オフィスの書類庫で書類整理をしていたら突然暗闇になり非日常が始まった
4/日】23.チロ視点▶︎ネコが初めてオレのベッドに寝た日
「富一郎さま、彼女は?」
「同期なんだけと、酔い潰れてしまって。送って行く」
「すいません、自宅は白山です」
「はい、承知いたしました。向かいますので、近くに行ったら道案内をお願い出来ますか?」
「はい。ありがとうございます」
「今日の入社式は楽しめた様でございますね?何よりでございます」
その鈴木さんの発言に彼女は、怪訝な表情で顔を寄せ小声でオレに質問して来た
「タクシーじゃないの?富一郎くんのお家の方なの?」
オレも顔を近づけ、彼女のその可愛らしい唇を見つめながら小声で返事を返す
「そうだ、家の者だよ」
驚いた彼女は顎を上げオレの顔に大接近する形になったので、その唇に触れてしまいたい衝動がフワフワと沸いて来たが堪えた
それから車中では、いろんな話をして、間近に彼女を感じ、さっき触れた柔らかい感触を反芻してと、オレにとっては過去に経験した事が無いトキメキの時間だった
途中一度、コンビニでトイレ休憩をしてその時に水を購入した。彼女が水を飲む度に、その仕草にさえドキドキして、無防備状態の彼女の事を存分に観察し続けた。
鈴木さんは社内で話が弾むオレを察して遠回りをしてくれている事がわかった。しかし、会社から白金までは30分程で到着してしまった
残念だけど、タイムオーバーだ。
到着間近からコクリコクリと始まった彼女は、コテンとなり、今はオレの膝の上に頭を乗せて眠っている。膝枕だ。
ーー極楽タイムは、ここまで。起こさなきゃ
彼女の耳元に顔を寄せた
「峰さん、峰常子さん。白山の駅ですよ?」
まるで聞いていない。
彼女の肩を包み軽く揺らす。
「お家の場所を教えてくれませんか?」
 彼女はクテッと、骨なしのクラゲの様でその顔は青い
「富一郎さま?たぶん暫く起きそうにありませんよ?どう致しましょう?車で寝かせるのも気の毒なので、一旦お戻りになってベッドで寝かせてはいかがでしょうか?」
ーーマジか?願ったり叶ったりだよ
「鈴木さん、じゃあ家に向かって下さい」
即答してしまう
 それから家までの鈴木さんの運転は、早かった。
車を自宅前で停車してドアを開いてくれると
「暫く寝たら大丈夫でしょう、3時間後にお迎えに上がります。」
  そう言い残して自分の業務に戻って行った。鈴木さんは、父親の専属運転手だが、子供の頃からオレの通学の送り迎えをしていて、オレ優先で動いてもらっているドライバーだ。鈴木さんが居なくても移動手段はいくらでもある父親は、秘書が段取りしたタクシーか他の社員に送迎してもらっている。
自宅に着くと、まだクラゲの様に熟睡中の彼女を抱き上げ、階段を登りオレのベッドへ運んだ。
オレの部屋はドアから入るとまず20畳のシアタールームがある。そこは巨大液晶パネルを壁に貼り付けそれに向かい3人がけのソファーを1つだけ置いてあるだけの空間だ。床には毛の長い楕円形のカーペットを敷いていて、ここに寝転んで映画を鑑賞する事が多い。年の離れた弟が、たまに利用する事もあり、幼稚なアニメなどを見ている。
ソファーは皮張りで深いグレー、その他もグレーで統一したスッキリした部屋だ。そのソファーに一旦彼女を寝かせた
寝室のドアを開け、まずは着替える事にした。シャワーを浴びたかったので、寝室に隣接しているベッドに寝かせてしまっては物音で彼女が起きて消えてしまいそうな気がしたからだ。
シャワー後髪をドライヤーで乾かしてから、薄手なシルクニットをサラッと被り着て、五分丈のラフなパンツを履いた。どちらもベージュだ。
ベッドの掛け布団をめくって準備をすると、ソファーに向かった。
彼女はまだ寝ていて、絨毯に膝を立ててその顔を覗き込むと、安らかな寝息を立てている。
車に乗る時点では青かった顔色は、赤みを取り戻し、ふっくらしたほっぺたが呼吸をする度に上下している。
その赤い唇と、ふっくらした輪郭から瑞々しいトマトを連想させる、どこまでも愛らしい初々しさを持っている。
そんな彼女を観察していると、リクルートスーツのジャケットにポケットが付いている事に気が付いた。たぶん内ポケットもあるはずだ。
両サイドのポケットを探ると、ハンカチとスマホが出てきた。ハンカチは、可愛らしいキャラクタープリントのものだ。それは、スルーしてスマホを出して覗いてみると、画面はカラフルなキャラクターの待ち受け画面、そんな趣味に軽くプッと吹き出してからスマホのチェックを始める。それは案の定ロックがかかっていた。でも、指紋認識で中身を確認する事はできそうだ。
ーーさすがに、それはダメだろ〜
オレは諦めてポケットへ戻した
次に、ジャケットの3つ付いたボタンを一つずつあけて、内ポケットを探す。
ーーやっぱりあった
内ポケットを探ると中から芝生を連想させる明るいグリーンのカードホルダーが出て来た。これもまた、可愛らしいがなんだか分からない動物のキャラクターがワンポイント付いている。それを見てまたオレはプッと吹いた。中を開くと、定期入れや、スイカ、免許証、折り畳んだ1万円札が入っている。
ーー学生かよ?
