ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間
本当のハネムーンまで153時間〜透也〜 ②
多分、僕は愛されることに狎れすぎていて、同じ熱量で誰かを愛したかったのだろう。
乗馬用の馬も、庭に放たれていたドーベルマンも、そこまで深い愛情の対象にはなりえなかった。
たまたま出逢った円佳に、全ての愛情を注ぐことになったのは偶然か必然か。
彼女が欲しいものを差し出せば、円佳が手に入るだろうか。
親に頼んで、服も本も玩具も与えてもらったら、笑顔を返してくれた。
もっとと贈ったら困った顔をする。
『持っていけないから』と。
彼女はいずれ嘉島を出るつもりなのだとわかり、わんわん泣いた。
どうやら生まれてから転々としていたせいで、定住という考えがなかったらしいのだが。
彼女に置いていかれることが怖かった。
『円佳ちゃん、どこにもいかないで!』
子供のように泣き喚き、僕の執着する姿を初めて見た両親は、円佳を嘉島に迎えることを許してくれた。
円佳のご両親は彼女が望めばと、条件付きで了承してくださった。
彼女が物に執着しない人なのはすぐにわかった。
といって飽きやすいのではなく、一つのものをながく丁寧に使う。
円佳の父上は研究と妻子以外に興味はなく、母上は小さな鞄一つで移動を繰り返ししていたから、お二人の影響もあるのだろう。
自分の手で持てるだけのものしかほしがらない、その生き方は鮮烈だった。
ならば、僕こそが円佳が持てるものになろう。
彼女の心に棲めるように自分を作っていこう。
嘉島の跡取りになることを周囲に期待され、自分は人の上に立つのに適していると気づいてからは、円佳に憧れても同じことは出来ない。
一流品しか使わない嘉島に納品すれば、メーカーの誉れになるし、経済効果は図り知れないから、贈り物を断ることは無理だ。
せめて不要なものは、僕らの母上達が育った乳児院に寄付してもらうようにした。
……自分が計算高く策略家なのは幼いころから気づいていたから、上手に隠したつもりだった。
『とうやくん、うそをゆうとき、めがくろい』
円佳は的確に僕を見抜いた。
僕が背負う嘉島に怖じない人間は、彼女だけだった。
反省した僕は手を変え品を変え、甘い毒を円佳にたらしこんだ。
何年もかけて愛をささやき、今はこうして円佳も応えてくれるようになった。
 
健やかな寝息をたてている彼女へ、キスを送る。
「一生、側にいて」
円佳がいてくれれば、他にはなにもいらない。
「君が僕から離れたら」
僕は狂気のまま世界を滅ぼすだろう。
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