ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間
結婚式の010時間前〜全て閉所恐怖症のせい〜 ⑤
私が中学生の頃、突然あごが痛くなった。
連れていかれた口腔外科でレントゲンを撮られたところ、『親知らずが歯茎の中を隣の歯の根元に向かって、横に伸びている』と診断された。
そのままだと隣の歯の根元が腐ってしまうという、なんとも性悪な親知らずだったので、切開手術で摘出することになった。
痛みや反射行動から、舌を噛んだり歯医者さんの指を噛み切ったりするかもしれない。
危険だから、無理矢理口を開いておけるマウスピースの変形バージョンみたいなものを嵌められた。
『あ、なんか拘束されている』って思った瞬間、心臓がバクバクになって過呼吸になってしまったの。
先生が落ち着かせてくれて事なきを得た、んだけど。
「……なんで知ってるの」
ボディーガードさんは別の部屋で待機してたし、透也くんに知られたら絶対に大騒ぎされるから、先生には口留めしておいたのに。
「僕が円佳のことで知らないことがあるのは許せない。カルテも提出させている」
当然とばかりに答えられてしまった。
それってストーカーって言わない?
「……ええと。人が他の人のことを完全に知りえるなんてないと思うんだけどな、ははは」
「僕は知りたいことは全て知らねば気が済まない」
――守秘義務とは。
「治療室内を警戒させていたボディーガードからも報告があった。それから医療チームを編成して、円佳の生活パターンを映像や音声だけでなく、色々と検証した結果、閉所恐怖症って診断がくだされたんだ」
「堂々と盗聴・盗撮させていたように聞こえたのは気のせい?」
「気のせいだ。僕が行ったのは単なる警戒だからね」
――普通、歯医者さん内部でストーカー犯罪が行われるなんて、誰も思わない。
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