野良猫は、溺愛する

つきおか晶

Epilogue(1)


『恋コロ』も無事に最終回を迎え、深夜枠としては高視聴率の十一・五パーセントでフィニッシュした。しかも初回から一度も視聴率が落ちなかったという快挙つきだ。
最終回は、瞬間ではあったものの、SNSのトレンドも一位を獲得して盛り上がりを見せた。

例の週刊ナインの熱愛記事は、実はテレビ局の広報が話題作りのために流したものだと後々発覚したのだけれど、これが視聴率と結びついたのかは正直わからない。
ただ里見君の事務所も、山岸蘭の事務所も「大事な時に余計なことを」とご立腹だったというから、視聴率はともあれ、本人たちにはいい迷惑だっただろうと思う。

そんなマイナス要素もどこ吹く風と言わんばかりに、巷での里見君人気は高まっているようで、Men’s Fortのバックナンバーが売れていると、通販事業部から報告が来たところだ。

「それ、バックナンバーの売り上げか?」

私がプリンターの前で書類を見ていると、後ろから金岡編集長に声をかけられた。

「はい。通販事業部からデータを送ってもらいました。午後の編集会議で配ります」

「おー、思った以上に売れてるな。次号も里見のページ多めでいくか」

「そうですね」

そう言って金岡編集長のほうを振り向くと、「伊吹、今ちょっといいか?」と給湯室のほうに目線を振られる。
一緒に給湯室に入ると、金岡編集長は辺りを確認してから、幾分こちらに顔を寄せた。

「ケリはついたか?」

そのことだろうと、予想はついていた。
本当なら、私から切り出さなくてはいけなかった話だと思うけれど、ここまでなかなかそのタイミングがなく、その前に切り出しにくかった、ということもあった。
私は逡巡しながらも「はい」と答える。

「その顔は、いい方向に行ったみたいだな」

「まあ……はい」

答えにくいけれど、嘘をつくわけにもいかない。

「幸せになれよ」

ふわりと頭に置かれた手が優しい。

「……ありがとうございます」

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