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ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間

水田歩

ほんとうのハネムーンまで二十三時間①


 
 角を曲がったとき、ハニーブロンドが水密扉を中から閉めようとしていたところだった。考えるまもなく、私は駆け出した。

「円佳様っ」

 ガードさんの手が指にかすったなと思ったけれど、振りきった。
 何かを蹴って、私は扉と壁の間の僅かな空間に身を滑りこませた。

 がこぉぉん。
 重々しい音がして、扉はしまり。そして視界は闇に塗りつぶされた。

 ……あー、

「NINE!!」

 悲鳴が聞こえた。ハニーブロンドだ。
 落ち着ついてと言う前に、ドイツ語で『いやあああああ、出してぇぇっ』の大絶叫。
 いや、貴女が自ら飛び込んだんでしょうが。

 私も閉所恐怖症持ちだし、暗闇も苦手な筈なんだけれど、自分よりパニックしている人を見ると落ち着くというのは真理らしい。

「それにしても……」

 ハニーブロンドを刺激しないように、口の中でつぶやく。
 鼻をつままれてもわからない、とはよく言ったものだ。上下感覚も怪しくなる。

 私がまだ正常なのは、ゴツゴツとした水密扉に触れているからだ。とりあえず、電気は点けたほうがいいよね。

 えっと、スイッチはどこだろう。扉に絶えず触れてるようにして、ぺしぺしと叩いていく。

 その間もハニーブロンドの悲鳴が聞こえる。しかも、段々遠ざかっていく。が、声はすれども姿は見えない。闇雲に追ったら二人とも迷宮入りだ。

「ちょっと待ってて」

 それまで、ぶつかったり、転ばないでよぉ……。
 祈りはむなしく。

「ぐっ」

 くぐもった音と、ガツンという音。それからどさりという音。

「ちょっと、ハニーっ」

 慌てて携帯のライトをつけてみても、暗がりに灯りが吸い込まれるだけ。
 どうしよう……。

「と、とりあえず電気! それからドアを開くっ」

 震える手で、壁をさぐりながら歩く。体感、水密扉は幅二メートルくらいだった、はず。

「あったぁ!」

 ほっとした。
 スイッチをすべてONにした。ぱっと明るくなる。 ドアを開けて、ガードさん達にも手伝って頂き、彼女を探そう。

「あ、開かないっ? そんな!」

 パニックになりそうな中、必死に手順を思い出す。
 というより、開閉のしかたがドアにシールで貼ってあるのでまちがえてない。
 なのに開かない。なんで?

 ふとみると、携帯電話サイズのものがドアにピコピコ光っている。
 試しに持ってみたら、外れた。マグネットでついてただけみたい。

 と。
ドアの上のセンサーかなにかが慌ただしく色々な光で点滅し、やがて沈黙してしまった。

 ………………えっと。
 なにか、電子錠みたいなのを私、壊しちゃった?

 ごくり。
 ガードさんのおっしゃった『万が一』という言葉がぐわんぐわん頭の中に響いた。
「と、とりあえず。ハニーブロンドを探そうかな。うん、そうしよう」

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