パラサイトマン
ケビンとトーマスはやっぱりオタクだった。
翌日。いちいち松村さんと大牟田さんに報告する気はなかったが、向こうから聞いてきた。
「ケビンどうだった?」それを聞いて小林さんや小野さんまで来た。
「そうそう、モテモテのケビン、持ち帰ったみたいで、うらやましいよな」小林さんが何歳か知らないが、まだ独身なのは知っていた。
確かにかっこいいのは認めるけど、軽く見えてしまうのは気の毒な気がした。ケビンこそ、社内恋愛の方が良いかと思った。ちゃんと仕事してる姿を見せないと、外見で判断されるとかわいそうだ。それに……
「持ち帰ってなかったですよ。ちゃんと白状させました」
4人が『信じられない』という顔をした。
「あんなディープキスしてたのに!? バーを出るときにその子が出口で待ってて、一緒に消えたからてっきり持ち帰ったと思ったけど?」
バーでディープキス? それはすごいけど、ある意味抑制にはなるよな。そこでそのままって絶対ならないと思う(映画ではなってるけど、それは映画だから)
「俺はケビンの言うことを信じますので」
そう言って会話から外れたが、昨日のケビンの話ではまだ1人だけしか寝てないということだった。理由は、ほんとに惚れた人とだけしかしたくないからだ。確かにあんな兄貴を見て育つと、ああなってはいけない、と思うだろうな。いろんな女を連れ込んでるのを見てたし、俺は知らなかったが、別れ話で相手の女性を殴って警察沙汰になったこともあったそうだ。でも、バーでディープキスか。聖職者じゃないんだから、可愛い子がいたらキスくらいしたくなるか。それとも実は持ち帰ってたりして……。でも嘘でもいいさ、親友であることには変わりはないし、言いたくないことを詮索する気はない。
*****
結局今日も松村さんと大牟田さんと弁当を食ったが、今日は小林さんも一緒だった。俺は営業2課ではあるが、担当を持ってない内勤営業だから、松村さんと大牟田さんと業務はほとんど同じ。理由は全体の英語のサポートだからだ。小林さんは外回りのついでに、コンビニ弁当を買って戻ってきたから、一緒だった。3人とも俺より5つは上だから、多少は緊張するけど、2次会以降気さくに話してくれるから、俺には問題なかったが、青木には問題のようだった。青木が今日も誰と昼を食べてるのか、こっそり見に来ていたことに俺は気が付いていなかった。
*****
定時であがって、ケビンとトーマスのホテルへ向かった。
「今日は何時ごろ帰ってくるの?」青木からのラインだった。
「そんなに遅くならないよ、明日もあるし。でも先に寝てて」
*****
ホテルの2人の部屋で会ったが、今日はトーマスもちょっとおしゃれにしてる。カジュアルではあったが、ポケットチーフまで入れて、イギリス紳士風にしてたけど、なんで? 俺の2次会よりもめかし込んでるけど? ケビンは相変わらず。スーツもそんなに何着も持ってきたのか。見るとでかいトランク。大半が服っぽいけど、日本で買って帰りたいものはないわけか。そういや、今日はどこに行きたいか聞いてなかったな。
*****
……メイドカフェかよ?
初めてだけど、俺にとっては違和感ありあり。メニューもお子様ランチっぽいし、おいしくなる魔法なんてかけてくれなくて良いんだけど、2人とも大喜び。確かにメイドカフェのウェイトレスは可愛い子ぞろいだったが、アニメと現実のギャップを埋める役割なのか? だとしたら喜ぶ客多いよな。
一緒に写真撮ったり、なんか振り付け教えてもらってなんかやってるし、会社帰りのスーツのサラリーマンなんて浮きまくり。早く帰りたいが、さすがにここでは通訳だった。
「Do you have WhatsApp?」トーマスが気に入った子に連絡先聞いてるし! まさかこれが目的でオシャレしてたなんて言うなよ!
