パラサイトマン

ノベルバユーザー549222

俺の進む道

3年後

 結局、俺はWings Run に残った。というか、正確に言うと、Wings Run との契約には『契約更新不可』が追加されなかったから、そのまま自動継続となったわけだ。J&Auto Berth社に出向しなかったから比較のしようがないが、Wings Run は最大手だけあって、幅広く扱ってるし面白い。デヴォンさんとも信頼関係も築けたし、残念だがJ&Auto Berth社へ行くことはもうないと思っている。
 智子は3人目を妊娠中でつわりでしんどそう。今度こそ娘と思ってるけど、どうだろうな? 2歳と1歳の俺の息子。心なしか俺そっくり。母さんにも言われたけど、性格まで俺に似てるそうで毎日何かを壊してる。今はおもちゃレベルだけど、そのうちガラス割ったり壁に穴をあけるんだろうか? 1人目妊娠時のつわりが1番ひどいときは、母さんのグリーンカードが間に合わなくてかなり大変だったが、今は母さんがいるから俺も一安心。青山さん、草野さんの言葉どおり、孫の世話をしてる母さんは楽しそうだ。これも親孝行かもしれないと思うようになってきた。
 広瀬の結婚式も、兄貴の結婚式も、Zoom出席だった。結局母さんだけ兄貴の結婚式には出たが、ちび連れ(この時は長男隼人しかいなかったけど)それも身重の智子では母さんがいてもとても帰国なんてできなかったからだ。俺は出張で年に1回以上は帰国してるけど、智子は1度も出来ぬままもう3年。今年も無理だけど、去年はじいちゃん以外の智子の家族がアメリカに来てくれた。晴彦君は無事北大合格、隆君もじいちゃんが反対しなかったから、無事結婚、跡継ぎとして頑張ってる。良平くんは母親がスナックで働いている間は囲碁クラブで過ごしたせいもあって、強いらしい。あのじいちゃんと対等に張り合えるそうで、よく2人で囲碁をしてるらしい。当然、隆君の結婚式にも出れなかったから2人の囲碁対決はまだ見たことないが、たまにじいちゃんを負かすこともあるから驚きだ。じいちゃんも血はつながってないとはいえ、初ひ孫がかわいいらしい。アメリカには隆君の奥さんと良平くんも一緒に来たから、俺は空港の送迎で2往復。全員で6人だったからな。でも同期会アメリカ版は未だ実現せず、理由は広瀬のところも結婚後すぐ妊娠、長女が誕生したからだ。
 兄貴と山本にはまだ子供がいないから、去年2人で遊びに来た。智子は久々の同期と話せるからと、子育てを母さんに任せてたけど、良くしゃべってたな。兄貴も俺そっくりの甥っ子に戸惑う場面もあったが、子供が欲しくなったようだった。
 意外にもトーマスは仕事でサンディエゴに行く機会があるからと、1年に1回以上会えるようになった。エンジニア系の会社がサンディエゴの多いらしい。トーマスはまだ独身。こっちに来たときは一緒に遊べて俺もうれしい。
 ケビンと松村さんの結婚式がロンドンと東京であったが、どちらにも出れず。ロンドンの方でトーマスにお願いしてこれもZoomで出席した。2課の連中には付き合ってることがバレてなかったそうで、婚約発表時に神崎さんがキレまくったらしい。それも俺への文句だったそうだが、なんでだよ?
 安西は現在九州営業所で彼女も出来て、年内には結婚したいと彼女に急かされてるそうだが、これも出れそうもない。
 そして来週はケビンと松村さんが遊びに来る。まだ子供はいないが、妊婦に会うと妊娠が移るらしく、智子とうちのちびに会うのが最大の目的らしい。なんでもいいが、ケビンに3年ぶりに会えるのはうれしい。トーマスの出張に合わせたかったそうだったが、それはさすがに無理だった。
***** 
「今度の検診で性別がわかるのよね?」
「はい、今度こそ娘と思ってるんですけど……!」
 あ、隼人が転んで泣いてる! 俺が抱っこしたら泣き止んだが、次男の浩平が自分も抱っこしてくれと泣き出した。あの哀しそうな甘えた目は智子譲りだな。かわいいけど、毎日こんな調子。俺はソファに座って2人を膝に乗せた。あれ? 隼人が熱い。俺は顔を触った。
「隼人がまた熱あるかも?」
「あらあら」
 智子が紙パックのリンゴジュースをもってきた。浩平も欲しがったがまだ紙パックから飲めない。智子が哺乳瓶に移し替えていた。
 隼人は身体が弱い。俺的には隼人が戻ってきた子で、でも今はまだちょっと体調を崩しやすいと思ってる。母さん曰く、男の子の方が体が弱いって言ってたしな。リンゴジュースを飲んでもまだしんどそうだった。母さんが俺から隼人を受けとって、ソファに寝かせた。
「また男の子だったらどうするの?」
「4人目頑張ります!」
 子供4人……。今の倍になるけど、大丈夫か?
「まさか、娘ができるまでって思ってるんじゃないだろうな?」
「当たり前でしょ! 絶対娘が欲しいの!」
「俺も欲しいけど……4人って……」
「私も孫娘欲しいから、頑張って!」
「母さん!?」
「透のところにできるかもしれないけど、一緒に暮らしてないし、できれば幸雄にできると良いんだけどね」
「そう考えたら2年後、帰国しない方が良いかもな。今の家だから4人子供いても良いけどさ……」
「まあね、今の方が庭も広いし、子育てには良いわよね」
 1番ちびの面倒を見てる母さんもそう思ってるか。
 実はデヴォンさんからは何度もWings Run の社員にならないかと誘われている。もちろん基本俺には判断できないから、部長と直接話してもらってはいるが、俺が会社を辞めたくない。別に退社しても営業所の同期連中と関係が切れるとは思ってないが、海外事業部の俺のチームと仕事ができなくなるのが嫌だったからだ。部長も海外事業部に部長として残れたから、年1回以上はサンディエゴに来てる。来るたびに『子供が増えてる』と言われてるが、その通り。それに部長はもし俺がWings Run の社員になったことで、日本のライバル会社と契約されるのを心配してるから、現段階では許可が出ていない。俺もちょうどいいから、そのままにしてる。でも帰国になるなら、話を受けることも考えるべきかもな……。
 俺は父さんの簡易仏壇を見た。結局、兄貴が家と共に父さんの仏壇を守ることになったから、こっちのは持ち運び用の簡単なものになった。それでも結構な値段はしたが、ちびも朝起きたらちゃんと手を合わせてる。俺の進むべき道を父さんがまた示してくれれば、そっちへ行くことも考えるし、自分で決める必要があるなら智子と相談する。俺も3児の父で家長だもんな。

