ダブル・デザイア 〜最強の力は神をも超える〜

真心の里

剣vs破壊(レイド編)

 
「はぁはぁはぁ……実力を見誤った!」




 レイドは怪我をしている右腕を押さえんがら壁の裏で呟いた。
 そして壁をから敵を見るようにチラッと見た。




「意味わかんねぇぞ、あの強さ!」


「これで少しはわかっただろ?」


「……っ!」




 レイドはみている方向と反対方向から聞こえた声に驚き振りかえる。
 不敵な笑みと共に立っている敵からレイドは慌てて敵に背を向けて逃げた。




(クソが!何であんな奴が居やがるんだ……)




 レイドは逃げながら今の状況になった経緯を思い出す。






 ◆






 ハデスの暴走の後、レイドは神玉を集めることになった。
 しかし今いる大陸ではシンの報告により指名手配されてしまったため大陸を出ることになった
 とても長い旅路に退屈しながらも静かに到着を待った。




「やっとか……」




 レイドはそう呟いて船からこっそりと出た。
 その後、見つからないうちに素早く町の人ごみにまぎれて行った。




(本当にここにいるんだろうな)


『少しは僕のこと信じてよ、前の僕ならまだしもハデスが出てくれたおかげで僕も能力が少し戻ったんだから。
 そのおかげであの居心地の悪い白い空間に来なくて済むんだからさ!』


(はぁ……仕方ない、それで?どこに神玉があるんだ?)


『それはねぇ、この都市の中心にある城の中に保管されているっぽいね』


(神玉の種類まではわからないんだっけか?)


『そうだね、神玉を見つけることに特化しているとはいえ種類までは特定できないかな』


(そうか……場所がわかるだけましだと思うか)




 レイドはふと目を開けてぶつかったチンピラに目を向けた。
 チンピラ達はレイドにがんつけながらひとごみから離れ人目のつかない場所に連れて行った。




「おいおい!あんちゃん、ぶつかっといて謝らねぇとはどういうつもりだ!?」


「痛ぇー痛ぇーよ!これは慰謝料たんまり貰わねぇとな!」


「なに黙ってんだよ!ビビって何も言えないってか!」




 三人のチンピラ達はレイドを囲み威圧をしながらいちゃもんをつけた。
 レイドはそんな状態にあきれため息をついてチンピラに攻撃をした。




「グォ……!」


「お前っ……何しやがる!」




 真正面にいたチンピラのボディーにパンチを入れ悶絶させた。
 仲間が地面に倒れると残りの二人もレイドに襲いかかった。




「ぐぎゃっ!」


「おごっ!」




 チンピラ程度の攻撃がレイドに当たるわけがなかった。
 それに対してレイドの攻撃は鋭くチンピラに一瞬で地面を舐めさせた。




「まったく、どこ行ってもこういう奴はいるもんなのか?」




 レイドはそう呟きながらまた人ごみにまぎれて行った。
 少し歩くとレイドはすぐに城の城門前についた。




(さて、どうやって神玉を盗むか……)




 レイドは城に侵入する方法を顎に手を当てて考えた。




(はぁ、頭が悪い俺には思いつかねぇな、作戦なしで直感で行くしかないか)




