箱庭の魔王様は最強無敵でバトル好きだけど配下の力で破滅の勇者を倒したい!
39・猪豚組との決着
おぞましい怪物の姿。
威圧が生み出した幻覚。
魔王のイメージにルートリッヒが圧力的な想像を走らせてしまう。
それが俺の背後に映し出されていた。
すべてはルートリッヒが想像した恐怖心のイメージでしかないのだが、それだけルートリッヒから見た俺は強大で凶悪だったのだろう。
表情を青ざめたルートリッヒがジリリっと半歩だけ下がった
「ま、幻ブヒ……」
「どうした、豚野郎?」
俺の言葉にルートリッヒが我を取り戻す。
顔を左右に振った後に両頬を両手でパシパシと音を奏でながら叩いた。
気合いを入れ直している。
幻覚が消えたのかルートリッヒが俺を凝視していた。
「幻だブヒ……」
その一言を最後にルートリッヒの眼光に鋭さが戻る。
闘志が再び燃え上がる。
負のイメージを乗り越え、恐怖心を克服した眼光だ。
そして再び拳を背後まで大きく振りかぶった。
「これで、決めてやる!!」
ルートリッヒは体を捻って力を溜める。
捻れた腰の筋肉が反発力に軋んでいた。
「ぬぅぅうおおおお!!」
全力を越えた全力のパンチを狙っているのだろう。
俺は両掌で顔を叩くと一歩前に踏み出しながら胸を張った。
「よ~~し、ドンと来いや!!」
するとキルルが心配そうに叫ぶ。
『魔王様、正面から受け止める気ですか!!』
「当然だ!!」
俺が覚悟を叫んだ刹那、ルートリッヒが唸った。
「ブヒッ!!!!!」
トルネード投法からのフルスイングパンチだ。
豪拳が唸りながら圧力と共に超速で迫ってくる。
「来いや!!」
しかし、俺は避けない、躱さない、受け止める。
ド級の拳骨が俺の顔面に激音と共にヒットした。
ドがンっと轟音が空気を揺らして周囲に広がる。
それはまるでショックウェーブで出来た透明な津波のようだった。
周囲で観戦していた者たちの髪の毛を靡かせる。
「ぬぬぬっ!!」
「ブヒブヒブヒ!!!」
腕力、速度、体重、握力、タイミング、それらが生み出す破壊力が、一つとなって俺の顔面を撲り押した。
超破壊力のパンチだ。
だが、俺は踏ん張りながら耐える。
「うぬぬぬっ!!!」
顔の骨が砕けて、仰け反った背骨に皹が走る。
それでも倒れず耐えて見せた。
そして、豪拳が止まる。
「ば、馬鹿なブヒ……」
俺はルートリッヒの拳骨を顔面に受け止めたまま更に前に前にと押し進む。
「ぐぐぐっ……!!??」
ルートリッヒは信じられないと踏ん張った足で押し込みを耐えていたが、パワーで俺に圧倒されていた。
少しずつ後方に下がっている。
「今度は俺の一撃を食らってみろや!!」
俺はルートリッヒの拳を顔面から払いのけるとジャンプしてからスカーフェイスをぶん殴った。
「オラァアアア!!!」
空中で体を捻り、腕を振り切り、ルートリッヒの顔面を殴り飛ばした。
「ブヒィ!!!」
俺の拳が振り切られると、その衝撃にルートリッヒの頬骨が砕けて頬の皮が剥がれるように豚鼻が飛んだ。
ルートリッヒの巨体がグルリと回ってからダウンする。
倒れ込むルートリッヒの巨漢に周囲の地面が派手に揺れた。
「どうだい、俺様のパンチは!!」
「ブヒィ……イィ……」
だが、ふらつきながらもすぐさまルートリッヒが立ち上がった。
その顔に千切かけた豚鼻がぶら下がっている。
皮が剥がれた顔面からは滝のように鮮血が流れ落ちていた。
