ファミレスその１

まだ二十台前半の頃の話し

とある企業に出向していた。
新規に清掃事業部を作り増強したいとの事だった。

自身は東京支店の部隊に所属。
横浜支店にも三部隊有り、計四部隊で都内全域をカバーしていた。

東京支店は横浜支店のカバー的な位置の部隊。

深夜に営業の終わった店舗や飲食店を周り床のワックス掛けがメインだった。

とある日、横浜支店の責任者が東京支店に相談に来た。

(横浜)
忙しい所悪いんだけど、この三店舗東京支店の受け持ちにしてくれませんか？

三店舗とは、新規参入のファミレスで居抜き店舗で有る。

(猫又)
いいけど、人数的に1日一件しか出来ないよ？店舗大きいから。

(横浜) 
そうなるね…
ちょっと流れ変えたくて…

(猫又)
ん？
どうかしたのか？

(横浜)
あの系列行くとバイトが辞めちゃうんだよね～

(猫又) 
はぁ？なんだそりゃ？理由は？

(横浜)
いや～よく解らないんだよね～アハハ

(猫又)
相変わらず適当だなお前は!
近くに居る部隊長呼べよ!
何かやだわ!

結局翌日に横浜の部隊長の一人が支店に来た。

(猫又)
悪いね来て貰って。

(部隊長)
大丈夫ですょ～～こうなると皆で言ってた所なんで。
スミマセンうちらの班長アホなんで…

(猫又)
相変わらずだね奴は。
で、例の三店舗はどうしたの？
何か辞めちゃうって聞いたけど。

(部隊長)
三店舗の内、この二店舗なんですけど、スゲー出るんすょ…幽霊が…見たバイトが皆辞めちゃって、もう二十人位になって問題になってます。

(猫又)
支店長には話し通ってんの？

(部隊長)
許可は得てます。

(猫又)
なら行くしかないか……


後日予定を組、三店舗を回った。

確かにラップ音や人が居る気配、話し声などが有ったが、特に問題は無かった。

(猫又)
大した事無かったね。

(東京１)
ですよね～ビビリ過ぎなんすょ～

更に数ヶ月経った頃、それに気が付いた。

その店舗は2階建て。
広い国道の交差点に立ち、駐車場は約十台ほど駐車可能。

ワックスを掛ける為に2階から作業は始まる。
2階が大体終わりワックス掛けの頃に、メインは一階に移動しワックス準備に取り掛かるのだ。
ワックス掛けは一名が基本。


二階から一階迄のワックス掛けの終わりを合図として一旦休憩。

全員で駐車場で休憩。

(猫又)
あれ？
二階の室内の電気付いてるな？
消し忘れたかな？


二階の階段の窓が明るいので気が付いた。

(東京１)
あれ？
誰か居ませんか？

(東京２)
階段の所に立ってますね？

(猫又)
まだワックス乾いて無いのに東京３が見に行ったのか？

(東京２)
いや、彼は飲み物買いに行きましたよ？

その場の全員で顔をみあわせ、これが横浜支店の言っていた事なのか？

硝子に写る影は長髪なのは靡く髪で想像は付くが、メンバーに長髪は居ない。

(猫又)
あの影おかしいよな？

(東京１・２)
なにが？

(猫又)
あそこって俺達立っても頭位しか写らなく無いか？

(東京１)
確かに………
胸近く迄写ってますよね？

一同無言……

(猫又)
取り敢えず終わらせるしかないから、揃ったら皆で一階終わらせて、皆で電気消しに行こう!

一同激しく同意。

ワックスは掛け逃げ。
掛けながら店内から出る事を言います。

階段下迄来た頃、皆で二階の電気を消しに行くも、電気は点いておらず真っ暗。

(猫又)
そうゆう事だから！と少し大きい声で皆に言いながら退散。

作業も終了し、皆が車に乗り動き出した時、厨房の電気が点いている事に気が付いた。

(猫又)
お前消し忘れただろ！

撤収段取りは東京３の仕事だ。

(猫又)
裏から入って消して来いよ。

東京３が裏口で鍵を開けた音がした瞬間、厨房の電気が消えた。

車内の一同は、まさか侵入者では？と思い全員で確認するも形跡が見付からず撤収。


その後も、作業の為裏口から入り玄関の鍵を開け様とした作業員が、店内の座席に座って居た女性に、店員の残業と勘違いし声掛けしてしまったり。(この作業員はショックでその日は作業せず、翌日退社)
業務用冷蔵庫の扉が勝手に開閉したり。
二階の厨房の壁を蹴る音がワックス中鳴り続きたり、和室宴会場でざわざわ会話が聞こえたりと様々な事象は起こったが、二階では一人にはならない、多少の事は無視、無反応とルールが出来た。

二店舗目に続く。