結婚式の０１３時間前〜透也〜 ②

　
　円佳の家出数時間後には、某国が最も必要としているレアメタルの輸出量が大幅に削減されたという記事の号外が配られた。

　某国は大使を通じて猛抗議をしているが、嘉島家は交渉の余地を与えなかった。
　財力・外交能力において、某国は嘉島家に著しく劣る。
　国民の血税で創り上げた国軍をぶつければ嘉島との全面対決は可能であろうが、世界からの擁護を失う。
　嘉島はそれだけ世界経済に食い込んでいる。

「嘉島透也ぼくの大事なものに手を出せばどうなるか』を世界に知らしめるには格好のケースだったな」

　事件の解決をみたが後手に回らされた。

　心穏やかではないところに、要人たちから申し込まれた会談をこなさなければならなかった。
　最愛の円佳に逢いにいけないならば、仕事をしていたほうがいいとアポイントを許可した。

　目の回るような忙しさが一段落し、ようやく自室でくつろぐ時間を設けることが出来た。
　円佳付きの警備員から本日の彼女についての報告を受け取った。
　グラスをもてあそびながら、透也は呟く。

「なにごとも全力投球の円佳のことだ。詰め寄られれば、負けるのは仕方ない」

　彼女の一生懸命さにほだされてしまうのは、透也も同じである。　

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結婚式の０１３時間前〜透也〜 ②

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