ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間

水田歩

ほんとうのハネムーンまで二十四時間②

 
 ガードさんの一人がタブレットを見せてくださったので、彼女の状況がよくわかる。
 カメラが切り替わっていくが下層にいくにしたがい、画像が乱れがちになる。

「これ、彼女が妨害電波とか出してるからですか?」

「いえ。単純に天井などの障害物を通り越して無線通信をする場合、壁・天井などに 使用されている素材によっては通信できない場合があります」
 
 そうなんだ……。

「電波ってなんでも通り抜けるのかと思ってました」 
「金属は電波を反射もしくは吸収をします。コンクリートや土壁・断熱材などの 高密度素材・高湿度環境は電波を減衰させます。木材などの場合も減衰退する場合があります」

 んーむ。
 ビルも家も、船もそんな物質で作られてるものね。
 ガードさんが、配電盤らしき扉をあけ、器用にタブレットに接続していく。
 あ、有線は大丈夫なのか。

 そして、タブレットに示された船の見取り図はどんどん封鎖されていく。

「あの」
「なんでしょう」

「封鎖ってどうやってるんですか」

 シャッターをガラガラびしゃーん、とか。
 アニメや漫画で観たりする隔壁がどーんと降りてくるわけではないと思うんだけど。

 詳しくは知らないのですが、と前置きして語ってくれた。

「船体には、船内の一部が浸水しても船が浮力を失わないように、縦・横の仕切り壁や外板、甲板などで水密に仕切られた区画がいくつも設けてあります」

 水密とは、水圧がかかっても鋼材などの継ぎ目から水が漏れない性質だと教えてくれた。
 それらは船の建造時に船体の骨格(ていうのかな?)としてつくられるものらしい。

 防水と防炎を兼ねているし、タンクを区切る壁にもなっているそう。

「水密な構造をもつ仕切り壁を水密隔壁または支水隔壁といい、まず船首と船尾を衝突や座礁などから防護する船首隔壁と船尾隔壁、および機関室の前後端を仕切る2枚の機関室隔壁があります」

 えーと。
 頭の中で船を描いてみる。
 あ!

「ああ、だから船内の見取り図が鯵のひらきみたいなんですねっ!」

 多分、外国生まれのガードさん、『アジノヒラキ』を脳内変換したらしく、数秒置いてから「そうです」と答えてくださったんだけど。声が震えてます。私、そんなにおかしなことを言った?

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