ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間
結婚式の010時間前〜全て閉所恐怖症のせい〜 ④
「話を戻す。そこから僕はある疑いをいだいて、円佳を見張らせるんだけど。君はしぶとくて、なかなか尻尾をつかまえさせてくれなくてね」
「……ええと。それは私が知らない間に産業スパイに仕立てあげられていたということでしょうか」
ぼそりと呟いてしまった。
……だから。彼の部屋に入れてもらえなかったんだろうか。
軽くふきだす音がすると、顎を指で上向きにされて視線を合わせられた。
「それでこそ僕の勘違いクイーンだよ。この話の流れでどうして、そんな発想になるのさ」
唇すれすれにささやかれる。
あれ。
いつのまに距離を詰められていたの。
透也くんとの距離、一メートルほどは空けていたと思ったんだけどな。
それに、口調がとってもくだけてる。
なんというのかな、腹黒いときとか私に隠し事しないときの話し方。透也くんは今、素なんだ。
とりあえず、ドギマギしたのを誤魔化すために不機嫌な声を出して、思いっ切りにらんでみた。
「ナニソレ」
だけど、楽しそうな彼を見ていると、もう陥落したくなっちゃう。
透也くんは私の鼻にキスをくれると、真面目な顔で語り始めた。
「決定的になったのは中学生のとき。円佳。君は親知らずを抜くとき、開口器をかまされただけで過呼吸になった」
また違う話題を持ち出されてしまう。ちっとも本題に近づかない。
私の質問に、きちんと答えて。
焦れて言いかけて、今日の透也くんがいつもと違うことに遅まきながら気づく。
普段ならさわやかに述べ立てるのに、今は考え考え、話してくれているような気がする。
まずは透也くんの話を聞いてからだ。
……思い出した。
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