勇者パーティーから追放された召喚士~2000年間攻略されなかったダンジョンを攻略して、伝説の武器や生き物と契約して楽しくやってます。懇願してもパーティには戻りません
【勇者パーティーside】追放された幼馴染を追いかける
「ワートを、追放、した…?」
グランの一言で勇者パーティーに衝撃が走った。
ワートが追放された翌日の昼。それぞれがグランの部屋に集合したタイミングで、グランからそう告げられた。
グランとアーシャの他に勇者パーティーには二人在籍しており、二人とも驚きを隠しきれない。
「ぐ、グラン、それはいつだ?」
職業【タンク】であるラルクが震えた声で質問した。
ラルクは全ての攻撃を自身の盾で防ぎ切るパーティーの守りの要であり、勇者パーティーでは最年長者。心理的支柱ともなっていた。
「昨日の夜だな、あの野郎泣きながら部屋飛び出していったぜ」
グランの発言に、ラルクは呆れたようにため息をつくと、
「カナミ、ワートを探しにいくぞ。昨日の夜ならまだ遠くに行っていないはずだ」
カナミと呼ばれた黒のローブに身を包んだ茶髪の少女の肩を叩き、ラルクはグランを睨み付けた。
「グラン、今回ばかりは貴様の愚かさを擁護しようもない。ワートを雑用にしか起用しなかったこともそうだが、貴様は奴の能力を見誤りすぎている」
「テメェ…勇者である俺に意見するなんてどう言う了見だ?あの野郎は俺たちを騙し、勇者である俺にこんな駄剣を使わせていたんだぞ?」
グランがそう言うと、彼の横に控えていたアーシャから剣を受け取り、ラルクの足元へと放り投げる。
「奴が俺に聖剣レーヴァテインと言って貸し出していた剣だ。鑑定してもらったら、こんなステータスだったんだぜ?」
グランが差し出した鑑定紙にはこう示されている。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
名前:剣
属性:剣
HP:+0 MP:+0
腕力:+100 脚力:+0 体力:+0
敏捷:+0 器用:+0 精神:+0
スキル:剣技Lv.1
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
「これは…」
「あの野郎、俺を騙してこんな剣を使わせていたんだぜ。この村に来たら同じような剣が大量にあってよ、おかしいと–––」
「貴様どこまで愚かなのだ。あの聖剣を使っていて何故、これが贋作だと見抜けない。こんなモノ見た目が似ているだけの偽物ではないか」
ラルクは足元の剣を手に取り、隣にいるローブの少女に手渡す。彼女の職業は魔法使いであり、剣に施された魔法を見抜くことができると考えた。
「確かにこれ、魔法で偽装されてるわね」
魔法使いの少女が手をかざすと、剣に施された魔法が霧散する。魔力の偽装が剥がれた剣は先ほどまでの装飾がなくなり、一般的な無骨な剣へと姿を変えた。
彼女は剣を宿のベッドの上に放り投げ、被っているフードを脱いだ。
綺麗な茶髪に気が強そうな瞳。街中を歩いていれば十中八九、人々の視線を集める整った容姿。今は、怒りで歯を食いしばり、グランとアーシャを睨みつけている。
「あんた達二人には本当に愛想が尽きたわ。私、パーティー抜けるわ」
彼女はポケットからパーティーの一員を示すエンブレム取り出すと、グランに向けて叩きつけた。
「おい、カナミ!どう言うことだよ!俺はただ、このパーティーの邪魔者を–––」
「ワートが邪魔者ですって!」
今の一言でカナミの我慢は限界を超えた。膨大な魔力が溢れだし、宿、いや街中を覆い尽くす。
「ワートがどんな思いで、どんな気持ちで勇者のあんたに付いてきたと思ってんのよ!あいつは…あいつはっ!」
カナミはあまりの悔しさにグランへ攻撃する気も起きなかった。ただ–––ただ、悔しかった。
