30秒の短距離走

葉月天

昔のあの人

偶然に再開したあの人は

やっぱり同じような髪型で

同じような大股で歩いていて

やたらとたくさんの荷物をリュックに詰め込んでいて

場を和ませるような話をしていて

可笑しかった

自分から話しかけてもよかったけど

そうしないでもきっと向こうもわかっている

次は会ったら声をかけてみようかしら

もう会わないかもしれないけれどね

昔のまま、

あの時のことがじわっと浮かぶ

嫌な気にはならない

切なくもならない

ただ可笑しいだけ


別れて別々の道を歩んでいるけれど

時が流れている、というのは同じね


コメント

コメントを書く

「エッセイ」の人気作品

書籍化作品