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ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間

水田歩

結婚式の164時間前からの155時間〜透也〜

 
 婚約者である家永 円佳が倒れたという第一報のあと、嘉島 透也はただちに帰国の途についた。
――彼女が倒れたとき、円佳のストレス値を測る機器類は正常な数値である信号を送ってきていたため、状況確認が遅れた。 

 透也はほぞを噛みながら、機器作成者に肌から離して数秒後にはアラームが鳴るよう改良を命じた。

 日本に向かう機内で、やり残した海外での仕事の引継ぎをしていると、円佳が家出をしたという第二報が届いた。

 一瞬にして無表情になった透也を前にして機内の空気が凍り、スタッフの顔が青くなる。

 彼らの主人の機嫌が良いか否かは、透也の掌中の珠がいかに元気にのほほんと過ごしているかにかかっている。
 円佳の安否イコールスタッフの寿命に直結していることは、直属の人間ならいやというほどわかっていた。

 透也はただちに彼女を迎えに行こうとしかけた。が、他ならぬ円佳本人から先手を打たれている。
 彼が焦燥に駆られるも動けないでいると、帰国を聞きつけた政財界の要人から次々とアポイントが入る。

「本当にこの国の政治家たちは空気を読まない。僕はそれどころじゃないというのに」

 透也がうなづきさえすれば、要職に就いている彼らのクビを挿げ替えるなど簡単だ。
 が、さすがに思いとどまる。
 なぜなら『権力を嵩に来た行為』は円佳がもっとも嫌うものだからだ。

 気を取り直した透也が、円佳についてのあらたな警備プランを実行するよう部下に申し付けているまさにそのとき、彼女の部屋の物音を記録した音声データが届けられた。

 侵入者が、嘉島が敷いた警戒の網をかいくぐったのは一目瞭然で、居並ぶ者たちに緊張がはしる。

「まだまだ、警備システムに穴があるようだな」

 主人の声が絶対零度のようだと、その場にいた者たちは思った。

 システム構築者と破壊者の関係がいたちごっこであることは、透也が一番理解している。

 構築しただけ破ろうとする者が出てくるし、
『システムとは、最終的には動かす人間の質に左右される』という考えこそが、透也の座右の銘だ。

 システムで鉄壁の守りを敷きつつ、破られることを前提に人間が警護をしている。

 普段の透也であれば破られたことを面白がり、強化策を提示する。
 場合によってはシステムを突破した人間を自陣に取り込むことも辞さない。
 そうやってセキュリティ会社を、より強固に育てあげてきた。

 しかし己の不在時に、愛している女が危険な目に遭ったかもしれないと思うと、透也は殺気を抑えることができなかった。

 彼が怒りを表したのは一瞬であったが、スタッフが久しぶりの地獄を味わうには十分だった。

  ただちに監視カメラや音紋データから犯人の割り出しがなされた。
 まもなく円佳の部屋への侵入者を確保したが、なんと犯人はマダム・デュポワだった。

 尋問の結果、マダムは屋敷入りするまでに、後になって作用する催眠術を施されていたらしい。

 発動のGOサインは、とある機種のヘリコプターのプロペラ音。
 確かに衣装合わせの日、制限区域内を旋回していたヘリに屋敷のコントロールルームから警告を与えた記録が残っていた。

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