勇者パーティーから追放された召喚士~2000年間攻略されなかったダンジョンを攻略して、伝説の武器や生き物と契約して楽しくやってます。懇願してもパーティには戻りません

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追放されたけど、壁画を見つける

魔神イフリートの討伐後現れた下層への階段を降っていく。

「それにしても、ここは何階なんじゃろうな…セイレーンのいた階が80階層じゃったから———」

「90階層くらいだろうね」

イフリートが70階層。セイレーンが80階層。

それぞれ、竜神と海神であり、神々が10階層ごとに眠っているのなら、魔神イフリートは90階層と考えるのが打倒だろう。

「どうして10階層ごとに神を冠する者が配置されているのでしょうね」

人化したレーヴァがそう呟く。

イフリートの討伐後にステータスの大幅向上により、レーヴァの常時召喚をする余裕ができた。

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名前:ワート・ストライド
種族:人族
職業:召喚士

HP:2000/3000 MP:1500/2000

攻撃力:1500 防御力:1500
速さ:1000 器用さ:1400
賢さ:200 運:10

スキル:召喚Lv.4 (不能)
【契約召喚】【幻想召喚】

召喚中:ダーインスレイブ・レーヴァテイン
装備品:ダーインスレイブ(魔力吸収)

称号:【神を殺すモノ】
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勇者パーティーを追放された時に比べて、5倍程度にステータスが向上している。