追放された時にどうして自分は一緒に行ってあげられなかったのか。どうして抱きしめてあげられなかったのか。
後悔が次から次へと溢れ出てくる。本当は彼にパーティーを抜けさせたかった。グランの仕打ちに耐える必要なんて本当は彼にはなかった。
『私と一緒にパーティーを抜けて静かに暮らそう』
いつも、そう言いたかった。だけど、グランの仕打ちに耐えながら人々を救う彼の横顔を見て、その一言が言い出せなかった。
「こんなパーティー抜けて、私はワートを追いかける」
カナミは足元に置いた荷物を背負い、魔法杖を手に取る。
「おい!あんな奴のために勇者である俺のパーティーを抜けるのかよ!」
カナミは世界でも数名しかいないとされる、スキル【魔法】(超級)の持ち主だ。グランとしても彼女に抜けられるのは避けたいようだ。
「あんな奴ですって!ふざけんじゃないわよ…私にとってはグラン、アンタなんてどうでもいいのよ!私にとってワートが全部なの。アイツ以外いらない」
そう言い張ってカナミは部屋を後にした。
ラルクはやれやれとため息をつくと、カナミを追ってドアノブ手をかけた。
「私は勇者パーティーで人族のために戦っている。カナミのように抜ける気はないが、グラン、貴様のために戦っているわけではない」
「–––チッ。んなことわかってる」
「それに、ワートは役立たずではない。彼の召喚する武器で我々の戦力は強化され、彼の召喚する魔物のおかげで斥候も索敵も行わず安全に旅を続けられたのだ。奴が自身で召喚した武器と魔物を従えた時、お前でも敵わんかもしれんぞ」
それだけ言うとラルクも部屋を後にした。
部屋には不機嫌なグランと、終始笑みを絶やさなかったアーシャだけが残った。
「グラン様、お二方はそう言いましたが貴方様は間違っておりません。あの召喚士がいなくとも貴方様は無敵です。ご安心ください」
アーシャは後ろからグランを優しく抱き締めると、それに応えるようにグランも彼女を手を握りめる。
「あぁ…そうだな。そうだ、俺は最強の勇者なんだ」
「えぇ。そうです。貴方様は勇者。誰も貴方には届きません」
グランの耳元でそう答えた彼女は、静かに笑みを浮かべた。
「カナミ、これからどうするつもりだ」
街中でラルクが私に追いついてきた。
「とりあえず、ギルドに向かって情報収集するわ。ワートの性格的に、もうこの街にはいないだろうし、旅立つにしてもギルドで準備していったはず…」
私が口早にそう言うと、ラルクは呆れたように笑った。
「さすが、幼馴染だな」
「そうね…お互い何を考えているくらいは分かるわ」
ワートとの事を思い出す。
同じ村に生まれて、小さい頃は一緒に遊んで、そして–––彼を好きになった。
ワートが【召喚】スキルに目覚めると、彼は不能者と言われ村を追い出された。本当に寂しかったけど、あの時は大人達の言う事を聞くしかなった。
ワートが追い出される最後の夜、誰にも文句を言わせないくらい私が強くなろうと誓った。そして、ワートを迎えに行くんだと。
幸いなことに私のスキルは戦闘向きで、人大陸では重宝された。勇者パーティーに誘われた時は、ワートを迎えに行ける私に一歩近づいたと大喜びした。
勇者は最低だけど、知名度と名声は本物。このパーティーにいれば、私も力をつけることができたから都合がよかった。
「たまたま行った村でワートに会った時は本当に驚いたなー」
空を見上げて、それからの事を、たくさんのワート思い出す。
ワートのことを思い出すと心の奥の方が暖かくなる。これが幸せって言うものな気がする。
「本当にワートの話をする時はいい表情をする。いつもその表情をしていればいいもの…」
「うるさいわね。いいのよ、ワートの時だけで」
–––待っててねワート。すぐに追いつくんだから。
「……なにか嫌な予感がするわ」
「嫌な予感?」
「えぇ…私がいない間に変な女に騙されてないといいけど…」