 レイドはそう考え城の裏門に行き正面から入ろうとした。
 もちろん裏門で人目がないとはいえ門番はいるため入る前に止められた。




「貴様!この城に何用だ!」


「…………」


「答えぬのなら捕らえさせてもらうぞ!」




 門番がレイドに手錠をかけようとした瞬間、レイドの拳が顔面めがけ放たれ門番が吹き飛ばされた。
 その音に驚き近くにいた騎士たちがそのもとに集まる。




「何事だ!」


「門番が倒されています!」


「なに!?侵入者だ、緊急命令で招集しろ!」




 一番近くにいた騎士が偉そうな男にそう告げると男は騎士たちに命令を出した。
 騎士たちはその命令に従い早急に城の一室に集まった。




「何者かがこの城に侵入した!すでに一人同士がやられている!我ら騎士団を舐めたことを後悔させてやれ!」


「「「はい!」」」


「よし!では行くぞ!」


「「「はい!」」」




 団長が号令し気合を入れレイドを探すように大声で指示を出した。
 気合の入った騎士団はレイドを一生懸命捜索し始めた。




「ふぅ、ようやく行ったか」




 レイドは騎士団が集まっている部屋に隠れていた。
 騎士団が全て部屋から出た後に椅子に座り何かを待った。




「……それで?何で気がついてて部下を行かせたんだ?」


「いくら数がいようとも、あまりにも違う質は覆らん」




 出て行ったはずの騎士団団長が部屋に戻りレイドに話しかけた。




「つまり部下は邪魔だったってことか……おまえ、一人で勝てると思ったのか?」


「勝てる勝てないじゃない、騎士団団長として勝たなければならない」




 団長はそういった瞬間ポーチから光る球を取り出して砕いた。
 砕かれると同時に団長とレイドは真っ白い空間に転移した。




「神玉を持っているお前ならこの場所も分かってはいるんだろ?」


「…………神玉を持っていることをなぜ知っている」


「こっちにはそれを知る方法を持っている、とだけ言っといてやろう」


「やっぱそう簡単には教えてくれないか、なら体に聞くしかないようだな」


「私……騎士団団長ツクリ・クルアが簡単にやられると思うなよ!」




 団長は腰に刺さっている剣を取り出してレイドに向ける。
 レイドも【空間倉庫】から剣を取り出して臨戦態勢を取った。




「力の差も分からないバカが!上級剣技【百切り】」


「やはり鋭い剣筋だ……上級剣技【燕返し】」




 レイドの攻撃にクルアはすべてカウンターを入れる。
 しかしそのカウンターをレイドは簡単によける。




「この距離で避けるか……上級剣技【回転突き】」




 避けられたことを確認したクルアは剣を引きさらに攻撃を加える。
 レイドは体を後ろにのけぞらして攻撃を避け、その勢いのまま下から蹴りを入れた。




「ぐっ……!」


「その程度か?戦術級剣技【瞬連斬】」




 レイドの凄まじい早さの攻撃が鎧の上からクルアを襲う。
 切られてはいないものの、そこそこのダメージは負ってしまっていた。




「かはっ……!言われた通りの結果か」


「さぁ、質問に答えろ……お前は何でこの世界を知っている、そして俺の神玉についてどこまで知ってやがる」


「はぁはぁはぁ……主に仇をなす者に何も教えるつもりはない」




 レイドが圧をかけるもクルアは反抗的な目でレイドを睨みつけた。




「お前はもう負けているんだ、もう実力差はわかっているだろう?」


「いつ私が負けた?まだ私は負けていない!」




 クルアは痛みに我慢しながらレイドと距離を取った。
 そんなクレアを見ながらレイドは呆れながら声をかける。




「まったく、少しは諦めるということを知ったらどうなんだ?」


「これをもらっておいて正解だった……」




 レイドの言葉を無視してクレアはポーチから謎の箱を取り出す。
 その箱を見ると同時にレイドの顔が険しくなった。




「神玉を持っていたのはてめぇだったか!」


「やはりこれが目的だったようだな」


「お前の謎の自信は神玉だったわけか、だがお前程度が適合者なわけがない、お前……死ぬぞ?」


「はぁはぁはぁ……知っているさ死ぬことぐらい、だがそれは神玉に適合がない時だけだろ!」




 そう叫びながらクレアは謎の箱を開いた。
 謎の箱の中から光を発する球が物理法則を無視して浮かび上がりクレアの体内に入って行った。




「ぐっ……ガァァァァァァアアアアア!」


「まさか、適合するわけないよな?」


『レイド……少し言いずらいんだけどさ、たぶんこいつこの神玉の適合者だよ』


「まじか……」




 神玉の適合者はその種類によって決まる。神玉に適性がある場合はその神玉を入れることができる。
 もちろんない場合は魂が破壊され死んでしまう。




「こっちも本気を出さないといけなさそうだ、ここまで神の力発揮してるんだ、種類わかるだろ?」


『そうだね……当たりだよ、剣の神玉だ』


「それは確実に欲しい限りだ、解放率は?」


『予測だけど、5~10かな』


「了解した」




 レイドは心の中のものと会話をして距離を一層とり詠唱を始めた。
 レイドの舌にある模様がそれと同時に光り出した。




「剣ならこっちが相性いいだろ、破壊の力、今こそ解放しろ【勇者解放】」




 レイドの髪色と目の色が黒く変化して禍々しいオーラを放つ。
 クレアも苦しむのが落ち着きレイドのほうを向きながら話しかけた。




「ふぅ……ふぅ……これで対等だ、剣の力、今こそ解放しろ【勇者解放】」




 クレアも【勇者解放】を使い神玉の力を解放した。
 そして2人は少しの間にらみ合い戦闘を再開した。




「破壊の力、我に宿れ【全壊フルブレイク】」


「剣の力、我の剣道に革命を起こせ【剣聖】」




 2人の身体能力が一気に上昇し凄まじい攻防が繰り出される。
 今まで押していたはずのレイドも剣の神玉に剣で挑むのは厳しく対等まで繰り上げられていた。




「聖剣術【光剣】」




 先にこの均等を崩したのはクレアだった。
 クレアの剣が光を放ちながら凄まじい早さでレイドに攻撃を仕掛けた。
 レイドはこのスピードに対応できずにもろにダメージを負ってしまった。




