体験奇談猫又日記

猫又

住職が初めて仏罰を認めた日

関東の某お寺で、観音様を安置する為の土台設置のアルバイトを懇意の石屋さんに頼まれた。

親方~これめちゃくちゃ高い石じゃないんですか?

お~
国産の本小松だよ~絶対傷付けない様気を付けてね~

は~い

25tラフターでギリギリ吊れる大きさだ。
ここまでの大きさの土台は見た事も無い。
こんな高価な土台に乗る観音様ってどんな凄い石像なのだろうか…

そこへ福住職と共に観音様が到着した。

話しによると江戸時代の観音様で、古い割にはお顔もハッキリして、頬杖を付き座している観音様だ。

福住職曰く

この観音様は、関東の別のお寺に安置されていたが、廃棄するとの話しが有り、物は試しに見に行った所、現在の日本にはこの大きさ、歴史の有る観音様は余り現存しない。
廃棄を撤回する様に住職を説得するも、檀家さんの一致した意見の為撤回は出来ないと。

この話しに憤慨した福住職が独断で、全ての費用は当寺で出すのでお連れしたい。
如何かと返答を求めたら、廃棄の費用も掛かるので、是非お持ち下さいとの返答。

直ぐに段取りを付け翌日にはお寺にお連れする算段を付け、お寺の境内に有る東屋で遠出の疲れを取る様一眠り。
深夜東屋に雷が落ち飛び起きたそう。

直ぐ様消防に連絡するが、何故か火災にならない。
消防の検査の結果、雷が落ちて屋根裏の柱は焦げはしたが火災にはならず問題無いとの事。
雷が家屋に落ちると、基本的には火災になる、この様に火災にならない時は、神降りと言うそうだ。

寺社仏閣の御神木も神降りの木を御神木と定める事が多いと。従って上部が焦げていたり折れていたりするものだと。

福住職曰く、今日の観音様が東屋に神降りをさせたのでは?と感じたらしく、今回の非常に高価な土台を買い付け、大事に安置しようと考えたそうな。

ほぼ観音様の安置も終え様とした時に住職が到着した。

いや~立派な土台も出来て、御座頂いてこれで観音様も安心して過ごせるでしょうね~
有り難う親方~

続けて観音様の説得が始まった。

この観音様は、江戸時代に流行った観音様をお祈りすると願いが叶うと言う信仰が有り、その時の観音様なのだと。
ただ、言い終えるや否や暗い顔になって下を向いた。

おや?と感じ親方と顔を見合せ、どうしました?と自身が聞いた。

いや~~~
仏罰って本当に有るんですね~

何故ですか?続け聞くと。

住職が重い口を開いた。

いや実は先月、安置していたお寺の檀家総代が見えて、どうしても観音様を返して欲しいと。
理由を聞くも答えず、兎に角返して欲しいの一点張り。
この総代の意見で、観音様を廃棄する事になった事を知っていた住職が、身勝手な言い分を繰り返す総代に、では御返ししましょう。
しかし、輸送代金の返却と、連れ帰る輸送代金はそちらで持っていただけるならと条件をだした。
総代は、檀家で話し合い直ぐに御返事しますと帰った。
そして連絡無いまま一ヶ月後の今日。

相手のお寺に総代の返却の連絡が無い事、今日安置する予定だと住職に話すと。
彼方の住職曰く。

総代一家は蒸発したと。
会社経営していたが事業に失敗したのだと。
観音様を動かして直ぐの事らしい。
しかも、総代の廃棄案に賛同した檀家さんもほぼ全て、一家離散、事業失敗等々で土地を出て行ったと。

いや~
偶然なのか仏罰なのか解りませんが、本当にこんな事有るんですね~
染々仰有って降りました。

しめやかに行われた安置法要の最中、神仏の仏罰って容赦無いな~
深く考えさせられました。

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