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ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間

水田歩

結婚式147時間前から乳児院での五・三日間②

 
 くたくたになって、ベッドに飛び込むやいなや、透也くんの顔が浮かんできてしまった。
 忙しいときは誤魔化せるけど、一人になったり静かになると、途端に彼の面影がのしかかってくる。
 思いだすのは甘えた仕草や拗ねた表情。

『世の中、難しいことなんてなにもない』と思っている態度。
 私にも隠れてトレーニングしている姿。
 こっそり覗きみた、仕事をしているときの横顔。
 嘉島を背負うために努力している人。
 懐に入り込んだ人には冷たくなりきれない、優しい人。

 私は透也くんのことが大好き。
 反対に、彼の中には私への想いは欠片もないのかな。
 ミッションさえクリアしてしまえば、良心はちっとも痛まずあっさりと私を棄ててしまえる。それくらい、彼にとって私は不要な存在だったの?

「人生の半分以上を一緒に過ごしてきたのに……っ」

 私を堕とすだけ堕としたくせに。
 悲しい。
 寂しい。
 私を忘れてしまうであろう透也くんが、恨めしくて憎らしい。

 なぜ、私を欲しがったの。
 貴方なら、私を傷つけることなく知らないうちに、欲しいものを手に入れられたよね?
 なんで私が知らないうちに奪ってくれなかったの。
 どうして私に恋心を植え付けたの――――!

 泣き疲れて寝落ちする寸前に、天啓のようにひらめいた。

「そうだ! 『オ父サンノ特許』を透也くんにあげよう」

 私と結婚しなくても譲渡する、て書面を嘉島家の弁護士さんに作ってもらえばいいんじゃない?
 今まで、母の給料や自分が働いて得たお金で生きてきた。
 会ったことのない父親の特許料なんて、あてにしていない。

「どうせ、こっちは一般人だもの。そんなものを持ってたって、宝の持ち腐れだし」

 透也くんが欲しがっているのならば、彼に使ってもらえばいい。そのほうが特許も喜ぶ。

「そうしたら透也くんは私と結婚せずに済むし! 別の……、もしかしたら本当に好きな人と結婚出来るかもしれないしね」

 嘉島家は政略結婚がデフォルトで、私と別れたら別れたで透也くんはどこかの令嬢と愛のない結婚をするだけなのかもしれない。

 ごろりと寝返りをうって、天井を見上げる。

「透也くんが私から自由になったら、私も彼から自由になれるのかなあ? ……無理」

 私は浮かんだ疑問を即座に否定した。

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