勇者パーティーから追放された召喚士~2000年間攻略されなかったダンジョンを攻略して、伝説の武器や生き物と契約して楽しくやってます。懇願してもパーティには戻りません
追放されたけど、大戦について知る
「では、一つずつ説明していくぞ」
無意識に唾を飲み込む。これから彼女の口からどのような言葉が飛び出るのか、怖いようなワクワクするような、そんな気分だ。
「まず、先ほど封印した天使についてじゃ。お主らも不思議に思った事じゃろう」
天使は天界に住う神々の使い。下界に住む僕らの上位存在に当たる。そんな存在を封印したのだ。むしろ驚きよりも、戸惑いの方が強いと言える。
「ここで一つお主らの誤解を解いておこう。あの者は————天使ではない」
「っ!?」
「では、あのガブリエルと名乗った者は何者なんですか!?」
確かにそうだ。あの天使を偽った存在は、僕が想像する天使と同じ姿、同じ雰囲気を持っていた。彼女が天使でないなら、一体なんだと言うのだろうか。
「あの者は————精霊じゃよ。我々、下界と呼ばれる三大陸に住う、人間、獣人、魔人と列を為す存在。言うなれば、失われた第四の種族と言える」
「…だ、第四の種族」
驚きで言葉も出ない。
精霊———第四の種族なんて存在聞いたこともない。
「仮に貴女の言うことが本当なら、あのガブリエルと言う天使、いや精霊は私たちと同じ存在のはずです。それなのになぜ————」
「………天使と偽っていたのか、じゃろ?」
慌てるな、とレーヴァを諫めるラクス。
「それを説明するためには、二千年前について話をする必要がある」
そう言い、ラクスは何やら魔法を発動すると壁に映像が投射される。この映像は…。
「二千年前の【精霊大戦】以前の映像じゃ」
その映像には、様々な種族が円卓の席に座っている。どうやら何かの会議のようだ。各席には人間、魔人、獣人が数名いる。
「ちょっと待ってください。二千年前に会ったのは【三種大戦】のはずです」
「歴史が改竄されたんじゃよ。正しくは【精霊大戦】。精霊族が他の三種族に対して起こした、世界を巻き込んだ大戦じゃ」
ラクスはそこで言葉を切り、映像を見るように僕たちに指示した。
————————————————————
『まさか、あの心優しい精霊達が本当に戦争を望んでいるのでしょうか…』
『私にも判らぬ…。しかし、ここ数年の奴らの行動は怪しすぎる』
『そうじゃな…。精霊大陸への国境の封鎖、その他三大陸で発生している怪事件。加えて———』
『————【スキル】と言う謎の能力の発明ですね』
『一体、何なのだあの能力は!鍛錬もせずに上級の兵士を量産できてしまうぞ!』
『うむ…。あんなものが広く使われてしまっては、戦力の把握だけでなく、一般人までもが兵士となってしまう。即刻に使用の禁止を確約させねばなるまい』
『精霊大陸は我が大陸の隣だ。即刻、兵を向け【スキル】の禁止を確約させてやろう!』
『兵を動かせば、それこそ戦争になりますよ…。長きに渡って続いてきた我ら四大陸の平和をこんな形で崩壊させるわけには』
————窓ガラスが割れる音。
『ルイスっ!』
『何やつだぁぁああ!!————貴様らは…』
『————精霊族っ!』
————————————————————
凶弾に倒れた人間と、それを為した一人の精霊族。場面はそこで終わってしまった。
「これは二千年前、精霊族によって人王であるルイスが殺害された場面じゃ。この時は人間、獣人、魔人の三種族の王が集まり、会議を行なっておった」
「これを機に【精霊大戦】が勃発したのですね…」
ラクスは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、頷いた。
大戦が起きた原因は何となく把握した。それに加えて、確認しておくことがある。
「ラクスって当時の———」
「ふふふ。さすが我が契約者。いいところに気がついたな」
ようぞ聞いてくれたとばかりに大袈裟にポーズを取る。
