」


「なに……?」




 ルージュはそう言いながらタロットカードをシャッフルした。
 そして、レイドに質問をした。




「【タロットカード】は今使ってないから安心して、レイドは何番引いてほしい?」


「…………」


『大丈夫だよ、ルージュにレイドを敵に回す気はないよ』


「……5番」


「オッケー、5番ね」




 ルージュは目を瞑って適当にカードを引く。
 そして、その引いたカードをレイドに見せる。




「こいつは……」




 レイドの視界に入ったカードの右上にはNo.5と書かれていた。




「ステータスでC+を超えるLUKは運がいいといわれる、B+もいけば幸運の持ち主だ」


「あぁ、それは知っている」


「僕のLUKはAAAあるんだよ」


『LUKがAAAってのは今までにないほどの幸運の持ち主だ、でもこの幸運は【タロットカード】以外には作用しないんだ。その代わり、ルージュは出したいと願ったカードを必ず引くことができるんだ」


「なるほどな……それは確かに強力だ、それで【タロットカード】の中に俺のいた空間を作る能力があったわけだな」


「大正解」




 レイドはルージュの言葉で納得して小さく頷いた。
 そして、ルージュは40枚のカードから一枚取り出して、レイドに見せる。




「NO.12【吊し人】、選んだ対象にあったレベルの試練を課す能力だよ」


「なるほどな、それでお前が俺に協力する理由は何だ?」


「それはね、ロキと同じ理由だよ」


『そう、僕と同じで、君が』


「この世界で一番」


「『面白そうだから』」




 ルージュとロキは同時にそう言った。
 レイドはそれを聞いて笑いながら納得した。




「なるほどな、ロキの魂が入ってるのは確かだな」


「信じてもらえてよかった、これで質問は終わりでいい?」


「腑に落ちないことはある、しかし信頼するには値する」


「じゃあ急ごうか、ここでダラダラしてる時間はないしね」


「あぁ?何を急ぐっていうんだ?」


「レイドは何のために試練を突破したの?」




 ルージュの言葉でレイドは半年前の言葉を思い出す。




「悪魔たちは数が少ない、だから半年間は持ち堪えていたけど、限界は近い」


「そうか……半年も耐えてくれたことを感謝しなければならないのかもな」


「君が試練を突破するまでは試練は開けなかったから、ギリギリ間に合ってよかった」




 レイドとルージュはそう言って隠れ家に向かった。




「カードは同時に発動できるのか?」


「一応同時に引くことはできるけど、あまりやらないね」


「どうしてだ?」


「カードの能力は強力だけど、3回しか引けない、だからできるだけ残しておきたいんだ」


「なるほどな……」




 隠れ家への道中で2人はそんな会話をしていた。






 ◆






「アニムス様!下級悪魔の大群がきます!」


「数を教えて」


「多分50体ぐらい!」


「わかった、ヴリドラは?」




 認識阻害魔法をかけられ外からは見えない一軒家のベランダでアニムスとジャックは会話をする。
 そして目の前には一直線に向かってくる下級悪魔の大群がいた。




「ヴリドラとグレイヴは西の方向を守ってます!」


「じゃあ、こっちはジャックと私で何とかしないとダメ……」




 そう言ってジャックはアニムスを乗せて大群に向かって行った。
 そして、闇の神玉を解放する。




「闇の力、今こそ解放しろ【勇者解放】」


「獣の力、今こそ解放しろ【勇者解放】」




 アニムスからは魔力があふれ出し、ジャックは体が一回り大きくなる。
 そして大群の目の前に立ち、戦闘を開始する。




「戦術級闇魔法【闇の双槍】」




 アニムス達の上空に大きな黒い魔法の槍が出現し、悪魔の大群に向かって放たれる。
 その魔法により、50体の内、10体ほどは消滅した。




「ジャック、行くよ」


「はい!アニムス様!」




 ジャックが凄まじい速度で大群の中に入り、相手を翻弄した。
 そのスピードの中でもアニムスは確実に魔法を悪魔に当て、数を減らしていった。




「上級闇魔法【闇撃】」




 ジャックは噛みつきで、アニムスは闇魔法で、一瞬の内に悪魔を一掃した。
 しかし、それで終わることはなく悪魔たちの死骸が集まり扉の形になった。
 そしてその扉が開きそこから、一体の悪魔が出てきた。