杞憂であることを願いながら、ラルクと共にギルドへと向かった。
グランの一言で勇者パーティーに衝撃が走った。
ワートが追放された翌日の昼。それぞれがグランの部屋に集合したタイミングで、グランからそう告げられた。
グランとアーシャの他に勇者パーティーには二人在籍しており、二人とも驚きを隠しきれない。
「ぐ、グラン、それはいつだ?」
職業【タンク】であるラルクが震えた声で質問した。
ラルクは全ての攻撃を自身の盾で防ぎ切るパーティーの守りの要であり、勇者パーティーでは最年長者。心理的支柱ともなっていた。
「昨日の夜だな、あの野郎泣きながら部屋飛び出していったぜ」
グランの発言に、ラルクは呆れたようにため息をつくと、
「カナミ、ワートを探しにいくぞ。昨日の夜ならまだ遠くに行っていないはずだ」
カナミと呼ばれた黒のローブに身を包んだ茶髪の少女の肩を叩き、ラルクはグランを睨み付けた。
「グラン、今回ばかりは貴様の愚かさを擁護しようもない。ワートを雑用にしか起用しなかったこともそうだが、貴様は奴の能力を見誤りすぎている」
「テメェ…勇者である俺に意見するなんてどう言う了見だ?あの野郎は俺たちを騙し、勇者である俺にこんな駄剣を使わせていたんだぞ?」
グランがそう言うと、彼の横に控えていたアーシャから剣を受け取り、ラルクの足元へと放り投げる。
「奴が俺に聖剣レーヴァテインと言って貸し出していた剣だ。鑑定してもらったら、こんなステータスだったんだぜ?」
グランが差し出した鑑定紙にはこう示されている。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
名前:剣
属性:剣
HP:+0 MP:+0
腕力:+100 脚力:+0 体力:+0
敏捷:+0 器用:+0 精神:+0
スキル:剣技Lv.1
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
「これは…」
「あの野郎、俺を騙してこんな剣を使わせていたんだぜ。この村に来たら同じような剣が大量にあってよ、おかしいと–––」
「貴様どこまで愚かなのだ。あの聖剣を使っていて何故、これが贋作だと見抜けない。こんなモノ見た目が似ているだけの偽物ではないか」
ラルクは足元の剣を手に取り、隣にいるローブの少女に手渡す。彼女の職業は魔法使いであり、剣に施された魔法を見抜くことができると考えた。
「確かにこれ、魔法で偽装されてるわね」
魔法使いの少女が手をかざすと、剣に施された魔法が霧散する。魔力の偽装が剥がれた剣は先ほどまでの装飾がなくなり、一般的な無骨な剣へと姿を変えた。
彼女は剣を宿のベッドの上に放り投げ、被っているフードを脱いだ。
綺麗な茶髪に気が強そうな瞳。街中を歩いていれば十中八九、人々の視線を集める整った容姿。今は、怒りで歯を食いしばり、グランとアーシャを睨みつけている。
「あんた達二人には本当に愛想が尽きたわ。私、パーティー抜けるわ」
彼女はポケットからパーティーの一員を示すエンブレム取り出すと、グランに向けて叩きつけた。
「おい、カナミ!どう言うことだよ!俺はただ、このパーティーの邪魔者を–––」
「ワートが邪魔者ですって!」
今の一言でカナミの我慢は限界を超えた。膨大な魔力が溢れだし、宿、いや街中を覆い尽くす。
「ワートがどんな思いで、どんな気持ちで勇者のあんたに付いてきたと思ってんのよ!あいつは…あいつはっ!」
カナミはあまりの悔しさにグランへ攻撃する気も起きなかった。ただ–––ただ、悔しかった。
追放された時にどうして自分は一緒に行ってあげられなかったのか。どうして抱きしめてあげられなかったのか。
後悔が次から次へと溢れ出てくる。本当は彼にパーティーを抜けさせたかった。グランの仕打ちに耐える必要なんて本当は彼にはなかった。