終わり

 ご愛読ありがとうございました。当初はこんなに長くなる予定ではなかったのですが、タイトルが「パラサイトマン」なら、幸雄の自立までは書きたいと思い、こうなってしまいました。最初のアイデアは大学の課題で書いた「グリーンカードマン」でグリーンカードに当選した幸雄を使って「グリーンカードマンと合コン」と広瀬が合コンを設定し、モテまくる幸雄も最初はまんざらではなかったのですが、どの女性も幸雄を見てるのではなく、やっぱりグリーンカードだったということで女性不振になります。最後は智子の冷たさは実はS系だったと気づいた幸雄が、デートに誘うところで終わりという短編で30ページほどでした。
 いくつかのエピソードは実話で、幸雄が8歳でタバコを覚えたのは私の父からです。12歳年上の兄(私の伯父)から悪さばかり教えてもらっていたそうで、母と婚約するまで二股をかけたそうです。(また女から逃げるために大学時代は11回も引っ越したとか。どこまで本当か不明ですが、ちょっとトッドみたい?)幸雄が小4でファーストキスを体験した話は、私の次男の体験からです。次男は小3で、相手は金髪青い目のアメリカ人とでした。「ぬるぬるして気持ち悪かった」という感想でした(笑)さすがにアメリカでも小3は早すぎると、各地で少し問題になりました(汗)
  途中何度も、幸雄が実父のように子供と妻を残して早死にするラストにしようかと思いましたが、父親にあの世から追い返されるだろうというプロットをすでに入れていたのもあったので、結局ハッピーエンドにしました。死にそうで助かるというラストもあったと思いますが、一度怪我もしてますし、バトルものでもないのに何度も怪我はどうかと(笑)
 最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。某サイトで基本筋は同じですが、今度は3人称ストーリーとして、智子のヤンデレぶりが最初から暴走という設定で、漫画原作大賞に応募しています。リンクは他のサイトなので貼りませんが、タイトルも「ヤンデレOLがパラサイトマンに恋をしたら(仮)」です。是非ともよろしくお願いいたします。

桐谷美和子

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