ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間
本当のハネムーンまで96時間前から知恵熱だした②
結論。
汗をかいたまま、またジョギングコースを三周もしてしまった私は、海風に吹かれて熱を出した。
部屋に戻ると、透也くんが血相を変えていた。
「円佳、大丈夫か!」
ドアを入った途端、抱きあげられた。医師を呼んでくるよう、ガードさん達に指示を出す。
「大袈裟だなぁ、ちょっと目が回って足に力が入らないだけだょ。……透也くん、この部屋冷房効きすぎじゃない……?」
歯の根をガチガチさせながら言ってしまった。
だるい、頭が内側からガンガンする。
喉は唾液を飲み込むのもつらい。
骨の節々が痛い。
背中がぞくっとすると思えば掛布を剥いでしまいたいくらい熱い。
医務室からお医者様が呼ばれたらしい。
伝染病ではなく風邪だから安心してくださいとおっしゃていたように思う。
苦いお薬を処方してもらった。
誰かがそっと額に手をおいてくれる。熱っぽいところにひんやりした温度が気持ちいい。
唇に柔らかいものが触れ、口を開けるよう促される。少し開いた歯列の隙間からほのかに果物の香りが移った水が喉に流れ落ちた。
夜、辛くて眠れない。
「大丈夫、僕がついている」
まんじりともせずにいると柔らかな声が何度も言ってくれた。
部屋に日の光が差し込む頃、ようやく眠くなった。
「ゆっくりおやすみ」
声は慈しみに満ちていた。
「眠りたくない」
朝寝てしまえば、夜眠れなくなる。
暗闇の中、誰も起きていない時間は長く、永く感じられる。
「円佳が起きたら付き合ってあげるよ」
眠りが浅いのか、透也くんは私のちょっとした動きで目を覚ましてくれる。
透也くんにこそ、深い眠りをとってほしいのに。
「元々ショートスリーパーのようでね。でも、円佳を抱きしめると、とてもよく眠れるんだ」
「ぞ……いえば」
「うん?」
「どう……や。ぐん、いづも、看病じで、ぐれだよね……」
子供の頃から具合を悪くすると、いつも枕元にいてくれた。
お返しに私も看病してたりした。
風邪を感染しあってしまい、結局は隣同士に寝かせてもらった。
「円佳の傍にいるチャンスだったし」
額に触れられたキスが嬉しい。
「君が僕に縋って僕の手の中にいる、最高に幸せな時間だからね」
眠って、さすってもらって。起こしてもらって、体を拭いてもらって。
抱き上げてもらってお風呂で頭を洗ってもらう。
眠って、薬飲ませてもらって。
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