今まで俺に冷たくしていた美少女が席替えで隣の席になった途端優しくしてくるんだが

時雨古鷹

第3話  ストリートピアノライブ

とうとうその日がやってきた。霧斗は朝からピアノライブで弾く曲の練習をしていた。今回は弾き語りだ。そうして最後の調整をしているとインターホンがなった。

「霧斗くんおはよう!楽しみだね!」

ドアをあけるやいなやいきなりそういってくる。しかし霧斗は当人なので一緒にはいられない。なので妹もとい美緒とその友達も梨華と一緒に行動する。
霧斗は美緒たちを呼びにリビングに行った。そのついでに美緒に耳打ちする。

「準備いくとき美緒は梨華と一緒にいてくれ。そして探しにいこうとしたら止めてくれ」

美緒は軽く頷いた。そして霧斗は二台のスマホを忘れないように片方はポケットにもう片方はバックに入れた。
何故スマホが二台あるのかというと使い分けるためだ。ポケットに入れたスマホは主にいつも使うためだ。バックに入れたスマホは楽譜替わりとして使っている。

「梨華、紹介するよ。これが俺の妹の美緒だ」

霧斗はめんどくさそうに紹介したが演技だ。美緒もあわせて挨拶を済ませ四人でデパートに行く。早くついたのかまだほとんど人がいなかった。

「梨華、俺少しトイレいってくるよ。もしライブ始まっても後ろからみてるから探さないでね」

「わかった。気をつけていくのよー。あと知らない人にはついて行ったらだめだからねー」

「梨華はどこかのおかんか。いってくる」

梨華とそういう会話をしたあと霧斗は待機室に移動した。移動する間際に美緒にアイコンタクトでもう一度頼んでおいた。

「霧斗さん大丈夫ですか?」

そう聞いてくるのは霧斗が動画を撮るときにカメラマンとして雇っている杉山だ。もともと杉山は霧斗と同じ中学校の後輩だった。杉山は何かと霧斗を尊敬しており動画撮るのにカメラマンが必要だと話したら受け持ってくれた。本人はタダでいいといっていたが霧斗はそういうわけにもいかないので撮影が終わった後お礼という形で給料を払っていた。もちろん杉山も変装する。変装しなければ霧斗とばれてしまうからだ。

「あぁ大丈夫だよ杉山。ただ学校の近くとあって俺の高校の生徒もたくさんいるなって」

「そうですね。霧斗さんはテレビにも取り上げられるほど有名人ですもんね。今日のライブも放送局が取材にくるそうですよ」

「わかった。それじゃそろそろ準備するか」

霧斗はそういって髪を後ろに纏めバックからスマホを取り出した。

「そろそろいくよ」

霧斗…いやリキトは大勢の人が待っているピアノにむかった。リキトが近づくと自然に道が割れる。
リキトはその中を通ってピアノに座った。そして地声で言った。

「今日は集まってくれてありがとう!今日のライブ、弾き語りをしようと思うよ。では聞いてね!」

すぐに歓声に包まれるがすぐに収まった。リキトはピアノに向き直ると静かにスマホを置いて周りをサッと見た。するとピアノの奥に梨華たちがいた。霧斗は梨華に向かって少しほほえむとピアノを弾き始めた。その音色は柔らかで静かに奏でられた。リキトは七色の声の中から梨華の声を再現し歌ってみた。
最初の曲が終わるとリキトは梨華の声まねをした状態で言った。

「次の曲に移る前にサービスをしよう!ここに十個のカプセルがあるよね。それを僕が投げるからキャッチしてね!キャッチしたひとはサインを書いてあげるから」

そういって一個目を梨華のほう…正確には美緒に投げた。美緒はリキトの意図をわかったようでキャッチした。そして梨華に渡していた。その他のカプセルは適当に投げた。

「はい!じゃあカプセルをキャッチしたひとは前に出てきてね」

十人が出てきてその十人にリキトはサインを書いた。最後は梨華だったので左上に「梨華大好き」と書いた。

「それじゃここから残りの曲通していくよー!!」

そういってまたピアノを弾き始めた。そしてとうとう終わりがきた。

「今日のライブありがとう!これからもリキトをよろしくね!じゃ次の動画でおあしましょう」

そういってリキトは急いで待機室に杉山と戻り着替えて梨華のところに戻った。
あ、取材班のインタビューにはちゃんと答えたよ。

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