「すぅはぁぁ……戦略級剣技【蝶舞斬】」




 クレアが深呼吸してレイドに追撃を加える。
 剣がまるで柔らかいものかのようにくねくねと曲がったようになり不規則に斬撃がレイドを襲った。




「ぐっ……!あまり調子に、調子に乗るな!」




 レイドはさらに近づいてきていたクレアに頭突きをして蹴り飛ばした。
 そして【全壊フルブレイク】により身体能力を強化していたため深く切れてはいなかったが少しの出血と、内部へのダメージを負っていた。




「レイド、剣の勇者に対して剣での戦闘とは随分と自信があるんだな」


「はぁ……はぁ……」


「自信じゃないよな、お前は剣しか使えないのだから!」




 クレアは一瞬で近寄り上から大ぶりで攻撃を仕掛けた。
 レイドはそれを受け止め反撃をした。そしてまた激しい攻防が始まった。




「精霊剣技【精神切り】」




 クレアの攻撃がレイドの剣や体をすり抜ける。
 しかし、攻撃がすり抜けたのにもかかわらずレイドはダメージを受けた。






「精神への攻撃か……破壊の力、精を滅しろ【精壊】」




 ダメージを受けながらも放ったレイドの一撃もガードをすり抜け精神を傷つけた。
 その後も2人は精神攻撃をし続けた。




「精霊剣技【精神断斬】」


「破壊の力、攻撃を破壊せよ【攻壊】」




 クレアがさらに強力な一撃でレイドに攻撃を仕掛けた。
 しかし、その攻撃はレイドによって無効化され隙ができてしまった。




「しまっ……」


「随分と偉そうなこと言ってくれたじゃねぇか、破壊の力、我の拳に宿れ【破壊拳ブレイクブロー】」




 レイドの強力な一撃がクレアの無防備な体にきまり剣を離してしまった。
 その瞬間を狙いレイドはさらに攻撃を加えた。




「破壊の力、我の拳に宿り破壊しつくせ【破壊連ブレイクコンボ】」




 レイドの攻撃をもろに食らったクレアは全身の骨がおられ戦闘不能になった。
 それと同時に2人の【勇者解放】が解けた。




「がはっ……!」


「これで気絶しないってのは神玉のおかげか、自分で使っていてなんだが、まったくふざけた代物だ」




 レイドはそんな愚痴をこぼしながらクレアに近づいた。




「もう動けねぇだろ……じっとしてな」


「な、何をするつもりだ」




 レイドはクレアの胸に手を置いて詠唱を始めた。




「反逆の力、今こそ解放しろ【勇者解放】」




 右目を神玉に変更して【勇者解放】を使用した。
 そして指を少し切り血でクレアの服に魔法陣らしきものを書きはじめた。




「本来、神玉ってのは取り出すことはできない、しかし俺の神玉ならそれが可能になる」


「はぁ……はぁ……やはりロキの神玉か」


「…………」


「図星……だったか?」




 レイドは魔法陣を書き終えるとその中心に手を置いて深呼吸をして息を整え詠唱を始めた。




「本当は情報源を知りたかったがお前はどんなことしても口を割らなさそうだ」


「よくわかってんじゃねぇか」


「最後まで無駄な意地を張りやがって……反逆の力、神の力を手に入れるため、理に反逆せよ【神奪】」




 クレアの体から神玉が追い出される。そして【空間倉庫】から取り出した謎の箱に神玉をしまった。
 その様子を見たクレアはレイドに質問を投げかけた。




「なぜ……おまえは神玉を二つ、体に……?」


「……最後だから答えてやろう、神玉とは魂の契約だ。と融合してその力を発揮する。だから神玉に適合しないものは魂との拒絶反応で死んでしまう」


「それは、知って……いる」


「つまり、魂が一般より強ければ神玉を複数契約しようが何の問題もない。まぁ、神玉の適合者の時点で普通よりはるかに強いんだがな。
 それより俺ははるかに強いらしい」


「はっはっはっ……才能の……差か……」




 レイドの言葉を聞いたクレアは生まれ持っての能力の違いに笑ってしまった。
 そうしようもない差に死ぬ間際に諦めてしまっていた。




「さて……この部屋から抜け出さないとな」




 レイドはそんなクレアを剣で心臓を一突きして殺害した。
 そしてこの白い空間から出る方法を考えた。




「この方法しかないか、災害級剣技【時空切り】」




 レイドが上から力いっぱい剣を振り下ろすと白い空間に亀裂が入った。
 その亀裂から段々とその空間が崩壊して元の部屋に戻った。




「ふぅ……見つからないうちに帰るか」




 もとの部屋に戻ったレイドは窓から城を出て裏路地に向かった。
 そして謎の箱から神玉を取り出して体の中に入れた。




「ぐっ……!すこし、休憩するか……」




 人目の付かない場所だということを確認して座りゆっくりと眠りに就いた。
 自分に近寄る影があるとも知らずに……



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