ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間
結婚式の156時間前〜謎の女〜 ③
トラブルには一人で対処してみせると偉そうにしながら、この体たらく。
情けないけれど、私は大好きな彼に救難信号を送ってみる。
当たり前だけど、寝室のドアを破るように開けて飛び込んでくる透也くんはいない。
彼だけでなくセキュリティスタッフすら来る気配がない。
ん?
それっておかしいな。
芽生えかけた思考は断念させられた。
「……まあ、いいわ」
女(仮)はしばらく私の返事を待っていたみたいだったけど、諦めてくれたみたい。
ううう、凝視されている気がする。
薄目を開けて彼女を見たいけれど、ここは我慢。
お願い、このまま立ち去ってぇ!
「あんたも可哀想よねえ」
私の必死の祈りもむなしく会話が再開されたので、意識を耳に集中させた。
しかーし!
馬鹿にされた声で憐れまれると、余計イラつくもんだなぁ。
平常心を取り戻すため、愛しの婚約者様のことを考える。
……ああ、透也くんに逢えたら、どうしてくれようか。
まずは抱きついて、感動の再会をする。
二人になったら、『甘えさせて』っておねだりされるだろうから、膝枕してあげて髪をなでなでして、おでこにちゅうして。
アヤしい雰囲気になったら、なしくずしに二人は。
にへら。
いかん、現実逃避より寝たフリを続けなくちゃ。
「透也さまは、あんたが相続する、父親の特許を占有したいからご機嫌とりしてるってのに。いい気なもんだわ」
衝撃の言葉に、彼女への怯えの気持ちが一瞬で吹っ飛んだ。
……父親?
嘉島家に落ち着くまで、母は私を連れて転々としていたが、父らしき人物はいなかった。父がどういう人なのかは憶えていないし、写真もない。
母がまったく話さないから死別、もしくは結婚すらしていなかったのかもしれない。
私にとっては、母の恋人だという小父さんが父代わりだった。
私は母と二人家族なのに、この人はなにを言ってるの?
今は嘉島家の庭師をしている小父さんを勘違いしているの?
耳に全神経を集中させる。
「あーあ、嘉島財閥の命運を左右するような特許の持ち主の子供に、あたしもなりたかったなぁ」
ええと、特許?
なんだろう、私の人生に存在していないワードがいきなり二つも。
「結婚式の日にサインする結婚誓約書に、『家永 円佳が将来相続する父親の特許を、嘉島 透也に譲渡する』って書かれているのを知らないから、のんきな顔をしていられるのね」
それって透也くんが特許目当てだって、彼が私を愛してないって言ってるのも、同然だよね。
お生憎様、私たちはすっごく愛し合ってるだからね!
……でも。
本当にそう?
疑問が湧く。
そういえば、透也くんはなんで私を好きなんだろう……。
二人っきりのときは見つめ合うのに忙しくて、そのうちイチャイチャしだしちゃって、きちんと聞いたことがなかった。
むしろ訊こうとするたび、はぐらかされてきたような……?
幼い頃からの刷り込み? それとも。
心にじわじわと不安が満ちてくる。
「結婚さえしちゃえば、浮気し放題。ううん、あんたの不貞をでっち上げて離婚が成立。晴れて、透也さまは自由の身。あんないいオトコだもの、バツイチだろうが気にしないわ」
くすくすくす。
自信満々な笑いがベッドに覆いかぶさってくる。
言葉の刃が切りつけてくるのを、抵抗も出来ず受け止めるしかない。
「あんたなんかより、あたしのほうが断然美人だし。あたしが誘惑して落ちないオトコなんて、いないんだから!」
 気分が高揚したのか、女(仮)声が大きくなった。 彼女は慌てて口を噤むと、私の様子を伺ったようだった。
だんまりを続けている私に安心したのか、また話しかけてくる。
「ふふ、透也さまの恋人と妻の座はもらっちゃうけど、悪く思わないでね」
絶対に駄目!
透也くんは私のものなんだからっ。
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