スカーフェイスがグシャグシャである。
「ルートリッヒ親分っ!!」
堪らずアビゲイルが叫んだ。
「お、おのれ……ブヒ……」
ルートリッヒが愚痴を溢した次の瞬間であった。
ぶら下がっていた豚鼻が元の位置に戻って治癒を開始する。
無勝無敗の能力が、俺の意思とは別にそうさせるのだ。
「ブヒブヒ!? 痛みが消えていくブヒ!?」
ルートリッヒは回復した自分の顔をベタペタと触りながら目を丸くさせていた。
そんなルートリッヒに俺は両腕を胸の前で組ながら言ってやる。
「これが俺の無勝無敗の能力だ!」
「無勝無敗……ブヒ?」
「自分が誰にも殺されない代わりに、俺が誰も殺せない能力だ!」
「ブヒィ……??」
ルートリッヒだけでなく、多くのオークが言葉の意味を理解しきれていない表情を浮かべていた。
何匹ものオークたちが首を傾げている。
「要するに、今みたいにお互い負傷しても回復するし、お互いが死んでも生き返るって能力なんだよ!」
俺単体のリジェネレーションではなく、対戦相手を含めた全体のリジェネレーションなのだ。
拳を開いたルートリッヒが言う。
「それじゃあ、我々の勝敗はつかないブヒか?」
「だな!!」
「だなって……。それではこの勝負はどうなるブヒ?」
「飽きるまで続けるだけだ!」
「あ、飽きるまで……やるブヒか?」
「そうだ!!」
「そんな馬鹿なブヒ……」
「いいから、構えろ。拳を握れ!!」
「だが、戦っても勝負はつかないのだろうブヒ?」
「だからって、戦いを止める理由になるか!!」
その時に、魔王とルートリッヒの戦いを観戦していた敵味方の全員が思った。
戦いを止める理由になるだろうって……。
皆が呆れるなかで、全裸の俺が魔王らしく偉そうに怒鳴った。
「いいか、良く訊け、オークども。俺は女神から予言されてこの世界にやってきた。勇者の中に世界を崩壊させる野郎が現れるからぶっ殺せってな!」
オークたちは唐突に何を言い出すのかと俺の話に耳を傾ける。
「だが、俺は誰も殺せない。俺が殺しても生き返るからだ。だから部下に勇者を殺させて、世界を崩壊から救う。故にお前ら全員俺の部下になれや!!」
オークたちがざわつき出した。
だが、そのざわつきをルートリッヒが打ち消す。
「断るブヒ!!」
断られた……。
「な、なんで~……?」
俺はルートリッヒに何で断るのかを訊いてみた。
ルートリッヒは凛々しく理由を述べる。
「我々オークはかつて魔王軍の奴隷だったブヒ。我々の先祖は奴隷として、この鉱山で働かされていたと聞くブヒ!」
「奴隷……?」
オーク一族の怨みだ。
随分と古い話なのだろう。
魔王デスドロフが健在だったのは何千年も昔だと聞くからな。
ならば、何代も前の話だろう。
そのころからの怨み節だ。
「我々オークの祖先は、以前は魔王デスドロフの息子バンデラス様の親衛隊だったブヒ。だが、バンデラス様が勇者に撃ち取られた罪を背負わされ、ここに奴隷として繋がれたブヒ。今ではこの地に住み着いては居るが、その時の恨みは忘れていないブヒ。勇者にも、魔王にもだブヒ。だからバンデラス様が復活されたのならば、再び名誉挽回のために支えるが、他の魔王には恨みがあるため使えるのは拒否するブヒ!!」
あれれ?
これって……。
こいつら魔王デスドロフには敵対心を持っているが、息子のバンデラスには忠義を持っているのか?