「Thomas! I don’t think they are allowed to tell you that」
そんな悲しそうな顔するなよ。彼女らの笑顔は仕事なんだから。
結局4時間ほどメイドカフェにいた! また1時間単位の料金もかかったから、意外に高かった……。そのあとアニメショップ。でもこれはちょっと俺も楽しかった。ヒストリアグッズは意外に少なかったけど、リヴァイはたくさんあって、トーマス大興奮。トランクに入るだけ買ってください、絶対後から送らないからな。
明日2人は京都へ移動するから、今日が最後。クリスマスは日本で過ごして29日にイギリスへ帰る。俺は1月5日帰国だしな。もうちょっといろいろ話したかったが、まあいいか。初の日本。アニメ好きならこういうところ行ってみたかっただろうし、残念だがしょうがない。
10時過ぎにホテルに送って行くとケビンが言った。
「I know you have to work tomorrow but stay tonight with us」
早く行ってほしかった。それならそのつもりにしたのに。でも泊ることにした。青木にそうラインをしたら、「わかった」だったが、まあ怒ってないだろう。
このソファ、ソファベッドで3人泊まれる部屋だった。コンビニで買ったおつまみやらビールを開けて宴会が始まった。もう泊まることにしたから俺もビールを1本だけ飲むことにした。
17年前に戻ったようだった。俺が帰国後の学校の話、トーマスがスカートめくった子が中学は私立に行ってしまって、トーマスが大泣きしたこと。トッドはその後、できちゃった結婚をしたが、案の定離婚。養育費も送らずで現在も裁判沙汰になってること。相変わらずトッドはある意味すごいな。
「I really hate Tod……」ケビンがタバコを吸いながら言ったが、トッドそっくり。見た目はよく似た兄弟だが、中身は全然違う、でもやはりケビンは見た目でチャラくみえてるようで、なかなか恋愛もうまくいかないらしい。
「Yukio, I need your help……」ケビンが切り出した。
「Sure, what?」親友の頼みだったらなんでも聞いてあげたい。俺のアメリカでの職探しはだめだったが、彼らのサポートは今後の参考になったし、それにうれしかった。
「I want to live in Japan」
え? ……日本語出来るようになってから言え。英語が一応できて、ビザの問題なくてもアメリカで仕事がなかった俺なんだぞ。見た目かっこよくても日本語できない、ビザなしのケビンが日本長期滞在なんてできるわけないだろ。
「Yeah, me, too, but I cannot」トーマスも言ったが、トーマスはもうすぐ昇進するらしい。また来ればいいさ。
悪いが俺はケビンのお願いを真剣に取っていなかったが、この後延々とどれだけ日本に移住したいと思ってるかを語り始めた。大好きだったアニメが日本のだったらしいが、小さいときは自分は日本人と思ってたらしい。そこに俺が引っ越してきて、残念ながら自分は日本人ではないことは理解したが、運命を感じたらしい。そして日本人と結婚しなければならないと思ってるって……、そんなことないだろ?
「Please!」 ケビンが土下座した。アニメで覚えたのか?
