オフィスの書類庫で書類整理をしていたら突然暗闇になり非日常が始まった

ghame

3/水】28.屋上に寝たはずなのに起きると横に居た水曜日の朝

「チロくん?」

 寝返りが打てず、その窮屈な違和感から今朝は目を覚ました

ーーなるほど、、

チロが私の頭を抱え込んで寝ている

ーー昨夜、酔ったチロが心配で鍵を貸したのがそもそも間違いだった
 私が異性だと、教えておいたほうがいいのかな?抱き枕と間違えてるんじゃない?

 腕から頭を抜くと、目を覚ましたチロは何故か私が距離を取った分、その距離を縮めて来る

ーーチロおぼっちゃまの行動はミステリーだ


「昨夜は雨が降ったんだ、不可抗力だよな?」

ーーだからって言って、添い寝とか?これはやり過ぎでしょ?見逃せません!

「雨か、ごめん。そこまで考えてなかった」

 更に距離を取る

「だろ?」

ーー開き直るなよ。反省してる様子ねーな?逆にしたり顔してるよ

「もう屋上でも泊めるのは止めにします!」

ーー添い寝。それはラブラブカップルのみに許されている行為だ!
 異性の隣で朝まで眠れるとは、どんだけ意識されてないのよ私 ︎

「それは困る」

ーーちょっとは困れ!

「私も、朝起きて抱き枕にされてたら困る」

ーーこちらの事情で困るのよ。
こんな事されると、意識しないで済むはずが無いでしょ?!

 まだ出勤までは余裕があるので、会話は布団の中で向かい合わせに行われている

「じゃあさ、このマンションで部屋が2つある場所を借りない?家賃オレが全額出すよ」

ーー出た。意味不明な解決策

「それって、同棲って世間では言う事気付いてる?」

ーーチロはバカなの?
 いくら私の書いた遺書を見てしまったからって、そこまでしなくても良くない?

「オレは週に2回だけしか泊まらないとかどう?」

ーーしぶといな

「それって、愛人って世間では言う事気付いてる?」

ーーやっぱ、なんも考えず発言してる

 ギロっと睨んでやった

「雨が降ったら、屋上で気合で寝ます」

ーー諦めた

「それで良し!」

「冗談だろ?」

「冗談だよ。カギは貸すから雨が降った時だけ部屋で寝る事を許す」

ーー雨だと布団が濡れる

「ありがとうございます」

「ただし、入り口ね?トイレのドアの線から入ったらダメ!」

「靴の横で寝るのか?オレが ︎」

「家主が靴の匂いを嗅ぎながら寝るより良くない?」

「そりゃ、家主を部屋から追い出す事は出来ないな」

「私がチロん家に泊まる時は玄関に寝るから、チロも家では玄関に寝て下さい」

「オレん家の玄関は、どちらもネコの部屋より広いぞ?」

ーー嫌味より、私はチロの家に泊まらないトコをリスペクトしてもらいたいよ

「文句言うなら帰りなさい!茹で卵作っておいてやったんだぞ?」

「マジか?悪いな、食う」

ーーボンボンのくせに茹で卵で飼い慣らせるとは、安上がりだな?

「食費入れた方が良いかな?」

ーーこれからも来るつもりなのかよ?

「日曜日の買い出しの時、全額負担してくれたから良いよ。卵も買ってくれたでしょ?」

「そうと決まれば、もう一眠りする。」

ーーこらこら

「起きるの間違いでしょ?ほら、起きるよ?」

「えっ?お布団気持ち良いのに、、」

 チロの腕が私を巻き込んで来たので、また引き寄せられ抱き枕に逆戻りした

ーー意識されないとは、拷問の様な苦痛が伴うものなのね?
 ああ〜っ
開発され切った私の肉体よ、耐えろ。チロおぼっちゃまのお戯れに反応してはいけない〜

「そんなんで自宅では、ちゃんと起きれてるの?」

ーーさっきまでこの体制だったんだし、今更もう良いか?意識して避けるのも大人気無いよね?

「もちろん。ネコの居ないお布団は、こんなに気持ち良く眠れないからね」

ーー意味がわからないから、、

「おはようのキスは?」

 天井を向いていた顔がこちらに転がされた

ーーあれっ?枕は何処に消えた、、?一晩中チロの腕枕だったの?
 意味わかんないし、、
こんな奴に負けるか!!

「それは、スーパーで買い忘れました」

「マジか?土曜のお泊まりまでは買っておいてくれるかな?」

ーーまた泊まるのかよ?家賃払ってもらおうかな?!

「はい。冷蔵コーナーに売ってたら買っておきます」

「ネコ?それって魚の鱚の事?まあ、その鱚でも良いや」

ーーよし、かわせた!

 気分を変える為に、見つめ合っていた目を天井に動かし空を見つめた

ーーしかしチロは和むなぁ〜
 チロなら布団に潜り込まれても嫌じゃないもんな。

「これから秋になったら寒くなるね、布団をあっために毎晩来た方が良いかな?」

 相変わらず顔を向けたままで私の横顔に向かって話かけて来る

ーーもうチロのノリをかわすの勘弁!

