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ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間

水田歩

ほんとうのハネムーンまで110時間~敵と遭遇〜①

 午後七時。

(結局、昨日は夜にディナーにもいかず、ルームサービスでシャンパンやフルーツ、フィンガーフードをベッドの上やら、透也くんの膝の上やら、お風呂の中で食べてはほにゃらら……し。
今日も昼過ぎまで怠惰かつ爛れもとい、新婚らしいまったり時間を過ごして)

 さすがに今日の夜は地中海料理を楽しもうなんて話をしてレストランに行き、トイレで化粧直しをしていると、す、と隣に人の気配。

『トウヤの奥様って貴女?』

 ドイツ語で話しかけられた。
 私が誰だか知っているってことは、セキュリティ会社のスタッフさんなんだろう。
 いつもガードしてくださっている方達は敬語なんだけど、外国の方はフレンドリーなんだなぁ。

 ちら、と横目で見たらものすごい美少女がいた。……と言ったら失礼かな。

 ハニーブロンドとダークブルーの瞳。
 骨格は華奢だけど凹凸が素晴らしい。
 肌のみずみずしさから一七・八歳に見える。
 でも、淡い紫色のドレスをエレガントに着こなしているので子供っぽくは見えない。

 まるで妖精みたい。こんなスタッフさんもいるんだ。
 いやいや、外勤ばっかりじゃなくて総務とか内勤系の人もいらっしゃるだろうし。

 私はにっこりと口角を上げると手を差し出した。

 夫(いやん)の会社で働いてくださって、ありがとう。
 なんて言葉を言おうとしたのに。

『トウヤはなんで貴女なんかを選んだのかしら? 私のほうがお似合いなのに』

 ……おう。あからさまに言われたの、久しぶり。

『本当は一分一秒も貴女なんかにトウヤを貸したくないけれど、いずれお兄様が彼をプレゼントしてくれるの。せいぜい時を惜しんでおいてね』

 にこ。
 天使の微笑みを残して、彼女は立ち去った。

 むーーかーーつーーくーーーーーー!!!!!

「なんなの、あの子! 絶対に職業人じゃないよねっ。親に連れられてきたんだろうけど、失礼すぎじゃない? 透也くんはモノじゃないっての! ……でもそうか。子供なら、親の仕事のこと把握していないだろうし」

 が、透也くんと釣り合わないのではないかという密かな悩みを直撃してくれた。

「普段考えないようにしているんだけどな」

 子供のタワゴトとは聞き流せない。
 女は三歳にして美醜の優劣をジャッジし、狙った男に対してのライバルは容赦なく叩き潰す。

 ロックオンされたうえでのご指摘は結構きつい。

 数多の美女をなぎ倒して私を選んでくれた透也くんのことを疑うつもりはない。

 ジェラシーなんて見せたら、嬉しそうに部屋に閉じ込められて一日中愛を囁かれるに決まってる。それ、いいな! ……もとい、透也くんに迷惑をかけてはならない。

 頑張れ、私。
 嘉島財閥の総帥夫人になるのだ、あんなのは序の口。透也くんに泣きつく段階じゃない。

 といって、私は庶民だし一人で闘うにはなにもかも足りない。
 最終的には『透也くんの威を借りまくる私』になる気満々だけど、まずは自分でなんとかしなくちゃ!
  ……でもチキンだから、もう二度と逢いたくない。多分、会わないはず。

「忘れよう」

 私は深呼吸をしてルージュを引き直すと、レストランへと戻ろうとした。

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