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Fog HOTEL

二重丸 大牙

第一章 Hotel~4~







 私は舌鼓を打つようなフランス料理を堪能している間、男たちが代わる代わるに楽しい会話で私をもてなしてくれた。最後のソルベを食べ終わり、スプーンをテーブルに置くと



「お客様、食後のお楽しみがございます。どうぞ、こちらへ・・・・」



そう優は告げると、すっかりふかふかの椅子を背中で堪能した私を隣の部屋へと案内した。


その部屋は広く、ペルシャジュータンがひかれておるが家具は置かれておらず、天井にはシャンデリアが幾つも下がり無機質さを感じる。そこにもやはり蝋燭で明かりを灯されていた。隅にある大きな花瓶には薔薇が飾られている。



「ここは、いったい・・・・」



何が起きたか分からず、案内をしてくれた優に尋ねようとすると優がすでに何処にも居らず、不安になった私はあたりをきょろきょろとしていると
突然、花瓶の横に置かれていた蓄音機から発せられた華麗な音楽が私を包んだ。それに驚き、緊張していると私が入って来た扉が勢いよく開き、顔に仮面舞踏会かのような面をつけている7人が入って来たのだ。


真っ黒なタキシードに風で舞うマントを羽織った彼らは、仮面のせいで誰かだれか判別がつかない。動揺している私の周りを彼らは曲に合わせて優雅に踊っていると、戸惑っている私に輪から一人の厚い皮の手袋をした手が優しく差し出された。



「お嬢様、どうぞお相手を・・・・」



その言葉に私が手を委ねると、今まで踊った事のない私を華麗にリードして踊りだしたのだ。目の前の彼にエスコートされて私の身体も自然と蝶のように曲に合わせて華麗に踊りだす。自分が音楽と一体になり、溶け合うように舞うことで緊張から解放された私は嬉しくなり、楽しくなっていた。


私はすっかり雰囲気に酔い、気持ちが最高潮に達した頃、他の男たちは静かに壁の方に進むと、知らない間に蜘蛛の巣に近づきながらも、なお舞うことを辞めない獲物を冷静に見つめていた。



「美味しい食事と楽しい時間を提供したお代には・・・」



仮面の下から零士が嬉しそうに呟く



「しかし、このダンスの茶番は必要なのかな?」



恵吾が、この光景に納得できないように言うと



「警戒している獲物ほど、捕らえるのにリスクがあるかなら」




優は仮面の下から鋭い眼光で踊っているそれを見つめていた。



「まぁ、これにも意味があるって事やな・・・?」



青空は今の状況も楽しんでいるように嬉しそうに言う。
曲が終わると、恵吾が蓄音機に向かい次の曲に変えると今まで踊っていたメンバーが入れ替わった。



「歩夢、お疲れさん・・・・」



横に立った歩夢に零士が声を掛けると、歩夢は小さく頭を下げた。



「とても、楽しい時間だったようだね・・・」



快の言葉に歩夢は仮面の下から驚いたように目を見開いた。
そんな歩夢の表情を見ながら



「そんな事より、これからの段取りは分かっているな」



側に立っているメンバーに優は一喝するように伝えた。
誰の口も楽しそうに笑っていたのだが、歩夢の口だけが何故か小さく震えていたのを優は見ながら黙っていたが、勘が良い光は見逃さず



「何か思っている事があるのなら、吐き出した方が楽になると思うけどな」



光は冷たく言い放すと、歩夢の手がギュッと握られ意を決したように



「俺の思い過ごしだと思うのだけど・・・彼女はいつもの獲物と違う気がしてしまうんだよ・・・それが、審判って事なのかなぁて・・・」



歩夢の言葉に光は一度天井に目をやり、何かを考えると



「そうか・・・、でも、一人でもビビッて臆すると仲間が危険な目にあうことは分かってるよな・・・・、そしてこの安息の地を去って行かないとダメなのもな・・・・」




その光の言葉に歩夢は静かに頷いた。



「もし、どんな理由があっても仲間を裏切る者を俺は絶対に許さんから・・・」



その光の意思が強く込められた言葉に歩夢は仮面の下からキッと睨み



「俺は何があっても裏切ることはない・・・これまでも、これからも・・・裏切られる事があってもね・・・」



歩夢の決意を聞くと、光は嬉しそうに微笑み



「その言葉、俺は信じている・・・」




そう言って歩夢の肩を軽く叩いたのだ。
二人の話が終わったのを見守っていた優が静かに口を開いた。



「ダンスが終わったら、女は部屋に帰す」




仲間に動揺が走る。仮面からは伺えないが、優の考えが誰も分からなかったのだ。




「俺を信じろ・・・・必ず成功するから!」




優の自信に満ちた眼光に、誰からともなく安心したように頷いた。そして、この後に待ち受ける衝撃の事実も彼らも知らなかったのだ。そう、誰も疑うことを知らずに、ただ舞いつづける獲物を見て、自分たちが満たされることだけを想像していたのだった。







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