財布を無くしても大丈夫な様に保険かけてんのか、財布を無くした事あんだな?
彼女を知る度にお子ちゃま加減に癒された。
ーーどんだけお子ちゃまなんだよ?
かわいい〜
そのお子ちゃま定期入れの中から免許証を取り出した
ーーこいつの運転には怖くて乗れないな。
年齢はオレとタメ。
住所は小石川になってる。どうやら、最寄駅が白山だから普段から訪ねられたらそう答えているのだろう。実際の住所は、文京区の小石川で、この表記からして一軒家なんだろう。
山手線内側で一戸建てとなると代々この土地に住んでいるのだと察する。
ーー住所がわかって良かった
オレの眠り姫は、目覚めるまでオレのベッドで寝かせる事にしよう
抱き上げると、開けておいたドアから彼女を運びベッドにそっと寝かせた。それから、
ーー1枚だけ!!
と、スマホを出して寝顔の写真をいただいた
ーーおー。かわいく写ってる。
顔のアップ写真を見て、布団を掛ける前にベッドに寝ている全身写真ももう1枚写した
こうして今日起こった奇跡の様な出来事を忘れない様に、日にちと時間とその姿を切り取りスマホの中にしまい込んだ。
これがオレが生まれて初めて人間という者に、興味を持った瞬間だった
ーーこのトキメク胸の形はきっと恋だ
オレのベッドに眠る彼女に掛け布団を被せてやろうとして、手を止めた。そして、ベッドがバウンドしない様にそっとその横に寝転んで、添い寝をした。
いけない事をしている気がして、オレのドキドキは止まらなかった
「同期なんだけと、酔い潰れてしまって。送って行く」
「すいません、自宅は白山です」
「はい、承知いたしました。向かいますので、近くに行ったら道案内をお願い出来ますか?」
「はい。ありがとうございます」
「今日の入社式は楽しめた様でございますね?何よりでございます」
その鈴木さんの発言に彼女は、怪訝な表情で顔を寄せ小声でオレに質問して来た
「タクシーじゃないの?富一郎くんのお家の方なの?」
オレも顔を近づけ、彼女のその可愛らしい唇を見つめながら小声で返事を返す
「そうだ、家の者だよ」
驚いた彼女は顎を上げオレの顔に大接近する形になったので、その唇に触れてしまいたい衝動がフワフワと沸いて来たが堪えた
それから車中では、いろんな話をして、間近に彼女を感じ、さっき触れた柔らかい感触を反芻してと、オレにとっては過去に経験した事が無いトキメキの時間だった
途中一度、コンビニでトイレ休憩をしてその時に水を購入した。彼女が水を飲む度に、その仕草にさえドキドキして、無防備状態の彼女の事を存分に観察し続けた。
鈴木さんは社内で話が弾むオレを察して遠回りをしてくれている事がわかった。しかし、会社から白金までは30分程で到着してしまった
残念だけど、タイムオーバーだ。
到着間近からコクリコクリと始まった彼女は、コテンとなり、今はオレの膝の上に頭を乗せて眠っている。膝枕だ。
ーー極楽タイムは、ここまで。起こさなきゃ
彼女の耳元に顔を寄せた
「峰さん、峰常子さん。白山の駅ですよ?」
まるで聞いていない。
彼女の肩を包み軽く揺らす。
「お家の場所を教えてくれませんか?」
 彼女はクテッと、骨なしのクラゲの様でその顔は青い
「富一郎さま?たぶん暫く起きそうにありませんよ?どう致しましょう?車で寝かせるのも気の毒なので、一旦お戻りになってベッドで寝かせてはいかがでしょうか?」
ーーマジか?願ったり叶ったりだよ
「鈴木さん、じゃあ家に向かって下さい」
即答してしまう
 それから家までの鈴木さんの運転は、早かった。
車を自宅前で停車してドアを開いてくれると
「暫く寝たら大丈夫でしょう、3時間後にお迎えに上がります。」
  そう言い残して自分の業務に戻って行った。鈴木さんは、父親の専属運転手だが、子供の頃からオレの通学の送り迎えをしていて、オレ優先で動いてもらっているドライバーだ。鈴木さんが居なくても移動手段はいくらでもある父親は、秘書が段取りしたタクシーか他の社員に送迎してもらっている。