「この程度で終わると思っていなかったけど、ここまでの敵が出てくるのは予想外」


「どうしますか?僕の速度なら多分逃げれます」


「それはダメ、レイドには待ってるって伝えた、私はこの場所で待たなくちゃいけない」


「よかったです、僕だけで戦うのは厳しそうですから」




 アニムスとジャックは覚悟を決めた目で出てきた悪魔を観察する。
 悪魔は見た目は完全に人間で悪魔にはとても見えなかった。




「お前らか、アニムスとジャックってのは」


「………………」


「成長した邪龍ヴリドラと戦いたかったんだが、魔法使いが相手とはハズレを引いたな」




 悪魔は舌打ちをして背中から服を貫いて翼を生やした。




「ヴリドラは西か、ベヒモスが当たりだったか」


「あなた、階級は?」


「あぁ、殺される相手の素性ぐらいは知っておきたいよな」




 悪魔はそう言って礼儀正しく頭を下げて自己紹介をした。




「はじめまして、悪魔大佐の一人、パズズだ」


「大佐……僕とアニムスの二人で、あの時と同じレベルの悪魔を……」


「さて、紹介も終わったんだ、早速やろうぜ!」




 パズズがそう叫びながら飛びながら攻撃を仕掛けた。
 その攻撃をジャックがアニムスの目の前に立ち、受け止めた。




「人化……おもしろい」


「くっ……!」




 黄金色の髪色の少年……人の形になったジャックがパズズの攻撃に少し押される。
 アニムスはその時間で、距離を取って魔法を放った。




「戦術級闇魔法【暗黒槍】」




闇槍ダークスピア】より禍々しい雰囲気を持っている黒い槍がパズズに凄まじい速度で向かう。その攻撃をパズズはしゃがんで避け、ジャックの魔法を当てようとする。




「あまり舐めないで、行き場を失ひし力よ、その力を活用せまほしければ、我に今こそその力貸したまへ、固有魔法【魔法操作】」




 ジャックはタイミング良くジャンプして避ける、そしてアニムスが暗黒槍の中の魔力を操作して、槍の方向を反転させパズズに槍を飛ばす。パズズは舌打ちをしてジャンプして避けようとした瞬間、ジャンプしていたジャックに攻撃され地面にたたきつけられる。




「避けんのは無理かっ……!魔法の精霊よ、目の前の物の動きを止めさせまほしき、戦術級無属性魔法【停止ストップ】」




 パズズが目の前に手を出して魔法で【暗黒槍】を寸前で止めて消滅させた。
 そして少し怒りをあらわにしながら、自分のことを攻撃してきたジャックを見る。




「いないっ!?」




 空中にいたはずのジャックはそこにはいなく、パズズの後ろに回っていた。




「気配でわかるぞ!」




 それに気がついたパズズは体を回転させて、ジャックを攻撃した。
 しかし、その攻撃はなぜか当たらなかった。




「なにっ!?」




 その理由はジャックが人化を解除していて身長が低くなったからであった。
 そして、ちょうどパズズが完全に後ろを向いた時にジャックの上をアニムスがまた放った暗黒槍が通った。




「もう一度、止めてやる!魔法の精霊よ、目の前の物の動きを止めさ……」




 パズズが【停止ストップ】を発動しようとした瞬間、ジャックが下からパズズの腕を攻撃して上に向かせた。そして【停止ストップ】が上向きに放たれ、暗黒槍を止めることができず、暗黒槍が直撃した。




「がっ……!」




 暗黒槍の勢いで数メートル後ろに押される。
 しかし、貫通力の高い魔法の暗黒そうですら、パズズの硬い肌を貫くことはできなかった。




「……貴様らぁ!【牙双】」




 パズズは怒りながら爪を伸ばして、ジャックを攻撃した。
 その攻撃は空を割いた、なぜならジャックだと思っていたそれはアニムスの作った分身だったからである。




「甘いね、爪はこうやって使うんだよ【牙双】」




 まったく同じスキルで爪を立てながら一瞬で二回パズズを攻撃した。
 しかし、パズズの硬い肌は傷つけることができなかった。




「鬱陶しいハエどもが!」




 パズズの手が三倍ほど大きくなりアニムス達を襲った。
 二人はその単純な攻撃を軽々と避け、パズズの変化をみる。




「本当の姿にしたんだ、少しは楽しませろよ!」




 パズズの体が大きくなったと思ったら、次は小さくなり元の大きさに戻った。
 しかし、元の姿はなく、人間とはかけ離れた角の生えた獣のような姿だった。




「魔力の量が格段に増えた、ジャック、ここからが本番」


「わかってます、僕の野生の感も危険信号を出してます」




 パズズは鋭い目をジャックに向けると同時に凄まじい速度で襲いかかった。
 その攻撃をパズズにも引けを取らない速度で回避をした。




「【天歩】」




 ジャックのスキル【天歩】で空中を歩く。
 空中を移動したジャックをパズズは羽根で飛んで追いかけた。




「空中戦で獣が勝てると思ったか!」


「僕からしたら空中も地上も大して変わらないよ!」




 追いかけてくるパズズの方を向いてジャックから攻撃を仕掛ける。
 その攻撃をパズズは体をひねらせ避け、後ろを向いて急停止する。




「なら空中で戦う意味を俺が教えてやる、風の精霊よ、槍を多数作りださまほしき、戦術級風魔法【風槍の雨】」




 ジャックの周りに多数の風の槍が出現し、ジャックに襲いかかった。
 その攻撃をスピードをさらに上げて上手く回避する。




「槍だけが攻撃だけだと思うなよ!」




 その間に距離を詰めていたパズズがジャックに殴りかかる。
 ジャックはその攻撃をギリギリで回避して、パズズから距離を取る。




「俺から逃げても、そっちには風の槍があるぞ!」




 ジャックが逃げた方向にはまだ多くの風の槍があり、ジャックに向かっていく。
 それを確認したジャックは風の槍に背を向けてパズズを待ちうける。




「諦めたか!」


「お前が戦っているのは僕一人じゃないはずだ!」


「行き場を失ひし力よ、その力を活用せまほしければ、我に今こそその力貸したまへ、固有魔法【魔法操作】」




 アニムスがパズズの魔法を操作してジャックから狙いをはずして、逆にパズズに向かわせた。
 その予想外の攻撃をパズズは何とか避ける、ジャックはそれを知っていたかのように、パズズに近寄り攻撃して、地面にたたきつけた。




