勇者パーティーから追放された召喚士~2000年間攻略されなかったダンジョンを攻略して、伝説の武器や生き物と契約して楽しくやってます。懇願してもパーティには戻りません

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追放されたけど、新たな街に到着する

「ついたーーーー!」

町の入り口で両手を上げて喜びを表現する。

僕たちはとうとう人大陸に入り、魔大陸と人大陸の中継となる町、リードに到着した。リードは大陸の中継地点であり、経済や冒険者の行き来が盛んであり、独自の賑わい方を見せている。

時刻はちょうどお昼頃、町の至る所に冒険者の姿が見え、武器屋や防具屋が盛んに客引きを行っている。

「ここが現代の街か」

ラクスが感心したようにそう呟く。

あの魔大陸のダンジョン攻略から1週間、僕とラクスはなんとかここまでやってきた。この1週間でラクスとの中もかなり良好だ。

出会ったときは何も着ていなかった彼女も、今では自身の魔力で作り出した洋服を着ている。スカートが彼女の可憐さにぴったりだ。

「宿に向かおう。以前来た時に手ごろな宿を調べておいたんだ」

二人で宿に到着し受付を済ませる。ラクスが同じ部屋がいいと騒いだけど、なんとかして別部屋でお願いした。

荷物を部屋の端に放り投げ、ベッドに飛び込む。久々の布団がなんとも心地いい。うとうとしていると、ラクスが部屋にやってきた。

「ワート、少し良いか?」

「もちろん、大丈夫だよ」

体を起こしベッドに腰かけると、隣にラクスも座った。女の子と二人っきりってなんだか緊張する。

そういえば、カナミに「私以外の女と二人っきりになるな」って何度も言われたな…。どうしてカナミは良くて、カナミ以外はダメなのかさっぱりわからないけど。

「もう一度、私の事と、お前と私の関係について話しておこうと思ってな」

「そうだね。もう一度確認しておこうか」

1週間前、ラクスを封印から解放した際に聞いたことを思い出してく。

「ラクスは【吸血鬼】なんだよね?そしてずっと昔に封印されて、なぜ封印されたのか、どうしてダンジョンの奥に眠っていたのか記憶にないと」

「うむ。概ね正解じゃな」

ラクスがステータスオープンと言うと、彼女の目の前にステータスが表示される。

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
名前:ラクス・アイデンベール
種族:魔族
職業:吸血鬼
HP:5,000 MP:10,000
スキル:吸血(不能) 鬼人化(不能)  起源魔法(不能)
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

「本当に訳わからないステータスだね…それに他人に自分のステータスはあまり見せちゃダメだよ」

「うむ!見せるのはワートだけだ!」

そうはっきりと言われると、僕も僕でなんだか恥ずかしい。まだ出会って1週間なのにどうしてラクスがここまで気を許してくれているか、僕自身理解できていない。

「まずは種族。人大陸に魔族がいた時点で普通は、大量の冒険者が飛んでくるよ?」

通常の魔族は、浅黒い肌に鱗や翼など、体のどこかに魔物の特徴を有している。人族の学者曰く、魔族は魔物から進化した結果、あのような姿であるとされている。

「以前言っていたな。魔族は人族の天敵であり、長い間争いが続いていると」

「うん。僕だって以前いたパーティーでは魔族と戦っていたからね」

勇者パーティーは魔族打倒のために人族の王によって組織されたパーティーだ。

「と言うのに、お主は私とこうして話している。私を倒さなくていいのか?」

ラクスは意地悪な笑みを浮かべて、僕を見ている。

「ラクスが一般的な魔族と見た目も違ってのもあるけど、僕とラクスは契約して–––」

そこまで言って、契約した時の情景がフラッシュバックする。柔らかい唇、包み込まれるような…。

「わぁぁあああ!出て行け!僕の煩悩!!」

壁に頭を打ち付けて、邪念と煩悩を追い払う。

「一人で騒いで、怒って、慌ただしい奴じゃの。そんなに契約の時したのが良かったのか?なら、もっとしてや–––」

「だだだ、大丈夫!大丈夫だから!」

このままじゃラクスのペースに持っていかれる。咳払いをして、居住まいを正す。ラクスは魔物だからなのか、それとも昔の人だからなのか、僕と羞恥心の観念が違うらしい。

「と、とにかく!僕はラクスと契約して繋がりを感じるおかげで、君が危険な存在じゃないって理解できる。だから、一緒にいるんだ。もし他の冒険者や兵士が襲ってきたら、僕が守るよ」

と言っても、ラクスのステータスを見る限りでは僕の数倍は強いけど、ここは契約者として、男として守りたいラインだ。

「それに僕とラクスは契約者同士なんだから、厳格に、しっかりとした関係をだね…」

「うむ!ワートが私のご主人様で、私がお前の奴隷ということだ!この私を従えるなんてお前は真の鬼畜–––」

「だから違うってば!僕とラクスはパートナーだよ。スキルを持っているから僕がえらいなんてないよ。お互いに支え合っていこう」

「うーむ。ワートがそう言うなら、そう言うことにしておこう」

ラクスはなんだか不満そうだけど、とりあえずこの関係で納得してもらった。

「吸血鬼って職業聞いたことないんだけど、魔族ではよくある職業なの?それに不能スキルが複数あるなんて聞いたこともないよ」

ラクスが持っているスキルは、【吸血(不能) 鬼人化(不能)  起源魔法(不能)】この三つだ。どれも聞いたことがないスキルばかり。

そもそも不能スキルはそれ以外のスキルを得ることができないから、不能スキルと言われる。幾つも不能スキルを獲得したら、何が何だかわからない。

「その辺りの記憶は全くないのが現状じゃな。しかし、お前の【召喚】スキルだけは覚えておるぞ」

確かに、僕が【召喚】スキルを持っていると言った瞬間に、僕と契約したラクスだ。知っていない方がおかしい。

「【召喚】スキル、それは使用者の魂を具現化し、使用者によって姿形を変化させるスキル。魔族の間では【解放するモノ】と言われておった」

「……え、どういうこと?」

全く頭に入ってこない。
もう少しスキルの詳細とか、そういう情報がもらえるのかと。

「要するに私の生きた時代では、お前さんのスキルは英雄視されておったということじゃな」

「–––英雄」

本当に僕のスキルがそう言われていた時代があったのだろうか…。そもそもラクス自身、自分が何年前に封印されたのか覚えていないし、信じないのが普通なんだろうけど––。

「ラクスがいうからには、本当なんだろうね。そうか、英雄か…。僕なんかとは程遠いけど、なんだか勇気が出るよ」

「よし。情報の共有も済んだことじゃしランチにでも行こうぞ。私は腹ペコじゃ。」

僕の言葉に嬉しそうに笑うと、ラクスは準備してくると部屋を出て行った。僕も準備するとしよう。

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