自宅に着くと、まだクラゲの様に熟睡中の彼女を抱き上げ、階段を登りオレのベッドへ運んだ。
オレの部屋はドアから入るとまず20畳のシアタールームがある。そこは巨大液晶パネルを壁に貼り付けそれに向かい3人がけのソファーを1つだけ置いてあるだけの空間だ。床には毛の長い楕円形のカーペットを敷いていて、ここに寝転んで映画を鑑賞する事が多い。年の離れた弟が、たまに利用する事もあり、幼稚なアニメなどを見ている。
ソファーは皮張りで深いグレー、その他もグレーで統一したスッキリした部屋だ。そのソファーに一旦彼女を寝かせた
寝室のドアを開け、まずは着替える事にした。シャワーを浴びたかったので、寝室に隣接しているベッドに寝かせてしまっては物音で彼女が起きて消えてしまいそうな気がしたからだ。
シャワー後髪をドライヤーで乾かしてから、薄手なシルクニットをサラッと被り着て、五分丈のラフなパンツを履いた。どちらもベージュだ。
ベッドの掛け布団をめくって準備をすると、ソファーに向かった。
彼女はまだ寝ていて、絨毯に膝を立ててその顔を覗き込むと、安らかな寝息を立てている。
車に乗る時点では青かった顔色は、赤みを取り戻し、ふっくらしたほっぺたが呼吸をする度に上下している。
その赤い唇と、ふっくらした輪郭から瑞々しいトマトを連想させる、どこまでも愛らしい初々しさを持っている。
そんな彼女を観察していると、リクルートスーツのジャケットにポケットが付いている事に気が付いた。たぶん内ポケットもあるはずだ。
両サイドのポケットを探ると、ハンカチとスマホが出てきた。ハンカチは、可愛らしいキャラクタープリントのものだ。それは、スルーしてスマホを出して覗いてみると、画面はカラフルなキャラクターの待ち受け画面、そんな趣味に軽くプッと吹き出してからスマホのチェックを始める。それは案の定ロックがかかっていた。でも、指紋認識で中身を確認する事はできそうだ。
ーーさすがに、それはダメだろ〜
オレは諦めてポケットへ戻した
次に、ジャケットの3つ付いたボタンを一つずつあけて、内ポケットを探す。
ーーやっぱりあった
内ポケットを探ると中から芝生を連想させる明るいグリーンのカードホルダーが出て来た。これもまた、可愛らしいがなんだか分からない動物のキャラクターがワンポイント付いている。それを見てまたオレはプッと吹いた。中を開くと、定期入れや、スイカ、免許証、折り畳んだ1万円札が入っている。
ーー学生かよ?
財布を無くしても大丈夫な様に保険かけてんのか、財布を無くした事あんだな?
彼女を知る度にお子ちゃま加減に癒された。
ーーどんだけお子ちゃまなんだよ?
かわいい〜
そのお子ちゃま定期入れの中から免許証を取り出した
ーーこいつの運転には怖くて乗れないな。
年齢はオレとタメ。
住所は小石川になってる。どうやら、最寄駅が白山だから普段から訪ねられたらそう答えているのだろう。実際の住所は、文京区の小石川で、この表記からして一軒家なんだろう。
山手線内側で一戸建てとなると代々この土地に住んでいるのだと察する。
ーー住所がわかって良かった
オレの眠り姫は、目覚めるまでオレのベッドで寝かせる事にしよう
抱き上げると、開けておいたドアから彼女を運びベッドにそっと寝かせた。それから、
ーー1枚だけ!!
と、スマホを出して寝顔の写真をいただいた
ーーおー。かわいく写ってる。
顔のアップ写真を見て、布団を掛ける前にベッドに寝ている全身写真ももう1枚写した
こうして今日起こった奇跡の様な出来事を忘れない様に、日にちと時間とその姿を切り取りスマホの中にしまい込んだ。
これがオレが生まれて初めて人間という者に、興味を持った瞬間だった
ーーこのトキメク胸の形はきっと恋だ
オレのベッドに眠る彼女に掛け布団を被せてやろうとして、手を止めた。そして、ベッドがバウンドしない様にそっとその横に寝転んで、添い寝をした。
いけない事をしている気がして、オレのドキドキは止まらなかった
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