「もう良いよ、私は起きるから布団畳んでね?歯磨きしたいでしょ?先に洗面所どーぞ?」

ーー逃げよう

「昨日の内に鈴木さんにお迎え頼んでおいから6時半に来るんだ、身支度は部屋でするから卵だけ食べても良い?」

「段取り良いわね。って、後20分。会社間に合う?」

「ネコは心配しないで?オレが遅刻してもネコには責任無いよ?」

「直接行ったら早いのに、、」

「そうだね、着替え置いて置かなきゃだから、隣の部屋を借りてネコのクローゼットにする?」

「隣をを借りてクローゼットにするなら、チロは何処で寝るの?屋上かな?」

 また、まんまとチロに乗せられ起きる事が出来なくなる

「そりゃ〜、ネコの布団に一緒に寝るに決まってるじゃん?もしくは、隣の部屋にベッドを置いて寝室にする?」

ーーそれは、何故に?
何処まで本気か?完全に私をおちょくってるよね?

「隣の部屋の壁はぶち抜いて、ワンルームにしたら24畳になるから広くて良くない?」

「ネコ、それ良いかも。キッチンと洗面所が2つになって便利だね?」

ーーどこまで続くのか、、付き合ってみるか?

「この話が続くのなら、するよ?ワンルームを2つ借りるなら、同じ金額出せば2LDKのマンションを借りれて部屋の条件も良くなるよ?」

「わかった。午後からは仕事サボって不動産巡りをするよ。敷金礼金、家賃、水道光熱費はオレが負担するからチロは心配しないでね?」

「それ最高じゃん?」

ーーそれが本当なら、最高じゃない?!

「分譲買っちゃう?」

ーーさすがボンボン

「そうね、会社の近くに分譲で買っちゃおう」

ーーああっ、四谷に分譲マンションなんて夢物語、、
チロなら本当に買えそう

 時計を見ると、バカ話で10分も経っていた

「チロ?後10分だよ?くだらない話は終わり!急いで着替えて!卵の殻はむいといてあげるから」

 勢い良く布団から出るとチロも慌てて続いて来た

「それは助かる」

「何個食べる?」

「3個」

 私は布団は畳まず急いで手を洗い卵の殻を剥いて、お椀に乗せてテーブルに置いた
 洗面所から出てきたチロは、髪を濡らして整えてあって、もう会社に出勤しても良いほどパリッと男前に仕上がっていた

 しばしそのチロの姿に見惚れていた私におはようの挨拶を唇に重ねて来た

「ネコがオレに見惚れてたから、隙あり!」

ーーあっ?見惚れてたのバレてる?

「うん、チロが男前だな?って思ってね?その挨拶は必要無いんだけどね?」

「あっ、コレを待ってたんじゃ無かったのか?その顔は紛らわしいぞ?」

「せっかく綺麗な顔に生まれてるんだから、見せてよ?」

「よし、許す。見ろ!男前は、今から卵を食す。引き継ぎ見惚れていてくれたまえ!」

 何故かチロは立ち尽くしてくれている。見られるのが楽しいようなので、遠慮なく見る

「ありがたき幸せ!」
 
 もちろん逆に私も何故か見られている

ーーチロって、地方勤務なのに小洒落てんのよね?

「髪とか何処で切ってるの?」

「お目が高い!それは、天文館という洒落たネーミングのアーケードにある店でトップスタイリストに自宅まで来てもらって切っているのさ!」

ーーいるのさっ!って?
 何、いきっちゃってるのよ。

「まあ、店舗が何処に存在しているのかは謎なんだけどね?髪切りに行く暇が無い程オレっち忙しいんだよ。」

ーーオレっちって?誰っちだよ?
 こんなに家でのんびりしてるクセに、本当にそんなに忙しいのか信用ならん

「天文館には、デパートに行く事くらいしか無いかな?オレ女の子じゃないし、ショッピングとかする柄でもないんだよ」

「じゃあ、デパートには何しに行くの?」

「仕事かな?オレ、実家をバックに大型の契約を取れるから。で、帰りに地下の惣菜コーナーで、鯖の押し寿司を買ったり、おこわも買うな。それから、卵を買って家で茹でる!」

ーーサラッと七光を出しちゃう?阿漕あこぎな営業マンだ!
 でも私もチロのショッピング風景を見てみたいかも。興味が湧くわぁ〜

「今度さ、3丁目の伊勢丹の地下に一緒に行ってみない?」

「良いね!で、ネコはオレをたっぷり見たから、何を見せてくれる?」

ーー阿漕なセールスマンはそう来るのか?取引するのか?
 まあ、チロは芸術品みたいな仕上がりだし、たっぷり見たかも。

「そうね、私の茹で卵を食べるとこを見てても良いよ?許す」

「マジか。それは楽しみだ、エロく食べてくれる?」

ーー何故にエロくだよ??

 そこでチロのアラームが鳴った

「あらら、時間だね。卵はタッパに入れるから、車の中ででも食べて?」

「残念、ちょー残念。ネコのエロ一気食いを見逃した」

ーー茹で卵を一気食いさせるつもりだったのかよ?
あんなデカイの一気に食えるか!?

「ウエットティッシュもいるでしょ?はい、どーぞ。もう良いから早く行け!付き合いきれん」

「ありがと、じゃあ後で会社で!」

「わかった。チロの一気食い今度見せてねーー」

「任せろ!オレは早いよぉ〜?勝てるかな?」

 チロの顔は得意気だ、玄関から出て行く後ろ姿を見送りながら私は思う

ーー茹で卵の早食い競争させられそう、、
まあ、そのくらい付き合ってやるか?

鍵をかけながら、ふと思う

ーーあれっ?鈴木さんに着替えを持って来てもらえば楽じゃない?てか、面倒だから着替え置かしてやるかなぁ〜







「オフィスの書類庫で書類整理をしていたら突然暗闇になり非日常が始まった」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く