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ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間

水田歩

本当のハネムーンまで168時間〜出発〜 ②

 
 お式を挙げた嘉島家の迎賓館から、なんとこのまま沖に停泊している世界一周中の豪華客船に乗り込んでしまうのだという。

 南下してシンガポールを皮切りにアラビア半島、スエズ運河を介してヨーロッパへ。
 それから南北のアメリカを経てハワイから日本にという、実に三ヶ月以上のコース。

「そ、それがもしかしてハネムーン?」

 私がワクワクして訊ねると、透也くんはまさか、と笑った。

「僕の円佳への愛を見くびらないで欲しい。最初の結婚式のとき、言ったよね? 『僕の知り合いに顔見せしながら三年くらい世界をのんびり回ろう』って」

 飽きたらヨーロッパで下船してもいいし、アメリカまで足を伸ばしてもいい。
 勿論、お土産を渡しに一度日本に戻ってもいいよ、と言われた。
 いわば、新婚旅行への往路なのだと。

 蜜月ハニームーンどころか、蜜年ハニーイヤーズになっちゃう――そんな言葉、ないかもだけど――。

「…………本気?」

 私がじっと透也くんを見つめると、彼はなぜか気弱な表情になった。

 といっても私以外には、気づく人はいないんじゃないかな。
 なんとなくわかっちゃうのだ。
 二十一年間付き合ってきた、勘という奴である。

 私の視線に負けて、透也くんは小さな声で言った。

「ごめん。少し……、仕事しながら。言っておくけど、僕はワーカーホリックじゃないよ? 一日最長でも八時間しか働かないから」

「大丈夫、わかってるよ」

 透也くんラブな私とはいえ、一財閥の総帥に三年間も仕事もさせずに構ってもらったりしたら、世界経済に影響が出ることはわかっている。

「でも、無理しちゃ駄目だよ? 透也くんは私の」

 言いかけて、はたと口ごもる。
 どうしよう。
  スタッフの皆さん、聞かないフリ見ないフリは得意でいらっしゃるけれど、それに甘えていちゃいちゃしちゃうのは、いかがなものか。

「円佳。続きを言って?」

 私が恥ずかしいことを言おうとしたのをわかったんだろう。
   透也くんが途端にキャラメルに砂糖をかけたような甘い声で訊いてくる。

 あ。
 皆さん、明後日の方向を向いてらっしゃる。

 消音設計のヘリとはいえ、搭乗者同士の会話はインカム越しである。
 皆さん、さりげなーく回線を切ってくださっている、はず。

 私は盛大に深呼吸をし、唾をごっくんと呑み込んだ。

「透也くんは。……私の、大事な旦那様なんだからっ」

 プロペラの音で消されるような声で呟いた。

 けれど、透也くんは花がほころんだような、と言っていいような表情になり。
 私をぎゅううう、と抱きしめたのだった。

「うん。僕は嘉島の総帥であるよりなにより、円佳のたった一人の愛する男だからね」

「うん!」


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