『私と一緒にパーティーを抜けて静かに暮らそう』
いつも、そう言いたかった。だけど、グランの仕打ちに耐えながら人々を救う彼の横顔を見て、その一言が言い出せなかった。
「こんなパーティー抜けて、私はワートを追いかける」
カナミは足元に置いた荷物を背負い、魔法杖を手に取る。
「おい!あんな奴のために勇者である俺のパーティーを抜けるのかよ!」
カナミは世界でも数名しかいないとされる、スキル【魔法】(超級)の持ち主だ。グランとしても彼女に抜けられるのは避けたいようだ。
「あんな奴ですって!ふざけんじゃないわよ…私にとってはグラン、アンタなんてどうでもいいのよ!私にとってワートが全部なの。アイツ以外いらない」
そう言い張ってカナミは部屋を後にした。
ラルクはやれやれとため息をつくと、カナミを追ってドアノブ手をかけた。
「私は勇者パーティーで人族のために戦っている。カナミのように抜ける気はないが、グラン、貴様のために戦っているわけではない」
「–––チッ。んなことわかってる」
「それに、ワートは役立たずではない。彼の召喚する武器で我々の戦力は強化され、彼の召喚する魔物のおかげで斥候も索敵も行わず安全に旅を続けられたのだ。奴が自身で召喚した武器と魔物を従えた時、お前でも敵わんかもしれんぞ」
それだけ言うとラルクも部屋を後にした。
部屋には不機嫌なグランと、終始笑みを絶やさなかったアーシャだけが残った。
「グラン様、お二方はそう言いましたが貴方様は間違っておりません。あの召喚士がいなくとも貴方様は無敵です。ご安心ください」
アーシャは後ろからグランを優しく抱き締めると、それに応えるようにグランも彼女を手を握りめる。
「あぁ…そうだな。そうだ、俺は最強の勇者なんだ」
「えぇ。そうです。貴方様は勇者。誰も貴方には届きません」
グランの耳元でそう答えた彼女は、静かに笑みを浮かべた。
「カナミ、これからどうするつもりだ」
街中でラルクが私に追いついてきた。
「とりあえず、ギルドに向かって情報収集するわ。ワートの性格的に、もうこの街にはいないだろうし、旅立つにしてもギルドで準備していったはず…」
私が口早にそう言うと、ラルクは呆れたように笑った。
「さすが、幼馴染だな」
「そうね…お互い何を考えているくらいは分かるわ」
ワートとの事を思い出す。
同じ村に生まれて、小さい頃は一緒に遊んで、そして–––彼を好きになった。
ワートが【召喚】スキルに目覚めると、彼は不能者と言われ村を追い出された。本当に寂しかったけど、あの時は大人達の言う事を聞くしかなった。
ワートが追い出される最後の夜、誰にも文句を言わせないくらい私が強くなろうと誓った。そして、ワートを迎えに行くんだと。
幸いなことに私のスキルは戦闘向きで、人大陸では重宝された。勇者パーティーに誘われた時は、ワートを迎えに行ける私に一歩近づいたと大喜びした。
勇者は最低だけど、知名度と名声は本物。このパーティーにいれば、私も力をつけることができたから都合がよかった。
「たまたま行った村でワートに会った時は本当に驚いたなー」
空を見上げて、それからの事を、たくさんのワート思い出す。
ワートのことを思い出すと心の奥の方が暖かくなる。これが幸せって言うものな気がする。
「本当にワートの話をする時はいい表情をする。いつもその表情をしていればいいもの…」
「うるさいわね。いいのよ、ワートの時だけで」
–––待っててねワート。すぐに追いつくんだから。
「……なにか嫌な予感がするわ」
「嫌な予感?」
「えぇ…私がいない間に変な女に騙されてないといいけど…」
杞憂であることを願いながら、ラルクと共にギルドへと向かった。
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