『ま、魔王様……』
俺とキルルの目が合った。
人柱の彼女が何を言いたいのか直ぐに理解できた。
「なあ、ルートリッヒ」
「なんだブヒ!」
「ちなみに俺の体はバンデラスの体だ。魂こそ違うが、俺はバンデラスの生まれ変わりみたいなもんなんだわ~」
「ブヒっ?」
褌一丁のスカーフェイスオークが首を傾げた。
「だから、お前らやっぱり俺の配下に加われ」
俺の言葉を訊いてもルートリッヒは疑っている。
「本当にバンデラス様の体だブヒか?」
俺は首元の大きな傷を見せながら言った。
「ああ、首から上は違うが、体はバンデラスだ。この股間のチンチロリンはバンデラスのものだぞ。よ~~く見て確認してみろ」
「いや、えっと、ブヒブヒブヒ……」
「まあ、とにかく冷静に話し合おうや」
「ブヒ……」
ルートリッヒが一つ頷く。
最後は呆気なく話が纏まるのだが、こうして話し合いの末に、ルートリッヒが魔王軍に加わることとなった。
猪豚組180匹のオークが俺に忠義を誓い魔王軍に参加する。
威圧が生み出した幻覚。
魔王のイメージにルートリッヒが圧力的な想像を走らせてしまう。
それが俺の背後に映し出されていた。
すべてはルートリッヒが想像した恐怖心のイメージでしかないのだが、それだけルートリッヒから見た俺は強大で凶悪だったのだろう。
表情を青ざめたルートリッヒがジリリっと半歩だけ下がった
「ま、幻ブヒ……」
「どうした、豚野郎?」
俺の言葉にルートリッヒが我を取り戻す。
顔を左右に振った後に両頬を両手でパシパシと音を奏でながら叩いた。
気合いを入れ直している。
幻覚が消えたのかルートリッヒが俺を凝視していた。
「幻だブヒ……」
その一言を最後にルートリッヒの眼光に鋭さが戻る。
闘志が再び燃え上がる。
負のイメージを乗り越え、恐怖心を克服した眼光だ。
そして再び拳を背後まで大きく振りかぶった。
「これで、決めてやる!!」
ルートリッヒは体を捻って力を溜める。
捻れた腰の筋肉が反発力に軋んでいた。
「ぬぅぅうおおおお!!」
全力を越えた全力のパンチを狙っているのだろう。
俺は両掌で顔を叩くと一歩前に踏み出しながら胸を張った。
「よ~~し、ドンと来いや!!」
するとキルルが心配そうに叫ぶ。
『魔王様、正面から受け止める気ですか!!』
「当然だ!!」
俺が覚悟を叫んだ刹那、ルートリッヒが唸った。
「ブヒッ!!!!!」
トルネード投法からのフルスイングパンチだ。
豪拳が唸りながら圧力と共に超速で迫ってくる。
「来いや!!」
しかし、俺は避けない、躱さない、受け止める。
ド級の拳骨が俺の顔面に激音と共にヒットした。
ドがンっと轟音が空気を揺らして周囲に広がる。
それはまるでショックウェーブで出来た透明な津波のようだった。
周囲で観戦していた者たちの髪の毛を靡かせる。
「ぬぬぬっ!!」
「ブヒブヒブヒ!!!」
腕力、速度、体重、握力、タイミング、それらが生み出す破壊力が、一つとなって俺の顔面を撲り押した。
超破壊力のパンチだ。
だが、俺は踏ん張りながら耐える。
「うぬぬぬっ!!!」
顔の骨が砕けて、仰け反った背骨に皹が走る。
それでも倒れず耐えて見せた。
そして、豪拳が止まる。
「ば、馬鹿なブヒ……」
俺はルートリッヒの拳骨を顔面に受け止めたまま更に前に前にと押し進む。
「ぐぐぐっ……!!??」
ルートリッヒは信じられないと踏ん張った足で押し込みを耐えていたが、パワーで俺に圧倒されていた。
少しずつ後方に下がっている。
「今度は俺の一撃を食らってみろや!!」
俺はルートリッヒの拳を顔面から払いのけるとジャンプしてからスカーフェイスをぶん殴った。
「オラァアアア!!!」
空中で体を捻り、腕を振り切り、ルートリッヒの顔面を殴り飛ばした。
「ブヒィ!!!」
俺の拳が振り切られると、その衝撃にルートリッヒの頬骨が砕けて頬の皮が剥がれるように豚鼻が飛んだ。
ルートリッヒの巨体がグルリと回ってからダウンする。
倒れ込むルートリッヒの巨漢に周囲の地面が派手に揺れた。
「どうだい、俺様のパンチは!!」
「ブヒィ……イィ……」
だが、ふらつきながらもすぐさまルートリッヒが立ち上がった。
その顔に千切かけた豚鼻がぶら下がっている。
皮が剥がれた顔面からは滝のように鮮血が流れ落ちていた。
スカーフェイスがグシャグシャである。
「ルートリッヒ親分っ!!」
堪らずアビゲイルが叫んだ。