「少しはやるじゃないか」




 パズズはすぐに立ち上がり笑いながらジャックとアニムスを見る。




「まだ余裕がある、戦略級闇魔法【超重力】」




 パズズの周りの重力が5倍になる。その重さに少し苦戦しながらも何とかパズズは対背を保った。
 そしてアニムスの方向に手を向けて、魔法を放とうとした。




「【超重力】は魔法を使える相手には弱いことを知らなかったか?」


「知ってる、魔法は重力が関係ない、でも私がその魔法を使ったのは攻撃させないためじゃない」


「なに……?」




 その瞬間、五倍の重力で落ちるスピードを利用したジャックがパズズの腕を切り落とした。
 パズズは目を大きく開いて驚きながらも、ジャックに攻撃をしようとした。




「俺の腕をっ!」




 その瞬間に【超重力】が解除され、ジャックのスピードが戻り、一瞬で距離を取った。
 それとは反対に予測していなかった解除で体の体勢が崩れたパズズは攻撃ができなかった。




「なにも素直な力だけが強さじゃない、私たちは半年間ずっと一緒に戦い続けた、私たちの力は単純な足し算じゃない」


「パズズだがなんだか知らないけど、大口叩く割には弱いじゃん」


「……くっくっくっ、ここまで強いとはな、ヴリドラに使うはずだったが、お前らで使うとはな!」




 パズズはまだ力を温存していたかのような口ぶりで、魔力の循環量が増やす。
 さらに、切断された腕は生え、傷は治り、周りの植物が枯れ、飛んでいた鳥が死に地面に落ちてきた。




「魔力と同時に魂も集めてる?」


「でも僕たちはなにもないですよ?」


「多分実力差がある場合だと思う」


「はぁぁぁぁぁ!」




 魂と魔力がパズズの体の中心に集まり体がさらに禍々しく変化する。




「待たせたな……これが俺の本気だ!」




 パズズはそう言いながらアニムスに襲いかかる。
 それに反応して、人化したジャックが横から攻撃を加える。




「邪魔だ!」




 パズズの今までより遥かに鋭い振り払いでジャックは吹き飛ばされる。
 しかし、パズズがアニムスに攻撃を加える前に、ジャックが木を蹴って全速力で近寄り、パズズを攻撃した。




「アニムス様から離れろ!戦術級拳技【牙狼拳】」




 速度の乗った凄まじい一撃でパズズが横に少し押される。
 舌打ちをしたパズズはジャックの方向を見て、攻撃対象をジャックへと変えた。




「そんなに先がいいなら、お前から殺してやる!戦術級拳技【豪拳】」




 パズズの重い一撃がジャックに襲いかかる。
 その攻撃を自慢のスピードで避けたジャックは爪を立てて反撃する。




「【牙双】」


「物理しか能のない獣が!炎の精霊よ、目の前の敵を爆ぜせよ、【爆発エクスプロージョン】」




 パズズの魔法でジャックは少し隙ができてしまった。
 その隙を見逃さなかったパズズは蹴りでジャックを吹き飛ばした。




「……っ!」


「ジャック!戦術級闇魔法【闇槍の雨】」


「魔法の精霊よ、目の前の物の動きを止めさせまほしき、なんぢの力が要れば、今こそ我のその力貸したまへ、戦略級無属性魔法【全停止フルストップ】」




 アニムスの魔法によって、パズズは闇の槍で四方八方から攻撃される。
 パズズが両手を大きく開いて、手を伸ばすと闇の槍は段々と減速し、最後には消えてしまった。




「貴様たちは弱点を補っているにすぎない、それぞれの特化しているしている能力を俺が超えてしまえば、貴様たちに勝ち目はない!」


「勝負は最後まで分からない、戦術級闇魔法【常闇とこやみ】」




 アニムスの両手から出た黒い煙が三人を覆い、視界を奪った。
 その程度ではパズズは冷静さを失わずに、目を大きく開いた。




(悪魔の目を舐めすぎだ、あっちに比べたらまだ明るいぜ)




 この暗闇を意に介さずにパズズは索敵していく。
 そして、ついにパズズは走っているジャックの姿をとらえた。




「この暗闇で体勢を立て直すつもりだったか!無駄だったな!」




 パズズがジャックを攻撃しようとした瞬間、ジャックが発光し、スピードが格段に増加して攻撃をかわした。攻撃とジャックの発光によって黒い煙が霧散した。




「舐めないことだね、グレイヴだけが伝説種の生物だと思ったのか」




 パズズが発光しているジャックの方向を見ると、人化を解除した雷を纏ったジャックの姿があった。
 牙は長く、黄金色の毛は逆立ち、体は神玉を使う前と同じように細い体だった。