「How can I help you?」俺はケビンに聞いた。俺にどうしろって言うんだよ。
「The easiest way is I would be an English teacher near you」
なるほど。日本語できなくてもなれるのか? ブライアンみたいな感じか……。ブライアンに頼みたくはないが、しょうがない。2次会では俺も大人気なかったしな。お詫びついでにラインで聞いてみることにした。
やっぱりブライアンは良い奴だった。あの日は嫉妬丸出しの俺だったけど、快くケビンの相談に乗ってくれることになった。ケビンもラインをインストールして、今後はラインでやり取りすることになった。
「ありがと、ブライアン」なぜか日本語でラインした。
「良いですよ、いつでも聞いてください。でも建築できるのにもったいないですね」
確かに。日本語もできるイケメンイギリス人建築家になれればいいけどな。
*****
結局、名残惜しくて半休にして一緒に昼食ってから、新幹線の駅まで送った。ケビンは日本移住の手掛かりがつかめたのもあって、上機嫌だった。トーマスは京都も楽しみにしてたから、興奮していた。どうやらケビンには近いうちにまた日本で再会だろうけど、トーマスとはいつ会えるかな。またゲームの中でか、来年なんとか青木を連れてイギリス行くか、だな。
*****
そんなわけで午後から出社。明日はクリスマスイブで、新婚旅行出発前日だから明日こそは荷造り済ませないとな。年内出社も明日で最後だし、忙しい。昨日あんまり寝てないからコーヒーを行きに買った。
*****
「まさか、小川君まで持ち帰ってたんじゃ?」小野さんにからかわれた。
「どういう意味ですか? 昨日は2人の部屋で飲み明かしただけですよ」
「仮にも新婚だもんな、まだ浮気しちゃだめだよ」 『まだ』って? どういう意味だよ、小林さん。
「絶対、浮気なんてしませんよ!」
「でも奥さん、心配みたいよ」
え? あ、青木が2課のドアのところにいた。ちゃんとラインしたのに。
「なんだよ、どうしたんだよ」 全く高校生じゃないんだから。クラスの違う彼氏のところにくるみたいに、ドアから覗くなよ。
「結局半休にしたのね」
「ああ、新幹線乗り場まで一緒に行ったからな」
「3人で悪さしてなかったよね?」
「してないよ、17年の空白を埋めただけだよ。そんなに信用してないのか」
「そうじゃないけど……」どうやらやっぱり信頼されてないらしい。
「荷造りも始めないとな」
「うん」
「じゃあ後で」
「わかった」
タバコ臭い俺だったが、青木は何も言わなかった。
「奥さん、ほんとに心配みたいね、昨日も来てたし」大牟田さんだった。
「ほんとですか?」
「そうそう、昼休みにね」
結婚後も特例でこの営業所にいさせてもらってるってことを、わかってないようだな。帰ったらはっきり言っておかなくては……
*****
さすがにちょっと残業して帰宅。それでも8時には家につけてるんだから、家まで10分はすごいな。先に風呂に入ってから、晩飯を食いながら俺は青木に言った。
「用があるならまずはラインしろよ」
「したって携帯、ロッカーに置きっぱなしで見てないでしょ?」
ああ、そうだった。整備の頃のくせがまだ抜けてなかった。営業はクライアントからの電話が携帯にかかることがあるから、机の上に置けるが、整備時代はロッカーに入れておかないといけなかった。ロッカーは未だに整備のを使ってるから1階だし、確かに1回入れると帰宅まで携帯を見ることはなかった。
「明日から携帯を席に持っていくようにするよ」
「毎日女性陣とお弁当食べてるの?」
「毎回誘ってくれるのに、断ったら悪いだろ」
「じゃあ帰りに食事に誘われても、悪いからって行くの?」
「それはよりけりだよ、たぶん行かないと思うけど」
社内結婚の欠点だよな。文句を言う気はないけど、筒抜けだもんな。荷造りは明日がんばることにして今日はもう寝る。せっかくケビンとトーマスと過ごせて楽しかったのに、会社では監視されてる気分になるし、帰宅してからも責められると余計疲れる。おまけに信用されてないし。
「もう寝るから。昨日あんまり寝てないし」
そう言って適当に食って、風呂に入って部屋へ戻った。
*****
俺はさっさとベッドに入ったけど、寝られなかった。30分ほどすると、片付けが済んだのか青木もベッドに入ってきた。
「起きてる?」
「……起きてるよ」
いきなり青木がキスしてきた。酒臭い!
「酒飲んだのかよ?」
「あ、日本酒」
日本酒? そんなにうちにあったっけ?
「料理酒だけど、まずくなかったわ」
そしてまた俺を脱がせ始めた! なんで突然こうなるんだろ? 酔ってるから? でも焼き鳥屋で結構ビールは飲んでるけど? 普段大人しいのに。疲れてるが、もちろん受けて立つ! でもまた『よく覚えてない』とか言われるのか?
