ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間
ほんとうのハネムーンまで二十五時間〜丁々発止〜②
 
ブリッジにつくと、ガードさん達が先着していて透也くんに声をかけてきた。
「操舵室ならびにフライングブリッジ、制圧しました」
も、ものものしいな……?
まるで透也くんが、作戦の遂行について報告されている司令官みたい。
ガードさんの一人が恭しくドアを開けてくれて、私は固まった。
ダンディなおじさま船長さんが、怒鳴りながら指示を出している。
スマートな態度だったはずの副操縦士さんは、泣きそうな顔をしながら必死に舵を握っている。
クールな一等航海士さんもやはり声を荒げながら船内電話で何事かを指示していた。
な、なにごと。
透也くんがさりげなく私の背中に手を添えて室内にいざなう。
床は剥がされて、配線や電極、基盤などがむきだし。
そこに、ケーブルで直接パソコンをつなげて、何人かのスタッフが目にもとまらぬ速さでキーボードを叩いている。
僅かに床が残っているところには男の人が立たされて、屈強の男達に囲まれていた。
ということは、その人がなんらかの犯人なんだろうな。
なにをやったんだろう。
「!」
きょろきょろと周りを見渡して、答えがわかってしまった。
ブリッジには前と左右、三方に窓がある。
その、左側の窓に衝突しそうなくらい崖が迫っていた。
引き換え右側はもう少し余裕があるから、船長さん達は航路を修正しようと試みているのだろう。
どっくん、どっくん。
心臓がイヤな音を立て始める。すると、透也くんが肩を抱いてくれた。
すがるように見れば、彼も私を見つめてくれている。
ふー。
私は深呼吸をした。
『このドキドキは、透也くんがカッコいいせい』
魔法の呪文を唱える。
ふー、ふー。
透也くんの体温に、心臓が穏やかになってくるのがわかる。
大丈夫。
私はつかまらない。
ひょいと、人による壁の隙間から男性がこちらを見た。
「あ」
ブラウン!
私の声に出して男性を囲んでいた男達も私をちらりと見遣る。
「やあ、円佳。また会ったね」
一人、ブラウンが午後のお茶でも嗜んでいるかのような優雅な笑みを浮かべた。
効かないわ。
私は透也くんのお値段無限大の笑顔を二十一年間も浴びてきた女よ。そんじょそこらの美形の笑顔くらいでくらくらするものですか。
と、視界がくるりと回る。透也くんの胸に抱き込まれた。とくん、とくんと彼の心臓が私を優しくなだめてくれる。
落ち着いた。
もぞり、と動けば透也くんの腕がゆるんだ。
もう一度反転すれば、今度は背中から抱きしめてくれる。
大丈夫だよ、というふうにお腹へ回された手に私は安心した。
私には透也くんがついているんだ、戦える。
決意を新たに、彼をにらむ。
「三日ぶりかな。ところで、君の旦那様に冤罪だと伝えてくれないかな? 僕を犯人と決めつけて椅子もすすめてくれない。ひどいと思わないか」
瞬間、彼を囲んでいる男達の雰囲気がびりりと怒りの電気を帯びた気がする。
「この状況でそんなことを言えるということは、物的証拠はないのね」
私がゆっくり言うと、ブラウンはその通りとばかりの表情になった。
「でも、貴方が無罪だという証拠もないんでしょ」
誰かがヒュウ、と口笛を鳴らした。
ブリッジにつくと、ガードさん達が先着していて透也くんに声をかけてきた。
「操舵室ならびにフライングブリッジ、制圧しました」
も、ものものしいな……?
まるで透也くんが、作戦の遂行について報告されている司令官みたい。
ガードさんの一人が恭しくドアを開けてくれて、私は固まった。
ダンディなおじさま船長さんが、怒鳴りながら指示を出している。
スマートな態度だったはずの副操縦士さんは、泣きそうな顔をしながら必死に舵を握っている。
クールな一等航海士さんもやはり声を荒げながら船内電話で何事かを指示していた。
な、なにごと。
透也くんがさりげなく私の背中に手を添えて室内にいざなう。
床は剥がされて、配線や電極、基盤などがむきだし。
そこに、ケーブルで直接パソコンをつなげて、何人かのスタッフが目にもとまらぬ速さでキーボードを叩いている。
僅かに床が残っているところには男の人が立たされて、屈強の男達に囲まれていた。
ということは、その人がなんらかの犯人なんだろうな。
なにをやったんだろう。
「!」
きょろきょろと周りを見渡して、答えがわかってしまった。
ブリッジには前と左右、三方に窓がある。
その、左側の窓に衝突しそうなくらい崖が迫っていた。
引き換え右側はもう少し余裕があるから、船長さん達は航路を修正しようと試みているのだろう。
どっくん、どっくん。
心臓がイヤな音を立て始める。すると、透也くんが肩を抱いてくれた。
すがるように見れば、彼も私を見つめてくれている。
ふー。
私は深呼吸をした。
『このドキドキは、透也くんがカッコいいせい』
魔法の呪文を唱える。
ふー、ふー。
透也くんの体温に、心臓が穏やかになってくるのがわかる。
大丈夫。
私はつかまらない。
ひょいと、人による壁の隙間から男性がこちらを見た。
「あ」
ブラウン!
私の声に出して男性を囲んでいた男達も私をちらりと見遣る。
「やあ、円佳。また会ったね」
一人、ブラウンが午後のお茶でも嗜んでいるかのような優雅な笑みを浮かべた。
効かないわ。
私は透也くんのお値段無限大の笑顔を二十一年間も浴びてきた女よ。そんじょそこらの美形の笑顔くらいでくらくらするものですか。
と、視界がくるりと回る。透也くんの胸に抱き込まれた。とくん、とくんと彼の心臓が私を優しくなだめてくれる。
落ち着いた。
もぞり、と動けば透也くんの腕がゆるんだ。
もう一度反転すれば、今度は背中から抱きしめてくれる。
大丈夫だよ、というふうにお腹へ回された手に私は安心した。
私には透也くんがついているんだ、戦える。
決意を新たに、彼をにらむ。
「三日ぶりかな。ところで、君の旦那様に冤罪だと伝えてくれないかな? 僕を犯人と決めつけて椅子もすすめてくれない。ひどいと思わないか」
瞬間、彼を囲んでいる男達の雰囲気がびりりと怒りの電気を帯びた気がする。
「この状況でそんなことを言えるということは、物的証拠はないのね」
私がゆっくり言うと、ブラウンはその通りとばかりの表情になった。
「でも、貴方が無罪だという証拠もないんでしょ」
誰かがヒュウ、と口笛を鳴らした。
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