ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間
ほんとうのハネムーンまで二十四時間⑤
受話器を置いたガードさんが合図すると、別のガードさんが骨伝導マイクとイヤホンを渡してくださる。
「透也様のいらっしゃるところまでは繋がりにくいですが、同じデッキにいる私達にはつながりますので」
使い方を確認しながら装着していく。
話せなくても、透也くんと繋がっている手段があると思うと安心する。
ガードさんの一人が楽しそうにおっしゃった。
「我々は、サイバーテロについては経験値が足りなかった。今回はいい実戦になりました」
ん? とすると、なにか。
「透也くんはハネムーンであの兄妹を釣って、まんまと自社の演習に仕立てたと。そういうことでしょうか?」
「有り体に申し上げれば」
むうう。
私は頬をふくらませた。
わかっている、彼が私を囮に使う気はなかったということは。
多分、私を怒らせて透也くんまで不安にさせた、あの兄妹に手ひどい仕返しを考えた結果なのだろう。
あと、私と直接対させることで『君達じゃ僕達の間に割り込むのは無理』という宣言も入ってたんだろうな(照れ)
『こんなにカッコいい女が俺の妻なんです。ね、他に目がいくわけないでしょう?』
透也くんは事あるごとに私がどれだけ素敵かをのろけたくて仕方ないのだ。
……彼の、私に惚れたフィルターは世界一だと思う。
私としては、いつまでもそのフィルターが高性能であることを祈る。
それに!
透也くんはヒントを与えてくれてた。
乗船客みんな、ガタイがよくて二・三十代の人が多いなって気づいたときに、スタッフ会社のメンバーだと教えてくれたではないか。
ううう。
「私って透也くんの奥様としてのスキル、まだまだなんですね……」
「円佳様はそのままでよろしいと透也様は考えておられます」
ほんとだろうか。
「我々も貴女のガードをしておりますと、退屈しませんので」
にぃぃぃっこりといい笑顔をされましても。
「……人をトラブルメーカーみたいに言わないでください……」
自覚ないのか、って実声で聞こえたぞ。
なんだろう、ハニーブロンドと一緒に逃げたくなってきた。
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