「全ての吸血鬼の根元、始まりの吸血鬼、真祖とは私のこと。そう、我こそは————ラクス・アイデンベール!全ての魔人を統べる魔王である!」
いつも通り胸を張って、自信満々に見得を切ったラクスを見て、少し笑ってしまった。
「むー。どうして笑うのだワート」
「いや、だってさ。探し求めていた魔王がこんな所にいるんだもん」
「そうか、お前は元勇者パーティーだったな。安心しろ、どうせ精霊共がこの時代に仮初の魔王を設定しておる」
少し僕の意図を勘違いしてるラクスを訂正する。
「僕が思ってるのは、あれだけ倒さないとって思っていた存在がラクスって知っても、君を倒したいだなんて少し思わないっことだよ」
「そ、そうか……」
ラクスは何だか恥ずかしいのぉと頬を掻く。
———コホンっ。レーヴァが不機嫌そうに咳き込んだ。
あ、そうだった、話の腰を折っちゃった。そりゃレーヴァも怒るよね。
「【精霊大戦】は一体、どうなったの?」
僕の質問に答えるように、ラクスはもう一度映像を投影した。
どこかの戦場で、人間と魔人、獣人の軍が、精霊に向かって攻撃を放っている。
「人魔獣で構成された三種連合軍の大敗じゃ。あれは戦と呼べるものではなかった」
———虐殺じゃ。と小さくラクスは呟いた。
「誰に対しても上級の能力を付与できる【スキル】を身に付けた精霊族の戦力には我々は敵わなかった」
「【スキル】は精霊族が初めて発現したの?」
「違う。【スキル】は奴らが生み出したのじゃ。どのような方法かは判らぬが、ある日突然奴らは【スキル】を身に付けた。そして、その【スキル】を誰にでも自由に付与できたのじゃ」
僕の常識では【スキル】の付与は生まれた時にされるはずだ。それを後付けでできるなんて、能力を自由に選択できるってことになる。
「我々は時間をかけて取得した魔法や剣技も、奴らの【スキル】の前では無力じゃった」
【スキル】がない状態での能力の習得となると、文字と同じだろうか。できるようになるまで、覚え切るまで何度も練習する。
それと同じ作業を魔法、剣技に行うってことだ。
確かに、一人の戦士を育てるのに膨大な時間と費用が必要になる。
「我が魔人族の精鋭達も、精霊族の子供にすら敵わんかった。どれだけの修行や研鑽も【スキル】前では無に帰った」
悔しさに歯を噛み締めるラクス。当時の記憶は本当に悔しいものなのだろう。
「状況が悪くなった我々、三種族は【神界】の神達に助けを求めた」
「ちょっと待ってください。【神界】ではなく、【天界】では?」
そういえばセイレーンも【神界】って言っていたなと思い出す。
「【神界】とは真に神々が住う場所じゃ。お主らが知っておる【天界】は精霊族が住う場所じゃ」
「え?てことは、僕たちは今まで精霊族を神様や天使だと思っていたってこと?」
【精霊大戦】までは、まだ理解できた。しかし、【天界】が嘘ってことは、毎日のように祈りを捧げている下界の僕たちは一体何になるって言うんだ。
「そう言うことになる。現在、バベルの先にある【天界】は精霊大戦後に、精霊族の魔法によって天空へ持ち上げられた元精霊大陸じゃ」
「!?」
とんでもない情報が次々と出てきて、何もいえない。
空にある天界が元々下界にあって、魔法で浮いている?訳がわからなくなってきた。
話を戻すぞとラクスの言葉にとにかく頷く。
「【神界】とはこの世界とは別次元にある空間でな、当時はそこにアクセスできる者たちがいた。私もその一人じゃ」
天界のように頑張れば足で行ける場所ではなく、特殊な能力や魔法がないといけない場所ってことかな。
「そこには数多の神々が住んでおり、我々四種族を見守っておった。そして、今回の大戦の件を神々に上告したのじゃ」
天界にいる神様だと思ってた存在と違って、割と交流はあったようだ。
「神々も【スキル】と言う謎の力を放っていくわけにもいかないと、我々に協力を申し出た。そして———。」
その後、少し間が空き、ラクスは絞り出すように声を出した。
