勇者パーティーから追放された召喚士~2000年間攻略されなかったダンジョンを攻略して、伝説の武器や生き物と契約して楽しくやってます。懇願してもパーティには戻りません

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追放されたけど、竜神に挑む

目の前にそびえ立つ巨大な扉。天にも届きそうな扉には、謎の文字と奇妙な絵が刻まれている。

「ここがボス部屋…」

「巨大な扉ですね…もしかして、ボスというのはこのサイズなのでしょうか…」

ここまで、数多の魔物を討伐して、ドラゴニュートの動きにも慣れてきた。奴らは鋼鉄のような鱗を持っているが、関節を狙えばダインでも歯が通る事がわかった。

自分よりも遥かにレベルの高い魔物を討伐し続けた結果、僕のステータスはかなり成長した。

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名前:ワート・ストライド
種族:人族
職業:召喚士

HP:2000/2200 MP:800/1000

攻撃力:500 防御力:400
速さ:500 賢さ:100
器用さ:700 運:10

スキル:召喚Lv.3 (不能)
契約した物体を2つ・生物を2体まで召喚できる

召喚中:ダーインスレイブ・レーヴァテイン

装備品:ダーインスレイブ(魔力吸収)
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攻撃力、防御力、速さはダンジョンに潜る前の1.5倍ほどになった。ステータスの上昇は自分よりも強い魔物を倒し続けると少しずつ上がる。

かなりドラゴニュートの動きについて行けるようになった一方で、これ以上奴らを倒し続けてもステータスは上がらないだろう。

ボス部屋に入ろうとした時、扉に刻まれている文字にふと気がついた。

「この文字、ラクスが封印されていたダンジョンの文字に似てない?ダイン読める?」

よく考えてみたら、ラクスが封印されていた部屋の扉とこの扉、全く同じ形をしている。

『確かにそうだな、もしかしたらラクスの嬢ちゃんなら読めるかもしれねぇな』

この階層の初めに見つけた骸骨の手記や、このダンジョン、ラクスの封印されていたダンジョン、どうも無関係には思えない。

「この謎もきっと、このダンジョンを踏破した時わかるはずだ。行こう、二人とも」

「はい」『おうさ』

扉に手を触れると一人でに開き始め、地響きが階層中に響き渡る。扉の向こうは巨大な空間が広がっており、中は全く見えない。とりあえずレーヴァと共に中へと踏み入る。

しばらく歩くと、入り口から徐々に最奥へと壁の松明に火が点っていく。

そして、最奥の玉座に誰かが腰掛けていた。

「ようやく、来たか———人の子よ」

それなりの距離が離れているはずなのに、一言一句はっきりと聞こえる。顔は見えないが、琥珀色の瞳が真っ直ぐ僕を見据える。

声の主は静かに立ち上がり、玉座からこちらへと歩み始めた。

「貴方は…この階層のボス…」

「如何にも。俺がこのダンジョン、第七十階層の門番だ」

ようやく、声の主を視認できる距離まで近づいた。

その姿を一言で表現するのなら、人型の竜。この階層にやってきてから、幾度も敵対したドラゴニュートと似た姿をしている。

しかし、詳細は所々異なっており、一番の違いは言葉を話せ、意思の疎通が出来ることだろう。

「なぜ、ドラゴニュートが言葉を…」

レーヴァが驚いたように、そう呟いた。レーヴァは僕よりも長い時間生きている。そんな彼女でも、話すドラゴニュートにはあったことないのだろう。

「俺をあのモノたちを同じにするな。そうさな…貴様らの分かるように言ってやると、俺は奴らの神。竜神だ」

———竜神。

竜族の神。その存在は伝説の中で聞いたことがある。太古の昔、神々の背いて地中深くに封印された、と。

「あのモノたちに封印されて、二千年待ち続けたが、ようやく我が元に人族が現れたことに嬉しく思うぞ」

二千年前の封印…。ということはこの竜神はダンジョンが現れた時、神々に封印されて、二千年もの間挑戦者を待ち続けていたのだろう。

「聞こう、人の子よ。貴様の名はなんと言う」

「ワート、ワート・ストライド。お前を倒して、このダンジョンを攻略してみせる」

「良い、良いぞワート。二千年ぶりの戦闘に昂ってきたわ。せっかくだ、我が名も教えてやろう。我が真名は———竜神イグニス。二千年前、神々との戦いに敗れこの地に封印された者だ」

やっぱり伝説は本当だったんだ…。竜神イグニスは神々が守るこの世界の崩壊を望み、数多の邪神と手を結び、神々に戦いを挑んだ。

「ふむ…それと、ワート、貴様の横にいる女。そやつ、聖剣だな?」

さすが、伝説の竜神、レーヴァの正体にいち早く気がついたようだ。

「えぇ、その通りです。竜神イグニス、以後お見知り置きを」

レーヴァは行儀よく、頭を下げる。

「今代の聖剣はどうやら大人しいと見える。なるほど、その扉を複数人で越えられたことも頷ける」

今代の聖剣…どう言うことだ?