「ねぇ、ラクス」

「なんじゃ?」

イフリートとの戦いを思い出し、気になっていた点を確認することにした。

「さっきの戦いで使っていた起源魔法って一体なんなの?」

僕の言葉に、ラクスはなんて説明しようか少し悩む。あの様子じゃ本人もよくわかっていないみたいだ。

「起源魔法は、この世界が創生される以前に使用されていた魔法ですね」

レーヴァは手から炎を生み出し、目の前に絵を表示した。

「ワートには三大陸の歴史を知っていますか?」

「うーん…人大陸、魔大陸、獣大陸の三つがあって、それが昔から続いていることくらいかなぁ」

カナミと同じ村にいた頃は、村長さんの家で歴史を教えてもらったけど、学者さんみたいに詳しい訳ではない。

「三大陸の上に天界があり、その天界へは『バベル』を登らないと至ることはできません」

「その『バベル』と言うのはなんじゃ?私の記憶にはないぞ?」

「バベルは三大陸の中央に位置する巨大な塔です。天空の遥か彼方へと続いており、神々が住う天界へ、行くための唯一の方法と言われています」

「言われていますってことは、誰もその天界へは行ったことはないのか?」

確かに当然の疑問だ。そもそもこれまでの人生で、このダンジョンに来るまで神様にはあった事がない。天界というのは本当に存在するのだろうか。

「下界の三大陸で功績をあげた者は、神々の使いからバベルへと案内されます。私の以前の使用者、先代勇者も神の使いを受け、バベルへと向かいました」

そういえばレーヴァの以前の使用者について尋ねたことがなかった。

「先代勇者というのは、その後どうなったのじゃ?」

「バベルへと向かう際、下界からの武具の持ち込みは禁止されました。そのため、私は勇者の手を離れたので、勇者かのじょがその後どうなったのかはわかりません」

「なるほど…。その話と起源魔法がどういう繋がりがあるの?」

レーヴァが映し出す炎の絵が、変化していく。

バベルの絵が消え、その周りに映し出される三つの大陸が一つに合わさって行く。

「元々下界の三つの大陸は一つでした。しかし、過去の大戦によって大陸が分断されたと言われています」

「あ、知ってる。その大戦が『三種大戦』って呼ばれる物だよね」

一つの大陸に人間、魔人、獣人の三種族が表示され、争いを始める。

「この三種族の戦いを見かねた天界の神々が、大陸を分断しました。そして、人々から力を奪ったとされています」

「力を奪った…?今でも普通に戦える人はいるよね?」

僕の疑問にレーヴァは頷く。

眼前の絵では、天界の神によって三種族に雷が落とされる。

「はい。今は生まれた時にスキルが付与され、そのスキルよって能力が決定します」

その通りだ。そのスキルによって人々の能力と職業は決定する。魔法使い、剣士、商人など、全て生まれた時に決定する。

「しかし、この大戦以前は誰でも魔法が使え、誰でも好きな職業に就くことができたのです」

「———?」

いまいち想像ができず、疑問が浮かんでくる。

「あまり、今と変わらないんじゃ…」

「そんなことありません。魔法が使いたい者は自分で魔法を学び、魔法使いに。商売をしたい者は、修行を経て商売人になります」

「なるほど。今と全然違うね。その人の能力も職業も生まれた時、スキルによって決定しているのが普通なのに」

「えぇ———争いを続ける三種族を見た神によって、それぞれの能力が限定され、代償としてスキルが付与されたと言われています。神罰と言われるモノですね」

天界の神によって、下界の三種族は自由な能力発展を封じられ、その代わりとしてスキルが与えられたのか。

「そして、その神罰以前———スキルが無かった世界の魔法が『起源魔法』と呼ばれています。半ば伝説だと思っていましたが、本当に使える者がいるとは思いませんでした」

そこで小さな疑問が生じた。確か、ラクスの起源魔法はスキル欄に表示されていたはずだ。

僕の疑問を他所に、 レーヴァの言葉に、胸を張るラクス。

「てことは、ラクスが生きていた時代って、『三種大戦』の頃ってこと?」

「ふーむ…しかし、その大戦のことを知らぬのだ…。確かに三種族いたような気もするが、その辺りの記憶にモヤがかかっておる」

どうしてラクスが魔大陸の辺境で封印されていたのか。どうして彼女に記憶がないのか。謎が尽きない彼女だけど、ラクスの記憶が戻るように僕も協力を惜しまないつもりだ。

「少しずつ思い出して行こう。きっとこのダンジョンにもラクスの記憶のヒントがあるはずだ」

「そうじゃのぉ———む?」

前方で立ち止まったラクス。どうやら階段なのに行き止まりのようだ。どうしたのさ、と彼女の視線の先を見ると、何やら文字が刻み込まれている。

「行き止まりですか…あれ、この文字は————」

レーヴァが言いかけた通り、イグニスがいた部屋の扉に刻まれていたものと同じ文字だ。

「読めるのラクス?」

頷いて肯定が返ってきた。壁いっぱいに描かれる文字と、奇妙な壁画。人が、大きな魔物みたいなモノと戦っている。

「どうやら先ほどの階層は90階層で合っていたようじゃ。そして、ここは100階層への直通階段じゃ」

「直通……」

イフリートがいた90階以降の階層は存在しないのだろうか。いや、ラクスの言い方的に、91~99階層をすっ飛ばす裏道的な階段なのだろう。

「どうやら、この道は資格ある者しか通れんようじゃ」

「資格ってなんだろ———あ、もしかして!」

慌ててポケットから、イグニス、セイレーン、イフリートの魔石を取り出すと、それぞれが淡く発光している。

どうやらこの道はこの神々を討伐したモノじゃないと通れないようだ。

「この壁画はどういう意味なのでしょうか…?」

レーヴァが壁画に触れる。2000年も放置されていたとは思えないほど、綺麗に描かれた壁画。意味はわからないが、文字としては全て綺麗に残っている。

ラクスは壁画を読み上げていく。

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『外法の侵略』

『崩壊へと至る』

『古神、地に伏す』』

『人の混乱、魔の固執、獣の憤怒、霊の消失』

『全てが消え、全てが生まれる』

『新たな治世、新たな世界』

『天を仰ぎ、天へと至る』

『ここに【創転発現エンビジョン・アウト】は為された』
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そこでラクスの言葉は止まった。

「————これってどういう」

「【創転エンビジョン】———っ。そうか、思い出したぞ」

「…ラクス?」

ラクスの真剣な眼差しが僕を貫く。これまでの、どのラクスとも違う表情。真剣で、どこか悲しげだ。

「全てではないが、私がなぜ封印されていたのか。思い出した」

ラクスの言葉に衝撃が走る。

「この先に答えがある。いくぞ、ワート」

ラクスはそう言い、壁画に触れる。すると、壁画が音を立てて階段の天井へと収納されていった。

何がなんだかわからない、僕とレーヴァ。二人で顔を見合わし、首を傾げる。

壁画の向こうに下層への階段が現れると、ラクスは静かに降りて行った。

「とにかく今は———」

「下に降りるしかないですね」

頷き合い、二人でラクスの後を追った。

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