「———神の敗北によって、全てが変わったのじゃ」
無意識に唾を飲み込む。これから彼女の口からどのような言葉が飛び出るのか、怖いようなワクワクするような、そんな気分だ。
「まず、先ほど封印した天使についてじゃ。お主らも不思議に思った事じゃろう」
天使は天界に住う神々の使い。下界に住む僕らの上位存在に当たる。そんな存在を封印したのだ。むしろ驚きよりも、戸惑いの方が強いと言える。
「ここで一つお主らの誤解を解いておこう。あの者は————天使ではない」
「っ!?」
「では、あのガブリエルと名乗った者は何者なんですか!?」
確かにそうだ。あの天使を偽った存在は、僕が想像する天使と同じ姿、同じ雰囲気を持っていた。彼女が天使でないなら、一体なんだと言うのだろうか。
「あの者は————精霊じゃよ。我々、下界と呼ばれる三大陸に住う、人間、獣人、魔人と列を為す存在。言うなれば、失われた第四の種族と言える」
「…だ、第四の種族」
驚きで言葉も出ない。
精霊———第四の種族なんて存在聞いたこともない。
「仮に貴女の言うことが本当なら、あのガブリエルと言う天使、いや精霊は私たちと同じ存在のはずです。それなのになぜ————」
「………天使と偽っていたのか、じゃろ?」
慌てるな、とレーヴァを諫めるラクス。
「それを説明するためには、二千年前について話をする必要がある」
そう言い、ラクスは何やら魔法を発動すると壁に映像が投射される。この映像は…。
「二千年前の【精霊大戦】以前の映像じゃ」
その映像には、様々な種族が円卓の席に座っている。どうやら何かの会議のようだ。各席には人間、魔人、獣人が数名いる。
「ちょっと待ってください。二千年前に会ったのは【三種大戦】のはずです」
「歴史が改竄されたんじゃよ。正しくは【精霊大戦】。精霊族が他の三種族に対して起こした、世界を巻き込んだ大戦じゃ」
ラクスはそこで言葉を切り、映像を見るように僕たちに指示した。
————————————————————
『まさか、あの心優しい精霊達が本当に戦争を望んでいるのでしょうか…』
『私にも判らぬ…。しかし、ここ数年の奴らの行動は怪しすぎる』
『そうじゃな…。精霊大陸への国境の封鎖、その他三大陸で発生している怪事件。加えて———』
『————【スキル】と言う謎の能力の発明ですね』
『一体、何なのだあの能力は!鍛錬もせずに上級の兵士を量産できてしまうぞ!』
『うむ…。あんなものが広く使われてしまっては、戦力の把握だけでなく、一般人までもが兵士となってしまう。即刻に使用の禁止を確約させねばなるまい』
『精霊大陸は我が大陸の隣だ。即刻、兵を向け【スキル】の禁止を確約させてやろう!』
『兵を動かせば、それこそ戦争になりますよ…。長きに渡って続いてきた我ら四大陸の平和をこんな形で崩壊させるわけには』
————窓ガラスが割れる音。
『ルイスっ!』
『何やつだぁぁああ!!————貴様らは…』
『————精霊族っ!』
————————————————————
凶弾に倒れた人間と、それを為した一人の精霊族。場面はそこで終わってしまった。
「これは二千年前、精霊族によって人王であるルイスが殺害された場面じゃ。この時は人間、獣人、魔人の三種族の王が集まり、会議を行なっておった」
「これを機に【精霊大戦】が勃発したのですね…」
ラクスは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、頷いた。
大戦が起きた原因は何となく把握した。それに加えて、確認しておくことがある。
「ラクスって当時の———」
「ふふふ。さすが我が契約者。いいところに気がついたな」
ようぞ聞いてくれたとばかりに大袈裟にポーズを取る。
「全ての吸血鬼の根元、始まりの吸血鬼、真祖とは私のこと。そう、我こそは————ラクス・アイデンベール!全ての魔人を統べる魔王である!」