「犬にしては知能が高く、スピードがあると思ったら、お前……最強の狼の子孫フェンラルだったか」




 パズズは楽しそうな笑顔を浮かべジャックを見る。
 そして自分の後ろにいるアニムスの魔力を感じて、さらに笑顔になる。




「随分と量が多いじゃないか、お前もただのガキじゃねぇな、異様な雰囲気……何かとのハーフか?」




 パズズのその言葉の瞬間、ジャックとアニムスが攻撃を仕掛ける。
 それを見たパズズは目をさらに大きく開き満面の笑みを浮かべる。




「予想以上だ、だがな……その程度で俺に勝てると思うなよっ!」




 筋肉が少し膨張し、魔力が爆発的に増える。
 そしてアニムスの魔法を手で弾き飛ばした後に、ジャックを殴り飛ばした。




「伝説の生物やハーフ程度が悪魔大佐に勝つなんておこがましいんだよ!」




 ジャックは空中で体勢を立て直して、予想以上のパズズの力に驚く。




(これが悪魔大佐、マルフォスと同じ階級なのに、僕の奥の手を使ってもスピードが同じくらいだなんて、確信した、マルフォスよりこいつは強い!)




 ジャックは昔苦戦をしたマルフォス以上の力を持つパズズの力に険しい表情をこぼす。
 そんなジャックとは反対にアニムスはなぜか冷静だった。




「おいおい、ジャックは良い顔してんのに、お前は何でそんな冷静なんだ?」




 そのアニムスの表情が気に入らないパズズはアニムスの方向に顔を向けて嫌味ったらしく話しかける。
 しかし、そんな質問を無視してアニムスはジャックに目で合図を送る。




(ジャック、作戦)


(あいつを倒す方法があるんですか?)


(うん)


(アニムス様は流石です!それで作戦と言うのは?)


(パズズを確実に倒す方法、それは時間稼ぎ)






 ◆






 少し時間が戻り、アニムスとジャックが隠れ家を飛び出した時の話。
 ヴリドラとグレイヴの二人は下級悪魔の大群を蹴散らしていた。




「こっから先は行かせませんよ」




 グレイヴが特殊なポーチから試験管を取り出して悪魔たちにぶつける。
 試験官が割れ、中の液体が下級悪魔にかかると、下級悪魔たちは苦しみ絶命した。




「こっから先は親父が守った場所だ、近づけさせない!」




 所々に龍特有の鱗がある肌を持った男らしい青年……ヴリドラが腕を振ると下級悪魔は一気に吹き飛ぶ。そして吹き飛ばし集めた下級悪魔たちをブレスで焼死させた。




「今日は下級悪魔だけか?やつらも消耗してきたわけか」


「そのようにも見えますが、アニムス殿の言葉によれば今日が勝負どころなんですがね」


「アニムス様にも外れるときがあるだろうよ、主がいなくなってから不安定だからな」


「確かにそうかもしれませんね」




 二人がそんな会話をしていると、悪魔たちの死骸が集まり扉の形になった。
 そして扉の奥からガタイのいい翼の生えた悪魔が出てきた。




「…………ヴリドラ殿」


「あぁ、わかっている、アニムス様は外れなかったようだ、俺の感が大佐クラスだって言ってやがる」


「大佐……マルフォスと同じですか、この半年間の成長がわかりますね」




 出てきた悪魔はパズズが言っていたベヒモスと言う悪魔だった。




「グレイヴは後ろに下がりサポートを頼む、医学の神玉はギリギリまで使うな」


「わかりました、全力でサポートします」




 グレイヴは【魔力縫い】を使用してヴリドラの傷を治す準備をする。
 そして、ヴリドラは首を鳴らしながらベヒモスに近づく。




「さて、準備はできたぜ、デカブツ」


「オレ、ヴリドラ、アタリ、ワレアクマタイサノベヒモス、ヴリドラ、タオス」


「……知能がないのか?力だけなら大したことないぜ」




 ヴリドラの全力の拳がベヒモスの腹に突き刺さる。
 その凄まじい威力にベヒモスの体が浮いた。




「スコシ、キク」


「喋る余裕あるとはタフじゃねぇか」




 拳を抜いて浮いているベヒモスの顔にもう一度攻撃を入れる。
 鋭く重い一撃だったが、ベヒモスの巨大な体は首から上だけしか動かなかった。




「吹き飛ばす勢いで殴ったのによ、上級拳技【重拳】」




 そして逆側からさらに重い一撃を頭にくらわした。
 はたから見たら一方的だったが、ヴリドラは嫌な予感を感じていた。




(おかしい、いくら知能が無いとはいえ殴られたら戦闘開始ぐらいわからねぇ奴が悪魔大佐になれるほど甘くはない)




 ヴリドラがそう考えた瞬間、今まで無表情だったベヒモスの顔に笑顔が宿る。
 その笑みは不適で、不気味で、嫌な笑顔だった。




「俺が知能ない馬鹿だと思ったか?」


「なっ……!?」




 ヴリドラの攻撃で横に向いていた顔を一瞬でヴリドラの顔の前に移動させ、その勢いのままヴリドラに攻撃を放つ。その攻撃を認識したヴリドラは両手で攻撃をガードした。




(重い……!)




