ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間
結婚式の155時間前〜逃げ出そう〜 ②
「そうだ。侵入者が出入りしたことについて、ボディーガードさんは気づいてるのかな?」
控え室をノックして聞いてみようと思ったけど、やめた。
闇雲に誰でも彼でも疑ってはいけない。
だからって私が情報を持っていることを、むざむざ相手に知らせる必要もない。
「でもドアから出れば、ボディーガードさんといやでも鉢合わせるするんだよね~」
かといって天井から脱出しようにも、床から五~六メートルは高さがある。
ピアノの上に椅子を乗っけても届かないだろうし、天井裏にも山ほどセンサーが仕掛けられているに違いない。
テラスから雨樋を伝わって降りるのも無理。
庭にはドーベルマンを放っているのだ。
私も餌をあげているけれど、覚えてくれてなかったら噛みつかれちゃうし、吠えられちゃう。
思考を戻した。
……透也くんの私的スペースは私の部屋の倍の大きさがあったりするらしい。
らしい、というのは嘉島の本宅でもどこでも、いつも透也くんが私の部屋に来てくれる。
二人でソファに並んで腰かけては眼が合って(以下略)。
「透也くんはお客様も多いしね」
待っていただく控え室もあるし。
教えてもらってないけれど、彼の部屋には秘密の部屋とか隠し通路もあるんだろうか。
あるのなら、そこから脱出するのが一番手っ取り早い。
でも留守中に、透也君の部屋に入るなんて考えたことなかったし、本人の許可なしの立ち入りはしたくない。
四の五の言ってられないんだけど、習った礼節が私に歯止めをかける。
次期当主部屋からの脱出はあきらめ、ついで迎賓館の見取り図を頭の中に思い浮かべた。
警備のコントロールセンターに、執事さんやメイドさんたちのお部屋と巨大な厨房。
温室、図書室、温泉をひいたプール付きのジムにオーディオルーム、ダンスホールを備えている。
あとは、高速WIFIやリビングとバスルーム付き客室が十数室。
これで次期当主の結婚式にしか使用しない建物だというのだから、驚く。
「それはおいておいて。本館と迎賓館て、繋がっていないんだもんなあ。メイドさんたちが行き来するのに地下道とかあるのかな」
あるにしても、この家の設計図を探し出さなくてはならない。
メイドさんに訊いたところで教えてもらえないだろうし、透也くんがそんなものを迂闊に管理しているわけがない。
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