「ケビンどうだった?」それを聞いて小林さんや小野さんまで来た。
「そうそう、モテモテのケビン、持ち帰ったみたいで、うらやましいよな」小林さんが何歳か知らないが、まだ独身なのは知っていた。
確かにかっこいいのは認めるけど、軽く見えてしまうのは気の毒な気がした。ケビンこそ、社内恋愛の方が良いかと思った。ちゃんと仕事してる姿を見せないと、外見で判断されるとかわいそうだ。それに……
「持ち帰ってなかったですよ。ちゃんと白状させました」
4人が『信じられない』という顔をした。
「あんなディープキスしてたのに!? バーを出るときにその子が出口で待ってて、一緒に消えたからてっきり持ち帰ったと思ったけど?」
バーでディープキス? それはすごいけど、ある意味抑制にはなるよな。そこでそのままって絶対ならないと思う(映画ではなってるけど、それは映画だから)
「俺はケビンの言うことを信じますので」
そう言って会話から外れたが、昨日のケビンの話ではまだ1人だけしか寝てないということだった。理由は、ほんとに惚れた人とだけしかしたくないからだ。確かにあんな兄貴を見て育つと、ああなってはいけない、と思うだろうな。いろんな女を連れ込んでるのを見てたし、俺は知らなかったが、別れ話で相手の女性を殴って警察沙汰になったこともあったそうだ。でも、バーでディープキスか。聖職者じゃないんだから、可愛い子がいたらキスくらいしたくなるか。それとも実は持ち帰ってたりして……。でも嘘でもいいさ、親友であることには変わりはないし、言いたくないことを詮索する気はない。
*****
結局今日も松村さんと大牟田さんと弁当を食ったが、今日は小林さんも一緒だった。俺は営業2課ではあるが、担当を持ってない内勤営業だから、松村さんと大牟田さんと業務はほとんど同じ。理由は全体の英語のサポートだからだ。小林さんは外回りのついでに、コンビニ弁当を買って戻ってきたから、一緒だった。3人とも俺より5つは上だから、多少は緊張するけど、2次会以降気さくに話してくれるから、俺には問題なかったが、青木には問題のようだった。青木が今日も誰と昼を食べてるのか、こっそり見に来ていたことに俺は気が付いていなかった。
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定時であがって、ケビンとトーマスのホテルへ向かった。
「今日は何時ごろ帰ってくるの?」青木からのラインだった。
「そんなに遅くならないよ、明日もあるし。でも先に寝てて」
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ホテルの2人の部屋で会ったが、今日はトーマスもちょっとおしゃれにしてる。カジュアルではあったが、ポケットチーフまで入れて、イギリス紳士風にしてたけど、なんで? 俺の2次会よりもめかし込んでるけど? ケビンは相変わらず。スーツもそんなに何着も持ってきたのか。見るとでかいトランク。大半が服っぽいけど、日本で買って帰りたいものはないわけか。そういや、今日はどこに行きたいか聞いてなかったな。
*****
……メイドカフェかよ?
初めてだけど、俺にとっては違和感ありあり。メニューもお子様ランチっぽいし、おいしくなる魔法なんてかけてくれなくて良いんだけど、2人とも大喜び。確かにメイドカフェのウェイトレスは可愛い子ぞろいだったが、アニメと現実のギャップを埋める役割なのか? だとしたら喜ぶ客多いよな。
一緒に写真撮ったり、なんか振り付け教えてもらってなんかやってるし、会社帰りのスーツのサラリーマンなんて浮きまくり。早く帰りたいが、さすがにここでは通訳だった。
「Do you have WhatsApp?」トーマスが気に入った子に連絡先聞いてるし! まさかこれが目的でオシャレしてたなんて言うなよ!