 予想以上の攻撃力でヴリドラは吹き飛ばされ地面を転がった。
 すぐに立ち上がりベヒモスの追撃に備える。




「俺の一撃を耐えるとは期待通りだ!上級拳技【重拳】」


「邪龍を馬鹿にすんなよ!戦術級拳技【豪拳】」




 凄まじい一撃がぶつかり合い地面に小さいクレーターが生まれる。
 その光景を見たグレイヴの顔が少し険しくなる。




「不味いですね、似ている技で上級と戦術級で互角ということは、素直なステータス値に差があるということ」




 そんな呟きなどつゆ知らず、ヴリドラはベヒモスに正面から挑む。
 ヴリドラもステータスの差は理解していたが、力に頼った戦闘方法しか知らないヴリドラは正面から挑むしかなかった。




「戦術級拳技【爆裂拳】」


「上級拳技【連打拳】」




 またもやヴリドラの攻撃を似たような技で正面から応戦する。
 強力な技ほど消耗は激しく、時間が経つごとにヴリドラの息が乱れる。




「はぁ……はぁ……」


「傷を治すことはできますが体力までは戻せません、相性が悪いですね」




 グレイヴの言葉の通り、ベヒモスとヴリドラは相性が悪かった。
 もし、パズズとベヒモスが逆だった場合、どちらも苦戦はしたものの勝機は見いだせていたであろう。




「はぁ……はぁ……」


「その程度か邪龍って言うのは!戦術級拳技【爆裂拳】」




 ベヒモスが叫びながら攻撃のスピードを速くした。
 今まで互角に渡り合っていたが次第に攻撃が当たり始め、ダメージを負う。




「【魔力縫い】」




 グレイヴが傷を瞬時に癒していくが、それも間に合わなくなるほどベヒモスの攻撃が速くなる。
 ヴリドラはこのままでは勝てないことを悟り、攻撃を相殺するのをやめ攻撃を当てるのに専念した。




「我慢比べか、上等だ!」


「グレイヴ、信頼するぞ!」




 両者ともに攻撃を相殺するのをやめて一歩も動かずに攻撃だけをする。
 ヴリドラはグレイヴに回復してもらえる分、優位に見えたが、ベヒモスの強靭な体にはあまりダメージを与えられなかった。




「俺の防御力は悪魔の中でも一位二位を争う、俺の体を砕く前に魔力が無くならないことを祈るんだな!」


「ぐっ……!」




 ベヒモスの言葉の後、すぐにグレイヴの限界が訪れた。
 回復が無くなり、ヴリドラはどんどんと傷だらけになり地面に膝をついた。




「がっはっはっ、邪龍もこの程度か!」


「うぅっ……!」




 二人は高らかに笑うベヒモスを睨みつける。
 そんな2人を見下しながら、さらに大声でベヒモスは笑った。




「ヴリドラ殿……準備してください、使います」


「お前っ……!まだ何とかなるはずだ」


「この状況を打開する案は私にはこれしか思いつきません、前線で使い奥の手が割れるのは不味いですが、仲間を失うよりはマシです」


「……っ!それしかないのか……」




 二人はベヒモスには聞こえない静かな声で会話をする。
 そしてベヒモスの笑いが終わり、二人を不敵な笑みを浮かべて見る。




「半年間持ったのは褒めてやろう、だがこれで終わりだ」


「使いますよ、グレイブ殿!」


「クソがっ!仕方ねぇ!」


「……?まだ何かあるのか?」




 二人が叫びながら立ちあがるのを見て首をかしげながら質問をした。
 グレイヴの鎖骨にある模様が光り出し始めた。




「医学の力、今こそ解ほ……「待って!」……?」




 グレイヴが神玉の力を解放しようとした瞬間、それを止めるようにベヒモスの目の前に長髪の人間……ルージュが現れる。突然のルージュに三人は驚いていた。




「お前は一体誰だ!悪魔の仲間か!」


「あぁ?お前たちの仲間じゃないのか?」


「ベヒモスも知らない……?一体あなたは……」




 この三人とも知らないルージュは止めるのが間に合ったことに安堵した。
 そしてヴリドラとグレイヴに挨拶をした。




「はじめまして、僕の名前はルージュ・レル・オーラ、君たちの仲間だ」


「仲間だと……?」


「にわかには信じられませんね、何か証明できるものはあるのでしょうか?」




 二人の手を取って起き上らせたルージュに2人は鋭い目を向けた。
 ルージュはどうにか証明できないかと、顎に手を当てて考える。




「うーん……そうだ!アニムスが持ってるのは闇の神玉、ジャックが持ってるのは獣の神玉、グレイヴが持ってるのは医学の神玉、そしてレイドは5個持ってはいるけど吸収しているのは剣と破壊と反逆だけ」


