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ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間

水田歩

本当のハネムーンまで162時間〜スィートルーム〜②

 
 透也くんは執事さんや秘書さんとスケジュールを語り合っている。
 時折、視線を寄越されのだけど、なんというか『あとで、美味しく頂くよ』と予告されているような気になる。

 ドレスの下の裸を見られているようで、私は気をそらした。

 ……そういえば。
 さっき服を選ぶために備え付けのクローゼットを開けたら、服が沢山入っていてびっくりしちゃったことを思い出した。

「ねえ、透也くん」

 恐る恐る訊ねてみたら、案の定。
 私の顔色だけで質問の内容がわかったみたい。

「ん? とりあえず日数分はね。足りなかったら船内のブティックで見繕ってもいいし。あとは、立ち寄り先で持ってこさせるから、少ないけど、これくらいでいいかなって」

 なんと。
 今日の装いも、クラッチバッグ一つで、おそらく私の養護教師時代のお給料一か月分が軽く飛ぶ。
 晩餐会ばっかりじゃないから、ラフな服装もあるとはいえ、毎日分ですと?

 透也くんてば、一体どれくらい散財したのだろう。
 クローゼットの中身を合わせたら、ウエディングドレスよりも総額が高くなってしまうような気がする。

「もったいないよ! 着回ししないとっ」

 私がダメ元で言ってみたら、透也くんはうっすらと笑んだ。

「あのねえ、円佳? これは一種のビジネスだ。嘉島コンツェルンの総帥夫人に、どれだけのメゾンが着て貰いたがっていると思う?」

「あ」

 社交の場は、他のセレブが身に着けているハイブランドの見本市でもあるらしい。
 総帥夫人になった以上、お付き合いするセレブとの格を合わせる必要があるのと、私にも経済を回す義務がある、ということだ。

「ハイ……」
「流石、僕の愛おしい奥様」

 透也くんに上目使いされながら手の甲にそっと口づけられて、どうして私が身悶えずにいられようか。
 気が付いたら素晴らしい夕暮れになっていて、インターフォンが鳴った。

「どうぞ」

 秘書の方の応えを聞きながら、
 
 船長さんがお迎えくださって、晩餐室へお話をしながら移動する。
 ドアを開けると、主だった乗組員の方が整列されていた。
 船長が一人一人について、役職と名前を紹介されていく。
 私達もにこやかに挨拶した。しっかりとお名前と顔を覚え込む。

 やげて、船長と透也くんによる短めなスピーチがあった。
 船長は船の性能や寄港地の説明だったり、透也くんは感謝の意を述べて、皆でグラスを掲げた。

 和やかで、美味しい食事だった、と思う。
 皆さん、国籍はさまざまで流暢な英語を話される。 
 なかにはカタコトの日本語で話しかけてくださる方もいらして、私はちゃんぽんで返事をした。

 透也くんは素晴らしい英語で、満遍なく参加されている皆様に話題を振っている。

 フランス料理が出たのだけれど、星のついたレストランと同じくらい美味しくて、私の顔がほころんじゃった。

「満足いただけて恐縮です、マダム。フレンチの星三つのシェフ、アラン氏をお迎えしております」 

 孫を自慢するお爺ちゃんみたいな感じで船長が言われて。
 ごっくん。
 あ、あの、アラン氏ですと……?
 お一人様のコースのお値段、日本円にして安くてもン万円で、予約が全然取れないレストランの?

「船の上では食事がなによりの楽しみだからね」

 透也くんがさりげなく教えてくれて。

「他にも中華料理、日本料理、イタリアン。全てのレストランに星付きの料理人を揃えております」

「流石、ですわね」

 にっこりしてみせたけれど、顔が強張ってなかったかな。
 司厨長チーフ スチュワードが挨拶にこられ、全員で料理を褒めたたえたのち航海の無事を祈って、会は終わった。

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