「Thomas! I don’t think they are allowed to tell you that」
そんな悲しそうな顔するなよ。彼女らの笑顔は仕事なんだから。
結局4時間ほどメイドカフェにいた! また1時間単位の料金もかかったから、意外に高かった……。そのあとアニメショップ。でもこれはちょっと俺も楽しかった。ヒストリアグッズは意外に少なかったけど、リヴァイはたくさんあって、トーマス大興奮。トランクに入るだけ買ってください、絶対後から送らないからな。
明日2人は京都へ移動するから、今日が最後。クリスマスは日本で過ごして29日にイギリスへ帰る。俺は1月5日帰国だしな。もうちょっといろいろ話したかったが、まあいいか。初の日本。アニメ好きならこういうところ行ってみたかっただろうし、残念だがしょうがない。
10時過ぎにホテルに送って行くとケビンが言った。
「I know you have to work tomorrow but stay tonight with us」
早く行ってほしかった。それならそのつもりにしたのに。でも泊ることにした。青木にそうラインをしたら、「わかった」だったが、まあ怒ってないだろう。
このソファ、ソファベッドで3人泊まれる部屋だった。コンビニで買ったおつまみやらビールを開けて宴会が始まった。もう泊まることにしたから俺もビールを1本だけ飲むことにした。
17年前に戻ったようだった。俺が帰国後の学校の話、トーマスがスカートめくった子が中学は私立に行ってしまって、トーマスが大泣きしたこと。トッドはその後、できちゃった結婚をしたが、案の定離婚。養育費も送らずで現在も裁判沙汰になってること。相変わらずトッドはある意味すごいな。
「I really hate Tod……」ケビンがタバコを吸いながら言ったが、トッドそっくり。見た目はよく似た兄弟だが、中身は全然違う、でもやはりケビンは見た目でチャラくみえてるようで、なかなか恋愛もうまくいかないらしい。
「Yukio, I need your help……」ケビンが切り出した。
「Sure, what?」親友の頼みだったらなんでも聞いてあげたい。俺のアメリカでの職探しはだめだったが、彼らのサポートは今後の参考になったし、それにうれしかった。
「I want to live in Japan」
え? ……日本語出来るようになってから言え。英語が一応できて、ビザの問題なくてもアメリカで仕事がなかった俺なんだぞ。見た目かっこよくても日本語できない、ビザなしのケビンが日本長期滞在なんてできるわけないだろ。
「Yeah, me, too, but I cannot」トーマスも言ったが、トーマスはもうすぐ昇進するらしい。また来ればいいさ。
悪いが俺はケビンのお願いを真剣に取っていなかったが、この後延々とどれだけ日本に移住したいと思ってるかを語り始めた。大好きだったアニメが日本のだったらしいが、小さいときは自分は日本人と思ってたらしい。そこに俺が引っ越してきて、残念ながら自分は日本人ではないことは理解したが、運命を感じたらしい。そして日本人と結婚しなければならないと思ってるって……、そんなことないだろ?
「Please!」 ケビンが土下座した。アニメで覚えたのか?