いつも通り胸を張って、自信満々に見得を切ったラクスを見て、少し笑ってしまった。
「むー。どうして笑うのだワート」
「いや、だってさ。探し求めていた魔王がこんな所にいるんだもん」
「そうか、お前は元勇者パーティーだったな。安心しろ、どうせ精霊共がこの時代に仮初の魔王を設定しておる」
少し僕の意図を勘違いしてるラクスを訂正する。
「僕が思ってるのは、あれだけ倒さないとって思っていた存在がラクスって知っても、君を倒したいだなんて少し思わないっことだよ」
「そ、そうか……」
ラクスは何だか恥ずかしいのぉと頬を掻く。
———コホンっ。レーヴァが不機嫌そうに咳き込んだ。
あ、そうだった、話の腰を折っちゃった。そりゃレーヴァも怒るよね。
「【精霊大戦】は一体、どうなったの?」
僕の質問に答えるように、ラクスはもう一度映像を投影した。
どこかの戦場で、人間と魔人、獣人の軍が、精霊に向かって攻撃を放っている。
「人魔獣で構成された三種連合軍の大敗じゃ。あれは戦と呼べるものではなかった」
———虐殺じゃ。と小さくラクスは呟いた。
「誰に対しても上級の能力を付与できる【スキル】を身に付けた精霊族の戦力には我々は敵わなかった」
「【スキル】は精霊族が初めて発現したの?」
「違う。【スキル】は奴らが生み出したのじゃ。どのような方法かは判らぬが、ある日突然奴らは【スキル】を身に付けた。そして、その【スキル】を誰にでも自由に付与できたのじゃ」
僕の常識では【スキル】の付与は生まれた時にされるはずだ。それを後付けでできるなんて、能力を自由に選択できるってことになる。
「我々は時間をかけて取得した魔法や剣技も、奴らの【スキル】の前では無力じゃった」
【スキル】がない状態での能力の習得となると、文字と同じだろうか。できるようになるまで、覚え切るまで何度も練習する。
それと同じ作業を魔法、剣技に行うってことだ。
確かに、一人の戦士を育てるのに膨大な時間と費用が必要になる。
「我が魔人族の精鋭達も、精霊族の子供にすら敵わんかった。どれだけの修行や研鑽も【スキル】前では無に帰った」
悔しさに歯を噛み締めるラクス。当時の記憶は本当に悔しいものなのだろう。
「状況が悪くなった我々、三種族は【神界】の神達に助けを求めた」
「ちょっと待ってください。【神界】ではなく、【天界】では?」
そういえばセイレーンも【神界】って言っていたなと思い出す。
「【神界】とは真に神々が住う場所じゃ。お主らが知っておる【天界】は精霊族が住う場所じゃ」
「え?てことは、僕たちは今まで精霊族を神様や天使だと思っていたってこと?」
【精霊大戦】までは、まだ理解できた。しかし、【天界】が嘘ってことは、毎日のように祈りを捧げている下界の僕たちは一体何になるって言うんだ。
「そう言うことになる。現在、バベルの先にある【天界】は精霊大戦後に、精霊族の魔法によって天空へ持ち上げられた元精霊大陸じゃ」
「!?」
とんでもない情報が次々と出てきて、何もいえない。
空にある天界が元々下界にあって、魔法で浮いている?訳がわからなくなってきた。
話を戻すぞとラクスの言葉にとにかく頷く。
「【神界】とはこの世界とは別次元にある空間でな、当時はそこにアクセスできる者たちがいた。私もその一人じゃ」
天界のように頑張れば足で行ける場所ではなく、特殊な能力や魔法がないといけない場所ってことかな。
「そこには数多の神々が住んでおり、我々四種族を見守っておった。そして、今回の大戦の件を神々に上告したのじゃ」
天界にいる神様だと思ってた存在と違って、割と交流はあったようだ。
「神々も【スキル】と言う謎の力を放っていくわけにもいかないと、我々に協力を申し出た。そして———。」
その後、少し間が空き、ラクスは絞り出すように声を出した。
「———神の敗北によって、全てが変わったのじゃ」
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