それに———。

「扉を越えたってどう言う意味さ。普通に扉を触ったら一人でに開いたけど」

「あの扉は一人で挑もうとしない者には開かないようになっておる。そもそもこの階層が単独での攻略以外は不可能になっているからな」

「なっ———ってことは、ラクスの魔力が流れ続けていたのも」

「それはこの階層の特徴だ。俺は真の勇者以外の挑戦は受けん。徒党を組んで神である俺に挑もうなどと、片腹痛いわ」

ラクスの不調の原因が思わぬ形で判明した。と言うことは、この階層を攻略できれば、ラクスも調子が良くなるはずだ。

「おそらく、そこの聖剣は貴様の装備品として扉が認識したのだろう」

ラクスのためにも、一刻も早くこの階層を攻略しなければならないと決心を固め、両手でダインを構える。

「まずは相手の出方と実力を見る。レーヴァは人化のまま、後方援護に徹して」

レーヴァは頷くと、僕の後ろに下がっていつでも魔法が放てるように魔法陣を展開する。

「どうやらやる気を出したようだな、では始めるとしよう。———人の子よ。神である俺を越えてみろ」

イグニスの姿が掻き消える。

次の瞬間———左側からの強烈な衝撃を受け止める。

「ダインッ!」

『おう!』

ため込んだ魔力をダインの強化に回し、力任せるに剣を振るう。 攻撃を弾き返されたイグニスは中空に飛び上がり、後退する。

「ははっ!存外、腕力はあるではないか!」

地面を蹴り上げ、疾走する。着地のタイミングでイグニスへの攻撃を狙う。

「ふーむ、考えは良いが、速度が足りぬ———むっ」

————爆撃。後方から発射されたレーヴァの魔法がイグニスに直撃した。威力よりも速度と目眩しを優先したその魔法は、爆煙を発生させ、イグニスの視界を奪う。

「もらったっ!」

背後に回り込み、ダインを振るう。爆煙が切れ、視界が晴れるが目の前にイグニスの姿はない。

「甘いぞ、小僧。その程度の攻撃では俺はれぬ」

慌てて振り向き、ダインで攻撃を受ける。これまで感じたことのないような衝撃で、体が吹き飛ばされた。

数メートルは吹き飛び、地面に叩きつけられる。バウンドした体を中空で捻り、辛うじて片手を地面につき、体制を整える。なんとか両足で踏ん張って勢いを殺す。

「くそ、なんて衝撃———」

「面食らっている余裕はないぞ?」

イグニスの声に反応し上空を見上げると、翼をはためかせ上空を浮かび、こちらを見据える。そして、その背後には数多の魔法が展開され、発射されるのも今かと待ちわびていた。

「ワート!」

イグニスの魔法が発射されると同時に、レーヴァから前方に巨大な障壁を展開した。イグニスの魔法が雨のように障壁に叩きつけられる。

「———くっ、なんて魔法力…。一つ一つが重い…」

「レーヴァっ!」

このままじゃ、ジリ貧だ。なんとかして、イグニスに致命傷を与えなければならない。

「ダインっ、残りの魔力は…?」

『まだ余裕はある』

よし。とにかく今は、奴に致命傷を与え動きを止めることから始める必要がある。

『合図を送ったら、その瞬間に障壁を解除して』

『何か策があるのですね…。承知しました。それまでは確実に貴方を守ってみせます』

レーヴァに念話で作戦を伝える。

ダインに意識を集中する。ダインの中に蓄えられた大量の魔力を引き出していく。要領はラクスを開放した時と同じだ。でも、今回の方が規模は大きい。

大量の魔力がダインから放出され、その魔力の粒子がダインへと集積していく。巨大な魔力の奔流が、一箇所に集まり、そして———。

『行けるぜ、ワート!』

『レーヴァ!』

念話と同時にレーヴァが障壁を解除した。その瞬間、数多の魔法が僕らに降り注ぐ。

———魔法の雨の中を駆ける。

全てを紙一重でかわし、イグニスのもとへ疾走する。

「面白い、貴様1匹で挑むつもりか!」

イグニスの琥珀色の瞳が僕を捉える。発射される魔法全てを、こちらへと狙いを定め直す。射程圏内にイグニスが入った。数多の魔法の中、足を止める。

「いくよ、ダイン———【暴食一閃グラム】!」

ダイン一箇所に止めていた大量の魔力を開放し、イグニスに向かって振るう。大量の魔力は一つの斬撃となって、イグニスへと向かう。

「純然たる魔力のみを斬撃に乗せたか!しかし、俺の魔法はそれでは止まら———まさか、我が魔法を食っているのかっ!?」

ダインの持つ特性【魔力吸収】を乗せた、魔力による斬撃【暴食一閃グラム】。

この一撃によって、数多の魔法が斬撃と衝突し、その魔力を吸収されていく。対魔法攻撃における必殺の一撃。その一撃は向いうる全ての魔法を食い尽くし、そして———。

イグニスの片翼を切り落とした。翼を失ったイグニスが地面へと落ちていく。

———今だ!

もう一度着地の瞬間を狙い、駆け出す。後方のレーヴァの魔法がイグニスの着地に合わせて、発射される。着弾した瞬間、巨大な爆煙が広がった。

爆煙の中を突っ切り、イグニスの背後をとる。———そして。



爆煙が晴れていく。

「うむ…なかなか良い、攻撃だったぞ。———だが、俺には届かん」

「———ゴフッ」

吐血。足元に大量の血が広がる。朦朧とする意識の中、感覚が無くなりつつある胸元を見る。

イグニスの右腕が、僕の心臓を貫いていた。

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