「お、おのれ……ブヒ……」
ルートリッヒが愚痴を溢した次の瞬間であった。
ぶら下がっていた豚鼻が元の位置に戻って治癒を開始する。
無勝無敗の能力が、俺の意思とは別にそうさせるのだ。
「ブヒブヒ!? 痛みが消えていくブヒ!?」
ルートリッヒは回復した自分の顔をベタペタと触りながら目を丸くさせていた。
そんなルートリッヒに俺は両腕を胸の前で組ながら言ってやる。
「これが俺の無勝無敗の能力だ!」
「無勝無敗……ブヒ?」
「自分が誰にも殺されない代わりに、俺が誰も殺せない能力だ!」
「ブヒィ……??」
ルートリッヒだけでなく、多くのオークが言葉の意味を理解しきれていない表情を浮かべていた。
何匹ものオークたちが首を傾げている。
「要するに、今みたいにお互い負傷しても回復するし、お互いが死んでも生き返るって能力なんだよ!」
俺単体のリジェネレーションではなく、対戦相手を含めた全体のリジェネレーションなのだ。
拳を開いたルートリッヒが言う。
「それじゃあ、我々の勝敗はつかないブヒか?」
「だな!!」
「だなって……。それではこの勝負はどうなるブヒ?」
「飽きるまで続けるだけだ!」
「あ、飽きるまで……やるブヒか?」
「そうだ!!」
「そんな馬鹿なブヒ……」
「いいから、構えろ。拳を握れ!!」
「だが、戦っても勝負はつかないのだろうブヒ?」
「だからって、戦いを止める理由になるか!!」
その時に、魔王とルートリッヒの戦いを観戦していた敵味方の全員が思った。
戦いを止める理由になるだろうって……。
皆が呆れるなかで、全裸の俺が魔王らしく偉そうに怒鳴った。
「いいか、良く訊け、オークども。俺は女神から予言されてこの世界にやってきた。勇者の中に世界を崩壊させる野郎が現れるからぶっ殺せってな!」
オークたちは唐突に何を言い出すのかと俺の話に耳を傾ける。
「だが、俺は誰も殺せない。俺が殺しても生き返るからだ。だから部下に勇者を殺させて、世界を崩壊から救う。故にお前ら全員俺の部下になれや!!」
オークたちがざわつき出した。
だが、そのざわつきをルートリッヒが打ち消す。
「断るブヒ!!」
断られた……。
「な、なんで~……?」
俺はルートリッヒに何で断るのかを訊いてみた。
ルートリッヒは凛々しく理由を述べる。
「我々オークはかつて魔王軍の奴隷だったブヒ。我々の先祖は奴隷として、この鉱山で働かされていたと聞くブヒ!」
「奴隷……?」
オーク一族の怨みだ。
随分と古い話なのだろう。
魔王デスドロフが健在だったのは何千年も昔だと聞くからな。
ならば、何代も前の話だろう。
そのころからの怨み節だ。
「我々オークの祖先は、以前は魔王デスドロフの息子バンデラス様の親衛隊だったブヒ。だが、バンデラス様が勇者に撃ち取られた罪を背負わされ、ここに奴隷として繋がれたブヒ。今ではこの地に住み着いては居るが、その時の恨みは忘れていないブヒ。勇者にも、魔王にもだブヒ。だからバンデラス様が復活されたのならば、再び名誉挽回のために支えるが、他の魔王には恨みがあるため使えるのは拒否するブヒ!!」
あれれ?
これって……。
こいつら魔王デスドロフには敵対心を持っているが、息子のバンデラスには忠義を持っているのか?
『ま、魔王様……』
俺とキルルの目が合った。
人柱の彼女が何を言いたいのか直ぐに理解できた。
「なあ、ルートリッヒ」
「なんだブヒ!」
「ちなみに俺の体はバンデラスの体だ。魂こそ違うが、俺はバンデラスの生まれ変わりみたいなもんなんだわ~」
「ブヒっ?」
褌一丁のスカーフェイスオークが首を傾げた。
「だから、お前らやっぱり俺の配下に加われ」
俺の言葉を訊いてもルートリッヒは疑っている。
「本当にバンデラス様の体だブヒか?」
俺は首元の大きな傷を見せながら言った。
「ああ、首から上は違うが、体はバンデラスだ。この股間のチンチロリンはバンデラスのものだぞ。よ~~く見て確認してみろ」
「いや、えっと、ブヒブヒブヒ……」
「まあ、とにかく冷静に話し合おうや」
「ブヒ……」
ルートリッヒが一つ頷く。
最後は呆気なく話が纏まるのだが、こうして話し合いの末に、ルートリッヒが魔王軍に加わることとなった。
猪豚組180匹のオークが俺に忠義を誓い魔王軍に参加する。
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