「How can I help you?」俺はケビンに聞いた。俺にどうしろって言うんだよ。
「The easiest way is I would be an English teacher near you」
なるほど。日本語できなくてもなれるのか? ブライアンみたいな感じか……。ブライアンに頼みたくはないが、しょうがない。2次会では俺も大人気なかったしな。お詫びついでにラインで聞いてみることにした。
やっぱりブライアンは良い奴だった。あの日は嫉妬丸出しの俺だったけど、快くケビンの相談に乗ってくれることになった。ケビンもラインをインストールして、今後はラインでやり取りすることになった。
「ありがと、ブライアン」なぜか日本語でラインした。
「良いですよ、いつでも聞いてください。でも建築できるのにもったいないですね」
確かに。日本語もできるイケメンイギリス人建築家になれればいいけどな。
*****
結局、名残惜しくて半休にして一緒に昼食ってから、新幹線の駅まで送った。ケビンは日本移住の手掛かりがつかめたのもあって、上機嫌だった。トーマスは京都も楽しみにしてたから、興奮していた。どうやらケビンには近いうちにまた日本で再会だろうけど、トーマスとはいつ会えるかな。またゲームの中でか、来年なんとか青木を連れてイギリス行くか、だな。
*****
そんなわけで午後から出社。明日はクリスマスイブで、新婚旅行出発前日だから明日こそは荷造り済ませないとな。年内出社も明日で最後だし、忙しい。昨日あんまり寝てないからコーヒーを行きに買った。
*****
「まさか、小川君まで持ち帰ってたんじゃ?」小野さんにからかわれた。
「どういう意味ですか? 昨日は2人の部屋で飲み明かしただけですよ」
「仮にも新婚だもんな、まだ浮気しちゃだめだよ」 『まだ』って? どういう意味だよ、小林さん。
「絶対、浮気なんてしませんよ!」
「でも奥さん、心配みたいよ」
え? あ、青木が2課のドアのところにいた。ちゃんとラインしたのに。
「なんだよ、どうしたんだよ」 全く高校生じゃないんだから。クラスの違う彼氏のところにくるみたいに、ドアから覗くなよ。
「結局半休にしたのね」
「ああ、新幹線乗り場まで一緒に行ったからな」
「3人で悪さしてなかったよね?」
「してないよ、17年の空白を埋めただけだよ。そんなに信用してないのか」
「そうじゃないけど……」どうやらやっぱり信頼されてないらしい。
「荷造りも始めないとな」
「うん」
「じゃあ後で」
「わかった」
タバコ臭い俺だったが、青木は何も言わなかった。
「奥さん、ほんとに心配みたいね、昨日も来てたし」大牟田さんだった。
「ほんとですか?」
「そうそう、昼休みにね」
結婚後も特例でこの営業所にいさせてもらってるってことを、わかってないようだな。帰ったらはっきり言っておかなくては……
*****
さすがにちょっと残業して帰宅。それでも8時には家につけてるんだから、家まで10分はすごいな。先に風呂に入ってから、晩飯を食いながら俺は青木に言った。
「用があるならまずはラインしろよ」
「したって携帯、ロッカーに置きっぱなしで見てないでしょ?」
ああ、そうだった。整備の頃のくせがまだ抜けてなかった。営業はクライアントからの電話が携帯にかかることがあるから、机の上に置けるが、整備時代はロッカーに入れておかないといけなかった。ロッカーは未だに整備のを使ってるから1階だし、確かに1回入れると帰宅まで携帯を見ることはなかった。
「明日から携帯を席に持っていくようにするよ」
「毎日女性陣とお弁当食べてるの?」
「毎回誘ってくれるのに、断ったら悪いだろ」
「じゃあ帰りに食事に誘われても、悪いからって行くの?」
「それはよりけりだよ、たぶん行かないと思うけど」
社内結婚の欠点だよな。文句を言う気はないけど、筒抜けだもんな。荷造りは明日がんばることにして今日はもう寝る。せっかくケビンとトーマスと過ごせて楽しかったのに、会社では監視されてる気分になるし、帰宅してからも責められると余計疲れる。おまけに信用されてないし。
「もう寝るから。昨日あんまり寝てないし」
そう言って適当に食って、風呂に入って部屋へ戻った。
*****
俺はさっさとベッドに入ったけど、寝られなかった。30分ほどすると、片付けが済んだのか青木もベッドに入ってきた。
「起きてる?」
「……起きてるよ」
いきなり青木がキスしてきた。酒臭い!
「酒飲んだのかよ?」
「あ、日本酒」
日本酒? そんなにうちにあったっけ?
「料理酒だけど、まずくなかったわ」
そしてまた俺を脱がせ始めた! なんで突然こうなるんだろ? 酔ってるから? でも焼き鳥屋で結構ビールは飲んでるけど? 普段大人しいのに。疲れてるが、もちろん受けて立つ! でもまた『よく覚えてない』とか言われるのか?
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