「そこまで詳しい情報を知っているのは俺らだけ、なら誰かが仲間に入れたと考えるのが妥当だな」


「そのようですね、一体誰が……?」


「それはね、君たちの主人、レイド・ロキだよ」


「「なっ……!?」」




 自分たちの主人が帰って来たという報告に2人は目を大きく開き口を開けて驚いた。




「知らなかったんだ、アニムスは知っているようだたけど……あぁそうか、星の瞳の能力か」


「星の瞳まで知っているのか、本当に仲間なのか」


「……レイド殿が戻って来たんですね」


「うん、でも喜びに浸る前にこいつ倒さないとね」




 二人は現実を思い出して喜びから戻って来た。
 いかに仲間が来たとは言え、ベヒモスの強さは変わらない、二人の顔はけわしかった。




「そんな顔しないでいいよ、こいつは僕が一人で倒すから」


「なに言ってんだ、こいつは悪魔大佐だぞ、一人じゃ勝てない!」


「安心して、見た目は弱そうだけど、君たちより多分強いから」




 そう言ってルージュはベヒモスに近づいた。




「一人増えても変わらん、さらに加わったのが病弱そうなお前じゃな!」


「まったく、どうして弱い犬ほど吠えるのかな」




 笑いながら煽ってくるベヒモスに対して、ルージュも笑みを浮かべて煽った。
 その言葉に少しいらついたベヒモスは拳を強く握った。




「俺が弱いだと……」


「うん、そうだよ、聞こえなかったのかい?」


「お前、よほど死にたいらしいな!」


「不味い!避けろ!」


「もう遅い!上級拳技【重拳】」




 強く握った拳が振り下ろされると同時に、ヴリドラが大声で叫ぶ。
 しかし、攻撃の標的であるルージュは依然と、笑っていた。




「NO.11【正義】」




 カードの束から宣言したカードをルージュが引く。
 そして何も変化せずに、ベヒモスの攻撃がルージュに直撃した。




「直撃した……」


「がっはっはっ!やっぱり口だけだったか!」




 直接打ち合ったヴリドラはベヒモスの一撃の重さを知っていた。
 耐久力のある自分でさえ回復が無ければすぐに倒れてしまう一撃、ルージュのような細い奴が耐えられるはずが無かった。




「ねぇ……口だけなのは君じゃない?」




 しかし、ヴリドラの予想とは裏腹にルージュは何のダメージも追っていない様子だった。
 その様子に三人とも信じられないといった表情だった。




「俺の攻撃を……なぜ!なぜ!」


「聞かれたら応えないとね、NO.11【正義】の能力は全てを「公平」にする力だよ」


「公平に……?」




 ルージュの言葉に反応して、グレイヴが呟いた。
 そして笑顔でルージュは説明を始める。




「そう、使用者と対象のスキル、特殊スキル、固有スキルを無効にし、普通魔法と上位魔法以外の魔法を使用不可にして、ステータスを全てCにする、「公平」な勝負をするためにね」


「なっ……なんてふざけた能力だ……」


「強制的な力の制限、自分が弱い時には強制的に技術勝負に持っていける能力ですか……」


「ふ……ふ……ふざけるな!そんな能力があってたまるか!」




 ベヒモスが叫びながら凄まじい連撃をルージュに加える。
 それをルージュは軽々とすべて避けた。




「なぜだ!同じステータスでなぜ避けられる!」


「簡単な話だよ、君はステータスに頼りすぎた」




 ルージュはそう言いながらベヒモスの顔面に蹴りを入れた。その攻撃によってベヒモスは後ずさり、蹴られた場所を押さえた。そして血が出ていないことに気がついたベヒモスは口角を上げた。それを見たルージュは少し真剣な顔になる。




「俺の防御力は変わっていないのか……?」


「血が出てない……HPとDEFが下がっても生物としてのタフさは変わらないのか」


「がっはっはっ!貴様の負けだ!Cでは俺にはダメージ与えられない!」


「……まずい、勝機を見いだせたと思ったら」




 険しい顔だったベヒモスが笑顔になり、笑顔だったヴリドラとグレイヴが険しい顔になった。
 しかし、ルージュだけは表情は変わらなかった、真剣な顔を一瞬したが、すぐに笑顔に戻った。




