30秒の短距離走

葉月天

掴まえる

からだに湧く言葉を掴まえるために、書くことを始めた。
何でもいいから掴まえたくて、虫かごと虫取り網を持って走り出す子どものように、無心に。

目に見えないものを追いかける。
止まらないものを追いかける。
少しカタチが見えたら、すぐにシャッターを切る。
そしてそれが何だか書き留める。
その者の名がわからなくてもいい。
誰かに名を付けられていなくともいい。
そこ場に、その者がいた、という事だけを記憶したいのだ。


言葉は流れる。
時よりも速く、光よりも確かに。

流れるものばかりだ。
だから掴まえる。
捉えようとすることを諦めたくないのだ。

コメント

コメントを書く

「エッセイ」の人気作品

書籍化作品