「なぜ……なぜ笑っていられる!」


「はぁ……本当に弱い犬ほどよく吠えるよね」


「貴様!俺を馬鹿にするのいい加減にしろ!」




 ベヒモスの攻撃をルージュは避け、顔面にカウンターを入れる。
 その攻撃もベヒモスには効かず、鼻血の一つも出なかった。




「無駄だぁ!俺には効かん!」


「仕方ない、二枚目か……」




 ルージュはそう言って【タロットカード】を発動した。




「NO.5【法王】」




 引いたタロットカードが光になりルージュとベヒモスを包んだ。
 今回も【正義】と同じく、見た目に変化はなかった。




「何をした!」


「さてね?戦ってればわかるんじゃない?」




 ベヒモスが大声で質問するも軽くいなして、攻撃を仕掛けた。
 その攻撃をベヒモスは避けることなく正面から受けた、そしてカウンターを放つ。




「効かないと言っているだろ!」




 ベヒモスに攻撃が効かないが、ルージュにもベヒモスの素人のような攻撃は当たらなかった。




「ちょこまかと……」


「さて、どうやって破らせようかな」




 ルージュがベヒモスに聞こえない程度の声でそう呟いた。
 その戦闘を見ていたヴリドラが何かを思いついたかのように立ち上がり、叫んだ。




「今のベヒモスなら俺たちも参加できる!」


「それはダメ!」


「なに……!?」


「【正義】は対象者として戦闘に参加しているものが強制的に選ばれるから、君が入ってきても状況は変わらない、むしろ悪化するかもしれないから」


「……っ!わかった……」




 ヴリドラは諦めてその場に座った。
 戦闘に参加できない自分がどうしても許せなかった。




「水の精霊よ、目の前を少しばかり凍らせまほしき、今こそ我にその力貸したまへ、上級氷魔法【氷上】」




 ルージュの手から冷機が勢いよく出てベヒモスの表面を凍らした。




「そんな攻撃冷たいだけだ!」


「…………」




 ルージュの攻撃を意に介せずに攻撃をしてくるベヒモスの攻撃を華麗によけて距離を取る。
 逃げてばかりのルージュの姿を見てベヒモスは笑う。




「がっはっはっ!やはり貴様に俺は倒せん!」


「……見つけた」




 ルージュはそう呟いてベヒモスに背を向けて走り始めた。
 そんなルージュに驚きながらも口角を上げて、追いかけた。




「逃げるとは口だけもいいとこだな!」


「…………」




 ルージュが走った方向には、ヴリドラがいた。
 そして、ヴリドラにあることを頼んだ。




「確か火を吐けるよね、あいつに向かって吐いてくれない?」


「ベヒモスにか?Cになるんだろ、あまり効果はないと思うが」


「大丈夫、それで決着がつくから」


「わ、わかった」




 ヴリドラは納得しないながらも、戦闘に参加できるという事に流され、ベヒモスに向かって火を吐いた。その火の中をベヒモスは走って抜けて、三人に近づいた。




「熱い……!熱い……!雑魚の癖に邪魔だ!」




 ベヒモスが叫んで火を吹き飛ばした。
 ヴリドラは効かなかったことで焦っていた、しかし、それとは逆にルージュは笑っていた。




「この後はどうするんだ!」


「大丈夫、もう終わったから……」


「死ねぇぇ!」




 ベヒモスが攻撃できる距離まで移動し、攻撃を放った。
 ヴリドラはせめて壁になろうとルージュの目の前に立った。




「仲間は傷付けさせない!」


「……うれしいこと言ってくれるじゃん」




 そんなヴリドラとは反対の気の抜けた声に驚きながら、攻撃が来ないことに気がつき目を開ける。
 目を開けると、目の前には手足を拘束されたベヒモスの姿があった。




「な、何だこれは!」


「NO.5【法王】その能力は、ルールを作り、破った者には致命傷を与える能力、今回は「熱いと言わない」だった。ベヒモス、君は二回言ったから致命傷レベルの一撃が二回、つまり死罪だね」


「なんだと!?そんなふざけたことがあってたまるか!」


「この能力は僕も破ったら罰を受けるんだ対等じゃないか」


「貴様は知っているんだろ!そんなものが対等なわけあるか!」




 ベヒモスは手足の拘束をどうにか外そうと暴れながら叫んだ。
 しかし、いくらたっても拘束が外れることはなかった。そんなベヒモスに近づいてルージュが言う。




「僕も教えられないよ、でもね、僕は運が良くてね、最初に思いついた条件が当たっていたんだ」


「そんな……そんな運で!俺が負けるだと!ふざけるなぁ!」


「さぁ……断罪の時間だよ」




 その言葉の瞬間、目の前に大きな剣を持った冠をかぶった大きな骸骨が出現した。
 そして大きな剣がベヒモスに一本目、二本目と固い皮膚を貫いて、刺さった。




「運だなんてひどいな、最初に生物の特性は変わらないことから、ヴリドラのブレスは威力は変わっても熱さは変わらないことがわかった」


「……ぁぁ」


「その次に氷魔法で君に熱が通るか確認すると同時に体温を下げ、より熱さに敏感にした」


「…………」


「全て最初から計算していた……って、もう聞いてないか」




 ルージュが笑顔でベヒモスの方を見ると、拘束具と骸骨は無くなり、二本の刺し傷だけがある死体だけがあった。圧倒的な勝利にグレイヴとヴリドラは言葉が出ないほど驚いていた。




「さて、君たちの主人もそろそろ終わったでしょ、行こうか」




 そう声をかけてルージュは笑顔で隠れ家へと歩き出した。
 ルージュに続いてヴりどらとグレイヴはゆっくりと歩いて向かった。






 ◆






 また少し時間が戻る、アニムスがジャックに作戦指示をしてから約3分……すでに二人とも限界に近かった。ジャックはアニムスの指示に従っていたが、レイドが来ることを知らないジャックは不安がっていた。




(アニムス様!このままでは!)


(大丈夫、あと少し、あと少しだから)




 二人は目の合図だけで会話をする。そのことにやっと気がついたパズズは笑いながら声をかけた。




「何を話しているかは知らないが、無駄だ、お前たちに俺は倒せない」


「まだわからない、勝負は別に力だけじゃない」


「ふん……まだそんな減らず口をっ!」




 アニムスに向かってパズズが攻撃を仕掛ける。
 その二人の間にジャックは移動し、人化して近接戦闘をする。




「雷の時間はもう終わりか!」


「ぐっ……!」




 パズズのパンチが綺麗にジャックの腹に決まる。
 肺の空気をすべて吐き出しながらも、ジャックは攻撃の手を緩めない。




「根性だけは認めてやろう」


「上級闇魔法【闇衣】」




 アニムスの魔法によってジャックの周りに闇が纏い、身体強化される。
 そのおかげでジャックの方が手数は多いものの、総合力では圧倒されていた。




「上級拳技【列脚】」




 ジャックの攻撃を避け逆立ちの姿勢で顔面に蹴りを入れる。
 その攻撃でついにジャックは吹き飛ばされ、近くの木で意識が朦朧としてしまった。




「一体倒せば早い!死ね、戦術級拳技【豪拳】」




 倒れているジャックに鋭い一撃を入れようとする。




「ダメ……間に合わない!」




 アニムスが魔法で防御しようとしたが、どうあがいても間に合わなかった。
 ジャックもそれを悟り、死を覚悟して目を瞑った。




(アニムス様……どうか逃げてください……)




 ジャックは最後までアニムスの安全を願っていた。




「ジャック、よく頑張ったな、アニムスを守ってくれてありがとうな」




 ジャックは懐かしい声に反応して目を開ける。
 そこにはパズズの強力な一撃を片手で止めているレイドの姿があった。




「レ……レイド様……!」


「そんな感極まんなよ、まだ戦闘中だぞ」




 レイドはやさしい笑顔でジャックにそういった。
 未だに拳を捕まえられているパズズは何とか逃げようとしていた。




「今は寝てろ、ジャック」


「はい……後はお願いします」




 レイドがそう言うとジャックは意識を手放して目を瞑った。
 ジャックが気を失ったのを確認したレイドは手を離して、ジャックを持って、その場から消えた。




「なに!?一体どこに行った!」


「レイド……」


「待たせたな、アニムス」


「……違う」




 一瞬でパズズの視界から消え、真後ろのアニムスの場所まで移動していた。
 ジャックをそっと地面に寝かせ、アニムスの前に行きそう言うと、アニムスは首を横に振った。




「な、なにが違うんだ……?」




 レイドはなにが違うのか分からずに少し慌てていた。
 そんな様子のレイドを見てアニムスは笑いながらレイドに言う。




「おかえり、レイド」


「…………ただいま、アニムス」




 アニムスの言葉で気づいたレイドは言い換え、そのまま抱きしめた。
 そして抱きしめたときに背中や腕の傷に気がついた。




「そこにいたか!俺の攻撃を防ぎやがって!」




 ようやくレイドの場所を見つけたパズズはレイドに襲いかかった。




「戦闘中にイチャイチャとは、死にたいようだな!」




 パズズの爪が伸び、レイドを攻撃しようとした瞬間、パズズの動きが止まった。
 その理由は、レイドからあふれるパズズにしかわからない、凄まじいほどの殺気だった。




「殺気を全体に振りまくのは簡単だ、だがな、他の奴を巻き込むの三流だぜ」




 レイドはアニムスから離れ、動きの止まったパズズのことを睨む。
 その目は大きく開き、明らかに激怒していた。




「こっちから手を出したことだ、手を出した奴にやり返されても文句は言えねぇ、でもな……」




 レイドの殺気が治まり、パズズが動けるようになる。
 しかし、パズズは攻撃ができなかった……レイドからあふれ出る圧倒的な強者の雰囲気で。




「それを理由に、関係のない奴が俺の仲間を傷付けるのは許さねぇ!」


「…………っ!」




 レイドの叫び声と共に放たれた一撃、パズズは認識すらできずに吹き飛ばされ、地面を転がった。
 ルージュが創りだした空間の時よりも鋭い一撃だった。




「この半年で俺は成長した、神玉の補正なしでも戦えるほどな、だが戻って来た今は神玉の補正が上乗せされる」




 レイドは自分の力について説明しながら吹き飛んだパズズに近寄る。
 そして右目を神玉に変えると、右目が光り出した。




「教えてやる、本当の神玉を……」


「舐めるなぁぁぁ!」




 パズズが立ち上がりレイドに全速力で近寄り攻撃を仕掛ける。
 レイドはその攻撃をなんの戦闘準備もなく待ち構えながら、詠唱を開始した。




「反逆の力、今こそ魂と融合しろ【神玉解放】」




 レイドは道中でロキから教えてもらった……【勇者解放】よりも一段階上の状態【神玉解放】を使った。【勇者解放】は解放率5%~79%の時、神玉の一部の力を解放するスキル、【神玉解放】はさらに力を解放するスキル。




「戦術級拳技【豪拳】」




 パズズの攻撃を体をそらして避け、カウンターを入れる。
 凄まじい速度で吹き飛ばされたパズズは木を倒しながら地面を転がって行った。




「お前……猿より弱いぞ」




 レイドの髪と目は真っ黒に変わり、神々しい雰囲気が漂っていた。
 吹き飛ばされたパズズは顔が吹き飛んでいて、絶命していた。




「ふぅ……終わったか……」




 レイドは【神玉解放】を解除して、いつも通りの姿に戻った。
 あまりの強さにアニムスもあっけを取られていた。




「帰ろう、俺たちの家に」




 そうアニムスに言って、ジャックのことを担いでアニムスの魔法を使い、隠れ家へと向かった。
 改装されて、一軒家になった隠れ家でレイドが驚いていたのは余談である。

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